さようなら十七才 海と心の詩(うた)

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  • リーダーズノート
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903722443

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  • 並々ならぬ詩作についての考え方。あまりに大人びているので、本当に17歳の少女なのだろうかと驚いてしまった。
    それは、ただ大人びてるだけではない。詩にかぎらず、何かの創作を志している者なら誰でも、彼女から啓発を受けたかのような印象を持つだろう。

    しかし、この少女の、あまりに閉ざされた、重すぎる叫び、完成された美しい詩から流れる苦しみ血に、生前、誰が気づいたのだろう。
    家族は、友人は、学校の教師たちは、彼女がまだ生きていた間、その詩をどう読んだのだろう。その辛さを我が身のように感じることが出来る人が一人でもいたのなら、彼女は生き続け、もっと素晴らしい詩をたくさん書いただろうに。


    彼女の置かれた環境についても気になることがある。

    『ああ、世界の平和がほしい。すべての孤児が、すべての希望を失った人がすべての社会の犠牲者が、あらゆる幸福を味わうことができたなら、それはどんなにすばらしい瞬間だろう。たとえ一人の子供であろうと、その子が幸福になれるのだったらいくつでも私の生命を投げ出したいーまず家族だ。私はあまりに家族に対し冷淡でありすぎる。パパ、ママ、お兄ちゃん、悦ちゃん、みんなしあわせにならなければいけない。少しでも私の力が、家族の幸福に役立つことを願いたい。そういう心持ちに、心底からならなければ、…まず家族につくそう。』189p

    十七歳の少女が家族の幸せを願うにしては、重すぎないか。
    家庭内で過度に役割を負わされていたのか、学校を卒業すれば結婚するしかない封建的な社会だったためか、この時点で彼女が精神的に潰れているのを感じる。

    友達との関係解消についても、ボナールの”友情論”の影響というより、彼女自身が自分を攻めすぎている。

    そうして家族にも友達にも心のつながりを感じられなくなるほど押しひしがれ、唯一の望みは一人の先生である。

    彼女はその先生に恋愛感情はないと言っているが、恋愛感情ではないにしても感情的に依存せざるを得ないほど孤独であったにちがいない。

    詩作にしても、その先生の庇護を求めようとしたことが、隠れた動機だったのではなかろうか。
    だとしたら、彫刻家ロダンに愛されようとして壊れていったカミーユ・クローデルに似ている。


    思春期の身体の変化も影響したに違いない。

    『私の内部のガラスはすでに割れた。その破片は赤い血にまみれながらも胎内で笑い声を上げる。赤い哄笑だ。』187

    これは生理のことだろうか、まさか密かに望まない妊娠をしてしまったということはなかったのか。壊れた感情の比喩だとしても、衝撃的すぎて心配してしまう。
    成長にともなう体の変化やそれによる心の揺れを受け止めるだけの余裕がなかったか、詩人としての感性が過敏に反応したか、ではないだろうか。


    彼女は詩人として、あまりにも早く昇華し、そのため鈍感な周囲の中には身の置所を得られなくなってしまったのだろう。
    あるいは、あまりにも孤独を強く感じすぎた故に、詩作する自分を自分の中に創りだしてしまったのだろう。

    十七歳の少女という外見とは裏腹に、短い人生の中で詩人としての欲求を強くたぎらせた。

    海に流され、それぞれの読者の元に打ち上げられた高岡和子の詩は、今も輝きながら波に揺れている。

  • 自分が17歳だった頃、近い感覚があったな、と感じた詩の数々。こんなに言語化できるほどの感性は持ち合わせておらず、悶々とした日々もあったにせよ、ある程度の鈍感力を身につけつつあったから生き延びているのかな、と思う。

    二十歳の原点をどことなく思い浮かべたが、社会に対する気持ちより、本作のような自分を内省した様子がより出ている方に共感できた。

  • 彼女の感性をすごいと思いながら、盲目で閉鎖的な雰囲気になかなかページをめくる手が進まなかった。
    当時の彼女と年齢の近いわたしには、書かれてる苦悩や悩みが身近なものでできたら離れた場所にいたい

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