おやときどきこども

著者 :
  • ナナロク社
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本棚登録 : 491
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904292945

作品紹介・あらすじ

「正しさ」を手放したところから始まる、
新しい人間関係のあり方をリアルな事例とこれまでにない考察でつづる本。

福岡市のど真ん中で小中高生たち150余名の子どもたちと日々奮闘する著者が、
まさにいまの親子が抱えるリアルな問題を、子どもたち自身の生き生きとした語りを通して描き出します。

感想・レビュー・書評

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  • 意識はしていなくても、見栄をはってる親の気持ち。あぁ自分だー。こどもの心の声に寄り添う著者の温かさ。

  • 193 うまくやれるかどうかわからない不安定な時期は、その不安定さごと受け入れることが大切なのに、なかなか私たちはそれができないものです。改善したいけれどできないことに煩悶し、自分の首をさらに絞めてしまいがちです。でも、航くんとお父さんはいまの不安定な状態を受け入れることがなんとかできていると感じました。私もこの親子について、あまり心配し過ぎないようにしなければ、と思いました。

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    感想
    『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』著者の花田菜々子さんに、教員をやってますとお伝えして、おすすめしていただいた本。

    子どもと関係を築いていくことに関してめちゃくちゃ解像度が上がったし、生きていくのが楽になる考え方が随所にあって読んでよかったなあとしみじみ。
    あと鳥羽さんの古典から最近の小説、JPOPまで、知識の幅と深さに感服。自分もそうありたい。

    本の中でくりかえしあるメッセージは以下のふたつ。
    ◼︎親は子どもをわからない、という前提で接する。それがわかることへの第一歩。
    ◼︎矛盾をそのまま受け入れる。難しいことだけど、曖昧さを愛することが大事。

    ひとつめは親子関係に限らず、すべての人間関係において大事な考え方だと思った。実践することはすごく難しいけど、頭に置いておきたい。

    ふたつめもめっちゃむずい。どうしても自分の中の矛盾とか曖昧さとか、問題が解決していない状態はスッキリさせたいと思ってしまう。
    でも鳥羽さんいわく、そんな状態を受け入れていこう、と。
    確かに自分や親子の不安定な状態をそれでよしと受け止められたらすごく楽になると思う。同時にそれを受け入れる強さも必要になると思う。
    自分のできる範囲で少しづつ実践していきたいなあと。

    教育に関わる人にはもちろんおすすめだし、子どもをもつすべての親御さんはぜひ読んで欲しいと思いました。肩の力が抜けて、楽に子どもと向き合えるはずです。
    自分も親になったら、この本を何度も読み返して、矛盾や曖昧さを受け入れながら子どもと向き合っていきたいです。

  • またひとつ素晴らしい本を知ることができて本当によかった。。。
    自分は中学生くらいのとき、人間関係とか家のことで結構悩んでいたというかもやもやしていた時期があって(別に病んでたとかではない)、いまも割とあの時どうすればよかったのかなとかあの時の先生の対応は最悪だったなとか色々思い返すんだけど、そういうもやもやを解消できればいいなと思って読んでみた
    本の中では大人と子どもの関わり方みたいなのが主に書かれてるんだけど、親子関係のなかにみる人生の哲学みたいなものも結構書かれててそこがすごくよかった

    教育って子どもに対して良い人間になってもらうために行うものだと思うんだけど、そのためには何が「良く」て何が「悪い」のかを定義する必要があって、本当はそういう良いとか悪いってそもそも存在しなくて、あらゆるものはただ今そうなっている「現象」だけがある っていう捉え方がすごくしっくり来て、自分も常にそういう捉え方をしたいなぁと思ったりした

    ここからは本書関係ないけど、最近教育と洗脳の違いって何だろうって考えることがあって、多分どちらも本質的な違いはないんだけど、教育っていうのはその組織や集団の中で「良い」とされていることを教えるのが教育と呼ばれていて、正しくない考えを「良いこと」として教えることが洗脳と呼ばれているんだなと自分は思ったのよ
    でもこれって結局どちらも「良い」か「悪い」かを判断する人が必要なので、結局すべての教育は洗脳なのかなぁと思った
    で、何を言いたかったのかというと、世の中のほとんどのことに良いこととか悪いことってのは存在しないから、何が自分にとって良くて何が悪いのかは自分で判断していくしかないんだよってこと
    最近このことを自分のなかで「自分だけの宗教を持つ」と呼ぶことにしている
    自分のなかだけで「これは良い」「これはだめ」っていうのを「教義」として蓄積していって、自分はそれを信じて従うだけでオッケーなんだってことに最近気づきつつある
    そして、他の人の中にある「宗教」を批判したりせずにちゃんと尊重しようねってこと
    私たちは一人ひとりが独立した宗教だという考え方ですね

    このことに気づかずに、国とか社会みたいな大いなる存在が設定した価値観の中で生きていくと、生産性とか合理性みたいなものさしでしか考えられなくなって、そこから外れる人たちのことを排除するような思想が生まれてしまうのかなと思った
    生産性とか合理性という客観的で定量的なものですら、数あるものさしの中の一つでしかないんだよっていうのは忘れないようにしたいですね

    多様な価値観の中で生きていくのって幸せなようでいて信じるものが決められなくてかなり辛いから私は本書のような素晴らしい本を通して自分の拠り所となる考え方を一つでも多く身につけたいと思っているのです

  • 親子の手帖を読み、子どもたちを思う懐の深さと文章の温潤さに感銘を受け、こちらも読みました。
    親子の手帖よりもさらに解像度が上がっていて、まさに現在の親子や人間関係の「関係性」について具体的に言及されていました。
    「悪い子」というのは最初からは存在しない、周囲の関係性や環境から悪い行いをしてしまったと考えた方がいいというのはまさにその通りで、自分が悪い、他人が悪いと内在化するのではなく、何かしらのトラブルが起こっていると外在化すると問題を冷静に見つめられる。罪を憎んで人を憎まず、とはこういう事だと改めて納得できました。

    これだけ世界情勢や親子関係が変化していく中で正解を求めるのは難しい。ならば不完全な自分を認め、成長していく子どもの「今」を見守り共に学んでいければ、お互いを尊重できる良い関係性になれるのではないかと思いました。

    親子の手帖と共に折に触れて読みたい1冊です。

  • 一気読み。思春期の子を持つ親としては、耳が痛いところがたくさん。脅してみたり、上から目線で説教したり、自分の価値観を押し付けてることは分かっているし、それが自分の安心のためであることもうっすらと感じているんだけど、止められないんだよなあ。
    今を生きてる子ども達と、その時期を通り過ぎた私たちは、同じものを見ていない可能性があるっていうくだりは、なるほどーと思った。そして、それは嘆くことではなくて、だから「あなたにはどのように見えているの?」という態度が必要で。
    著者の子供たちに対するフラットな態度は、本当にすごいなあと思う。

  • なんで無料塾のボラは続くのか自分でも不思議だったが、これ読んでちょっと言語化できた。思春期は関係性を鮮明に見せる体。ちょっとホッとして、かなりへこんだ。

  • 子ども関連の悩みが生じたとき、この類の本を読んでみたことはあるけれど、そりゃそうできたら苦労しませんよ、と言いたくなる理想論が多く、役に立った試し無し。

    でもこの本、違いました。よくある"カリスマ塾経営者の自慢話"などではありません。
    ここに書かれているのは、今子どもたちを取り巻く教育現場と社会の真実と、子どもたちの生の声。
    リアルに戸惑う、そして間違う親の姿。著者の哲学的見解により物語になっていて、まるで群像劇のよう。
    帯に書かれていた「もう一度、大人が子どもと出会い直すための本」うん、そんな感じ。
    思春期大売り出し中の次男との関係に風穴が開けられそうな予感。

    <コミュ障と恋と物語>という章を読んで18歳の息子が呟いた、
    「こういうことわかってくれる大人がいるんだ…」っていう言葉がズシンときた深夜1時でした。

  • 「親は子どもに祝福と呪いを同時に与え得る存在」というフレーズに胸を撃ち抜かれた。

    子どもにあれこれ小言を言ってしまうのは、親ならば多かれ少なかれ経験があると思うが、それは親自身の不安によるもので、いくら子どもに言って聞かせてもたいした効果はない。

    それよりも子どもとの根本的な関わり方として、不安で苦しくても不安定さごと受け入れること、矛盾を排除せず曖昧で落ち着かない状態を味わうこと、子どものことが「わからない」ことを前提に手探りで声を求めること。
    これらが大切だと筆者はいう。

    いずれも忍耐が問われ、ときには親の「ずるさ」が浮き彫りになる。子育ては本当に自分を見つめ直す修行だ。

    それでも、教育現場でさまざまな親子関係の修羅場を見てきたと思われる筆者の、絶えることのないあたたかい眼差しに、その「ずるさ」を静観しながら家族の形を作っていけば良いのだと、肯定された気持ちになる。

    もっと早く読みたかったと思う反面、子どもが思春期に突入する前に出会えて良かった一冊。文中で引用されている文章にも興味深いものが多数。

  • 親も昔は子供だったのに、親になると子供のことを忘れてしまうのは何でだろう。
    親の視点と子供の視点と、客観的な視点で書かれているのでとても読みやすいです。思春期を迎える前にバイブルとして一冊手元に置きたい。

  • 「子どもを見る」
    「子どもに向き合う」
    「子どもに寄り添う」

    ことばの深い意味で、真正の意味でこれができる著者が綴った渾身の教育エッセイ

    「うちの子はがんばっているのに、成績が伸びない」
    「次のテストが悪かったら部活やめさせるわよ」
    「そんなにやる気がないんだったら大学受けなくていいわよ」
    「自分でがんばるって言ったんでしょ!」
    「なんで勉強しないの?」

    中学生を持つ親なら一度や二度は言ったことがあることばたち

    重いテーマの背景を掘り起こし、どうとらえたらよいか、どうしたらよいか、対症療法でなく解決のための考える視点を与えてくれる

    こういうおとなが身近にいるこどもはしあわせに違いない

    《もう一度、大人が子どもと出会い直すための本。》──帯のコピー

    こどもとかかわるすべてのおとな、必読

    《繊細で文学的で、ときにあえて論理だけに頼らない形で丁寧に綴られた文章を読んでいくうちに、「子どもを見る」ことの意味がわかってくる。》──「子どもを見る意味とは」おおたとしまさ(神奈川新聞書評)

    著者は20年ほど前、大学院在学中に中学生40名を集めて学習塾を開業、現在は株式会社寺子屋ネット福岡代表取締役、唐人町寺子屋館長、単位制高校「航空高校唐人町」校長として150名余の小中高生の学習指導に携わる

    また、書店「とらきつね」店主として各種イベントの企画運営、独自商品の開発を行っている

    前著『親子の手帖』(鳥影社)とあわせて味読したい

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著者プロフィール

鳥羽和久(とば・かずひさ)
1976年、福岡県生まれ。専門は日本文学、精神分析。福岡市の大濠公園近くで学習塾(単位制高校と書店を併設)を運営。著書に『親子の手帖 増補版』(鳥影社)、『おやときどきこども』(ナナロク社)、『君は君の人生の主役になれ』(ちくまプリマー新書)など。教育や現代カルチャーに関する講演も多数。連載に大和書房、筑摩書房、西日本新聞など。朝日新聞EduA相談員。

「2023年 『「推し」の文化論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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