小鳥たち

著者 :
制作 : 中川多理 
  • ステュディオ・パラボリカ
4.52
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本棚登録 : 200
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784902916416

作品紹介・あらすじ

降りそそぐ小花、時空はゆらぎ、
小鳥の侍女たちが行き交う庭園と城館。
そこは迷宮?
小説と人形が織りなす奇蹟の幻想譚。

第46回泉鏡花文学賞受賞作家 山尾悠子の最新作!!
あらたな領域に踏み入る記念碑的小説である。


★物語と人形たち
まず山尾悠子による「小鳥たち」という掌篇が書かれ、登場する小鳥たちを人形作家の中川多理が創作した。その人形作品を踏まえて『夜想#中川多理―物語の中の少女』に続編「小鳥たち、その春の廃園の」が書かれ、再び呼応して新たな人形が作られた。
それを受けて、最終章「小鳥の葬送」が書き下ろされ、ついに中川多理の手から大公妃が産み出された。

★摩訶不思議な幻想小説の奇蹟の成立
山尾悠子の幻想譚は、場面が揺らぐように紡がれていき、確かにそこに伽藍はあるのだけれどもこちらの認識が朧になるという快楽性をもっている。構造はあるが、揺らいでグラデーションでずれていく。その揺らぎに現実の人形が参加しているのだ。

母、娘、そして侍女……幻想の物語、幻想の人形そして幻想の本として収斂する『小鳥たち』。

感想・レビュー・書評

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  • 人形作家の中川多理さんが、作家山尾悠子さんの物語からインスピレーションを得て人形を作製したコラボブック。
    あとがきを見ると、それだけではなく、中川さんの人形を受けて山尾さんが連作を書き、さらに中川さんが人形を作製する、という流れがあったようだ。そのためか、人形とストーリーが分かちがたい一体感を形成している。

    本書はいくつかの連作物語からなるが、中心となる登場人物は「小鳥」たち。編み上げ靴を履いた華奢な少女たちで、立派なお城の大公妃殿下に仕えている。時には小鳥の姿になって、あちこちに伝令として飛び回るが、ちょっとしたことに怯え、儚く散ってしまう。
    この「小鳥」たちをイメージした少女たちの人形が、愁いを含んだ儚げな表情で、物語の世界観とぴったりなのである。
    また、最後の物語に登場する大公妃殿下の人形は、少女たちとは異なり、年齢を重ねた者の深みが表現されていて、思わず見入ってしまった。

    ちょっと不思議で、少し残酷で、でも美しい、二人の紡ぐ世界観を堪能できる一冊。

  • あとがきも含め、ちょうど100ページの中につまった儚い幻想譚。これから寒くて暗い冬が来るたび、花と鳥のさえずりを求めて、何度となく〈水の城館〉への扉をたたくことになりそう。

  • 豆本「翼と宝冠」が欲しいのだけれど(入手できるかなあ)(会期中にパラポリカビスへ行ければいいのだけど)(https://twitter.com/kotoritachi_sp/status/1220612909664878592)とりあえずその前にこちらを読んでおかなくてはお話にならないだろうということでやっと読む。

    中川多里さんの球体関節人形写真とのコラボなので、文章量はあまり多くなく絵本のような味わい。(発売当初ジュンク堂で写真展やってたのは見に行きました)人形+幻想文学の相性が悪いわけがない。なんというか、読み物としてはもとより、本というモノとして所持欲をそそる完璧な1冊。

    水の城館の赤髭公、その母である老大公妃の侍女=小鳥たち。編み上げ靴をはいた彼女らは時に小鳥に変化し窓から飛び立ち人工滝や噴水のある階段庭園の上を舞って沢山の乳房を持つアルテミス女神の像に花を捧げる。

    山尾悠子の真骨頂は、建築物まで詳細なこれらの「世界」の創造だと思う。

    ※収録
    小鳥たち/小鳥たち、その春の廃園の/小鳥の葬送

  • 山尾悠子好き。中川多理も好き。このふたりがコラボするなんて俺得。
    予約購入してさて読もうかと思ったタイミングで、パラボリカ・ビスで特装版の通販が始まったと聞いて歯噛みしたものだ。
    悔しさのあまり少し置いていた。
    ところで今度は山尾悠子による豆本「翼と宝冠」がリリースされる、しかも今後短編集などに収録予定はない、と。
    またも会場限定で販売されるとか。いずれ一般販売もあると期待して。

    作者同士のやりとりについては、ありがたい。感謝ばかり。
    さて中身について。
    山尾流の無国籍ファンタジーかと「小鳥たち」で思わせておいて、
    「小鳥たち、この春の廃園の」で、〈さて今は何世紀〉というフレーズとともに時代を超え、その断片の中ではなんと近未来すら舞台になる。
    「小鳥の葬送」では再度時代も舞台も曖昧にされ、つかみどころがわからないままに本は終わる。
    この「つかみどころのなさ」が山尾悠子の肝で、捕まえようとするや、小鳥に姿を変える侍女たちの「怪しからぬ後ろ足」に欲望を抱く伊達男の姿は、読んでいる私自身に見えた。
    このあたり、球体関節人形の温もりや、寝台の残り香に胸ときめかせていた数年前のことを思い出す。
    「最終的にはめきめきと音をたてんばかりの見事な被昇天であった」という強烈なフレーズで、まさに絵画的に終わる。
    いやもう素敵な読書になった。

  • 山尾悠子さんの文章と中川多理さんの人形で彩られてる本です。
    小鳥のように驚き易く、すぐに動揺する〈水の城館〉の侍女たちのお話。3篇のお話が入ってますが、続いてるような続いてないような。過去だったり現在だったり、時間軸もイロイロです。
    不思議な雰囲気のお話に、中川多理さんの小鳥の侍女の人形が、世界観を広げてくれてます。
    人形一つ一つも、表情や服装が違ってて、じっくり見てしまいました。

  • 山尾悠子+中川多理『小鳥たち』出版記念展
    http://www.yaso-peyotl.com/archives/2019/07/tari_kotoritachi_bis.html

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    ★物語と人形たち
    まず山尾悠子による「小鳥たち」という掌篇が書かれ、登場する小鳥たちを人形作家の中川多理が創作した。その人形作品を踏まえて『夜想#中川多理―物語の中の少女』に続編「小鳥たち、その春の廃園の」が書かれ、再び呼応して新たな人形が作られた。
    さらに、最終章「小鳥の葬送」が書き下ろされ………。

    ★摩訶不思議な幻想小説の奇蹟の成立
    山尾悠子の幻想譚は、場面が揺らぐように紡がれていき、確かにそこに伽藍はあるのだけれどもこちらの認識が朧になるという快楽性をもっている。構造はあるが、揺らいでグラデーションでずれていく。その揺らぎに現実の人形が参加しているのだ。

    母、娘、そして侍女……風景も時間も
    揺らぎながら紡がれていく、芳しく神々しい幻想譚。
    http://www.yaso-peyotl.com/archives/2019/07/kotoritati_book.html

  • 夜想『中川多理特集──物語の中の少女』を読んで、そのままの流れで読みました。山尾悠子さんの作品は、まさしく幻想的。揺らぎながらも圧倒的に美的な幻想が、彼女の言葉の中にはあります。編み上げ靴の小鳥の侍女たちの美しい羽ばたきを追っていこうとする内に、ぐいぐいと時間の束縛を忘れて、迷宮庭園の備わる荘厳な〈水の城館〉を逍遥しました。ハッと覚醒したような、こちらの世界に「帰ってきた」ような、そんな読了感がやはり素晴らしいです。見える世界も幾何学的な、端正な世界に感じてしまう程です。「小鳥の葬送」なんかもう、素晴らしいとしか言いようがありません!
    そして、なんといっても、多理さんの人形が圧倒的な感動を私に与えます。先に述べました『中川多理特集──物語の中の少女』の「幻鳥譚」の人形なども素晴らしいかったですが、やはり「小鳥たち」の人形ほど、華奢で儚い人形を、私は知りません。
    ああ、とにかく大満足でした。これ以上の言語化は私には不可能です。是非、この2冊はセットで楽しむことを提案します。

  • 文章力によってのみ幻想を生む作家と、造形によってのみ幻想を生む人形作家との見事な競作。

  • すごい世界があるものですね…

  • 山尾先生と人形作家・中川多理先生が互いにインスピレーションを与え合って創られた掌編と人形写真。
    侍女に変容する小鳥と水の城館の様相が美しい。
    「小鳥の葬送」の老大公妃の曲者感が素敵。
    モノクロ写真の老大公妃が本当に眠りについているような生々しさで驚愕です。

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著者プロフィール

山尾悠子(やまお・ゆうこ)
1955年、岡山県生まれ。75年に「仮面舞踏会」(『SFマガジン』早川書房)でデビュー。2018年『飛ぶ孔雀』で泉鏡花賞受賞・芸術選奨文部科学大臣・日本SF大賞を受賞。

「2021年 『須永朝彦小説選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山尾悠子の作品

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