ウクライナから愛をこめて

  • 群像社
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  • Amazon.co.jp ・本 (117ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903619446

作品紹介・あらすじ

ウクライナの首都キエフに生まれ、チェルノブィリ原発事故の記憶が深く心に刻まれた子供時代をすごし、日本の大学で学んだ女性がいま、忘れられない人々の思い出と故郷の魅力を日本語でつづったエッセイ。ひまわりの国と桜の国を結ぶ言葉の架け橋。

感想・レビュー・書評

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  • ロシアがウクライナに侵攻し、罪もない多くの人々が今も犠牲となっています。

    そんな時代に生きる者として、地区センターで本書を目にすればお借りすることはもはや必然のように感じました。

    ウクライナから愛をこめては、ウクライナ出身のオリガ・ホメンコさんが日本語で書いたエッセイ集です。
    彼女はチェルノブィリ原発事故の影響を受けた子供時代を過ごし、日本の大学で学びました。
    本書では、彼女の故郷や家族、友人、恋人などの思い出や感情を綴っています。
    ウクライナの歴史や文化、風景なども紹介されており、ひまわりの国と桜の国を結ぶ言葉の架け橋となっています。
    「ウクライナは滅びず」ウクライナの国歌に込められた独立への思いや、ソ連時代の生活やおしゃれについて、「チェルノブィリ」では、原発事故の影響で避難した経験や、白血病で亡くなった友人のこと、「キエフ」では、首都キエフの魅力や、そこで出会った人々との交流について紹介します。
    また「日本」については、日本での留学生活や、日本文化に触れた感想などを述べます。
    「ウクライナから愛をこめて」では、ウクライナと日本との関係や、故郷への愛情を表現しています。

    これまでの人生で、ウクライナという国について知ることはありませんでした。

    TVやInternet、歴史や社会の教科書では知ることが出来ない等身大のウクライナを少し知ることが出来ました。

    改めて一日も早い戦争の集結と平和を祈りたい。



    本の概要

    内容(「BOOK」データベースより)

    ウクライナの首都キエフに生まれ、チェルノブィリ原発事故の記憶が深く心に刻まれた子供時代をすごし、日本の大学で学んだ女性がいま、忘れられない人々の思い出と故郷の魅力を日本語でつづったエッセイ。ひまわりの国と桜の国を結ぶ言葉の架け橋。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    ホメンコ,オリガ
    キエフ生まれ。キエフ国立大学文学部卒業、東京大学大学院地域文化研究科で博士号取得。現在はキエフの大学で日本史を教えながら、作家、フリージャーナリスト、通訳として活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • ウクライナ女性による柔らかな日本語で綴られた好エッセイ集。著者の身近な方々の親しみを覚える話を通じて、ウクライナ史の紹介本にもなっている。

    どの話の描写も「微笑みがきれいで、美しい声の女性だった」「おばさんの家はドライフルーツの香りがしていた」と豊かな表現なので、魅力に富んだお話内容に更に引き込まれることになる。そして、ウクライナ史では避けることのできない話題、バビヤールもチェルノブイリも飢饉も死の試合ディナモも、これらの方々の話を通じて登場する。

    興味深い話も多々あり、例えばブルガリア、ラトビアは共産主義社会崩壊時、過去に政府によって接収された資産や土地が元の持ち主に返還されたが、ウクライナはそうはならなかったという悲惨な話を初めて聞いた。

    ソ連の支配が続き、断絶してしまったウクライナ文化とその復興の話題も多い。共産党政権によるロシア語の強要で、ウクライナ語は70年間使われにくい状況が続いたそうだ。その間でウクライナの子守歌の伝承が途絶えてしまったと言う、それを復活させる為に尽力した方の話があった。

    また、東方正教会で用いられるイコンには家庭イコンというものがあるらしい。これは各家庭に飾るお守りのようなもので、生真面目な教会のイコンに比べて、親しみやすく肉感的なものも多いという。宗教が禁じられ、家庭イコンは長らく公に飾ることができなかった。その家庭イコンがすたれつつあった中で、長い期間をかけてコツコツ集めて博物館を造った方がいる。集めたイコンは粉ひき小屋を改造した博物館に展示しているらしい。こちらなどは是非訪れたくもなる。

    圧巻は、キエフの歴史散歩の章があり、有名なマロニエ並木の由来が面白く描かれている。そして、ポプラの綿毛が美しく舞う6月の描写などが描かれる。この本を携えて並木道を歩き、国立中央銀行の建物を味わったり、質感がチョコのようだと言うチョコレートの家を訪ねてみたい。

    ウクライナへの想いが、いっそう強くなった名著である。

    <ウクライナ関係書籍紹介>
    https://jtaniguchi.com/books-recommended-ukraine/
    <その他の書籍紹介>
    https://jtaniguchi.com/tag/%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e7%b4%b9%e4%bb%8b/

  • ウクライナのことを知りたいと思い、読みやすそうなエッセイを手に取った。
    著者はウクライナのキエフ生まれ。東大の大学院に留学したこともあり、驚いたことに、本書は日本語で書かれたエッセイだ。

    キエフの名所旧跡巡りでは、十九世紀の帝政ロシア時代の建築物が紹介されている。古くはキエフ大公国時代にまで遡る、長い歴史をもつ寺院もあるそうだ。
    そんな伝統のある場所に、今、ロシアが爆弾を落としているなんて...全く信じがたい。

    一九一七年のロシア革命、ユダヤ人排斥運動、世界大戦、ソ連邦の崩壊を経て、一九九一年に独立したウクライナ。
    断片的な情報をかき集めただけでも、時代ごとに「ウクライナ」というひとつの国の定義が異なる。ウクライナ在住なのに自分はロシア人だと思っている人がいたり、ロシア語は都会語でウクライナ語は田舎語だと思っている人もいる。

    戦争は、愛し合っている若者たちを引き離す。ウクライナには、両想いなのに結婚することが叶わない人々が多くいた。先の戦争で、多くの人が心に傷を負った。

    すぐに癒えるはずのないその傷は、今、再びえぐり返された。傷口はさらに広がり、もはや完治は不可能に近い。

    だからウクライナ文学を読もう。ウクライナのために。愛し合うウクライナ在住民たちのために。わたしができることは、文学の力を信じ、こうして発信することだ。

    p45
    五月初旬にマロニエと花が咲くと、キエフは甘くロマンチックな香りに包まれます。マロニエと花が咲く季節がキエフの観光シーズンになっています。そして二か月遅れで六月にポプラの綿毛が教会の金色に輝く丸屋根の上の青空に向かって遠く飛んできます。その光景は切ないほど美しい。

    p82
    ウクライナの国歌は十九世紀半ばに作られた。「ウクライは滅びず」という歌の題はおかしく聞こえるかもしれないが、ウクライナが、ポーランドやロシア、ソ連邦から長い間独立できなかった歴史を示している。一九九一年に独立を果たしたウクライナがこの歌を国歌にしたことは国民の悲願と言えよう。家の前で「ウクライナは滅びず」と歌っている子どもたちに、サッカーだけでなく、何であろうが「まだまだ滅びないよ」と私も感動しながら応えた。

  • 知人のおうちにあったので、読みました。ちょうどキエフに滞在しているということもあって、キエフにある歴史的な場所の紹介のところで「あ!ここそういうところだったのか!」という瞬間が多々あった。革命、ソ連、チェルノブイリ事故と時代や国に振り回され続けたウクライナ国民、ひとりひとりの個人的な歴史を感じることができる一冊。ウクライナを国としてではなく、ウクライナの人として知ることができる。筆者は日本人とウクライナ人の国民性に共通のところがあると述べていたが、本書を読み終えて確かにそういうところもあるかもしれないと思った

  • キエフ出身で日本に留学し、母国で日本史を教える著者の珠玉のエッセイ集。旧ソ連ではロシア語が出世のために重要だったが、著者は学校時代にウクライナ語を勉めて話していたらしい。キエフの美しい街並み、シェフチェンコという名前(サッカー選手でなく!、19世紀に帝政ロシアからの母国の独立を語った国民的英雄)、「ウクライナは滅びず」という19世紀後半に作られた国歌を2002、06年のワールドカップに際して子供たちが大声で歌っていたとは感動的な場面の紹介。88歳の「マリーナおばさんの恋」は長い間、共産主義国の一部としてロシアに支配されてきた苦難の歴史を思い起こす。著者が子供時代に経験したチェルノブイリの辛い記憶は遠いどこかの話が、福島と同じく現実として痛感させられる。

  • 2021年1月期の展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00511728

  • 人間って他人のコトは忘れる。だから当事者には、絶えず語って貰わなきゃ。。。

    群像社のPR
    「ウクライナの首都キエフに生まれ、チェルノブイリ原発事故の記憶が深く心に刻まれた子供時代をすごし、日本の大学で学んだ女性がいま、忘れられない人々の思い出と故郷の街の魅力を日本語でつづったエッセイ。
    ひまわりの国と桜の国を結ぶ言葉の架け橋。」

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ウクライナから愛をこめて」書評 チェルノブイリの地の現在|好書好日(2014年3月9日)
      https://book.asahi.com/...
      「ウクライナから愛をこめて」書評 チェルノブイリの地の現在|好書好日(2014年3月9日)
      https://book.asahi.com/article/11621729
      2022/01/28
  • 印象深いエッセイが多かったのですが、あえて装丁について感想を。
    ウクライナ国旗色の装丁がとても美しい本です。特に栞紐の青がキレイで、本を閉じる度にうっとり。
    出版社さんの1冊にかける深い愛情を感じました。

  • 2023.2.7市立図書館  →2023.2.14購入
    まもなく1年になろうとするウクライナ侵攻以来、どんな国なのかちょっとでも知ろうと思って予約をいれてだいぶ待ってようやく順番が回ってきた(…というか、当該の本がなんらかの理由で消え、あらたに購入・登録されたもののようにみえる)。

    著者の思い出の人々や土地をめぐる5−6ページ程度のエッセイを中心に18編。童話のような淡々とした筆の運びでやさしく読めるけれど、前半は過酷な歴史をくぐり抜けた人生も多く、なんともいえない余韻が残る。須賀敦子の作品と少し似た切なさがある。
    中程にある「散歩で感じるキエフの歴史」は楽しく(ソ連時代も生き延びた11世紀の教会とか地下鉄のこととか興味深いエピソードがたっぷり)、いつかキエフの街を訪ねたくなるが、この1年の爆撃などで建物はぶじなのだろうか。
    後半は前半より身近あるいは最近の人物の話や日本での経験も織り交ぜ、最後は東日本大震災の原発事故から思い出さざるを得なかった自身がこどもだった頃に経験したチェルノブイリの記憶。数十年はやく体験したことをベースにした「ウクライナから愛をこめて」のメッセージが心に響いた。
    青を貴重に黄色を効かせた造本と装丁、各章に添えられた著者自身によるカットや地図もよかった。

    2014年の刊行なので、地名はキーウではなくキエフ、チョルノービリではなくチェルノブイリ。日本で学位取得後、国に戻って日本史を教えているという著者とこの本に登場した人々がいまどうしているのかも気がかりになる。

  • ウクライナ人の筆者が日本語で書いた本。個人の身の回りの人、家族や、幼い頃の近所のお姉さんの物語。戦争で家族を亡くしたり、ソ連に迫害されたり、いろいろな理由でバラバラにされて、また出逢って、そんな人々の人生の物語。子どもたちにウクライナ人としてのアイデンティティを持たせるために、ウクライナ語の子守歌を探し集めてボランティアで教える女性の話や、ソ連時代に宗教が禁止されて廃れた家庭用イコンを集めて触れあえる博物館を作った人の話など、小さな物語が胸を打つ。美しいキエフの風景、ソフィア寺院、地下鉄の駅は、今どうなっているのだろう。この美しい小さな物語に満ちた街に行きたくなる。

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