- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784893089182
作品紹介・あらすじ
国立科学博物館の人気恐竜博士が、子供時代・学生時代そして研究者としての日々を綴った、はじめてのエッセイ。
旅好きだった少年時代を経て、いつしか辿りついた「恐竜学」の世界。そこでは、「大したことのないもの」として軽く扱われた小さなカケラがあっと驚く大きな発見になるなど、探究心が永遠に止まらない喜びとおもしろさに溢れた世界だった!
感想・レビュー・書評
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国立科学博物館の副館長を務める「恐竜博士」、真鍋真さんが、恐竜を研究するようになったきっかけや最新(発刊当時)の研究事情、「恐竜学」の可能性について語ったエッセイ。
学芸員の書いた本を何冊か読んできたが、自分の専門分野についての愛情と、それを一般の人にもわかりやすく伝えようという熱意がすごい。この本もまさにそんな感じで、真鍋博士の熱い思いがビンビンに伝わってくる。
以前に読んだ『恐竜の魅せ方』と内容が少し重なっているところもあるが、『恐竜の魅せ方』が博物館の学芸員として書かれているのに対し、本書はそれよりも研究者寄りの立場で書かれている。私は「元」恐竜少女だが、恐竜に関する情報は古いままでストップしていたため、新しい研究成果にわくわくした。
中でも衝撃だったのが、オヴィラプトルという恐竜のエピソード。発掘されたときの状況から、他の恐竜の卵をねらう「卵泥棒」と命名されたのが、研究が進んだことにより、実は自身の卵を温めていたイクメン恐竜だったことがわかったという。私が昔読んだ本では、悪い顔をしたオヴィラプトルが卵をねらう挿絵があったが、まさかそれがとんだ濡れ衣だったとは。
真鍋博士は、恐竜に関するあらゆる学問を「恐竜学」ととらえ、様々なアプローチを紹介してくれている。
一番わかりやすいのは「インディ・ジョーンズ系」。発掘調査ありきの研究だ。最近では、比較解剖学の分野から恐竜の動きや体つきを解明したり、化石や生きている動物の情報をデータ解析する、といったアプローチも盛んなようだ。また、発掘されたまま収蔵庫で眠っている化石も多く、それらを整理・分析するだけでも新しい研究成果になるという。
本書では、日本の恐竜学研究者についてもたくさん紹介されている。アジアと北アメリカの渡り廊下、アラスカの恐竜の研究をしている北海道大学の小林快次さん、比較解剖学の名古屋大学藤原慎一さん、骨の組織学の岡山理科大学林昭次さんなど、インディ・ジョーンズ系の研究では不利だった日本においても様々な分野で恐竜学が肉付けされている。
ちなみに真鍋博士は、恐竜を研究したい人にお勧めする分野として、獣医学を挙げている。ただし、獣医学部に行ってそのまま獣医になる人が多いのが、恐竜学研究者としてはいたしかゆし、といったところのようだ。
さらに、アマチュアの恐竜博士の活動にも触れ、情報が容易に手に入れられる現代では、大学や大学院での専門の研究だけが道筋ではない、ともする。重要なのは「おもしろい」と思ってわくわくすることなのだ。恐竜学の発表の場の一つである「日本古生物学会」は、学術大会としては一般の参加者が多く、小中高生も積極的に発言するそうだ。
恐竜に対するわくわく感を刺激される楽しい本。これから恐竜博士を目指す若者はもちろん、「元」恐竜少年少女にもおすすめの一冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
国立科学博物館で、恐竜の研究、発掘、講演、イベント、展示などを行っている著者による「恐竜学」の日々です。
なお「恐竜学」とは通称ではあって、恐竜の研究は「古生物学」の一部です。
著者が恐竜博士になる過程や、実際の発掘方法、現在(2019年現在)恐竜学はどこまで進んでいるか?そして博物館での展示方法の裏事情など、なかなか目にできないお仕事の裏話として興味深いです。
他国の研究機関に展示物を貸出をお願いする場合に、研究者同士なら話は早いんだけど、政府とかが中間に入ると「我が国の開発援助をしていただきたいなあ…」などと打診されて「一介の恐竜研究者の私にはどうしようもありません(><)」というエピソードは面白いと言うか切実と言うか 笑
子供たちも大好きな恐竜ですが「将来恐竜博士になるにはどうすればよいですか」「こんなにたくさんの研究本や図鑑が出ていて、自分が大人になった頃に研究することは残っていますか?」という質問も多いそうです。
それに答えるように、恐竜研究をするための道筋や、実際に行われている研究者のことが具体的に書かれています。
やはり近年は科学の発展により、今まで検証できなかったことがどんどん明らかになってきて、そのためいくら研究しても尽きることはない!という熱量が良いですね。
2017年(つい最近だ!)に恐竜の系統分類に関する新説が発表されたとか、骨格研究により長年卵泥棒と思われていたオプラプトルが実はイクメンだったと明らかにしたんだとか、科学の発展により知ることもどんどん増えていきますね。
「ティラノサウルスには羽毛が生えていた」ということが一般化されたのはここ数十年ですからね、今後もそれまでの常識がひっくり返るような新説が出てくることもありますね。
恐竜博士になるためのお勧めは、獣医学部で動物の骨格を生ぶことなんだそうです。
しかし恐竜に興味を持って勉強を始めたら恐竜以外のことに興味を持ちました、ということもとても多いようです。これには著者が「本当にやりたいことに出会えたのならそれで良いんです」と力強い言葉をかけてくれます。
子供の頃からの「好き」を生かして仕事にすること、その仕事に実際に付いてみたらどうだったのか、「好き」から別のものに興味を持っていくことなど、将来を考える年齢の読者にも楽しめる1冊だと思います。 -
この本は面白すぎる!
国立科学博物館の真鍋先生の綴るエッセイ。
地質好きの少年が恐竜に出会い、古生物学の巨人たちに学び、多分に影響を受け、研究や博物館を作る仕事をするその裏側。優しい言葉で子供たちに話しかけるように書き、いろんな意見を大きく包み込む。幸せな本。 -
「恐竜学って、なんだろう」
生物学、古生物学、恐竜学…。
「恐竜学」恐竜という分野に関わる学問。恐竜再現のイラストや映像も恐竜学と言えるんだね。
恐竜博のテーマや展示については、真鍋さんならではのお話も書いてあって面白かった!「恐竜の魅せ方」も積読で控えているので楽しみ。
時系列というか、話題があっちこっちだったので多少読みづらさがあったかな。 -
上野の国立博物館の真鍋氏による恐竜学のおはなし。
好きが何より。 -
有り 457.8/マ/19 棚:11
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恐竜博士こと真鍋真先生のエッセイ。
恐竜好きの子供がいかに恐竜博士と呼ばれるまでに至ったかが緩く優しく描かれていて、のんびり読んでじんわりとポカポカ出来る一冊でした。
漫画もとてもかわいいです。 -
子供頃から今に至るまで、恐竜の名前を覚えようとしたことはないが、本書は楽しく読めた。絵が可愛いのも良かった。本書で自身が恐竜に興味を持つようになるかというとそうでもないが、著者は研究自体がとても楽しそうで人生楽しんでるなぁと羨ましいほどだった。
『将来恐竜学者になったとき、やることは残っているのか』という質問が最近増えてきているそうである。子どもにしては不思議な疑問だし、それがなにを意味してるのかはわからないが、とても興味深い記述だった。