夜よ鼠たちのために (ハルキ文庫 れ 1-4 連城三紀彦傑作推理コレクション)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894564749

感想・レビュー・書評

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  • 「このアイデアを使いたくて、この設定にしたんだろ!」

    特殊な設定だからこそ成り立つロジックとトリックに唸る。
    ミステリ作家連城三紀彦の会心の短篇集、新潮文庫版『夜よ鼠たちのために』にさらに凄い三篇をくわえた凄過ぎる本。

    『代役』
    アクション俳優とその代役。
    三時四十六分、ひかり号のなかで秘めたる計画。

    『ベイ・シティに死す』
    六年の刑期を終えて出所した男とその愛人、そして舎弟。
    娑婆に出てきた「私」の諦めきれなかった思い。最後の夢。

    『ひらかれた闇』
    熱血音楽教師と暴走族グループ。
    退学させられた生徒がまきこまれた殺人事件。
    ジャンヌ・ダルクのように孤軍奮闘する「マザー」こと水木麻沙。

    「このアイデアを使いたくて......」なんて冒頭で歓喜のツッコミを入れてしまったが、実はこの特殊設定が必然だったのではないかとまで思わせる高い叙情性。
    巻末の解説によれば『ベイ・シティに死す』は直木賞候補になったらしい(後に連城氏は『恋文』で第91回直木賞を受賞している)。

    新潮文庫版のレビューでも書いたが、物語の面白さとミステリの超絶技巧のハイレベルでの共存は奇跡。
    ただそれだけに、文芸系出版社とミステリ系出版社のはざまのエアポケットで宙に浮いて、いまだに復刊されないのが非常に惜しい。
    東京創元社さんあたりが手を挙げてくれませんかね。

    (余談だが『夜よ鼠たちのために』は新潮文庫版、ハルキ文庫版ともにブックオフの100円コーナーで手に入れた。ちょっと自慢。
    これだから古本屋巡りはやめられない。)

    • 円軌道の外さん

      kwosaさん、こんにちは!
      大変遅くなったけど
      先日はお気に入りポチと
      沢山のコメントありがとうございました!
      最近レビュー書...

      kwosaさん、こんにちは!
      大変遅くなったけど
      先日はお気に入りポチと
      沢山のコメントありがとうございました!
      最近レビュー書かれてないみたいやけど、
      体調崩したりしてへんかなぁ~(汗)((((((゜ロ゜;
      (実は昨日コメントするつもりやてけど、携帯握ったまま落ちてたんスよ~泣)

      てかてか、『夜よ鼠たちのために』読みました!
      タイトルそのままに
      めちゃくちゃハードボイルドやないっスか~(嬉)(^o^)

      しかも短編やのにすべてにきちんとオチがあって
      超絶技巧のオンパレードやし!(笑)(>o<)

      kwosaさんの言うようにオチや仕掛け云々より、
      その美しくメランコリックな文体に
      もうどっぷりハマってしまいましたよ~(笑)

      いやぁ~、kwosaさんに出会わなければ
      こんなにスゴい作家を知らずに
      みすみす死んでいくところでした(笑)
      ホンマ紹介してくれて
      感謝感激!
      言い尽くせない喜びであります!(*^o^*)
      (これから連城さんは遅まきながら追いかけていきたいなぁ~)


      知らぬ間に今年も
      残すところあと2ヶ月となりましたが(汗)
      変わらずの御贔屓よろしくお願いします!

      あとあと、僕の本棚の
      「星を撃ち落とす」「叫びと祈り」「犬はどこだ」「太陽のパスタ、豆のスープ」「消失グラデーション」に
      大変遅くなりましたが(汗)
      コメントの返事書いたんで、
      暇つぶしがてらにでも
      また覗いてみてくださいね~。

      愛情溢れる素敵なレビュー
      これからも楽しみにしていますね(^ー^)
      (あっ、「オーブランの少女」は感想聞きたいんで是非とも読んでみてください!書店員をしながら小説書いてる人みたいやけど、上手いしセンス抜群です!)

      2014/11/08
    • kwosaさん
      円軌道の外さん!

      コメントありがとうございます!
      ご心配なく。元気です!
      ただ最近は読書の絶対量が減ってます(恥ずかしながら娘と二...
      円軌道の外さん!

      コメントありがとうございます!
      ご心配なく。元気です!
      ただ最近は読書の絶対量が減ってます(恥ずかしながら娘と二人でポケモンにはまっており、ゲームばかりやっているのです)。
      そして、読んでも文章としてアウトプットできなくなってきているんです。
      一度書けなくなると、未レビューどんどんがたまっていき、それがまた高い壁になっていくんです。
      ちょっと肩に力が入ってるんですかね。

      それでも「この本はすごく面白かったんだよ!」「みんなにも読んでほしい!!」って気持ちはたくさんあって、伝えきれない気持ちが山ほどあります。
      そんな気持ちを大切にして、またレビュー書いてみましょうかね。

      だから円軌道の外さんが『夜よ鼠たちのために』を読んでくださったのは本当に嬉しいです。
      あれ、良かったでしょう?
      「どこか復刊してくれーっ」て叫んでいたら、ほんとに宝島社文庫がやってくれて。
      表紙もカッコ良くて、しかもフルコンプリート仕様のハルキ文庫版準拠での復刊で言うことなし!
      多くの方に読んでほしいので、ここはブクログに多大な影響力を持つ円軌道の外さんに、激アツなレビューを書いて頂きたいですね。

      話はつきそうにないのですが、ひとまずここで。
      あとは本棚の方へお邪魔します。
      こちらこそ、これからも末永くよろしくお願いします。
      『オーブランの少女』も読んでみますね。
      ではまた。
      2014/11/13
  • 「二重生活」
    これは騙された。自分と妻と愛人と――みんながそれぞれ芝居をしていて、復讐している。

  • 新潮文庫版に三編が加わった、極めて高水準の作品が揃った短編集です。
    どのように収拾をつけるのか不安になる程の不可解状況を、著者お得意の「反転」で鮮やかに解決しています。その切れ味は著者の作品群でも随一。是非「引っ掛けられる喜び」を堪能して欲しいです。
    ベストは【過去からの声】。独創的な誘拐トリックに思わず唸ってしまいます。
    【代役】は反転に次ぐ反転の超絶技巧。凄すぎます。

  • 戻り川心中と比較すると、全体的にアンフェア(というかご都合主義)的な部分はあるが、どれも唸らされる逆転の発想を持っている。文章もキレイで読みやすい。表題作が一番かな。

  • 短編集なのに一話一話に物足りなさがなく、むしろ不要な物をそぎ落としたらこんな感じになりましたという感じの作品群。
    特に「二重生活」と「代役」が良かった(≧∇≦)b

  • ◆二つの顔・・・あなたの奥さんがホテルで死んでいるから身元確認をしてくれと警察から連絡が入った。しかし妻であるはずがない。なぜなら妻はさっき自分がこの寝室で殺し、庭に埋めたのだから。。
    ◆過去からの声・・・僕が刑事を辞めた本当の理由・・・それを、ずっとコンビを組んでいた岩さん、あなたには知っていてもらいたい。
    ◆化石の鍵・・・留守番をしていた少女の首をしめたのは、母親?父親?それとも管理人?
    ◆奇妙な依頼・・・妻の素行調査というありきたりな仕事のハズだったのに・・・いつのまにか探偵は、探る側と探られる側で獲り合いのようになっていた。
    ◆夜よ鼠たちのために・・・俺は決して忘れない。幼い頃に大事にしていた鼠の信子が針金で絞殺されていたことを。そう、これは復讐なのだ。
    ◆二重生活・・・親子ほど年が離れた関係に、牧子は悩んでいた。修平はやはり、静子のような成熟した女の方がお似合いなのだろうか。
    ◆代役・・・自分と同じ顔をした男を海外から呼び寄せ、仕事を依頼した。本当の依頼主は妻。妻を抱いて、子供を作るためにその男は呼ばれたのだ。
    ◆ベイ・シティに死す・・・暴力団に属していた私、そして子分のような征二、そして私の女である恭子、三人はよくつるんでいた。まさか二人が裏切って、私が刑務所に入ることになるとは思いもしなかった。
    ◆ひらかれた闇・・・不良グループに助けを求められ、教師のマザーこと水木麻沙は現場へ。仲間の一人が死んでいるというのだ。

    以上9編の短編集。男女の訳あり・複雑な関係が絡む話がほとんど。
    一つ一つがものすごく濃く、かなり凝ったものであるのはわかるのだが・・・どんでん返しが多いこの短編集、最後にはすっかり疲れてしまった(^^;凝りすぎてややこしくなってる作品多々。

    ◆過去からの声・・・これだけちょっと、テイストが違ったかな?男女がらみの話ではなく、仕事で敬愛していた上司に対してのある告白。ラストにはせつなさが漂う。

  • 連城ミステリの現代ものということでいえば、『変調二人羽織』を受け継ぐという位置付けとなり、ミステリの手法的な部分でもほとんど変わるところはないが、より艶やかさを増した文体が物語に奥行きを生み出していて、しかしながら余計な装飾のないストレートなミステリを堪能できる、まさしく傑作といえる作品。

  • 対談に出ていた本。「往復書簡」が短い書簡体ものの傑作。とのこと。

  • 何年も探し続けてるのに、未だに入手できてません。orz
    ぜひ、復刊して欲しい。

  • 持っているのは講談社文庫

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著者プロフィール

連城三紀彦
一九四八年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。七八年に『変調二人羽織』で「幻影城」新人賞に入選しデビュー。八一年『戻り川心中』で日本推理作家協会賞、八四年『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で直木賞を受賞。九六年には『隠れ菊』で柴田錬三郎賞を受賞。二〇一三年十月死去。一四年、日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞。

「2022年 『黒真珠 恋愛推理レアコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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