恋人たちはせーので光る

著者 :
  • リトル・モア
3.95
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  • (2)
本棚登録 : 511
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898155097

作品紹介・あらすじ

詩を読むことは病まない孤独であり、
幸福の可能性に気づくこと。

映画、展覧会、WEB、広告、音楽……
数々の新しい詩の運動をまきおこしてきた最果タヒが
ついに放つ傑作。
新たな地平を目指し生まれた、待望の最新詩集!

<43の詩と43のデザイン!>
祖父江慎によるデザインが、1篇ごとにたったひとつの世界を作りだす。
ページをめくるのが楽しい一冊!

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横浜美術館での個展〈詩の展示〉で発表された一連の詩や、
TBSテレビ「ゴロウ・デラックス」出演時に披露し話題を呼んだ「2月の朝の詩」ほか、
「果物ナイフの詩」「決壊」「つめたくてあかるい」「超絶っ子」など
初収録・書きおろしふくむ全43篇。
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感想・レビュー・書評

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  • この本のあとがきを読むまで、最果タヒさんを、女の人だと、思いこんでいました。その、あとがきが、とっても良かったです。あとがきの最後のところを、少し抜粋します。

     あなたのために、なんて図々しいことは言えません。けれどぼくは、「みんなの言葉」ではなく、いつまでも、「ひとりぼっちの言葉」を、書き続けようと決めています。読んでくれたその人、その人が本の前に現れることで、たったひとつの椅子が埋まるように。だからぼくは、あなたに読まれたことを幸福に思います。


    この詩集は、ページをめくった最初の詩、
    「果物ナイフの詩」から、詩の世界に、引き込まれた。…好きな詩が、たくさんあるが、その中から、「2月の朝の詩」を、抜粋します。


    まなざしで、触れることを知っている人。

    美しさをどうやって愛すればいいのかわからないまま、わたしは愛にばかり詳しくなった、朝の光に体を溶かして、すべてが消えていくような、そんなさみしさを恐れて、夜の中にとじこもる。触れることなど必要ではない、ぼくらには瞳があるのだからと、花を愛でる人がいて、朝を愛でる人がいて、その声に、耳を澄ませている。遠くの国で、降る雨の音、一瞬、きこえた、わたしの瞳は、窓に吸い込まれていく、朝の光が、わたしの涙に溶け込むように、ゆらめいていた。


          2月の朝の詩


    皆様、ごめんなさい。調べましたら、最果タヒさんは、やはり女性でした。教えて頂いたたあさん、hiromida2さん、ありがとうございました!


    • かおりさん
      あ、そうなんですね〜。
      一人称でぼくだと男性なのかと思いますよね。
      今の時代性もあって、ジェンダーに囚われたくないという意志の表れなのかもし...
      あ、そうなんですね〜。
      一人称でぼくだと男性なのかと思いますよね。
      今の時代性もあって、ジェンダーに囚われたくないという意志の表れなのかもしれませんね。

      教えてくださってありがとうございます☺︎
      2021/03/26
    • はまだかよこさん
      この詩集、是非読んでみたいです。
      ご紹介ありがとうございました。
      この詩集、是非読んでみたいです。
      ご紹介ありがとうございました。
      2021/04/06
    • りまのさん
      はまだかよこさん
      コメント頂きありがとうございます。素敵な読書時間をお過ごしくださいね♪
      はまだかよこさん
      コメント頂きありがとうございます。素敵な読書時間をお過ごしくださいね♪
      2021/04/06
  • 一篇の詩の中にストーリーがあると思いました。
    一篇一篇に物語性があって、読んでいて面白かったです。
    この面白さ、楽しさどう表現したらいいのか。
    次は一体何が出てくるのかな?と玉手箱みたいな面白さの世界でした。
    タイトルも素敵です。
    その中に何篇か、本当に吸い込まれていくように「これは好き」と思う詩がありました。
    読んでいて、最高に楽しい、とてもスリルのある時間でした。

    あとがきより抜粋
    「言葉が本当に通じ合うことなんてない。一つの言葉が多くの人の心をつなげ、一つにするなんて、そんなホラーはないだろう。言葉は通じないものだ。(中略)目の前のその人が本当に言おうとしたことを完全に理解することなんてできない」



    「氷河期」
    百年後、すべてが凍ってしまって、
    わたしひとり生き残った後の、ひどい気持ちを、
    今、抱いていたいと思う。
    人通りがいつだって多い、地下道で、わたしは立ち止っている。
    ここで、わたしはそんな気持ちを守っていたい。
    どうしてみんな死んでしまったの、わたしをおいて。
    満員電車に揺られながら、泣いていたかった。
    わたしは、誰とも友達でないから、
    誰とも恋人でないから、誰のことも殺せてしまうのだ、
    記憶の中で。

    春の光が、まだ冷たさに競り負けて、
    ぱらぱらと上空で砕けていくのが見える。
    どうしても、愛は愛として成立してしまう。
    歪んだ世界でも、歪んだ愛が、
    まるで垂直な雨のように、降り注いでいる。
    そんな、美しい偽りがあるんだと知っているから
    もう誰のことも愛しているよ。



    「果物ナイフの詩」「日傘の詩」「つめたくてあかるい」「約束した」「2月の朝の詩」「赤」もよかったです。

  • 詩集の感想ってたまになんて書けばいいかわからないときがある。この詩が好き、この言葉が心に響いたとか(私は「日傘の詩」が好き)ありきたりなことしか言えない。また同時に、詩集全体に対してざっくりとした印象が残る。『恋人たちはせーので光る』ではきれいな棘を丁寧にぬいていくような、少し物悲しい空気が漂っている感じがした。痛いはずの尖りが気持ちいような、優しいようなそんな矛盾した印象が残った。
    今回も装丁が好きだし、各ページのデザインにこだわりを感じることができてやっぱり紙の本が好きだな、と思えた。

  • 当たり前だけれど、読む時の自分によって好きな詩が変わってたのしい
    36 通行人の森
    38 明るい街
    65 遠心力の詩
    とても好き

  • たった2人の共有している時間を1度燃やしてしまってなかったことにしてしまったら、またもう一度会ってくれる?


  • あらすじを見ると私の好きとは少し違うかなぁ
    なんて思いつつオトモダチ何人か読んでいるのを
    見て初めて最果タヒさんの言葉を読みました。

    とにかくタラタラ読む私が一気に読めました。
    読み終わった頃、引き込まれました。
    自分の社会に出てからの嫌な感覚が少し変化しました。
    言葉も読みやすいものが多くすらすら読めました。

    他の作品も楽しみです。


  • 作者は、この殺伐とした世界に思うことがあったのかなと読んでいて思った。最果タヒさんの作品は、いつも詩と生と死があるけれど、今回は生の部分が強く感じられたような気がする。あとがきも良かったので、最後まで読んで欲しいなと思う。

  • 読んだ全ての人が、なにかしら感じるものがあると思います。読むとき時によっても全く違う思いを抱きます。幸せな孤独をあなたも

  • 詩の内容は正直、あまりわからない。でも、このわからなさが最果タヒさんの表現したいことであり、魅力なのだと思う。あとがきに、『ひとりでもいい』『みんなという言葉が語る幸せに、溶け込もうとしなくていい、そうやって、自分がひとりであることを、否定し、傷つける必要なんてない。』という言葉があった。最果タヒさんは他人には分からない言葉、自分だけの言葉を紡ぐことで、『ひとり』である自分の存在を肯定しているのだと思う。こんな孤独でも良いんだ、という力強いメッセージが私を勇気づけてくれる。
    『自分と自分以外に、世界を分断し、すべての幸福が、見せつけられていると感じる、そうした時間ほど、ぼくは孤独と呼びたい。』孤独を言い表す文章として腑に落ちた。
    言葉で他人同士がひとつになるなんて気持ち悪い、その人が話す言葉にはその人の持つ過去が反映されているから、本当の意味で同じ言葉なんてありはしない、という考えも納得出来た。その上で、私たちが言葉を使い気持ちを伝えるのは一体どういう意味だろう、と考えた。理解とか共感ではなく、意思表示をすることが会話なのかもしない。

  • 『幸せになることも血まみれになることだ、そう知ったところで、わたし、幸せになりたい。』

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著者プロフィール

最果タヒ(Tahi Saihate)
詩人。一九八六年生まれ。二〇〇六年、現代詩手帖賞受賞。二〇〇八年、第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。二〇一五年、詩集『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞を受賞。その他の主な詩集に『空が分裂する』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(二〇一七年、石井裕也監督により映画化)『恋人たちはせーので光る』『夜景座生まれ』など。作詞提供もおこなう。清川あさみとの共著『千年後の百人一首』では一〇〇首の現代語訳をし、翌年、案内エッセイ『百人一首という感情』刊行。エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞【←無限大記号、寝かす】』『「好き」の因数分解』、小説に『星か獣になる季節』『少女ABCDEFGHIJKLMN』『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、絵本に『ここは』(絵・及川賢治)、対談集に『ことばの恐竜』。

「2021年 『神様の友達の友達の友達はぼく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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