映画の見方がわかる本: 2001年宇宙の旅から未知との遭遇まで (映画秘宝COLLECTION 22)

著者 :
  • 洋泉社
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感想 : 107
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896916607

作品紹介・あらすじ

『2001年宇宙の旅』にはナレーションの解説がついていた。『地獄の黙示録』のシナリオはベトナム戦争を礼賛していた。『時計じかけのオレンジ』も『タクシードライバー』も実話だった。わからない映画がわかり始める、隠された事実の数々。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカン・ニューシネマが生まれてから軌道に乗り衰えていくまで(1967から1979)を、代表的な作品をもとに描いた評論。
    やたら難解でマイナー作品を扱う映画評論とは異なり、見る機会の多い作品を豊富な資料をもとにわかりやすい語り口で説明している。
    とても好感が持てる。
    アメリカン・ニューシネマと呼ばれる作品群は大好きなのだが、その歴史文脈をしっかりたどったことはなかったので、いい勉強になった。

    1「2001年宇宙の旅」
    2「俺たちに明日はない」「卒業」「イージー・ライダー」
    3「猿の惑星」
    4「フレンチコネクション」「ダーティーハリー」
    5「時計じかけのオレンジ」
    6「地獄の黙示録」
    7「タクシードライバー」
    8「ロッキー」
    9「未知との遭遇」

    特に7・8・9章は作り手の視点に寄り添い、彼らのコンプレックスの昇華に至るまでをじっくり描いている。
    続編の評論集も読みたい。

  • ものすごくためになった。もっと早く読みたかった。
    スコセッシ、スタローン、スピルバーグなど、おなじみすぎる映画人の生い立ちと、それが彼らのつくる映画にどうつながったか、それをアメリカの社会や文化の歴史にからめて説明した本なのだけども、なんといっても町山さんの筆力に圧倒される。まさか『ロッキー』の章でむせび泣きそうになるなんて思わないじゃないか!
    自分が今まで作り手の人生とかにほぼ無関心なままただなんとなく映画を観て来たんだなってことがようくわかって、ちょっと落ち込んだけどね…。

  • 1960年台後半から1970年台にかけて、アメリカで制作された映画の「謎」を読み解く力作。

    「映画秘宝」に連載されたものを単行本化。

    20年近く前に出版された本だが、新しい発見がたくさんあった。

    それは、本書で取り上げられた映画たちが難解であり謎解きが今でも語られて続けているからだ。

    著者は豊富な知識と映画に対する造詣で、その謎に迫っていく。

    見たことある映画も、タイトルだけ知っている映画も、その奥の底にあるメッセージにこそ作り手の言いたいことが、そしてその時代そのものが映し出されている。

    「映画の見方がわかる」とサブタイトルで言い切っているのもうなずける。


    ・「2001年宇宙の旅」--映画史上最大の「マジック」のタネ明かし。

    ・「俺たちに明日はない」「卒業」「イージー・ライダー」--ニュー・シネマという反乱。

    ・「猿の惑星」--猿が猿を殺すまで。

    ・「フレンチ・コネクション」「ダーティー・ハリー」--アウトロー刑事の誕生。

    ・「時計じかけのオレンジ」--レイプとウルトラ暴力とベートーベンがオレの生きがい。

    ・「地獄の黙示録」--戦場は本当に「地獄」なのか?

    ・「タクシードライバー」--孤独のメッセージ。

    ・「ロッキー」--70年台をノックアウトした男。

    ・「未知との遭遇」--星に願いを。


    映画に込められたアメリカの社会について、大きく「わかる」ことができた。

    「『ニューシネマ』というカウンター・カルチャーは、資本主義、キリスト教、戦争、人種差別、家族、親、大人に『NO』を唱えた。しかし、『では、代わりにどうするか』という答えを見つけられなかった。社会主義も、カルトも、ドラッグも、コミューンも、フリー・セックスもいろいろ試してはみたが、どれもうまくいかなかった」(P73)

    そうなのだ。

    あとは、この本を読んだ私自身がいかに「かわる」ことができるかだ。

  • 映画の絶対的な名作ってありますよね。例えば「ベン・ハー」や「風と共に去りぬ」とか。このあたりって誰がいつ観ても面白いし、いろいろと考えさせてくれる映画ですね。ところが同じように名作として語り継がれている「2001年宇宙の旅」とか「地獄の黙示録」や「タクシードライバー」あたりになるとどうでしょうか?難しいというか意味不明な部分が多くて、またはどうしてそんなに人の負の側面ばかり強調するのか?みたいなところもあり、正直言って「これって本当に名作と言えるのか?はっきり言って面白くないんじゃないのか?」と感じてしまう人も多いのではないでしょうか?
    そんなふうに思いつつも実は自分の「映画の見方」がイマイチなのではないのか?実は上記のような意味不明な作品の凄さを知る秘密があるのではないのか?と思っている人にはこの本がオススメです。
    著者の町山智浩さんは作品の直接的には現れない作者の意図や作品が生まれた背景を知ることにより映画はもっと楽しくなると主張します。その意図や背景を探りながら上記にあげた「難しい」映画の楽しみ方をこの本で書いてくれています。
    例えば映画全体、特にハリウッド映画産業のおおまかな流れの中で個別の作品の位置づけを捉えるという考え方がなるほどと思わせてくれます。映画はまず純粋な娯楽として「見世物」として始まり、徐々に製作者の主張を鮮明にしていく「作品」となり、さらに時代が進みいかに誰もが消費しやすい(楽しめる)「製品」へと変化していったということです。
    で、この本で取り上げられている「2001年宇宙の旅」であるとか「地獄の黙示録」「タクシードライバー」「明日に向かって撃て」「ロッキー」といったあたりの作品は主に1970年代の製作者の主張が色濃く反映した「作品」としての映画が主流だった時代の映画なんですね。
    つまり観る側が理解できるように噛み砕いた内容というよりも、より製作者側の表現したいことを明確に表現できるか?に重きが置かれていたわけです。
    だから面白さを理解するのに負荷がかかるのは当然なんですね。わかりにくくて、考えつつ観なければわからない、ということになります。
    このあたりというのは文章を書くことについて考えるときによく出てくる「読み手ファースト」か「書き手ファースト」か?という議論にも通じますね。
    で、普通に考えると映画というのはお金を払って観る商品でありますから「観客ファースト」が正しいのではないのか?製作者側の独りよがりでは駄目なのではないか?と思いがちですが、実はそうでもないと思うんですね。
    最大公約数を狙った「製品」はそれなりに楽しめますがやっぱり観て楽しんでそれで完了という感じ、対して製作者の意図を深掘りした「作品」というのはわからなさが心にひっかかっていつまでも忘れらない映画となっていくような気がします。
    例えば「2001年宇宙の旅」といえば「ツァラトストラはかく語りき」が鳴り響く場面が印象的ですが、やはりこの作品というのはニーチェの思想と重ね合わせて観てみるとより面白かったりするんですね。
    それから「タクシードライバー」の監督であるマーディンスコセッシはコンプレックスの塊のような人物であり、その彼の鬱屈した感情こそがタクシードライバーの世界であることなんかがこの本で書かれています。
    印象的な記述を引用してみます。

    「スコセッシが中国の大学で映画の講義をしたとき、一人の生徒が「僕は孤独で気が狂いそうです。どうしたらいいんでしょうか?」と相談したという。「君の孤独感を表現してみなさい」とアドバイスされた生徒は自分のことを映画にし、評価を得て、再びスコセッシに邂逅した。「表現したけど、寂しさは消えません」スコセッシは哀しげにこう答えたという。「・・・実は僕だって、そうなんだよ」

    で、そのスコセッシの親友でもあるスピルバーグの「未知との遭遇」では家族を捨ててUFOに乗る男が出てきます。スピルバーグという人の父親というのは家族を捨てて出ていった男であったそうです。
    そして後に作られた「ET」では、父親に出て行かれた少年が主人公ですね。そしてラストで少年はETに一緒に宇宙へ行かないか?と誘われます。
    で、その誘いに対しての少年の選択というのがスピルバーグ自身の最も言いたいことだったのではないか?というような事も書いてあります。
    読み物としてもとても面白い一冊でぜひオススメの一冊です。
    2017/09/04 08:08

  • ポスト・ポストモダン論やニーチェを映画という具体に紐つけて語るわかりやすさ。それでも決して根本的なヒューマンな視点と愛情は持ち続けて語る。おそらく現在最高峰の映画評論。

  • いやこれはいい

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • じわじわ気になっていたイージー・ライダー、いままで興味なかった地獄の黙示録とロッキー、町山さんの解説を読んで、はじめて観てみたいと思った。

    中々手が出ない映画はあえて解説やネタバレをさきにインプットするのもありかも。

    もう観たことのある作品についても、ただ漠然と観ていたから、製作過程を知った今、次観るときに違う見方になると思うと楽しみでしかない。

  • 映画作品の見方は自由だけど、解説があるともっと楽しめるっていう話。


    映画は「見せ物」から「作品」へ、そして「製品」になってしまった、と。

  • "2001年宇宙の旅"、"時計じかけのオレンジ"、"タクシードライバー"、"イージー☆ライダー"と好きな映画について全て言及されているので、貴重な一冊。

    "ロッキー"も解説を少し読んでから見たらこれまた傑作でした。

    個人的には"裏取りをしないで述べる映画評"に価値が無いとは全く思いません。二時間の中で読み取れる以上の二次情報を取りに行けるのは相当の暇人だし、観客と監督はそもそも情報格差が生じるものなので。

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著者プロフィール

1962年生まれ。映画評論家。1995年に雑誌『映画秘宝』を創刊した後、渡米。現在はカリフォルニア州バークレーに在住。近著に『トランピストはマスクをしない コロナとデモでカオスのアメリカ現地報告』(文藝春秋)、『映画には「動機」がある「最前線の映画」を読む Vol.2』(集英社インターナショナル)、『最も危険なアメリカ映画』(集英社文庫)、『町山智浩のシネマトーク 怖い映画』『町山智浩の「アメリカ流れ者」』(スモール出版)などがある。

「2021年 『町山智浩のシネマトーク 恋する映画』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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