政治家の胸中 〔肉声でたどる政治史の現場〕

著者 :
  • 藤原書店
3.50
  • (0)
  • (5)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 28
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894348745

作品紹介・あらすじ

岸信介、佐藤栄作、田中角栄、三木武夫、福田赳夫から小泉純一郎まで約四十年、戦後政治の激変期の中で、第一線の政治記者として著者が間近に接してきた政治指導者の肉声から迫る、政治家の器量と、政治の真髄。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ・佐藤さんは「人事の佐藤」と呼ばれ、福田さんと田中さんの二人を競い合わせて巧みに派内、党内の人事操縦を行ったり、四選後の内閣改造を見送って田中さんをあぜんとさせたりして長期政権の運営に成功したが、それがアダになって、最後は余力を失い、ポスト佐藤の体制に影響力を行使することができなくなる。田中さんも金の力と絶妙な使い方で権力を握ったが、これが逆に金権政治批判や金脈スキャンダルを招き、わずか二年余の短命政権に終わった。
    政界には「人間、得意技で倒れる」というジンクスがしばしば語られる。じょうずの手から水が漏れるように、得意な分野だと慢心したり気が緩んだり、あるいはやりすぎたりで、かえって失敗するという戒めである。人事の佐藤さんは人事で、金権の田中さんは金で、まさに得意技で倒れ、この面でも後世政治家に苦い教訓を残した形になったのである。

    ・「いや、そんなことはないよ。いまや、野党、民主党は、自民党にとって最大の協力勢力だよ。」と小泉さん。「協力政党ということはないでしょう」と反論すると、「いや、いいんだ、民主党が提案するものを全部丸呑みすりゃあいいんだ」という。そんなことをしたら、今度は、参議院の自民党が、議席は減ったにしても自民党はいるのだから、「民主党案を丸呑みなどしたら、参議院側の自民党が怒って協力しなくなるでしょう」というと、「いや、参院自民党はもういい。ここから先は、相手にするのは民主党なんだよ」と、こういうせりふを即座に言い切る。

  • 主に高度経済成長から約40年間の日本政治の裏側を、その時代を彩った政治家たちの言葉を通して描かれている本。
    政治記者出身である著者による長年の経験の蓄積によって浮き彫りになっているのは、政治家のしたたかさや権力への執念といった人間性と、国家を主体にして物事を考える”公人性”(こんな言葉あるのかわからないけど)である。
    筆者は、現在の政治は政党の派閥構造のと地方党員および国民世論の無党派化によって政治が「液状化」、流動的なものになってしまったと説く。「反復」「断言」「感染」をキーとした扇動的なスピーチを行う政治家が氾濫する原因はこのような政治状況のためなのである。
    この現状を打開する方策として、筆者は政治家の公人としての自覚を持つこと、選挙制度をいま一度改革すること、そして有権者の見識を養うことを挙げている。
    特に小選挙区制度は政治家の腐敗を抑えることができた一方で、中選挙区制度において優れた働きをしていた人材育成の役割を失ってしまった。
    政治とは政治家たる個人の資質にその重きを置く営みであるため、政治家としての力量を高める事が可能な制度にすべきであると述べている。

    大学などで使用されるいわゆる”普通の日本政治史のテキスト”と異なり、政治家の生きた言葉を軸にして時代背景や政治の動きを解説してくれているため非常に面白く、一気に読み進めてしまいました。また、政治記者としての本能というか使命のような凄みを感じられました。
    とても面白かったです。

  • 期待より下回った。もっと深い内容のが良かった。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

読売新聞 論説委員長

「2021年 『政治家の責任』 で使われていた紹介文から引用しています。」

老川祥一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×