往復書簡 初恋と不倫

著者 :
  • リトル・モア
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本棚登録 : 3013
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898154618

作品紹介・あらすじ

「カルテット」「最高の離婚」「Mother」の坂元裕二、最新刊!
おかしいくらい悲しくて、美しく残酷な、心ざわめく2篇の恋愛模様。

- - - - - -
<不帰の初恋、海老名SA>

「わたしはどうしても、はじめのことに立ち返るのです。団地で溺れたわたしと同い年の女の子のこと。
わたしだったかもしれない女の子のこと。」

初恋の人からふいに届いた手紙。
時を同じくして目にしたニュースでは、彼女の婚約者が運転する
高速バスが横転事故を起こし、運転手は逃走中だと報じている――。
- - - - - -
<カラシニコフ不倫海峡>

「僕たちは捨てられた。問題は、さてどうしましょうか。ということですね?」

アフリカへ地雷除去のボランティアに行くと言い残し
突然旅立った妻が、武装集団に襲われ、命を落とした。
一年後、後を追おうとしていた健一のもとに、一通のメールが届く。

〝あなたの妻は生きていて、アフリカで私の夫と暮らしている〞

同じ喪失を抱えた2つの心は、徐々に近づいていき――。
- - - - - -

メールや手紙、二人の男女が綴るやりとりのみで構成された、息を飲む緻密なストーリー展開。
生々しい感触と息遣いまで感じられる、見事な台詞術。
「台詞の魔術師」 坂元裕二がおくる、忘れえぬ恋愛物語。

切なさに胸が痛む、ロマンティックの極北。

感想・レビュー・書評

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  • ここ数年、坂元裕二脚本というだけで無条件でドラマを見てきました。どうしようもない切なくてやるせない気持ちがいちいち刺さってくる名作ぞろいでした。
    しかし、anoneを最後にしばらくドラマから遠ざかると知り、坂元ロスになりました。
    心に空いた穴を埋めるためにこの本を読みました。

    なんだろ、逆にもっと寂しくなりました。
    どこかで聞いたセリフ、どこかで見た設定、すべてが坂元さんの世界で埋め尽くされていました(当たり前)。

    「初恋」の方が断然好きだと途中まで思いながら読み進んでいましたが、最後の最後の場面で、もちもとさんとあおばさんを見つけたような気になって、なんだか嬉しくなりました。うん、「不倫」もよかった。

    でもやっぱり坂元さんの生み出す言葉は、生身の人間のしゃべる声で聴きたい。坂元作品に出演する俳優陣が名優ぞろいなのか、彼の作品によって名優になるのかわからないけれど、一つ一つのセリフに命が込められているような。
    なんだか陳腐な言葉しか並べられない自分が嫌になるけど、坂元さんのドラマが好きってことです(笑)

    ドラマがだめなら秋になったら舞台を見に行こうかな。
    どんな俳優さんが出てくるんだろう。チケット取れるかな。
    今年の目標はお芝居を見に行くこと!を勝手に宣言してるので、頑張ってチケット争奪戦に参戦しようと思います。

    すいません、変なレビューで。

  • 二人しかいない会話の中で、二人の関係性が少しずつ変わっていく過程が分かる。最初は違和感、警戒。小さな出来事を経て、急な加速で近づいていく。そして思いもよらないアクシデント。でも読者はそのアクシデントを過去形でしか、二人がメールの中で言及している手がかりでしか知ることができない。それが余計に、想像を駆り立てる。

    小説とも、舞台の台本とも違う、二人の人間のやりとりの中に宿る物語。途中からページをめくる手が止まらなくなる。

    「きっと絶望って、ありえたかもしれない希望のことを言うのだと思います。」
    そんな気分で朝起きることが何度もあった。まさに、こういうことなんだと思った台詞。
    すごく新しい読書体験をした。

  • 【不帰の初恋、海老名SA】
    自分の中のなんでだかわからない衝動的な好きとか、忘れられないものとか
    -----------
    こんな風に思うんです。大切な人がいて、その人を助けようと思う時、その人の手を引けば済むことではない。その人を取り巻くすべてを変えなければならない、と。
    三崎明希

    思い出したっていうことは、忘れていたっていうことです。
    玉埜広志

    君がそう認識はしていなくても迷惑は迷惑として存在してるんだと思います。悲しみを伝えることって、暴力のひとつだと思います。わざわざ人に話すことじゃなかった。
    三崎明希

    三崎さんの手を握ることは出来た。だけど大切なことは、握ることじゃなく、放さずにいることだった。
    玉埜広志

    言葉を尽くせば尽くすほど、本当のことから遠ざかるのはいつものことです。
    三崎明希

    人には思春期というものがあって、その時期に出会ったもの、好きになったものは、それ以降に出会ったものとまったく別な存在になるように思うのです。言い換えれば、思春期に好きになったものがその人のすべてになると思うのです。わたしにとってそれは、君でした。
    三崎明希

    どうしてなのかその頃からわかっていました。これから先ずっと、こんなに好きになる人はもう現れないと理解していたからです。これから先、どんな出会いがあっても、どんな別れがあっても、どんなに長生きしてもこんなことはもう一生ないってわかったからです。そのくらい玉埜くんのことが好きでした。その気持ちは今も減っていません。増えてもいません。変わらず同じだけどあります。これからのことも、これまでのことも全部その中に存在してる。そんなわたしの初恋です。
    三崎明希

    わたしの初恋は、わたしの日常になりました。支えのようにして。お守りのようにして。君がいてもいなくても、日常の中でいつも君が好きでした。
    三崎明希

    最近のわたしは、君は明日どんなかなと思いながら眠ります。君は今日どんなかなと思いながら目を覚まします。なんというか、出来れば君の力になりたいと思っています。
    三崎明希

    【カラシニコフ不倫海峡】
    ものすごく泣いてしまった、なんだか木穂子さんを思い出した。坂元さんの言葉に触れると、自分の人生を肯定できるし、もう少し生きていこうって思える。
    -----------
    出したくない元気は出さなくていいと思いますよ。人生は竹内まりやさんが思うよりは悪いものです。
    待田健一

    人間の心で最も制御できないのは、嫉妬とプライドだ。だけどその二つがない人間には何もできない。それは生きるための糧でもあるから。

    わたし、あのおばさんに恩返ししたいと思って、ずっと生きてきた感じなんです。ううん、全然臭くなかったよ。そう言って、二度と働かなくてもいいだけの大金をおばさんに渡して、恩返ししたいなって思って生きてきたんです。
    田中史子

    あなたはとっくの昔に色んなことを諦めた人だった。諦めても諦めても、諦めてもまだ諦めなきゃいけないことは出てくる。もう十分諦めたかなと思ってもまだ諦めなきゃいけない。
    そんな人生を送ってきて、それでも真面目に生きてて、朝になるとちゃんと目を覚まして、今日その一日を諦める。
    待田健一

  • 「誰かの身の上に起こったことは誰の身の上にも起こるんですよ。川はどれもみんな繋がっていて、流れて、流れ込んでいくんです。」

    ドラマで大好きな坂元節は、本でもずっぷり胸を刺してくる。
    最後の公演情報で二人芝居(朗読劇?)として上演されたものだったことを知ったが、書簡体小説としても全く違和感がなかった。
    喜劇と悲劇がない交ぜの人生は続いていく、時々終わる。
    傷を消してはくれないけれど、寄り添ってそっと撫でてくれる、無力で優しいかみさまの手のような感触が後に残った。

    ああしかし公演も見たかった…特に高橋一生のを…高橋一生のを…のを…。

  • ドラマには、言葉がない瞬間にも伝わる言葉があり、間合いが好きでした。
    一つ一つの言葉も丁寧に選んでいるようで好きです。

    書籍でも変わりませんでした。
    言葉がなくても伝わる言葉があるというか。

    今までの坂本作品の登場人物がたくさんよぎりました。

    最後の「はい」
    あの2文字に込められた想いに潰されそうです。

  • ドラマでおなじみ坂本裕二さんの書簡小説というのでしょうか。朗読劇の小説版というのか、男女2人の会話で成り立つ物語2(編)本。スイスイ読めてドラマ同様生活感があって時々笑えるセリフなのだけれど少しづつヘビーな事情が絡んで渦に巻き込まれるように呆気に取られる展開で、読了後余韻が重めに残った。風間俊介さんもイメージ合うけど、高橋一生さんで演ったのかぁ~いいなぁでも重いなきっと~と、そういう妄想でも楽しめた1冊でした。

  • 坂本裕二はままならない人生を書かせたら右に出るものは居ないな。
    本人は懸命に生きているのに、周囲の圧力や搾取が彼らの生活からまともさを奪っていく。
    ハズレだらけの選択肢からせめてものマシなハズレを選んで行くうちにどんどん窮地にはまり込んでいく。
    外から見たら「いや逃げれば良かったじゃん」と簡単に言ってしまいそうになるけど、ひとつひとつ歩みを辿っていくと、それ以外の道が無かったとわかる。

    心がグッと重くなるんだけどどこかに救いがある空気なのがすごい。サクッと読めた。

  • 初恋と不倫という言葉から連想されるような話ではなかった。こんな感じの方がいいけど。
    手紙やメールのやりとりだけで話がすすむのでテンポよく読みやすい。
    相手のことを考えてるようで無視したり自分の言いたいことだけ述べてみたり答えたくないことは答えないところが面白くてよかった。不倫はダメだから同じ映画を別々にみて感想だけ言いあっていくのが笑えた。
    思ってもみなかった方向に話が進んでいき驚いた。

  • カルテットの時も同じようなセリフがあった。
    昔の私だったらよく分からなかったかもしれないけど、今はとても腑に落ちる。
    恋って、心と頭のどこかで私を守ってくれるものな気がする。

    =======
    わたしの初恋は、わたしの日常になりました。
    例えば長めで急めな階段を降りる時。
    例えば切手なんかを真っ直ぐ貼らなきゃいけない時。
    例えば夜寝る前、最後の灯りを消す時。
    日常の中のそんな時、玉埜くんと繋いだ手を感じているのです。
    あの日バスに乗った時も君の手を感じていました。支えのようにして。
    お守りのようにして。
    君がいてもいなくても、日常の中でいつも君が好きでした。

  • 再読。内容は完全に忘れていた。
    YouTubeで「ハリネズミ お風呂」と検索したら、いちばん上に出てきた動画が視聴済みになっていてわらってしまった。どうやら過去の自分も同じように検索していたらしい。

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著者プロフィール

脚本家。ドラマ「東京ラブストーリー」「それでも、生きてゆく」「最高の離婚」「わたしたちの教科書」「Mother」「Woman」「カルテット」等、向田賞ほか受賞多数。映画、舞台でも活躍。海外でも高い評価を得ている。

「2022年 『初恋の悪魔 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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