本と図書館の歴史-ラクダの移動図書館から電子書籍までー

  • 西村書店
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (72ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784890139231

感想・レビュー・書評

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  • とても好きな本なのに、どういうわけか登録さえ忘れていた。
    今更だが再読して載せることにする。
    児童書と思えないほどテキストはぎっしり。
    紙面を飴色と白色の部分とに分けて、それぞれに話が進行する。
    合間にコラムを多数盛り込み、楽しみながら読めるような工夫も。
    著者のモーリン・サワさんは、カナダのハミルトン公共図書館で働く司書さんだ。

    表紙絵は、移動図書館のはじまりを描いたもの。
    ビザンツ帝国の宰相は、500頭ものラクダを使って書物を運んでいたという。本がアルファベット順に並ぶように、隊列の訓練までしたらしい。
    これが10世紀頃のペルシャ(現在のイラン)でのことだ。

    大量の蔵書をどう見やすくするか当時なりの工夫だったのだが、思考錯誤の結果生まれたのが、皆さんもご存じの「デューイ十進分類法」。
    しかし大学や研究所の図書館のような規模の大きなところではより細かく分類する「アメリカ議会図書館分類法」を使用している。
    科学書や技術書を専門とする図書館では「国際十進分類法」を。
    中国ではマルクス主義者の哲学に基づく分類法らしい。うーん、ちょっと想像がつかない。

    最初に登場するのはアリストテレスだ。
    のちにアレクサンダー大王となる少年の家庭教師だったという。
    高い知性と冒険心をもった指導者は、ここで育てられた。
    アレクサンドリア図書館は新しいスタイルに建て直され、巻末にウェブサイトもある。

    関連本を何冊も読んできたが、本書ならでは記載も多い。
    上記の移動図書館のはじまりや、グーテンベルグ印刷機の仕組みなどはこれまでのどの本よりも分かりやすい。
    映画「ハリー・ポッター」でホグワーツ図書館のモデルとなったオクスフォードの「ボドーリアン図書館(1602年)」の誕生は、トーマス・ボドリー卿の尽力によるもの。
    アメリカでベンジャミン・フランクリンが考案した「会員制図書館」の話も。
    全財産の八割をいくつもの図書館建設に捧げたカーネギーも登場する。

    それらの人々の目指すものは「みんなのための本と図書館」だった。
    「地域社会に貢献する最善の方法は、意欲的な人間がよじのぼれるように、その手の届くところに はしごをかけることだ」・・・カーネギーの言葉が尊い。
    この言葉だけでなく、勇気があふれてくる言葉が数々載っている。
    現代ではビル・ゲイツが第二のカーネギーと呼ばれているらしい。

    知りたい。伝えたい。残したい。
    5000年以上も前から本と図書館にかける人々の願いは変わらない。
    図書館は、今生きている人々を過去や未来の人々と繋いでくれる。
    本書の最後には世界の有名な図書館のウェブサイトを掲載。
    この本棚でも紹介した「国際子ども図書館」や「国立国会図書館」、ネット利用者のためのバーチャル図書館も。

    図書館の未来へ希望を繋ぐ一冊だが、調べ学習で手に取る程度なのが惜しい。
    ここはぜひ本好きな大人の皆さんが読んでやってね。
    物語でもないのに、読むと胸が熱くなってくる気持ちの良い本だ。

    • 夜型さん
      本日はこちらです。

      読書の文化史―テクスト・書物・読解(新曜社)

      僕は不器用でした。
      なにかと思い患いやすいようです。それでも残酷に時間...
      本日はこちらです。

      読書の文化史―テクスト・書物・読解(新曜社)

      僕は不器用でした。
      なにかと思い患いやすいようです。それでも残酷に時間は流れていきます。
      シャキッとしたいです。
      2021/03/25
    • nejidonさん
      夜型さん♪
      それだけ頭の良い方が器用でしたら、むしろ恐ろしいです。。
      心もまた頭と同様に時間をかけて育てるものです。
      そしてこればかり...
      夜型さん♪
      それだけ頭の良い方が器用でしたら、むしろ恐ろしいです。。
      心もまた頭と同様に時間をかけて育てるものです。
      そしてこればかりは相当難しいし、ゴールがない。
      でも「師」と仰ぐものが見つかれば嘆くことは一切ありません。
      昔から人々はそうやって自分を育ててきました。私もいまだにそうです、これからもずっと。
      シャキッと生きて参りましょう。

      「読書の文化史」ありがとうございます!
      さっそく探してみますね(*^^*)
      2021/03/25
    • nejidonさん
      夜型さん♪
      プラス安心して弱音を吐ける相手も必要ですね(^_-)
      夜型さん♪
      プラス安心して弱音を吐ける相手も必要ですね(^_-)
      2021/03/25
  • 書物の歴史、図書館の歴史、ざっくりと復習するのにぴったりな1冊でした。
    アレクサンドリア図書館からプロジェクト・グーテンベルグまで。
    古代から現代までの書物や図書館の流れを、イラストやコラムを交えて70ページ程度でまとめています。

    巻末の「インターネットで調べてみよう」には、世界各国の図書館のURLとデジタル資料としてどんなものが閲覧可能なのかがまとめてあって、とても助かります。

    コラムもおもしろいのです!
    古代の記録媒体(パピルスやベラム、粘土板など)、死海文書、文字の誕生、法定納本制度、女性初の図書館員、分類法にパブリック・ドメイン…。
    いやはや、勉強になりました!

    初めて知ったのですが、1600年代のヨーロッパでは図書館員は独身を通すのが望ましいとされていたとのこと。
    結婚生活で仕事がおろそかになることを危惧されたのだとか…ひえぇ。
    でも、それだけ図書館という施設が重要な場所だとされていたことがわかりました。

    最後の「司書にたずねよう!」というコラムに、背筋がピシッと伸びました。
    …とともに、変な汗も出てきました(^^;)
    堂々と司書です、と名乗れるように日々精進、です。

    • すずめさん
      はい、ざっくり流れを復習するのにちょうどよかったです。
      児童書にしてはつっこんだ内容だったので、子どもだと好きな子じゃないと読まないかもし...
      はい、ざっくり流れを復習するのにちょうどよかったです。
      児童書にしてはつっこんだ内容だったので、子どもだと好きな子じゃないと読まないかもしれません…
      2012/07/04
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「好きな子じゃないと読まないかも」
      図書館は、本と親しむための窓口・入口ですから、少数の子どもための一冊で良いと思いますよ。。。
      「好きな子じゃないと読まないかも」
      図書館は、本と親しむための窓口・入口ですから、少数の子どもための一冊で良いと思いますよ。。。
      2012/07/05
    • すずめさん
      そうですね(*^^*)
      調べ学習にはぴったりの本なので、夏休みの自由研究などで関連テーマで調べにくるこどもたちに、おすすめしていきたいです☆
      そうですね(*^^*)
      調べ学習にはぴったりの本なので、夏休みの自由研究などで関連テーマで調べにくるこどもたちに、おすすめしていきたいです☆
      2012/07/05
  • 978-4-89013-923-1
    C8000¥1800E.

    本と図書館の歴史
    ラクダの移動図書館から電子書籍まで

    2010年12月25日 初版第1刷発行
    文:モーリーン・サワ
    絵:ビル・スレイイン
    訳:宮木陽子(みやぎ ようこ)小谷正子(おたに まさこ)

    発行所西村書店
    NDC010.

    目次
    はじめに
    1 古代図書館の誕生
    2 破壊と崩壊の暗黒時代
    3 印刷機がもたらした黄金時代
    4 新大陸へ
    5 バック・トゥ・ザ・フューチャー
    インターネットで調べてみよう

    -------------------------
    児童書の枠にありますが
    内容は盛りだくさん。
    当たり前に文字が読み書きできて、図書館で本を手にすることができることは、改めてありがたいことだと感じました。
    紙ができる前、パピルスの名前は知っていますが、実際にそれに文字を書いたことはなく、羊皮紙も名前を知るだけで手にしたことは有りません。
    日本に文字が入ってきたのは中国から漢字が入って、ひらがなとカタカナになり‥。それ以前はどうしていたのでしょうか?知識の共有はどのようにしていたのでしょう?記録が有るってすごいことです。
    また、それを整理して「使えるようにしておく」ことは大切だと改めて感じました。

    資料を集め、整理分類し、使えるように保存しておく。借りてきた資料 大切に扱わないといけませんね。

    紙と印刷機様様です。
    近年は紙の質として酸性紙だと、もろく日焼けするとも聞きましたし、広辞苑に収録する語句が増えたのに厚さは変わらないのは、より薄く、裏うつりしない印刷技術のお陰とも聞きました。
    当たり前にあることも、刻々と変わっている。

    この本を読んでいるときに、文字は今 何種類くらいあるのだろう?言語は? 使われなくなった言葉、(言語)なども興味が湧きました。
    言葉(音声)があり、自分以外の人と意志疎通するためにそれが発せられ、言葉を記録するものが文字だとすると、自分以外の人が必要になるわけですから、文字(記録されたもの、本とか石板とか)は、人間(生物として弱きもの、ホモ、サピエンスが社会性を持つことで種をつなげた)とするなら、言葉、文字、本、記録は何と大切な事だろう。
    母国語も上手に仕えてないが、母国語以外の言葉も頭の柔らかいうちにかかわっておけばよかったと後悔‥。
    絵本なら楽しめるかな‥。せめて、避けることはしないでおこうか。

  • タイトル通り、紀元前から続く本と図書館の歴史をコンパクトにまとめた本。資料の分類方法や司書にについて、電子図書館やインターネットを使った利用者支援まで説明されていて、大人が読んでも参考になります。巻末には世界中の図書館のウェブサイトも紹介されていて、日本の図書館のサイトも掲載されています。

  • 児童向けなのか、平易な文章でわかりやすく、それでいて大人もたのしめる内容。

    形態や役割の変化など、図書館そのものの歴史。
    文字を記録する方法や、記録した媒体の歴史。
    どちらも興味深かったし、本編だけでなく、コラムもおもしろい。

    砂漠に見せかけて本になっていたり、表紙のイラストもユーモアがある。

    本編の文章がページをまたいで飛び飛びな配置なのは、やや読みにくかった。

    竹内真『図書室のピーナッツ』で取り上げられていた本。

  • ★★★★★
    司書必見☆
    世界でもっとも有名な女性司書ヒュパティア(すいません知りませんでした)、本が大好きで数万冊の書籍といっしょに移動してたペルシャの宰相、グーテンベルク印刷機の図解、世界初の公共図書館を建設したのはメディチ家だったなどなど。
    現在の、これからの図書館の可能性や課題なども。
    (まっきー)

  • カナダの図書館司書の方が子どもにもわかりやすく、図書館の歴史についてかかれた2010年12月発行の新しい本。日本には図書館についてかかれた新しい本が少ないので最近の大英図書館のプロジェクトや、ビルゲイツの事などがわかり、未来を考えるきっかけになった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      こう言う本は、学校の図書室の入り口にドンと置かなきゃ!と思っています・・・
      こう言う本は、学校の図書室の入り口にドンと置かなきゃ!と思っています・・・
      2012/03/03
  • 「人々はどのように文字を記し、保存してきたのか。古代図書館から電子図書館までさまざまな図書館の役割を、イラストを豊富に交えながらわかりやすく紹介する。」

    目次
    はじめに
    第1章 古代図書館の誕生
    第2章 破壊と崩壊の暗黒時代
    第3章 印刷機がもたらした黄金時代
    第4章 新大陸へ
    第5章 バック・トゥ・ザ・フューチャー
    インターネットで調べてみよう

  • 読書記録です。まだの人は参考になれば…

    学校図書館で資格を持たずに働く主人公が、司書の資格を取ろうと決心してから参考にする本として紹介されてました。
    ぜひ、手に取って欲しい本です。巻末の「インターネットで調べてみよう」は、英語ができなくても(ちょっと微妙な)日本語翻訳ができるので、行きたいページにたどり着くことは(たぶん)できると思います。その巻末の前にある「司書にたずねよう!」で「図書館の司書は情報スペシャリスト」と呼ばれ「ほとんどなんでも探し出すことができる」とのこと。しかも『図書館のピーナッツ』では、知っていてもヒントを出したり周辺の情報を伝えるだけにして、利用者に本に出会う楽しみのお手伝い、なんて高度なワザもある。これから勉強して資格を取ろうと考えている主人公にとっては、学ばなければいけないことが無限大に思えるよなぁ…それでもかえって闘志を持つことが出来るのは若さですね。もちろん私は読書は趣味として、仕事としてはできないなぁと思い知らされました。

  • 本は貴重なものであった
    情報とは何かを考える時代

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