- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784893089427
作品紹介・あらすじ
誰もがそうとは言わないが、親とは二回、別れがある。
一度目の別れは、子どもが実家を出ていくとき。二度目の別れは、親がこの世から出ていくときだ―――2020年8月、コロナ禍の中、がん終末期で入院中の母・久仁子は、自分の最後の誕生日をどうしても自宅でお祝いしたいと決意した。痛い、苦しいと言ったら一時退院が許されないかもしれない。母は、身体のしんどさを口にすることもせず、精一杯の力を振り絞って最後の夢を叶える。
淳は母の決意を知り、コロナ禍の中、母ちゃんの誕生日に下関の実家へと駆け付けた。
(以下本文より)
やがて和室に僕と母ちゃんのふたりだけになった。
「帰って来られてよかったな。母ちゃん」
母ちゃんは、しばらく黙ったままだったが、不意に目を開けた。
「あつし」「うん?」
「あした、病院に、戻らんといかんでしょう。このまま、ここで死んだら、お父ちゃんに、迷惑、かかるし」
「そんなこと言うのはまだ早いんじゃない?」
ううん、と母ちゃんは小さく首を横に振る。
「もう、しんどいわ。次に病院に戻ったら、痛み止めのモルヒネ、どんどん打ってもらう。眠ったままに、なる。
もう二度と起きない……だから今日が、さいご。今日しか、今しか、ない。だから、なんでも言っておいてな」
強い瞳で僕を見る。へんだな。いざ母親と向き合うと、何を話していいのか思い浮かばない。
本当は山のように話したいことがあるはずなのに。
(本文ここまで)
2021年春、慶応大学大学院メディアデザイン研究科を僕は卒業した。
二年間そこで学んだのは、「死者との対話」だった。
最愛の人がこの世界に「イタコト」を忘れない限り、その人は、心の中でずっと生きている。
いつか必ず訪れる家族とのお別れの前に、どうか、この物語を読んでほしい。
感想・レビュー・書評
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ロンドンブーツの田村淳さんの生い立ちから始まり、上京後から今までのこと。
そして、母親のことを書いている。
とても読み易く、母への思いが溢れている。
とてもしっかりとして芯が通っているというのか…素晴らしいお母さんだなと感じた。
そして、『尊厳死求め宣言書』の3つのこと。
これを自分も参考にしたいと思った。
イタコト「あなたが〈いたこと〉、〈生きていたということ〉という意味」についても巻末で詳しく記してあったが、死ということにネガティブな感情を持たずにきちんと自分の気持ちを明確にするには良いことだと思う。
今は、元気でいるけれど明日は何があるかわからない。事故にあったり、災害にあったりするかもしれない、認知症になると誰にも何も伝えられない。
そう考えると何も遅くはない。
きちんと心の中を整理してみようと思った。
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ずっと読みたくて、でも怖くて読むのをためらっていた本。
親との別れは二度ある。
一度目は子どもが実家を出て行くとき。
二度目は親がこの世から出て行くとき。
芸人ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんのお母さまのお話しだ。
動画に残すっていいアイデアだと思った。
家族との人生会議を開くいい機会だな。 -
ほぼ一気読み。
お母さんとのやりとりがとても愛情深かった。
自分の事とも重なり涙が止まらなかった。
そして色々と考えさせられる内容だった。
自分の最後の時までに何を遺せるだろうか。 -
田村淳さん好きで前はよく見ていたのですが
最近自分の都合であまり見なくなっていて
知らなかったのですが今年三月慶応大学大学院を修了したそうです。
すごい!
この本は淳さん(47歳)の自伝。
想像もしなかったことばかり。
子どもの頃から売れるまで貧乏だったこと。
いじめられっ子だったこと。
そして意外にいろいろなことを真面目に考えている人なんですね。
劇的な出会いで恋に落ちて結婚したご両親。
でも顔を合わせれば毎日毎晩口論ばかり。
そんなとき逃げるように外に出た淳さん。
「こんなにいがみ合っているのなら別れてもいいのではないか」と思ったそうです。
結婚しないと決めていた淳さん。
たくさん恋愛をしますが、互いの意見を言い合って、
あげくケンカを繰り返して、別れに至ることが多かった。
男と女は、付き合うとやがて意見が合わずに
ケンカをするものだと思い込んでいるようなところがあった。
ケンカしたのちにわかり合うということが
サッパリわからなかった。
たぶんこれは、両親の不仲を見て育ったからではないかと思う。
しかし、淳さんはついに結婚。
同時に両親の二度目の結婚祝いもこっそり企画。
〈照れながらもうれしそうだった。夫婦とは不思議なものだ。僕ら子どもたちが家にいたときには、凄まじいほどケンカしてばかりだったのに、60代後半になった今では、仲良くなって互いを必要としている〉
私も自分の両親を見て同じような感想をもっていました。
最近はわりと早く離婚してしまう夫婦が多いけど
頑張って続ける価値があるのかなって。
また、ガンになった淳さんのお母さんがのこしたこと
参考にしたいです。
最後に淳さんが良い言葉を書いているので、
いくつかメモします。
●誰とも競わない、他人のせいにしない、自分の軸をしっかりと持つ。
●情報は疑いつつも、人を信じて生きる。
●他人のことをとやかく言う人は自分のために使う時間が少ない…。
●嫌なことを忘れたいときは、新しいことをどんどんやろう。 -
家族に対する思い、自分自身の今までの人生を書かれている。
読みやすく、読んでいてこんな事まで自分の事を隠さずに書くのだなと。
優しい人柄が表れている。
自身の話だけではなく最後には論文が書かれている。
こんなに沢山の事がつまっている本だとは知らずに読んだけれども、これは人にすすめたい。 -
自分の理想とする見事な人生だと思う。見習いたい。
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実家の母から「読んでみたいので注文して欲しい」と言われて取り寄せた。
母が読み終わったので借りて読んだ。
表紙を開いたところに1枚の紙切れが挟んであった。
「子供叱るな来た道だもの。年寄り笑うな行く道だもの。」と母の書いた文字。
実家でひとりで暮らしている母。
昔から何でもひとりでできる母。
でも、それも永遠なんてない。
私は今、3人の子供の母親であると同時に年老いた母の娘でもあるんだとあらためて思った。
この本にも書かれているが、淳さんのように普段から「命」について家族(親とも子供とも夫とも)と話した方がいいと考えさせられた。 -
もし私が巻末のアンケートの被験者になっていたとしたら、ここには無い回答をしていた。
ひとりひとり細かい事情や心情があり、棒グラフに集約するのは本当は難しいことだろう。
しかし、本書はとても良い本だった。
(奥様、お若いだろうに、ものすごく「できた方」だ。素晴らしい。
母ちゃんのお味噌のレシピ、出来上がり分量が5kg!!これを作ろうとするだけでも頭が下がる) -
プロローグだけで泣きそうになった。
賢い人だな、きっと社長になるような人なんだろうなって印象でいつも見ていました。
実際子供の頃から人を纏めるのが上手だったみたいだし。
お母さんも凄いし、素敵な方だな~
私にも息子がいるけど、どうなんだろう。
キチンと彼を育ててあげれたかしら。
私が死んだら悲しんでくれるかしら。
そう思ってしまう、そんな年齢になってきた。
毎年、私も遺言めいた事書いておいた方がいいかな。 -
田村淳、すごいな。
司会が上手で、人の良いところを上手にいじって、冷静な人だなーくらいだったけど
幼い頃からの夢を実現させて、いつも前向きで、しっかりした考えがあって、家族を愛して大事にして、素晴らしい。
母ちゃんがステキ。こんな風に一本線が通った、強くて優しい人になりたい。
15年以上前に癌で亡くなった私の母も、私が小学生の頃から『延命治療は受けない』『お墓はいらない』『死顔は家族以外に見せたくない』『葬式は家族だけで』と言い続けていたが、当時は受け入れられないことが多く、母の満足いく結果じゃなかったなと改めて悔やまれる。今なら、、。この本、母に読ませたかったな。
両親が不仲、のように書いてあったけど、最終的にはだいぶ仲良しになっていて、何があったのかなと気になった。
年齢が私と同じなので、カセットテープのダビングとか、コンポが欲しいとか、とんねるず番組翌日モノマネとか、よく分かった笑