- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784901330602
作品紹介・あらすじ
「心理学におけるモーツァルト」と称され、「繊細な心理学者、博識な芸術学者、有能な教育学者、たいへんな文学通、華麗な文筆家、鋭い観察力をもった障害学者、工夫に富む実験家、考え深い理論家、そして何よりも思想家」と評される、ロシアの天才的心理学者ヴィゴツキー。
近年、アメリカをはじめ西欧などで再評価が高まり、脚光を浴びるなか、日本でも再び、心理学・教育学の両面でヴィゴツキーの学説への注目が集まってきた。本書は、そのヴィゴツキー理論の全体像をわかりやすくまとめたはじめての入門書である。
感想・レビュー・書評
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今デューイですよーと言われている?中、ピアジェやデューイとは違った視点に立っているヴィゴツキーにちょびっと触れてみた。
協同学習においては、一人でする学習より、二人ですると更に難易度の高いものを解くことが出来るという、なるほど割とALに通じることを仰る。
ヴィゴツキーについて浅く調べると、日本では系統教育と重なってくるのだけど、どんな風に受容されたんだろう?ちょっと疑問。
言葉の内化の作用に言及したり、科学的概念は子供たちから自然に発生するものではないという、児童中心主義への批判についてはもっと深めたい。
というわけで、入門には確かに読みやすくて、次に向かいたいウズウズ感をもたらしてくれます。
しかし。他のヴィゴツキー書物、同じ筆者が訳してるんだけど、お高いぜ(笑)
今の、教師主導から子どもたち主導の教育へ、のイメージは分かるのだけど、では教師はどこまで委ねていけるかの知識は必要と思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ヴィゴツキーの著作は、もう少し読み進めます。
・古い心理学は、「模倣」を純粋に機械的な活動と見る傾向がありました。これに対して、ヴィゴツキーは、模倣を通じた「協同」による発達、教授―学習による発達は基本的事実であり、子供がきょう共同でできることは、明日には一人でできるようになるとし、「教育学は、子どもの発達の機能にではなく、明日に目を向けていなければならない。そのときにのみ、それは<発達の最近接領域>にいま横たわっている発達過程を教授の過程において現実に呼び起こすことができる」と考えました。
・従来の知能テストは、子どもの知能の「現下の発達水準」を見るものです。そのため、子どもが自分一人で、独力で解いた解答を指標として評価します。そこでは、当然、他人の助けを借りて出した答えは、何の価値もないと見なされていました。
ところが、ヴィゴツキーは、子どもの発達過程を真にダイナミックな姿としてとらえるためには、このような解答をこそ大切にしなければならないと考えたのです。
(知能年齢が8歳の二人の子どもに上の年齢のテストを与える。同じヒントや誘導をしても、12歳までの問題を解ける子と、9歳までの問題しか解けない子がいる)
・ピアジェは自己中心的ことばは、子どもの自己中心性の現れであって、6~7歳ごろに「脱中心化」がはじまり、自己中心的ことばは「社会化」されたことばに置き換えられていくと考えましたが、ヴィゴツキーは、この考えに異論を唱えました。そして、子どもの自己中心的ことばは、<外言>である話しことばが<内言>に移行し、発展していく過渡的段階のことばであることを理論的にも実験的にも明らかにする研究を行いました。
(自己中心的ことば…4歳頃の子どもは、友達と遊んで一緒に話しているように見えても、それぞれ別々にひとり言を話している。コミュニケーションでなく、考える手段として言語を使う状態にある)
・たとえば、校長先生(コーチョーセンセー)という単語を、ひらがなで正しく「こうちょうせんせい」と表記するのは、低学年の子どもにとっては、たいへん難しい作業です。かな遣いの複雑な規則をおぼえ、当てはめていかねばならないからです。さらに、文を作るときの単語の選択や構文法もまったく同様です。
・アルキメデスの法則を説明できる子どもに、「兄弟とは何か?」と尋ねるとよく説明できないことがあると、ヴィゴツキーは書いています。子どもは、兄弟とは何かよりも、アルキメデスの法則とは何かのほうをよりよく定義するのです。子どもは、兄弟が何かはよく知っているはずです。少なくとも、私たちにはそのように見えます。「兄弟」という言葉は大人がよく使う言葉ですし、子ども自身もたいていまちがいなく使っているからです。
ところが、10歳を過ぎた子どもでも、ピアジェがやったように、兄弟の兄弟というような関係を問うような問題、たとえば、「英男には、守、俊也、正利という3人の兄弟がいます。守には何院の兄弟がありますか?」を出すと、まごついてしまうのです。
…言いかえれば、子どもは対象についての概念を持ってはいても、その概念そのものを、あるいはその対象を思い浮かべる時の自分の思考活動を自覚していないのです。このような概念をヴィゴツキーは「生活的概念」と名づけました。「自然発生的概念」と呼ぶこともあります。 -
自分にとって「発達の最近接領域」が耳馴染みのいい概念であったため、なんとなく好感をもっているヴィゴツキー。本書によって、その発達の最近接領域のバックグラウンドとして存在している価値観、ヴィゴツキーがNoをつきつけているものがある程度わかったような気がする。
教師そのものではなく環境と、その環境と対峙する個人こそが成長のドリブンである。だから教師は環境を作り上げることこそが責務である。というのはしっくりくる。 -
入門ということで、概要を知る上では参考になる書。
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子どもの発達状態を評価するとき、どのように見ればいいでしょうか。学校の成績も入学試験も、だいたいはペーパーテストでみますよね。これ、教科書を見たり友達に教えてもらったりしたら、怒られてしまいます。ペーパーテストはひとりで解かなきゃいけない。自力で最初から最後までやれてはじめて点数になるのです。
こういう評価の仕方って、実は子どもの一面的な部分しか評価していないのかもしれません。たとえばここに、小学5年生で、ペーパーテストの成績が同じくらいの2人の子がいたとしましょう。その子たちに、小学6年生の問題を解かせてみる。当然、ひとりで解くというのは出来ないのですが、先生とか親が手助けをしながらだったら解けるかもしれません。1人の子のほうは、小学6年生の問題までなら手助けありで解けた。もう1人の子のほうは、中学2年生の問題までなら手助けありで解けた。こういう差は出てくるものです。これを無視して同じ評価をするべきではない、むしろ、ヒントありでどこまで解けるかというほうが重要である。こう解いたのが、ヴィゴツキーの「発達の際近接領域の理論」です。
ヴィゴツキーは、心理学におけるモーツァルトと呼ばれるような早熟の天才(そして短命)であり、心理学の中でも、教育や発達に関する内容について多く研究しています。話しことばと書きことば、生活的概念と科学的概念といった対比を用いながら、どのように思考を獲得していくかについて、興味深い分析がなされています。 -
流し読みだけでもしたい。
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ヴィゴツキー心理学の解説
教育学的な部分の解説が多い
・理論のおおまかな紹介はあるけど、理論の元になった実験がどういったものだったかはよくわからない。
・今日的な意義、どの程度発展してきているのか、実証されているのか、もっと詳しいと嬉しい。
・弁証法的理論だから正しい、みたいな主張をそのまま受け取るのはどうなのか。
・現在の学校で導入が進んでいるアクティブ・ラーニングの源流には、欧米経由で紹介されたヴィゴツキーの影響があるのだろうか。 -
「発達の最近接領域」を知りたくて手にする
あくまで入門なので
詳しいものは本格的な訳書に頼った方がよさそう
だけど、
アウトラインとして知るにはちょうどよいボリューム
知りたいことは限られていたけど
それ以外にヴィゴツキーが
障害教育とか芸術学とか
教育と関わりのある領域まで研究してたと
ふむふむ
学ぶとは幾つになっても面白い -
本書はソ連の心理学者ヴィゴツキーについて、その理論の全体像を分かりやすく紹介した本です。ヴィゴツキーのダイナミックな理論の面白さと、なにより子どもに対する暖かい想いが伝わってくる良書。教育や人間の発達に関わるすべての人に読んでもらいたいです。
P.N. DSさん
OPACへ ⇒ https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000077009 -
今の大学教育におけるアクティブラーニングや、自律的学習者の育成の基礎になっているもので今後より深く勉強したい。