ウソをつく生きものたち

著者 :
  • 緑書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784895317849

作品紹介・あらすじ

ウソの数だけ、いのちがある。

生きものたちは食うため・食われないため、バラエティ豊かにウソやまねの工夫を身につけている。
40億年近くの長い進化的歴史のなかで生きものたちが獲得してきたユニークな姿(形態・行動・生態・生理)について、基礎知識から雑学までさまざまな角度から楽しく解説した一冊。

感想・レビュー・書評

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  • ウソをつくとか騙すということが、生き物にとっていったいどのような意味を持っているのか。
    動物はウソをつかない?

    ということを考えてみる本です。

    まず、生き物のいろいろな"擬態"が紹介される。

    強者弱者によらず存在を隠し見つかりにくくしている。
    強者は獲物の目をごまかして狩りをする。
    弱者は強い敵をだまして生き残ろうとする。

    危険生物に似せて攻撃されにくくする。
    色だけ似せるもの、形まで似せるものなどイロイロ。

    ランの花に似せた、ハナカマキリ。
    岩に似せた、オニオコゼ。
    舌先をミミズに似せた、ワニガメ。
    チョウチンアンコウは、釣り竿に付けた光るエサを作り出しているが、何かに似せたのでしょうか?

    擬態は形や色だけでなく、匂いや化学物質による化学擬態や、鳴き声や羽音などを真似したものもある。

    擬態することでメリットを受けている生物は増えすぎることはできない。
    個体数に制限がかかるというのは、言われてみればそうだなと思った。

    次に、擬態ではなく騙すという行為に話題が移る。

    カケスはモズのようにエサを隠すが、隠すところを別のカケスに見られたと察すると、隠したエサを別の場所に隠し直す。
    別のカケスが隠したエサを盗んだことがあるカケスが、こうした隠し直しの行動をとりやすいそうだ。

    群れの中で強いオスに傷つけられたチンパンジーが、いつまでも足を引きずっているので可愛そうに思っていたら、
    強いオスの視界に入っている時だけ足を引きずっていた。
    そうすることで攻撃を受けないことを学んだらしい。

    生き物の世界には、生き延びるためのウソや騙し合いが見られる。
    なかでも人は飛びぬけて社会的ウソの能力が高い。
    それは「ことばたくみに」という言い回しにあるように言語を操る存在だから。

    私は幼児が(バレバレの)ウソをついたら、知恵がついたと好意的にとらえるし、
    児童・生徒などの、他人を気遣うためのウソも微笑ましく思う。
    対して、自己保身や自分をよく見せるため、自分の利益のためにウソをつく大人はみじめだ。
    ウソの辻褄を合わせるのにウソだらけになって疲れないのかね。
    疲れちゃうから最後はノーコメントになっちゃうのかね。

    本書は、最後に人間社会での騙し合いにも触れています。
    擬人化して生き物のウソを考えると間違うことが多いらしい。

  • 「嘘をつく」というと、騙される側の立場でネガティブな印象だが、騙す側には戦略的手段であり、立派な生存戦略だ。継続的な関係維持や無秩序な状態からの相互不利益を回避するため、社会性動物である、人間が嘘をつかない事を約束事にしているに過ぎない。殺され、捕食されるなら、上手い嘘をついて生きるのが当たり前だ。

    ウサギは、狐から逃げるために、雪の上の自分の足跡を消す。自分が普段隠れているところや子供を産んで育てたりしている場所があるとわざと少し雪道を後戻りして、ぴょんと横に飛んで足跡を途切れさせる。これが出来ないと死滅するから、上手に出来るモノに淘汰され、特性が継承されていく。

    擬態。毒があることを示すために警告色を発し、互いに真似し合うことをミューラー型擬態。無毒だがその警告色を真似ることをベイツ型擬態。いずれも食われないための工夫。托卵もそう。本著では、こうした生き物の「ウソ」に関わる生存戦略が解説される。

    しかし、戦略により淘汰され、結果的に適者生存が進化の理由になるなら、ウソを見抜き対策する側と新たなウソをモデル化する側は、常にイタチごっこだ。演繹的にその構図を見抜くのが人間で、構図を支配した故の人新生か。コスプレや化粧や演技、物語や洗脳など、同種では、騙し騙されをしてはいるが。

  • 『ウソをつく生きものたち』。なかなか衝撃的なタイトルである。内容はというと、生きものたちの擬態行動についての本というのが真相。さまざまな擬態に関する生きものが紹介されている。なかでも、アリの仲間に関する「化学擬態」がとても興味深かった。星3にした理由として、化学擬態の項目でイラストを用いた図説があったらもっと良かったと思う点である。実は随所にこの傾向は見られ、巻頭に口絵があるものの、ずっと文章での解説が続く点で、残念ながら読み難くしている点が否めなかった。
    別の著者で、QRコードを用いた個体の紹介があり、現代ならではの画期的な紙面の使い方だと思ったものだ。擬態というテーマが良かっただけに、簡潔に説明できるビジュアル面で見せられる箇所があったら…と個人的に感じたところである。

  • 生き残るため。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1421523

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著者プロフィール

【著者】森 由民
動物園ライター
1963年神奈川県生まれ。千葉大学理学部生物学科卒業。各地の動物園・水族館を取材し、書籍などを執筆するとともに、主に映画・小説を対象に動物観に関する批評も行っている。専門学校などで動物園論の講師も務める。著書に『動物園のひみつ』(執筆/PHP研究所)、『約束しよう、キリンのリンリン いのちを守るハズバンダリー・トレーニング』(執筆/フレーベル館)、『春・夏・秋・冬 どうぶつえん』(共著/東洋館出版社)など。

「2022年 『ウソをつく生きものたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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