- Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
- / ISBN・EAN: 9784891949785
作品紹介・あらすじ
わたしたちの街サプラウは、四月も雪が降って。入学式の朝、制服を着た体がうす青い炎にしらしらと覆われている生徒が、わたしたちの前に現れた。歌集「たんぽるぽる」で新時代の扉を開いた雪舟えまが書きおろしたはじめての短編小説集。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
モンツンラとクロージョライ *** / 越と軽 ** / ワンダーピロー ** / さおるとゆはり ** / モズ・ラファ *** / 電 *** / 草野ずん子 ** / 瞬 ** / 明大前ゆみこ ** / 水晶子 ** / ことざくら *** / タタンバーイとララクメ ***
-
雨になって街に降り、人の感情を感じ取る女性の物語が詩的でとても良かった。(「草野ずん子」)
ろみ雄とずん子のひとつになる様子を「旅」と表現し、二人で街に降る時の情景、心情描写が良い。感情を雨に喩えて「降る」という発想が気に入った。誰かとの交わり方をこれほど美しく静かに、そして少しファンタジーに描いた作品を初めて読んだ。雪舟えまさんの作品はジャンル分けしにくいところが面白い。他にないジャンルだと思う。
静かな大人の恋愛を描いた一編。
もちろん、他の作品もネオ日本という感じがして良かった。
-
だれかの幸せとわたしの幸せと、どこに違いがあるというのだろう。
いや全然違うでしょ。全然違うのだけど、なぜか否定できない。呆れるほど無防備で、悲しいほど優しい。なかなかのパワーワード。
上の一文を許容できるかどうかでおすすめできるかが決まるような。僕は衝撃を受けた。自分には絶対に書けないものに憧れを抱いてなにが悪いのだ。
そんな意味のわからない感性に彩られた短編集。少し不思議のSF要素と歌人独特の言葉選び。とても満足な一冊でした。 -
完全ジャケ買い。というか実は背表紙買い。名前も前評もまったく知らずに衝動買いしたけど最高の出会いだった。
17歳的な、刹那的で繊細すぎて、やたらと死や孤独や痛みに甘く魅かれていくかんじを的確に描ききってる。美しすぎてかっこよすぎてやられました。とってつけたようなガーリー商業の人たちには100回読んでも一行も理解できないであろう、真のガーリー魂ここにあり、です。
相対性理論(やくしまるえつこ)とか穂村弘的な世界だなーと思い、短歌界出身ということで穂村弘の影響を受けてる次世代?と思って何気なく調べたら、なんと手紙魔まみのモデルであったことが発覚…。衝撃!!
こんなところでつながるとは。 -
世界は常に移ろうようだけど、それは自分もしっかりと含まれた上で移ろっている。
自分の一挙一動が世界を変え続けている、というのも、ある意味では過言ではない。
そんな風に思わせてくれる小説だった。
あと、言葉のチョイスがすてき。使い古されたものを微妙に、ほんとうに微妙に外している感じが心地よい。
例えば、「はなればなれ」と言いそうなところを「別れ別れ」と言ったりする。
そのあどけなさが、心を打つ。 -
大切なことばかりが、こぼれそうなほど純粋にちりばめられている本。
twitterでいろんな人の短歌が紹介されている中にこの人がいて、一目で恋に落ちた。ちがうかな、激しい感情の動きというよりは、すとん、と、私が筒だとしたらその中身の空洞そのままの大きさに、この人の歌は入ってきてしまった。何首も、何首も、見るたび見るたび、ああ、これだ、と思うものばかりだった。
どうしてこんな、しっくりくる言葉があるんだろう。どうして私はこんなふうに歌えないのに、こんなに奥まで入ってきてしまう気がするんだろう。
この人の言葉なら、ぜったいにだいじょうぶという、確信があった。装幀まですてきなこの本を買った。こんなにわくわくする本は久しぶりだ。
繙いて、やはり、間違いはなかった。
モンツンラとクロージョライ。ワンダーピロー。電。水晶子。タタンバーイとララクメ。
ひとつひとつ人の名前が冠された掌編はとてもまぶしく、それでも今にも失われてしまいそうな儚さに支えられてはいない。これらの物語を支えているのはむしろ逆、世界に対する揺るぎない信頼のように見える。宇宙の中に自分がいること、皆がいること、愛しあうこと、それはみんな一つのことで、死さえも断ち切ることのできない永続によって一人一人の宇宙がつながっている。その安心。人を愛することにためらわないで、と、伝えている。
手にふれるもっとも近いところに現実世界はあるけれども、それでも私は、巨視的には宇宙の中に生きている。この登場人物は、みんな私だ。私の愛すべき分身。世界の隅々までひろがって遠くから感覚を伝えてくれる。
私の、ベスト3に入るくらい大切な本。読む前から、もうわかっていたけど。
ーーー
モンツンラとクロージョライは、どうしても特別。ラスト付近のあのセンテンス、きづくと口ずさんでいる。 -
①モンツンラとクロージョライ、②越と軽、③さおるとゆはり、が好きだった。
①はモンツンラが青い炎をまとっている友達・クロージョライのことを心底好きになるお話。友情というにはやや行き過ぎていて、同性愛っぽくもあるのだけれど、クロージョライはベートーベン(過去の人で既に死んでいる!!)に恋していて片想い。人を好きになってこんなに内面は燃え盛っているのに、外には出てこないところがもどかしい、って思うところ、少しわかる。他の人のことを好きなクロージョライに嫉妬する気持ちもあるんだけれど、嫌いになったり、意地悪をしたりするなんていう発想はまったくなくて、やっぱりひたすらクロージョライに優しくどんな時でも肯定して、味方になるその姿は愛だなって思う。
②はメルヘンチックなお洋服を作っているおばさん?のもとに引き取られた幼女のお話。血が繋がらないからこそ、女の子が養母にベタベタ甘えるところが可愛らしくていじらしくて、すこし切ない。
③は失恋した女の子が友達の家に泊まりに行って、振られた相手に思いを馳せるお話。自分は上手くいかなかったけど、ほかの女の子が彼と結婚できて良かった、自分じゃなくても誰かが幸せになれば、それは世界全体で見ると出来ないより出来た方が絶対に良かったことだ。と結論を出せるさおりはなんて心が広くて優しいんだろう、お人好しすぎる。でもこう考えられたら、少しは報われなさや悲しみが癒されるような、救われるような気がして良かった。こういう聖母みたいな愛し方、雪舟えまさんっぽくてすごく好き。 -
読み進めるのがすごくきつかった。装丁が好きだっただけに。雪舟さんはどこか現実離れし過ぎていて私には向いていない。
-
2013/11