哲学の誤配 (ゲンロン叢書)

著者 :
  • 株式会社ゲンロン
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907188375

作品紹介・あらすじ

誤配とは自由のことである――
近くて遠い読者に向けたインタビュー&講演録

韓国の読者に向けて語った2つのインタビューと、
中国・杭州での最新講演を収録。
誤配から観光へ展開した東思想を解き明かす必読のテキスト。
韓国の若手論客パク・カブンによる解説も掲載。
日韓並行出版。

感想・レビュー・書評

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  • 我々は資本の論理に支配された一つのゲームをプレイしている、という話には共感した。
    様々な信念が立ち並ぶこの社会は多様性があって一見自由に見えるが、実はその信念(小さな物語)は、大きなゲームに勝つための「手」として使われているのであり、実際は不自由なのだ。

    現代では、信念があり、表現力、発言力の強い人間が有利だ。彼らはテンションが高く、豊かな感受性を持ち、純粋で、生きることを楽しんでいるように見える。しかし、そうすることが現代のゲームで勝つために必要であることを実は彼らは知っている。

  • 「誤配」という言葉を使った意味について、なるほどと思わせるのと同時に、哲学をはじめ物事の解釈が広がる事についても考えさせられた。
    そして経済成長とともに政治から離れていった日本の国民についても納得すると同時に、ある意味今の中国も国の体制は違うが、ある意味これまでの日本と同じなのではないかと思ったり。

  • 本書は韓国と日本でほぼ同時期に出版されていて、収められている二つのインタビューはもともと韓国の読者に向けられたものだし、付録には中国の杭州でおこなわれた講演の草稿が再翻訳したかたちで載せられている。講演のほうは日本語版にのみ収められているそうだ。
    東浩紀は韓国では長らくサブカル批評家として受容されてきたという。実際、韓国ではじめて翻訳された著作は『動ポモ』らしい(国内でも最も売れた本ではあるが)。そんな彼がサブカル批評家としてのイメージを払拭し、哲学者としての「全貌」を知らしめるため行ったのがこれら二つのインタビューである。インタビュアーは東浩紀と知り合いの韓国人だ。
    二つのインタビューのうち二〇一二年に行われたものは、その時期に刊行された『一般意思2.0』について、韓国で最もよく知られる日本人思想家の柄谷光人と比較しながら、政治的な意思決定のプロセスに対する考え方の違いなどを質問されていた。二〇一八年のほうはおおよそ『一般意思2.0』と『ゲンロン0 観光客の哲学』(「ゲンロン0」とした意義も本書で記されている)について訊くものだった。
    これらのどれも興味深いものだったが、私には韓国人批評家によるこれまた韓国人に向けて書かれた解説が一番おもしろかった。通常の解説と同じように巻末に収録されているのだが、東浩紀を知らない韓国人に対する東浩紀の丁寧な紹介があり、それがまずたんに勉強になったし、海外の思想を受容するということを逆の目線から窺うことができたのは貴重であった。自国の哲学者の思想が「他者」として別の場所で読まれるとはどういうことかがわかった気がする。
    とにかくレビューで「これも「誤配」ということなのだろう」とか書かないですんだようでなによりだ。

  • 「動物化するポストモダン」を読んでいないので、ところどころがわからなかったが、10年以上前の考えなのに、このコロナ禍になって余計に響く内容に思われます。郵便空間からきた誤配という人間の行動がどう変容していくのか、今後未来に向けて考えてしまいます。「弱いつながり」にも似た観光の哲学についてもあらためて大事なことを教えてもらえたように思います。

  • “誤配”という言葉がもたらすイメージは、そうか、だから郵便的なのかというものだったのだが、東浩紀の色々を読んでみるとそうではなく、一見無駄に見えるそれぞれがもたらす新たな世界の広がりみたいな感じなのだろうか。
    いずれにしても哲学は、今の自分はまだ本当によくわからないのだが、たった一つ哲学とは考え方なのだという思いだけ持って、色々読んでみるのだけれど、結局のところは“自分”が、齢五十を超えてなお、まだフラフラしているのはまずいと思っていたところに、ぴたりとはまった分野だから、多分、本当に微かにだけどその素養はあるのだと思えるのだから、そろそろ、デリダにしろフーコーにしろ、ウィトゲンシュタインにしろ、そういう人たちが書いた原版を、東さんや国分さんや内田さんとかが、解説してくれてるものだけではなくて、直接読んでみる時期に来ているのかなと思う。
    この、哲学の誤配という本の内容からはだいぶ外れてしまうように思うのだが、この本を読んで湧き上がってきた思いはたしかにこの通りなんだよな。

  • 内容はなかなかむずかしかったけれど、インタビュー形式なので読みやすかった。
    東浩紀、という人物。その内面と考えを知るのにはいい一冊。

  • 東さんの言う「観客」は「言語ゲーム」の「観客」なのですね.cf.p.146 「日本語版刊行によせて」で20世紀後半の韓国について知ることが出来たのも良かった.cf. pp.196-201

  • 読了

  • 東浩紀ファンなら。

  • 「一般意志2.0」「観光客の哲学」の韓国語訳刊行に伴い行われた韓国読者向けインタビューの日本語版。
    訳者の安天氏のインタビュー手腕により韓国と日本の思想状況の違いが理解しやすい。また2書の時間差(2012⇒2018)による思考の変化も面白い。

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

「2023年 『ゲンロン15』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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