貧しさ

  • 藤原書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894345690

作品紹介・あらすじ

ハイデガー全集未収録のテクスト。ラクー=ラバルトによる厳密な読解。独の降伏直後、コミュニズムを論じ、再度、「精神革命」(形而上学と技術の世界支配からの跳躍)を要請した、全集未収録の、ハイデガーの"ヘルダーリン‐マルクス論"。ハイデガーの真価と限界を誰よりも知る、ラクー=ラバルトによる厳密な読解。"革命"とは何か?"コミュニズム"とは何か?-ヘルダーリン、マルクス、そしてハイデガーを貫くドイツ精神史の問い。

感想・レビュー・書評

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  • 010
    フランス語のエスプリ
    プネウマ(気息、霊)的なもの
    スピリトゥス(聖霊)的なもの
    精神とは
    照明と叡智の作用する力???照明???
    ギリシア語で言えば
    ソフィアの力

    西方ローマ教会にとっては
    アウグスティヌスの『三位一体論』が規範とされた。

    東方教会では、別の発展、とりわけロシアでは
    聖ソフィア説が展開
    万物にあまねく作用する照明と叡智の力としての精神の働き

    ヤーコブ・ベーメ、ゲルリッツの靴屋、は、
    靴つくりの球に魔術的なものを見出し、それを根源意志とみなしていた。

    神的なソフィアにかんするベーメの教えは
    すでに17世紀のロシアで知られており
    当時のロシア人たちは
    ベーメを、聖教父ヤーコブ・ベーメと読んでいた。

    ロシアにおける、ベーメの影響は、19世紀初頭に新たな展開を遂げた。
    ヘーゲルやシェリングの強い影響が及ぼされたのと同じ時期のことである。

    012
    ロシア・コミュニズムと名付けているものは、ある精神的な世界に由来するのだと、誇張なしに言える。

    054
    トーマス・ミンツァーやヤーコブ・ベーメの神学政治的パースペクティヴに組み込まれている。

    後者の名は
    ハイデガーの論述の中に突如として現れることにもなる。

    全般的宗教改革は、近代的転覆、つまり、革命による矯正の設立の前奏曲だった。
    ベーメは、教会の再建、およびルターと領邦諸侯との同盟に激怒し、全般的な宗教改革を求めた。

    085
    精神たちのコミュニズムへの秘められた、暗号クリプト化された参照の理由が部分的にであれ、確認されたとして、ではなぜ、ハイデガーが、この状況にあわせて選択した言葉を鳴り響かせるべく、もうひとつのテクストに訴えかける必要があったのかを理解せねばならない。

    088
    富は、インド=ヨーロッパ系のあらゆる言語において
    まさしく力と至高なる主権を意味している。raja rex riki rix rich riche reiche あるいは、Reich 帝国ライヒ

    しかしそれは、権力ではけっしてない。

    このような力を、エロスのきわめて遠い対応物としての意志なるものへと結びつけることで、ハイデガーは、
    可能なものとしての最後の形而上学は、現実において、技術による世界支配の可能性を開き示す場合も、より平凡な仕方で、ファシズムのイデオロギーへと道を開かない場合も、いずれにせよ存在を あるいは、精神を 
    力として思考しているつもりになっていた。

    150
    ラクー=ラバルト
    マルクスは、ヘーゲルの弟子たちの教えを受け
    神学の勉強をした人間なのです。
    彼は
    ニーチェと並んで
    19世紀に、ヘルダーリンのことを知っていた稀有な人間の1人。

    156
    革命的ルター主義の中に見られる強力な理念。
    トーマス・ミンツァーや、ヤーコブ・ベーメなどの農民戦争におけるルター主義にマルクスは興味をかきたてられました。

    161
    ハイデガーのプロテスタンティズム

    162
    ヒトラーの大きなモデル、それはイエズス会だったのです

    ナチズムだっって、宗教改革の産物であり
    マルクス主義だって、そうなのです。
    ヒトラーもマルクスも、そのことを知らずにいたのです。

    ハイデガーは、実際は、カトリック教徒であるよりも、はるかにルター信奉者だったのです。
    彼は、たしかにカトリック宗教の下で教育されました。カトリック神学の勉強もしました。

    20世紀最大のプロテスタント神学者のひとりブルトマンと一緒だったのです。

    163
    ユダヤ教においては
    ユダヤの伝統の代表者たちのほとんどが、彼らの住み着いた国の文化に統合されました。
    とくにドイツのユダヤ人は、ドイツ人以上にドイツ的です。
    ベンヤミン、アドルノ、ブーバーは、誰よりもドイツ的です。

    1917年の革命においても、トロツキーなど数人のユダヤ人が登場しました。

    ここでもまた、ただちにギリシア正教のロシア的ロシア人とのあいだでとてもまずい展開になりました。
    スターリンは、トロツキーがユダヤ人だったから排除したのです。陰謀説をでっちあげて、取り巻きのユダヤ人をすべて排除しようとしたときのように。

    169
    フランスで「ナチのハイデガー」などと言っている連中は、分かっていないのです。
    たしかに彼は極右の人間です。
    しかし、ナチとの断絶はきわめて明瞭でした。

    1930年以前のハイデガー思想の超右翼的性格は、じつは、彼のニーチェ主義からきている

  • ヘルダーリンの「我々においては、すべてが精神的なものに集中する。我々は豊かにならんがために貧しくなった」という言葉のハイデガーによる講釈。「我々」とは、「精神」とは、「豊かさ」とは、「必要」とは、「自由」とは、「貧しさ」とは、などなどキーワードを一つ一つ解釈していく。「貧しい」とは、「必要」に縛られていない状態で、「自由」のことであるという発想の転換がおもしろいと思った。しかし、その後ラクー・ラバルトによって、このハイデガーとヘルダーリンの美しい文章が、実は様々な汎ドイツ主義的な思想をうまく隠しつつ表明したものであって、この文章を無批判に礼賛することの危険性が説かれていて、興醒めする。

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著者プロフィール

(Martin Heidegger)
1889年、ドイツ南西部、メスキルヒ生まれ。20世紀最大の哲学者の一人と呼ばれる。フライブルク大学で当初神学を専攻し、のち哲学専攻に転じ、リッカート、フッサールに学ぶ。1919年、フライブルク大学私講師となり、「事実性の解釈学」を講じる。マールブルク大学員外教授、教授を経て、1928年フライブルク大学教授。多くの優秀な弟子を育てる。1927年、普遍的存在論の書『存在と時間』を出版、爆発的反響を呼ぶ。1933年から翌年まで、ヒトラー政権のもとでフライブルク大学長。1976年、フライブルクで死去、メスキルヒに埋葬。他の主要な著書は『哲学への寄与論考』、『ニーチェ』、『道標』、『杣道』、『講演と論文』、『言語への途上』など。全集は100巻をこえる。

「2019年 『ハイデガー=レーヴィット往復書簡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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