新記号論 脳とメディアが出会うとき (ゲンロン叢書)

  • ゲンロン
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  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907188306

作品紹介・あらすじ

現代人はつねにネットワークに接続されている。
それはなにを意味するのか。
二人の哲学者が、記号論という名の
古くて新しいプロジェクトをいま再起動するーー。

先史時代の洞窟壁画から最新の脳科学までを貫き、
ヒトと機械のインターフェイス=境界面の本質を明らかにする、
スリリングな知的冒険!

ゲンロンカフェ発
伝説の白熱講義を完全収録!

感想・レビュー・書評

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  • 石田さんが書いてる補論は第一のものですでによく理解できず、というよりそもそも本論の東さんとの講義のところからして良くはわからないまま読んでいたのだが、東さんがところどころ解説してくれるのでなんとか読み進められていたようなものだった。

    結局のところ、一生懸命お二人が、今のこの時代に哲学が、人文学が何をすべきなのかということを何時間もかけて語ってくれているのだが、読んでるこちらはそれがどうして大切なのかということがよくわからないから、噛めずに舐めてるみたいな読み方になってしまった…

  •  記号論とはなにか。歴史からここまでの新しい言説までをまとめたものである。知を愛するものであれば必読の書である。
     この分野はコンピュータ、AIの発展の礎になっているし、そもそもメディアを探究する場合にも必要になるものである。
     本書に「ヒトはみな同じ文字を書いている」、「ニューロンリサイクル仮説」を取り上げた箇所がある。ヒトが進化の過程で森で生活していた時期があるとされる。その森での生活でモノを見分けるのに使っていた視覚に関する身体の部位や脳の視覚野。これを文字を読むことに転用しているのではないかということの根拠にしているのである。
     グラフィックレコーディングにおいて、文字を書く、絵を描くということは基本中の基本である。その学びにおいてこの考えは大変大きな示唆となる。

  • ゲンロン恐るべし。

    文系の名誉回復のような出だしで、東浩紀と石田英敬が対話した、実際のゲンロンカフェでの公開収録を製本化。新記号論と題し、脳科学の進化から、文系学問を再構築する。

    問題点を幾つか。非常に高度な文系学問の対話であり、本来は大衆に噛み砕いて披露すべき登壇の場において、聞き手が東浩紀という天才を相手にしたために、読み手は置き去りになったのではないか。加えて、この学問は転用可能な形に咀嚼され難い分野であったから、未だに、研究者その人の固有名詞が、理論そのものを示しており、基礎的な暗記や理解が無ければ、分かりにくい。例えば、純粋理論学のためのプロレゴメナというイントロ、とか、ライプニッツのプロジェクトの延長、とか、スピノザと表出の問題とか。こうした聞き手と専門性の壁からは、到底、通読や聴講で理解し得るレベルではない。

    もう一つ。漢字やアルファベット、平仮名やキリル文字など、要素分解すると、その要素頻出分布から、ヒトはみな同じ文字を書いていると大発見し、分布図を見て興奮する一幕。分解した構成要素が、Iのような縦棒なら頻度はどの文字でも高く、*のような複雑形なら低くなるのだから、自ずと分布図は似たような傾向になるのではないか。

    文系学問の名誉とは。衒学的ナルシシズムと虚業に嵌まらぬようにと思う。

  • ネット社会となった今を生きるということについて、人間の自由について、脳神経科学を踏まえた哲学としての説明がされている。スッと入ってくるところが多かった。
    いつの時代も、人との繋がりの中にしか自分を見出せないだろう。メディアが変わっても、不器用でも粘り強く、勇気を持って向き合っていくしかない。改めて感じた。

  • 東浩紀が師匠の石田英敬の構想をきく形で行われたゲンロン・カフェでの対談講義を書籍にしたもの。最新の知見にもとづいて、「記号論」を構想しなおしており、知的にとても刺激をうける。
    特に、脳とメディアの関係性は、自分の問題意識とあっている。
    一方、橘玲がかなり否定的に書いているフッサールやフロイトを肯定しているので、考えさせられる。

    第1講義 記号論と脳科学
    ・歴史的には、バロック記号論(ロックとライプニッツ)から現代記号論(パースとソシュール)を経て情報記号論に
    ・フォトグラフ(光)、フォノグラフ(音声)、シネマトグラフ(運動)のグラフは「書く」ということであり、記号として通底
    ・ヒトはみな同じ文字を書いている!
    ・自然と見分ける脳の領域を転用して文字を見分けるようになったという「ニューロンリサイクル仮説」

    第2講義 フロイトへの回帰
    ・フロイトの治療の効果は否定されているが、彼のイメージした「心の装置」は「不思議のメモ帳」をアナロジーとしており、有効
    ・さらにフロイトの「心の装置」とソシュールの「言語の装置」を対比させることで、無意識に視覚(物表象)が、意識に聴覚(語表象)が対応することが明らかにされる

    第3講義 書き込みの体制2000

    4つの追伸 ハイパーコントロール社会について

  • 東浩紀「ゲンロン戦記」に感銘を受け、何か一冊でもゲンロンの著作に触れてください、という言葉にあおられ、手にとった一冊。確かに難解。通読はしたが、完全には咀嚼できず。/洞窟の絵画は、クロマニョン人のディスコ/文字というのは、ドラッグである。薬であると同時に毒である。/心の内部から自分で思い出すことと、文字というしるしによって外部から技術的にリマインドされることとはちがう/神経科学や認知科学の研究の最新知見では、すべての人間は、同じ文字を読み書きしているということが有力な仮説となっています。p.69/人間の文字は、動物としての人間が自然界の見分けシステムのなかで使っている識別要素とほぼ同じしるしから構成されていると考えられる。p.74/「無意識はシネマトグラフィーのように構造化されている」/われわれは外部世界からの刺激情報をメディア端末を通して受け取り、意識にとどめて表象を生み出しては、記憶の層へつぎつぎに送り込んでいる/人間の心的装置は、知覚の経験から記憶の形成、言語化、そして思考のような再帰的な意識化へと、そのようなプロセスを延々と繰り返しているのではないか/意識を問うよりも夢を問うほうが、人間の根本的な条件が逆にあぶり出されてくるはずだという予感/といったあたりが、目にとまったところ。

  • 半分読んだが、そろそろ返さねばならぬ。一応「いま読んでる」にしておく。

    なぜ読んだ?:
    メディア論に関する本を読みたいと考えていた時、石田英敬先生の『大人のためのメディア論講義』(ちくま新書)を見つけ、興味を持っていた。石田先生については、『記号論講義』(ちくま学芸文庫)を本屋で見つけて知っていた。
    そんな中、図書館の哲学コーナーでこの本を見つけ、現代社会における新たなメディア論・記号論・一般文字学を、脳神経科学の知見や情報社会分析の知見などを交えて探究していくといったテーマに惹かれ、読むことにした。

    感想:
    人文学と現代の知見との組み合わせは面白いなあと思った。
    特に、人は皆同じ文字を書いているという話は驚きであり、かつ興味深く、かつそれはそうか〜と感じた。

    第2章では、フロイトに関する見方が変わった。教育臨床心理学の授業で、後期フロイトが考えた心理モデルを刷り込まれたので、フロイトには科学者というより思想家というイメージを持っていた。しかし、脳神経科学から出発し、その後あえて脳神経科学から距離をおいて心理モデルの構築をしたのだということを知った。

    脳の活性化反応をみただけ(この行動の時この部位が活性化します)で説明した気になってしまう還元主義的な脳神経科学者を、ファンクションとして一体何が起こっているのかを意味付けなければならないのでは?と批判した、包括的な見方を唱える認知科学者のような感じか。

  • mybest 2019年1位

  • 東浩紀の理解力バケモノか?
    わりとフロイトの話が多い。個々の説明はわかりやすいんだけど話があちこちに行くので、全体としてしっかり把握するには理解力がいるなあと思った。
    補論のGoogle広告の話についてはいままさにそういう仕事をしているから多少疑問に思うところもあったけど、そういう着眼点かあ、って素直に驚いた。ヘーゲルのピラミッドの話もはじめて聞いたけど面白い。
    理解できないところがあったとしても、現代のメディアを読み解くためのヒントがたくさん詰まっているので、読む価値は大いにある。

  • 読書会にて。数年後にもう一度チャレンジしたい本。

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著者プロフィール

1953年生まれ。2019年3月末まで、東京大学大学院総合文化研究科教授および同大学院情報学環教授。
著書に『新記号論』東浩紀と共著(ゲンロン、2019)、『大人のためのメディア論義』(ちくま新書、2016)、編著書に『デジタル・スタディーズ』全3巻(東京大学出版会、2015)他

「2019年 『談 no.115』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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