点滴ポール 生き抜くという旗印

著者 :
  • ナナロク社
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本棚登録 : 272
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904292433

作品紹介・あらすじ

著者の岩崎航は、仙台市在住の37歳です。
3歳で進行性の筋ジストロフィーを発症。
現在は常に人工呼吸器を使い、
胃ろうから経管栄養で食事し、
生活のすべてに介助が必要な体で
ベッド上で過ごしています。
しかし、自殺願望に覆われた10代、
身体の苦しみに苛まされた20代を越え、
30代の今、力強くまたユーモアを交えた詩を
生み出し続けています。

管をつけると/
寝たきりになると/
生きているのがすまないような/
世の中こそが/
重い病に罹っている
(「貧しい発想」より)

ただの闘病記にはない、
すべての生きる人に勇気を与える
新時代詩人のデビュー作です。

感想・レビュー・書評

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  •  今週の月曜、日帰りで仙台へ取材に行った。
     詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』(ナナロク社/1470円)で話題の岩崎航(わたる)さんへのインタビュー。

     岩崎さんは37歳。進行性筋ジストロフィーと闘うベッドの上から、「五行歌」を紡ぎ出す詩人である。

     3歳で発症。20代で人工呼吸器を導入し、いまでは「胃瘻」(腹部を切開して胃に通した管から栄養補給をする)によって生命を保っている。寝たきりの生活のなか、25歳から詩作をつづけてきた。
     
     かつて、茨木のり子は次のように書いた。

    《詩は感情の領分に属していて、感情の奥底から発したものでなければ他人の心に達することはできません。どんなに上手にソツなく作られていても「死んでいる詩」というのがあって、無惨な屍をさらすのは、感情の耕しかたが足らず、生きた花を咲かせられなかったためでしょう。(『詩のこころを読む』)》

     岩崎さんの詩は、そのような小手先だけで書いた「死んでいる詩」の対極にある。感情の奥底まで見つめて書かれた、生きることに直結した詩、「生の証」として刻みつけられた詩なのである。
     谷川俊太郎や糸井重里ら、当代一流の言葉のプロたちが絶賛したのも、詩にみなぎる「生き抜く」という意志の力に圧倒されたがゆえだろう。

     たとえば、次のような詩――。

    《点滴ポールに
    経管食
    生き抜くと
    いう
    旗印》

    《自分の力で
    見いだした
    ことのみが
    本当の暗闇の
    灯火(ともしび)となる》

    《泥の中から
    蓮は 花咲く
    そして
    宿業の中から
    僕は 花咲く》

     言葉が本来もっている力と美しさというものを、まざまざと見せつける詩集である。

  • 本当に
    そう思わなければ
    祈りでは
    なく
    呟きなんだ
    確かにその形は
    違う、けれども
    気づいた
    いつの間にか
    届いた 祈り
    思いのほんの
    竹膜ほどの差で
    変わってゆく
    ひとの 生き様
    ひとの 死に様
    楽観主義とは
    現実の忌避
    ではない
    意思と勇気の
    芯の強さだ
    勝負事を
    避けるように
    生きても
    最後は自分との
    勝負事
    理屈じゃない。五行に込められた魂
    読んでほしい。
    紹介してるのは、ほんの一部。
    岩崎航さんは、Twitterもやってる。
    「生きる」こと、伝えたいから。

  • 本当に様々な人に読んで欲しい1冊。進行性筋ジストロフィーという病気の中で生きてゆくための五行詩。東日本大震災の話も凄いです。家族が居てくれる有り難さを感じます。

  • 五行で紡ぎ出されるほとばしる「生」に引き込まれ、ゆっくりとページをめくりながら自分の「いま」も五行で現したくなる欲求にかられる。
    挟まれる写真の光が美しく、著者のまつ毛の可愛らしさ、その瞳のエネルギーに、思わず見つめあってしまう。

    明日が
    苦しい夜
    ひらく
    五行詩から
    見つめる眼

  • 岩崎航 「 点滴ポール 生き抜くという旗印 」 絶望の中の希望を感じる詩やエッセイ。

    叱咤激励するというよりむしろ、自分の非力を受け入れて、自身が 人生(運命)からの問いに 応えている感じ

    点滴ポールと旗という言葉選びがうまい
    *旗=生き抜く自己存在の強さ
    *その旗を点滴ポールに 揚げて ドンと構えている 著者をイメージした→船頭に立つ海賊な感じ

    「生きる」という言葉が、「死なない」という意味に使われている。生きることの自発性というより、死なないことの自発性を感じる



  • 著者の岩崎航は、3歳で進行性の筋ジストロフィーを発症。
    徐々に症状は進行し、現在は人口呼吸器を使い、
    胃ろうから経管栄養で食事し、生活の全てに介助が必要な状態である。

    そんな状況にあって、25歳で自分にできることがしたいと短歌俳句を作り始める。
    その後、五行詩という詩型に出会って創作を続け、
    この本にはその彼の五行詩とエッセイが収められている。

    ままならない自分の体に絶望し、自殺まで考えた彼が、
    自分自身と闘い、自分の人生を肯定するところから生まれてくる詩は、
    どれも人生をまっすぐ見つめており、力強い。


     どんな
     微細な光をも
     捉える
     眼(まなこ)を養うための
     くらやみ



     羨んでいた 
     焦がれていた
     爛(ただ)れた心の
     感傷の赤
     今はもう 茜色



     乾かない
     心であること
     涙もまた
     こころの
     大地の潤いとなる


     
    彼にしか生み出せない詩に、病とではなく、
    誰よりも自分自身と向き合い、対話し、闘ってきた彼の人生が伝わってくる。
    本来、誰しも自分自身と向き合うことが一番辛いことだ。
    彼の姿勢から学ぶものは多い。
    そして何よりも勇気をもらえるのである。

  • 生きていく力を周りに差し出してくれるような,力に溢れた短歌.

  • いっとき、自殺すら考えたことがあるといいます。そして、20代のうちの4年間には吐き気に苦しんだ時期もあったそうです。そうやって地獄を見てきたからこそ、生の輝きを痛いほどわかっている方なのかもしれない。なにかきっと、根源的な人間の生の力ってものがあって、それを意識の上で掴んでいるのが岩崎さんだという気がする。この本に出会えたのはよかったなぁと思いました。「病身の人の詩だから」なんていうのに代表される偏見は吹き飛んでしまえばいいです。

  • 読むのはこれが二度目。命の芯に銅鑼のようにビリビリきた。

  • 2015/12/17読了

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著者プロフィール

1976年仙台市生まれ。詩人。3歳で進行性筋ジストロフィーを発症。
25歳から詩を書き始める。2013年刊行の第1詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』
(写真・齋藤陽道/小社)がロングセラーに。以降、活躍の場を広げる。

「2021年 『震えたのは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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