「5G革命」の真実 --5G通信と米中デジタル冷戦のすべて (WAC BUNKO 301)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898318041

感想・レビュー・書評

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  • 一通り拝見しました。興味深かったのは、5Gもそうですが、エッジ・デバイスといわれているセンサーの多さとセキュリティの問題です。膨大な種類のセンサーとどう接続するかが、IoTの課題であり、普及の壁かとおもいます。
    また、暗号化技術を最終章にもっていくなど、5Gをつかったシステムが解決すべき課題を示唆しています。通信の世界はまだ、半導体の呪縛の中にあるとおもいます。

  • 5Gは、アップロードも大容量で低遅延だから諜報利用が容易なので、監視国家化を進めるチャイナにとっては必須技術なのだ、というところまではスムーズに頷ける。
    しかし、技術の話に移ると、遅延はそれでも起こるし技術的にはまだまだ完全なものではないし、ということであれ?となったが、
    なんなら弊社のロボット技術使ってよ、というところで了解。そういうことか。
    そのたくましさに微笑ましくなった。

    5Gをめぐる攻防は単なる技術覇権の争いじゃないですよ、体制選択のところまで行き着きますよ、というのはそのとおりで、今後数年で陣営整理が進み、日本は好むと好まざるに関わらずブルーチームの一員として生きることになるのだろう。
    それに気づけずにチャイナとの取引を続けるならば、かつてココム違反で巨額の罰金を支払う羽目になった東芝のようなことが起きないとも限らない。
    このような現在進行形で発生している、事態の変化のスピードに比して、本邦企業の動きは緩慢に見える。
    チャイナ詣でを続けている場合ではないですよ、と声を上げてみても、企業の意思決定者の情報源がリベラルメディアに偏っている現状では仕方ないのかもしれない。
    企業経営者こそ、つくづく歴史に学ばなくてはならないのだろうが、何度痛い目を見ても、学べない組織は学べないということだろう。

    しかしそれは逆に考えれば、早く気づいた者にとっては、久々に向こうからやってきたビジネス・チャンスでもあり、有効活用しない手はないのだから、皆さん一緒に乗っていきましょうよ、と読者に呼びかけているようにも見える。

    著者はまた、チャイナに肩入れするGAFAについても批判的に書いている。
    ここ数年でのGAFAに対する視線の変化は大いに感じるところだし、ソロスの演説も話題になった。
    だが、このままGAFAがチャイナと組み続け、レッドチームの意向を受けたままビジネスを続けるとも思えず、そこは杞憂なのではなかろうか。
    さすがにシリコンバレーの面々がいくらトランプが嫌いだと言ってみたところで、じゃああなた方はUSではなくチャイナに忠誠を誓うのですか?と問われてYesという社も少ないだろう。
    GAFA vs BAT の図式は有り得ても、US vs GAFA の未来までは言えまい。

  • いま私たちが使用している携帯電話は4G規格ですが、現在は次のバージョンである5Gの開発が進んでいす様です。社会人になって数年経過したときに、それまでは社長決裁で買っていた携帯が、あれよあれよという間に、一人一台配布されるようになり、個人で持った携帯電話(スマホ)も、10台以上になるのでしょうか。

    始めは電話だけでしたが、それがメッセージを送れるようになり、静止画、動画も送れるようになり、スマホになってからは、まさに携帯コンピュータになった感じで、生活スタイルが一変したことを感じます。多くのことを覚える必要がなくなりました、道に迷わなくなりました、人との待ち合わせに困らなくなりました、とても便利になりました。

    5Gになると革命になると、この本では書かれています。この30年間を振り返ってみると、それだけでも私にとっては革命のようでしたが、更に進化するようですね。5G化することで、良い面だけでなく心配しなければならない点もあるようですが、上手に技術の進展に付き合っていきたいものですね。

    以下は気になったポイントです。

    ・ゼロクライアントのスマホ、データセンター制御型の自動運転、遠隔医療も、その前提として「リアルタイム」が求められる。そのリアルタイムとは、100m秒以下を指す。超低遅延での大容量データ通信が可能になる5Gは、社会の仕組みそのものを変えてしまおうとしている(p17)

    ・工場のスマート化のラストワンマイルは、工場内の完全無線化である。Wifiではなく、大容量通信・同時多接続・超低遅延という5Gの特性が生きてくる、これは個人ユーザーではなく、製造業や自動車産業が求めているもの(p27、35)

    ・10ギガビットの大容量通信ができなかったのは、スマホなどに利用されている、2.4Gヘルツ帯の周波数帯は混んでいて、10ギガビット分の情報を埋め込み切れなかった(p40)

    ・陸海軍は、陸の基地局・衛星地上局、海の海底ケーブル、空の通信衛星に大別される(p60)

    ・電話技術が確立された1870年の翌年に、長崎ー上海、長崎ーウラジオストク間に海底ケーブルが敷かれ、日本も通信の世界で海外とつながり始めた。電話サービスはその10年後(p61)

    ・中国共産党はサラリーマン社会ではないので、引き継ぎ・契約書の存在という概念は全く通用しない世界である(p71)

    ・ファーウェイは米国政府が開発した通信機器用のバックドア技術を転用しているので、「バックドアを利用した通信スパイを禁止する」とは言えない。(p80)

    ・中国では通信スパイによってすべての会話が盗聴、記録されていると考えられるかもしれないが、物理的に、メモリ・電力消費量的に難しい。(p85)

    ・スティーブジョブズが復帰したアップルの成長を支えたのは、ファーウェイのEMS工場であるホンハイである(p94)

    ・どんなにコンピュータセキュリティを高めても、5G通信のインフラ自体にバックドアが仕込まれていれば無防備に等しい(p101)

    ・中国共産党は、ホンハイを通じてシャープというディスプレイ企業を買収しただけでなく、日本の8Kカメラ・ディスプレイ技術を移転している。2018年11月、数兆円かけて大型ディスプレイ工場を中国に建設するとした、これが稼働始めたら日本、韓国のディスプレイメーカは倒産確実と言われている(p104)

    ・かつて石油をめぐる争いが、いまでは、「個人情報」「自動車利権」の争いにとってかわられた。タカタは倒産し中国に持っていかれた、VWとアウディのCEOは起訴されている(p141)

    ・太陽光パネルは、パネルが生み出せる電力の数年分の電力を消費しないと生産できない代物、太陽光のエネルギー費用の国民負担額は年間2.4兆円、発電所におけるエネルギー転換損失、電力送電ロスを考えるとガソリン車のほうがエコである(p145)

    ・リチウムイオン電池に用いられている電解液は可燃性なので、過充電で燃えたり爆発したりする、EV車がショートして発火すると、水につかっているのに燃える(p147)

    ・EV車は車体が大きく破損すると、漏電を起こして感電する危険があるので、ドライバーや乗客を救出してはいけないという表示がある(p148)

    ・EV車はエコとなると中国にはメリットだらけ、1)EV車はガソリン車よりコピーしやすい、2)中国製原子力発電所が売れる、3)EV車を5Gで繋いで車両監視が可能(p149)

    ・トヨタが2025年までの全電気化を掲げているが、それは電解液を使うのではなく、電解液を固定化した全固体電池である、トヨタがパナソニックと合弁で会社を始めたのは優れた戦略(p149)

    ・トヨタがソフトバンクと組もうとしているのは、中国とつながりの深い通信事業者と組んでMAAS時代に乗り遅れないため、これはかつて携帯電話業界で起きた。携帯電話メーカが主役の座を下ろされて、スマホ部品メーカに成り下がった過去が自動車産業でも繰り返されることをトヨタは予見している(p150)

    ・自動車メーカにとって、自動運転車を手配する配車システム時代の最大顧客は「配車プラットフォーム企業」である、そうするとGAFAの台頭によってコンピュータメーカがプラットフォーム企業に隷属するようになったのと同じ現象が現れる。年間に大量ロットの購入をしてもらう条件の下、すべての部品を最安値でコスト算出されて利益はわずかとなる。これがハードウェアメーカが凋落し、中国企業に買収された背景にある(p153)

    ・今後は、経済、ビジネスの世界も二分される、今までのように米国と中国に二股をかける取引は難しくなる。少なくとも、通信関連での共同研究や開発は自粛を求められる。現在、米国で利用を禁止されているのは、ファーウェイ、ハイクビジョン、ダーファ、ハイテラだが対象が拡大される余地はある(p164)

    ・中国は米国に課せられた高関税のために製造工場として外資系企業を招く力を失った、韓国も同様。これにより外資系企業は、法人税が高く、低賃金でもない日本での工場建設に向かっている(p177)

    2019年8月17日作成

  • 昨今の過剰な5G信仰には嫌気が差しており
    この本を読んでスッキリしました。

  • (著者も断りを入れている通り)5Gの仕組みはほどほどに、5Gが政治とビジネスにどう影響しているか、関連付けて解説。とにかく中国の企みが凄い。ファーウェイ然りホンハイ然り中国製の通信機器等を組み込むことで中国が世界監視網を構築しようとしている。もう少し裏取りを示してほしい面もあったけど、5Gの利便性や一般的な特徴をなぞる解説書に比べたら圧倒的なインパクトがあった。自身の業務に係ることで、なるほどこういう動きが裏にあるかもしれないのか!というハッとさせられる例もあり、非常に記憶に残る書籍となった。技術はビジネスの枠を超えて、国と人の生活にも大きな影響を及ぼす。自分がいる通信業界は、そういったことに繋がることに改めて気づかされた。

    以下、参考になった点のメモ。
    ・高周波の技術的克服:減衰しやすい・アンテナ出力であるワット数を上げると健康被害が出る
    →「フェイズドアレイアンテナ」(移送を制御するアンテナを大量配列する)・「ビームフォーミング」(電波のビームを任意の形状に作り出す)

    ・ヘテロジニアスネットワーク
    ユーザデータの通信→5G「スモールセル基地局」。端末識別等重くないデータ→4G「マクロセル基地局」

    ・5Gの特許数は35%が中国勢(解放軍と親密な関係にあるホンハイに買収されたシャープを含むと40%)
    ・IoTと5Gで全てのデバイスからデータを吸い上げ中国監視網を完成させる。
    ・中小企業の特許申請案を特許事務所の多くが裏でIT大手企業と共有し、無効にするよう仕向けた。
    ・青幇(チンパン):清朝末期、上海疎開地を本拠として台頭した秘密結社。アヘン、賭博、売春を主な資金源に。今は半導体業界で大きな政治力を発揮。

    ・不正競争防止法では技術は守れない。日本の技術が中国で盗まれる。東芝メモリの技術は派遣社員の日本人に盗まれた。
    台湾のように「最先端技術移転防止法」を蹴脳すべき。
    ・内閣サイバーセキュリティ副センター長は「情報通信機器の調達に関する新たな政府指針は(ファーウェイなどの)特定企業を念頭に置いたものではない」
    →現段階ではスパイや通信スパイを取り締まる法的根拠がないので、そう答えざるを得ない。

    ・IoT×FAは日本製造業にチャンス
     米中貿易戦争→米国の高関税で中国は外資系企業を招く力を失う。韓国は最低賃金の大幅な引き上げで工場撤退が相次ぐ
    日本の一般電子部品はシェア4割でその半分はセンサー。IoT、人工知能、FAで共通的な重要ファクター
    完全自動化工場連合としてワンパッケージで海外に売り出す。先進国企業の労働問題を解決できる。

    ・理履行は自然のルールに基づいており、何をどう考えてもどうしてそうなるのか、人知の及ばない自然が支配する世界。大自然がもたらす法則と理由が分からない謎に大きな魅力がある。
    ・園児には自然の力と人類の生活を結ぶインターフェイス。技術営業はエンジニアを繋ぐインターフェイス。

  • 5Gとその背景にある政治的思惑についての紹介本。技術的に十分に理解し尽くせない部分もあったが、5Gの効用と米中の思惑をザックリ理解するには良い本。

    5Gにより、大容量・超低遅延が実現するため、これが前提となる自動運転や工場管理などに必須。但し、家の中でのIoT化にはそこまでの能力は不要であり、産業部門のニーズの方が高い。

    中国は、5Gの高速アップリンクに注目しており、5G網をファーウェイ製の基地局で世界中に張り巡らすことにより、自動運転、IoTなどから世界中のデータを掌握し、ビックデータ解析により重要情報を集積することを企図。米国の動きはそれに待ったをかけ、5G網の構築を遅らせ、その間に次の世代を構築しようというもの。我が国も巻き込まれるが、米と共同歩調をとるとともに、センサー・ロボット技術とローカル5Gの活用で生産性を飛躍的に高めることが勝ち目とする。

    米中の文脈で、米政府とマイクロソフトなどの保守vs中国+GAFAという前提で立論していたが、GAFAの最大顧客が中国というのは分かったが、それだけで完全に中国に尻尾を振るのか、その辺りの説明がもう少し欲しかった。

  • そういう説も考えられるんだろうなとは思うけど納得感を得られる部分は少ない。信じたいか信じたくないかで評価が分かれると思う。解説はわかりやすかったです。

  • 技術と政治のどちらも学べる本だった。薄いので数時間で読めます。

  • 5Gでなにが変わるのか。デジタル家電をネットに繋いでなにしようというんでしょうか?せいぜいTVの予約とかそんなところですけど、TV自体も見るものが無くなってきてるのに。5Gが軍事技術だと認識すれば、分かってくる。全て政治、覇権争いに通じている。原発も基地問題もイージスアショアなんかも。

  • 5G革命というワードをよく聞くので、どんなもんかと思って買ってみました。新書版でうっすいのに1000円近くしました

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著者プロフィール

ITビジネスアナリスト。Revatron株式会社代表取締役社長。早稲田大学政治経済学部卒。学生時代にファンドで財務分析のインターン、リサーチハウスの株式アナリスト、外資投資銀行勤務の後にリーマンショックで倒産危機に見舞われた企業の民事再生業務に携わった。現在はコンピュータ設計、チップ・ソリューション、AI高速処理設計を国内の大手企業に提供している。著書に『米中AI戦争の真実』(育鵬社)、『ソーシャルメディアと経済戦争』(扶桑社新書)、『量子コンピュータの衝撃』『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する!』(宝島社)などがある。

「2022年 『IT戦争の支配者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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