新プロパガンダ論 (ゲンロン叢書)

  • 株式会社ゲンロン
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907188405

作品紹介・あらすじ

政治の戦場はいまや噓と宣伝のなかにある
気鋭の近現代史家と社会学者によるまったく新しい安部長期政権分析!

近現代史研究者の辻田真佐憲さんと社会学者の西田亮介さんと連続対談を収録。
七年八ヵ月のあいだ継続し、憲政史上最長となった第二次安倍政権。
政治とメディアの力学を塗り替え、右派と左派を「アベ」と「反アベ」に再編したその情報戦略は、はたして「プロパガンダ」と呼べるのか?
立場を異にするふたりの研究者が徹底的に語り合います。
SNSの政治化、令和への改元、そしてコロナ禍を通して見えた、日本政治の普遍的な課題とは。
イメージが政治を支配する時代の「ワクチン」として、現代史を再検討します。

感想・レビュー・書評

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  • 「政治的な宣伝と、プロパガンダの違いとは」というお題で、辻田氏と西田氏の意見が割れる。異なる意見があるから対談は面白いと思うので、それはそれで良い。多様な考え方があり、読者はそれに触れる。結局、答えはない。

    政党代表が子供と戯れるようなイメージ動画は是が非か。習近平だってそんな動画を放映している。見もしない人から無理やり料金を集めるNHKに反対すれば、票も集まる。ネット動画でPRすること自体が悪いこととは、私は思わない。そこに虚偽、過剰な不安を煽る、極端なヘイトスピーチがなければ。しかし、虚実不明、過剰や極端とはどの程度かを示せないから、私一人の脳内でも、意見は割れる。何せ、プロパガンダだと気付いた人には、プロパガンダ足り得ない、パラドックスを孕んだテーマだという気もする。結局は、「守れ情弱たち。いや、守れ、その情弱が操作されて被るだろう自らの不利益!」なのである。

    第一次世界大戦は世界史上初めて行われた総力戦。それまでの戦争は専制君主同士が領土を巡って争う限定的なもの。しかし、第一次世界大戦は互いの資源を全て動員した。その時期にプロパガンダが盛んになったのは、国民の自発的な参加を促すため。プロパガンダは、国家主導以外にも、国民同士が便乗したケースも多々あったという。ここで最も怖いのは、反対派の意見が暴力により、消される事だ。プロパガンダという言葉には、洗脳機能と共に、そうした強引さがこびりつく。

    マーケティングの世界では画像を入れることでページビューやエンゲージメント率を向上させるというのが定石。ビジュアルはテキストよりも警戒心なく受容できてしまうのだという。フェイクやAIが蔓延してくれば、取り扱いは更に難しくなる。真実が何か、どのような選択が自らの立場にとって最適なのかも分からなくなる。分からなくなればなる程、得するのは、既存経路なのだろうから、変革は更に重要だ。暗がりの中では、人は新たな道を選びにくい。

    通常の選挙は、公職選挙法のもとで、街宣車の台数、拡声器の台数、ポスターやビラの枚数まで規制されているにもかかわらず、国民投票法は、アメリカ大統領選挙のように投票運動期間の規定も街宣車の規制もない。

    余談ながら、日本青年会議所の「宇予くん」なるキャラクターを本書で知ったが、これは酷い。

  • 『新プロパガンダ論』関連選書&推薦コメント|西田亮介 - ゲンロンα
    https://www.genron-alpha.com/cafebookselection_06/

    『新プロパガンダ論』辻田真佐憲+西田亮介 著 | ゲンロン友の会
    https://genron-tomonokai.com/propaganda/

    ゲンロンショップ / 新プロパガンダ論
    https://genron.co.jp/shop/products/detail/508

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      いまこそ「史論家」が必要だ──百田尚樹、つくる会、歴史共同研究再検証(前篇)|呉座勇一+辻田真佐憲+與那覇潤 - ゲンロンα
      https:...
      いまこそ「史論家」が必要だ──百田尚樹、つくる会、歴史共同研究再検証(前篇)|呉座勇一+辻田真佐憲+與那覇潤 - ゲンロンα
      https://www.genron-alpha.com/article20220607_01/
      2022/06/09
  • 読了。大切なのは情報(宣伝)に触れたときにそれを読み取る(疑う)意識を持つことだと改めて認識。当たり前のようで非常に難しい。忌避するのでは無く判断できる素地を作ることが大切。対談なのでとても読みやすい。

  • 闇自己と比較して(闇自己と比較すな)自分の関心領域に近くて入ってきやすかった、国威を発揚していきましょう

  • 3まで

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  • 辻田氏がここで定義するプロパガンダとは
    「政治的な意図にもとづき、相手の思考や行動に、しばしば相手の意向を尊重せずに影響を与えようとする、組織的な宣伝活動である」

    重要なのは「政治的」と「組織的」という部分。政治的とは、企業のCMのように経済的なプロモーションではなく、組織的とは、自分の思想信条を訴えることとは異なるという意味。

    2018年4月から2020年9月にかけてゲンロンカフェで行われた西田亮介氏との公開対談を元にした本書が
    「古今東西のさまざまな事例を知っておくことで、目の前にプロパガンダがあらわれたときに感情的にならず対応できるようにする、ワクチンとしての役割りを果たす」と私も信じたい。
    巻末の付録「国威発揚年表」も興味深い。

  • 2020I092 312.1/Ni
    配架場所:A2

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著者プロフィール

辻田真佐憲(つじた・まさのり)
1984年大阪府生まれ。文筆家、近現代史研究者。慶應義塾大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科中退。
2011年より執筆活動を開始し、現在、政治・戦争と文化芸術の関わりを研究テーマとしている。著書に『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』、『ふしぎな君が代』『大本営発表』『天皇のお言葉 明治・大正・昭和・平成』(以上、幻冬舎新書)、『空気の検閲~大日本帝国の表現規制~』(光文社新書)『愛国とレコード 幻の大名古屋軍歌とアサヒ蓄音器商会』(えにし書房)、『たのしいプロパガンダ』(イースト新書Q)などがある。歴史資料の復刻にも取り組んでおり、監修CDに『日本の軍歌アーカイブス』(ビクターエンタテインメント)、『出征兵士を送る歌 これが軍歌だ!』(キングレコード)、『日本の軍歌・軍国歌謡全集』(ぐらもくらぶ)、『古関裕而の昭和史 国民を背負った作曲家』 (文春新書) などがある。

「2021年 『新プロパガンダ論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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