- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784904515044
作品紹介・あらすじ
発話できない重度の自閉症をもつ著者が文字盤で思いを伝えられるようになるまでの日常や、ありのままの自分を率直に語る。多くの反響があった連載エッセイと、宮本亜門さんとの対談を収録。初版未収録の14編をあわせて計74編の増補版。
感想・レビュー・書評
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心と脳と身体が、うまくつながらない。
行動と心がつながらない。
でもそれは、伝えられないだけなんだ。
ちゃんと、心はあるんだよ。
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東田直樹さんの本は、以前別の本を1冊読んだことがあり、お名前は知っていました。
だから図書館で偶然、この本に目が止まったとき、「読んでみよう」と手にとりました。
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※そのとき借りたのは増補版ではなく、2012年発行の増補前のものです。
※図書館で探しましたが、増補版は蔵書がなく、以下の感想は2012年版についてのものです。
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わたしたちの知っているコミュニケーションは、言語的なものと非言語的なものに大きく分けられます。
言語であわらされない気持ちは、非言語的、つまりしぐさや表情、行動にあらわれているとする考え方です。
しかしこの本を読み、そうしたコミュニケーションの考え方も、ひとつの思いこみであり、それに当てはまらないコミュニケーションが存在することを実感しました。
文部科学省によると自閉症は以下のように定義されています。
「自閉症とは、3歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。 」
引用→https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
この定義を読むと、この文言は自閉症ではない人が、いまの社会を基準にして作った定義であることがよくわかります。
この定義はあくまでも「自閉症」という言葉の定義でしかないのですが、これがあたかも「自閉症を抱えた人すべて」を指す定義として誤解されているのだな、と感じました。
相手を理解するとき、人は「自分」を基準に考えます。
自分にできていることは、相手もある程度おなじという前提で、相手のことを考えるからです。
多くの人にとっては、心と体の一部である脳はつながっているもの、です。
だから表情やしぐさ・行動は、相手の心をあらわすもの、として考えます。
本書を読むまでわたしは、自閉症という言葉は知っていたものの、自閉症を抱える人の困りごとは、正直、「自分の目線」でしか想像することができませんでした。
「風になる」を読んだことで、「心と身体のつながりがうまくいかない人が在る」ことを知り、自閉症を抱える当人が真になにに困っているのか、その片鱗を見ることができました。
つまりそれは「自閉症の人」という見方で相手をみるのではなく、「自閉症を抱えた人」として相手をちゃんと見ることができた瞬間でした。
どんな人にも、心はある。
でも、心と脳や身体のつながりがうまくいかず、身体は心模様をあらわすことがほとんどなく、脳からの指令によって動いてしまう。
それが奇声と呼ばれる形になってあらわれたり、突然走り出したりする行動となっているのかと、本書を読み終えて唐突に理解しました。
どんな人間にも、気持ちがある。
心がある。
もし心がないように感じるのならば、それはその人が心を伝える手段を持っていないからなのだ。
そういう考え方を持てれば、伝えられる方法を模索する方向に進めます。
今の世の中に存在している考え方だけが、すべてではない。
考え方ひとつで、出来事の意味は変えていける。
そんなことを教えてくれた1冊でした。 -
とても美しい文章です。障害がおあるとかないとか、健常者とか自閉症とか、そんなのまったく関係ないく、心に響く美しい言葉がたくさんあります。親子・友達、いろんな人間関係がありますが、どんな場面でもはっとするような事が書いてあり、考えさせられます。
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【いちぶん】
あの時、みんなと笑っていたという事実が人の心を救うのです。つらい時もあったでしょう。苦しい時もあったでしょう。それでも、あなたが笑顔でいられる場所があったのです。子ども時代の記憶は、なぜこんなにも大切なのでしょうか。 -
自閉症の方が書いた本をはじめて読みました。
こんなふうに伝えてもらえるなんて!!
無知で申し訳ないのですが、驚きと、喜びで
いっぱいになりました。
私が接するのは幼い子だし、本書にもあるように
ひとりひとり違いがあると思いますが
少しでも理解したうえで、接することができそうです。 -
【新着図書ピックアップ!】ICU図書館にも既に何冊か、東田直樹さんの本が入っている。自閉症の人は、自分を表現することがまったくできなかったため、その心の中を周りの人が知ることはほとんどできなかったが、東田さんは、自分の心を表現し、本に表すことが出来たので、多くの人が自閉症の人の心を知る機会を得た。この本もその一冊だ。海外でも自閉症の人の心を知ることは難しかったので、東田さんの本は海外でも翻訳され、自閉症の人の理解をする手掛かりとなっている。
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重度の自閉症の著者は、文字盤で表現し、エッセイや詩を書いています。
著者の物事の感じ方、考え方には深みがあり、思いもよらなかったことを考えさせられる、刺激的な本です。「記憶とは何か?」「自分を愛するとは?」など、誰が読んでも印象的な文章がきっとあります。読んだ後に気持ちがふっと楽になる本です。 (篠田 教員)
わたしたちは非言語コミュニティーには意味がある、つまりそこには何かしらの心があると考えて行動を見てしまいますが、そうではなくて...
わたしたちは非言語コミュニティーには意味がある、つまりそこには何かしらの心があると考えて行動を見てしまいますが、そうではなくて心の動きとはまったく関係なく身体が動いてしまうことがある、とこの本で知りました。
だから東田さんの場合、奇声に何か意味がある、と考えること自体がすこしズレてしまうのだと思います(意味のある奇声の方もおられるかもしれませんが汗)。
あくまで東田さんの場合だけかもしれませんが、それでも身体の動きが心とまったく連動していない、でも心はちゃんとある、という訴えがわかりやすく書かれている本だなと思いました(o^^o)
とても読みやすい本なので、機会がありましたらお出にとってみてください(^_^)
心、意思とは関係なく、ということです(o^^o)
そう考えると、身体は動かせず、声はでない状態となっても、心はあるということで...
心、意思とは関係なく、ということです(o^^o)
そう考えると、身体は動かせず、声はでない状態となっても、心はあるということでもありますよね。
心の会話をされたご経験がおありなのですね。東田さんの本はそれと逆の出来事(身体は動くけれども、身体の動きは心をあらわしているとは言い難い)について、エピソードがでてきましすが、読むと逆に心だけで通いあえることもある、とより実感できるかもしれません。
コメントたくさんありがとうございました。嬉しかったです。
わたしも基本的には自分の本棚に本をおさめて感想を書...
わたしも基本的には自分の本棚に本をおさめて感想を書くのに使っていますので、他の方の本棚をマメにのぞくタイプではないのです(^^;)コメントやいいねももらいっぱなしです汗。
でもいろんな方がいるので、わたしみたいな人かいてもいいし、やきにくさんのような使い方もありだし、いろんな使い方があっていいと思っています(o^^o)
誰とも比べなくていいと思っています。自分のペースでブクログ、おもしろがりつつ使っていきましょう~