正義と微笑 (SDP Bunko)

著者 :
  • SDP
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本棚登録 : 184
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903620435

作品紹介・あらすじ

将来に大いなる夢や希望を抱いていた16歳の進。しかし受験を控え、進学するか就職するかに悩むようになる。進の選択した道は…。少年の揺れ動く心は時代に関係ないものだろう。太宰の年少期の友人の日記をもとにした作品で、同様に日記形式で表現された明るく爽やかな作品である。

感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしい。陰鬱な感じは影を潜め、本音を吐露し苦悩しながらも進もうとする姿は清々しく爽やか。これも太宰を好きだと思う一面。

  • 新潮文庫『パンドラの匣』に収録。

  • 太宰初体験。
    冗談かと思うほど、面白い。
    登場人物みな、覚悟がある感じ。諦めがいいわ。
    ねちっこくないし、行動力のあるなあ。
    病弱ぽいのに、靭性があるし、体力がある?
    ブログ感覚だね、日記!初めて気づいた!

    毎日毎日が、奇蹟である。いや、生活の、全部が奇蹟だ。
    なんて行きつく下り、さっきまでゲラゲラ笑いながら読んでた群ようこさんのエッセイばりに、面白かった。短文で、テンポ良いから、読みやすいしね。

    太宰治も"ひょうきん"なんて使うんだ・・

    それと、昔はテレビやゲームなんかなかったから、お芝居や演芸が盛んだったんだ・・当たり前のこと、なんできがつかなかったのか 自分にとほほです。
    1942年、昭和17年。戦前の作品。
    出会えてよかった。

  • 太宰作品のなかで一番好きかもしれない。自分は皆とは違うんだと信じて止まない十代青年のその淀みの美しさよ。読み終えてからの数日は心がサラっとして妙に小気味良かったなぁ。
    大学一年

  • とても面白かった。(通勤電車で笑いを堪えるのが辛かった)
    1942年の作品とは思えない。
    16歳の僕が苦悩しながらも目標に向かっていく様を日記に記している。僕を取り巻く人々がとても魅力的であり、勉強熱心である僕はそれらを心の糧とし成長する。

    本を読んだきっかけは娘が処分した本のストックから。
    10年程前になるが中学の副教材だったそうだ。この本を読むのに良い年齢だと感じた、マーカーのあるところではどんな授業を受けたのだろうかと想像するだけ、当時もっと子どもと話す時間を持っていたらと残念に思う。

  •  1942年に書かれた本なのに、なぜか新しく感じる!!めっちゃ面白い!!なにこれ!!

     人間は十六歳と二十歳までの間にその人格が作られる説がある、ということでつけ始めた日記。学校や教師に対する罵言、友人に対する侮弄、自己嫌悪の慨嘆、切々たる未来への憧憬が、激しい口調で、それでいてユーモラスに描かれる。
     自分は特別な人間だと思い、でも矮小で周囲の人間に頼りきりの自分を慨嘆し、そして物事を投げ出してしまうという流れはあるあるすぎて。「口ばっかりでこいつ全然あかんやんけ!」と笑ってしまうのだけど、青臭く、未熟さも全てさらけ出す主人公が、とてもかわいいの。人間らしくてどうも憎めない。かく思いきや、人に顕すことなく成し遂げた努力。いやー。かっこいい。
     希望に満ちた最後。爽やかな読後感。太宰もっと書いてほしかったなあ。

  • これめっちゃ面白いじゃん!
    なんでいままで読まなかったんだろうって残念に思うほど面白い。
    かなり冒頭の、主人公の学校の先生のお言葉が相当心にぐっときて、これ未成年の頃に読んでたら違う人生だったかもなぁ、なんて思ったけども、いや、きちんと理解できなかっただろうな!と思い直しました。
    尊大な自信→アカンわ自分→サボることしかできない… の流れ、あるあるすぎて笑った。
    昔から人間なんてそんなもんですね。
    人は吹っ切れて自分の能力に正直になってから強い。

  • 勉強して勉強して、馬鹿になった。自分の意見を持たない、正解ばかり探す、つまらない感性を身に付けた。人間は、十六歳と二十歳までの間にその人格がつくられると、ルソオだか誰だか言っていたそうだが、そうでないことを願う。

    最後が腑に落ちなかった。

  • すごいすごいすごい!!!これだーーーーーて思った。
    数年前の意味がわかったし、あの経験があって本当に本当に良かった。


    〈以下引用〉
    「もう君たちとは逢えねえかも知れないけど、お互いに、これから、うんと勉強しよう。勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ! これだけだ、俺の言いたいのは。君たちとは、もうこの教室で一緒に勉強は出来ないね。けれども、君たちの名前は一生わすれないで覚えているぞ。君たちも、たまには俺の事を思い出してくれよ。あっけないお別れだけど、男と男だ。あっさり行こう。最後に、君たちの御健康を祈ります。」すこし青い顔をして、ちっとも笑わず、先生のほうから僕たちにお辞儀をした。 僕は先生に飛びついて泣きたかった。

  • 【夢ゼミ'11年2月おススメ本】太宰治ときくと、暗い印象をもっていましたが、この作品は珍しく明るく希望に満ちた作品です。主人公の芹川進(せりかわすすむ)は日本一の俳優になること夢見ています。学校を退館する黒田先生の言葉を,ぜひ塾を卒業する皆さんに読んでほしいのです。
    卒業しても、お互いうんと勉強しよう!「何になりたいか」ではなく、「何を成し遂げたいか」を夢に持ってこれからもがんばって下さい!

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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