ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 (ele-king books)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907276263

感想・レビュー・書評

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  • 「UK左翼セレブ」と氏が見る所の人物12人の”レフト”考察。パンク好きが高じて英国に渡った氏、自身のライターとしての本職はゴシップ書きで、著名人のゴシップを夜な夜なリサーチしているというが、それら著名人の政治的な発言に焦点を当てた。

    地べたのおばはんが井戸端で駄弁っているレベルでの考察である、とあるが、J・K・ローリング、Mr.ビーンのローワン・アトキンソン、映画監督のダニー・ボイル、ジャズサックス奏者のコートニー・パインなど、彼らのレフトの思想があることを初めて知る。

    ほかに、
    ・映画監督のケン・ローチ、
    ・ハッピーマンデーズのベズ、
    ・演劇人のイアン・マッケラン、
    ・コメディアンにして俳優、コラムニストのラッセル・ブランド、
    ・モリッシー(ザ・スミスのメンバー 名前は勿知っているが音としてはよく聴いたことがない)、
    ・シンガー・ソングライターのビリー・ブラック、
    ・音楽評論家ジュリー・バーチル(セックス・ピストルズの最初のレビューを書いた人ということだ。氏に文にはよく出てくる人)、
    ・フットボール選手のジャスティン・ファシャンヌ。

    2014.12.25初版 図書館

  • イギリスの左翼人士を一人一人解説している。
    1945年に瓦礫の中からの戦後復興で労働党政権の福祉政策が1980年代のサッチャー政権で転換されて資本主義弱肉強食の世の中になって30年余。
    サッチャーと、その後継者達の政策はまさに革命だったんだな。

    この本が発行されたのが2014年。

    p.76に筆者の言いたいことのエッセンスがあり、日本もこんな感じだよなあ。
    右翼政党こそ出てきてないけど、以下引用

    大義のないポリティックスは弱い。
    だからこそ、欧州では右傾化が目立っているのであり、英国でも労働者階級の人々がUKIPのような排外主義の右翼政党にシンパシーを抱くのだ「外国人を追い出して英国人に仕事や富が回るようにしよう」と言っている人たちの方が、経済の下敷きになった貧民を救おうとしている正義派のように見えるからだ。
    弱者を救うはずの政党だった労働党は、その基本の部分を長いことなおざりにして、どうすれば支持率が上がるということのみを追求し、「より多くの人々に愛される政党ポリシー」ばかり作っているうちに何党なんだかさっぱりわからなくなってしまった。
    「弱者とか平等なんてどうでもいいじゃん。そんなの今どきダサい」と世論が言えば、「そうですね、ダサいっすよね」と追従する政党になってしまったのである。

    以上引用終わり

    日本のステレオタイプな左翼と違って様々なタイプと筋金の入りっぷりが面白い。

  • ここで言う「左翼」というのは僕らの知っている左翼とは別物だ。それは戦後英国で無料の国家医療制度を設立した政治的実績を土台に持ち、階級社会という制度に縛られながらも社会的公正を目指そうとする者のことだ。そして、著者自身も言う通り、魅力的な人間というのは決してそんな型通りには生きられず、時に揺らぎも間違いもする。だからこそ面白い。著者のブレイディみかこは右も左も入り混じる底辺生活という地べたライフにどっかりと座りながらも、現実をつぶさに見て考えることの気高さを持つ人だ。とても勇気の出る本だと思う。

  • UKのレフトな考え方を持つ有名人たちの生き方や発言をまとめた本。レフト、と言いつつもレフトだけでは生きられないミックスな中で生きてるよな、と思う。サッチャーによって本当に人生変わったし、普通に働いても家も持てない、結婚もできない世の中になってきてるよな、じゃあどうすんのよ、と問いかけている感じが悪くない。有名人がポリティカルな発言をして、それが認められてるというのがいいなと思う。

  • 図書館にて。
    ここに出てくる人たちはJKローリングとローワンアトキンソンしか知らなかったが、それぞれの生き方と考え方、社会に対しての向き合い方に考えさせられた。
    ブレイデイみかこさんの軽妙な文体が楽しく、言いたいことを言いたい気概みたいなものが伝わってきた。
    あとがきにもあったように、人としてどう生きたいか。
    自分に恥じない生き方がしたいと思う。

  • イギリスには、しっかりとした信条を持った人の多いことよ。

  • 社会

  • この人の文章にはバイブスがある。
    階級社会のイギリスで「地べた」と称するワーキングクラスの生活を送りながらもしっかりとこの国の潮流を冷静に見つめる視点は弱者への優しさに溢れている。

    左、右、と簡単に二分できるものではない。時に揺らぎ時に弱さも見せつつそれでも自分の言動が世間に影響を及ぼすことを恐れず怯まず発言するUKセレブ達の「気風の良さ」には清々しい気持ちになる。

    メディアが政権に阿り口をつぐむこの日本において、ポリティカルな発言をするセレブはなかなかいないのだ。

  • 2015.7.7
    ダニーボイルのオリンピック開会式、NHSとか炭鉱など労働者がモチーフになっていたのは、サッチャーへのカウンターというのは全く知らなかった。ただ歴史を振り返っているだけだと思ってたな。ポリティカルな意味が含まれていたなんて。日本だとこの本に出てくるようなことやってるアーティストはアジカンの後藤くらいだろうか?
    僕らはどうやって安部政権へのカウンターが出来るだろうか?

  • UKの音楽がクラスから生まれたモノ、という認識は今のリスナーに通用するのだろうか?今のUKには魅力を感じなくなってしまった理由はそれか、と漠然と感じていた数年。NYへ行く飛行機の中で聞いたジェイク・バグで目が覚めた。縦にまっすぐ固定化されていたクラスは今や、移民という左下から、宗教という右下から斜めに突き刺さりより一層強くアンダークラスを固定していたのだ。
    限りなく悲惨な社会状況の中で、なぜ彼らがこのような意思を持ち表現をしているのか_ゴシップライターを自称する筆者が、自らもアンダークラスとしての強い意志を持ちながら、シニカル+コミカルに書く本書は読み出したら止まらない!
    UKレフト・カルチャーは続く!

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著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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