荷を引く獣たち: 動物の解放と障害者の解放

  • 洛北出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903127309

作品紹介・あらすじ

動物の解放と障害者の解放の、深くて大切な結びつき。
 アメリカン・ブック・アワード(2018年度)受賞作品!

 スナウラ・テイラーは、一人の障害当事者として、障害者運動と動物の権利運動の担い手として、そして一人の芸術家として、読者に問いかける。もし動物と障害者の抑圧がもつれあっているのなら、もし健常者を中心とする制度と人間を中心とする倫理とがつながっているのなら、解放への道のりもまた、交差しているのではないか、と。

 彼女は考えつづける。デモに参加しながら、絵を描きながら、対話しながら、食べながら。いったい何が、動物たちから人間を、障害者ではない人たちから障害者を、区別しているのだろうか、と。

 彼女は考えつづける。身体的・精神的な能力の有無や高低(世界の中でどのように動いたり、動けなかったりするか)を基準にして、私たちは、自分を「人間」として意識し、他なる者を「動物」として値踏みしてしまっているのではないか、と。「人間」としての自分という自負を保つために、私たちは、「動物」との違いを際立たせることに、どれほど血道をあげているのだろうか、と。

 この『荷を引く獣たち』には、「障害」と「動物」という、これまで対立すると見なされてきた問題が、実際には深く結びついているということが、テイラー自身の体験にもとづいて、丁寧に書かれている。
 そのうえで彼女は、もっと風通しのよい、ゆたかな経験と共感にくつろぐ未来を、読者に語りかける。目前の世界の姿を、荷車や車椅子の輪のように、ぐるりと回転させ、しなやかに変えてみせるのである。おおらかに、エレガントに。
 壊れやすく、依存的なわたしたち動物は、ぎこちなく、不完全に、互いに互いの世話をみる。本書は、そのような未来への招待状である。

感想・レビュー・書評

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  • 我々健常者は、特別な存在なのか?

    家畜化された動物たちは、我々健常者の為に生み出された消費されるモノである。

    障害者は、我々健常者に依存していて、我々がいなければ、すぐに野垂れ死ぬ。

    これらの考えは、自分たち健常者が特別な存在であると、"大きな勘違い"をしているからこそ、生まれる考え方だ。

    我々は、誰にも依存せずに生きているというのか?

    我々もまた、大企業にとっての単なる消費者ではないのか?

    そう、それは単なる濃淡の問題、相対化の問題なのだ。地球上に住む生物に、優劣など一切ないはずだ。

    昨今の差別や分断を考えるヒントにもなる、非常に考えさせられる一冊だった。

  • Sunaura Taylor - Wynn Newhouse Awards
    https://www.wnewhouseawards.com/sunaurataylor2.html

    『荷を引く獣――動物解放と障害解放』、スナウラ・テイラー著 - 洛北出版 ブログ
    https://rakuhoku-kyoto.tumblr.com/post/181694945122/%E8%8D%B7%E3%82%92%E5%BC%95%E3%81%8F%E7%8D%A3

    荷を引く獣たち スナウラ・テイラー(著) - 洛北出版 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784903127309

  • 障害者と工業的畜産を合わせて考えた本

  • 注意と敬意を払うべくは、まずは、著者が、安易に答えを出さないことだ。日常に特段、何のサポートも必要としていない「と思う」ひとほど居心地悪いだろう問いが続々と投げかけられ、しかもページをめくってもそれらひとびとを安心させ、「なあんだ大丈夫じゃん」と思わせるような、容易な着地点は書かれていない。著者は、いくつもの例(アカデミックなものから、ときに自身と他者との体験まで。人間がしでかした、グロテスクながら目を背けてはならないものも含まれる)を引きながら、「健常で世間的地位を持った人間」が中心に想定されている『健常者中心主義』に繰り返し疑問を投げかける。そして私たちのたれもが知らずのうちに恩恵に浴している、『人間中心主義』の被害者たる動物たちにも焦点を当てて、そこにこれら2つの問題の交差点と、解決の糸口をみていく。「できない」は「要らない」ではないし、ときに文字通り作り出されてしまっている不具合でもある。ことばはやや硬いが、「いま」の「当然」にもやもやしている方、また擦れ切ってしまっている方は、読めば、帯文通り「世界が反転」するかもしれない。

  • 読む間ずっと一切草木悉皆成仏唱えてた。ちょっとつらい。人種、障害、動物性といった多種多様なカテゴリーが、互いにもつれあり構成しあっている(P98)声なく助けられるものとの断絶(p114)障碍者が人間としての価値を人間としての優越性を暗示したり自身の動物性を否認せずとも主張することができるだろうか(190)障害の経験からやってくる価値(316)本質的に相互依存的であることの認識(346)
    雨にも負けずを思い出しながら。

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著者プロフィール

 1982年生。画家であり作家、そして障害者運動と動物の権利運動の担い手。アメリカ合衆国のアリゾナ州ツーソンに生まれ、ジョージア州アセンスで、アンスクーリング〔学校に通わず子ども主導で学習する教育〕によって学びながら育つ。カリフォルニア大学バークレー校で、美術修士号を取得する。共著として、Ecofeminism: Feminist intersections with other animals and the earth (2014)〔エコフェミニズム――他の動物たちや地球とのフェミニスト的な交差〕、Occupy! : Scenes from Occupied America (2011)〔オキュパイ!――占領下アメリカからの情景〕などがあり、また、さまざまな雑誌やウェブ媒体にも寄稿している。姉のアストラ・テイラーが監督したドキュメンタリーExamined Life (2008)〔吟味された生〕では、哲学者のジュディス・バトラーと対話し、同題の書物にも収められた。本書『荷を引く獣たち』は、2018年度のアメリカン・ブック・アワードを受賞した。

「2020年 『荷を引く獣たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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