腐ったリンゴをどうするか?

著者 :
  • 三五館
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883206407

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、身につまされる本である。手抜きを無くすことにとどまらず、個人として、集団としてどうすれば生産性を向上できるかを解説している。

    集団にとって手抜きが厄介なのは、それが周囲に感染っていくという特性を持つからだ。
    手抜きとはなんであり、どうして起こり、どうやったら防げるのか?
    本書では、その原因やメカニズムについて、数多くの実験や研究をもとに究明していく。

    気になったことは以下です。

    ・ある会社では、会議が1日に占める割合は3割にも達している。非効率な会議の背景には、「社会的手抜き」のメカニズムが働いている
    ・集団のサイズが大きくなればなるほど、一人あたりの手抜きの量は大きくなる。集団の人数に比例してアウトプットが増大していくのではなく、手抜きのためにあるところでアウトプットは頭打ちになる
    ・サイバー手抜き。それは、メールやインターネットを仕事以外に使用することである。

    ・ブレスト、「3人よれば文殊の知恵」と思われていて、会議や話し合いの場が設けられ、合議で物事が決定される。
    ・ブレストの原則は4つ ①自由奔放 ②批判や評価をしない ③質より量 ④結合改善
    ・ブレストのよさは、5つ
     ① 自由な発想の妨げになっていたさまざまな規制を批判禁止のルールでとりのぞく
     ② それぞれ専門的な立場から参加していた成員が共通する目的をもった同じレベルの立場で参加できる
     ③ 会議にゲーム感覚で参加でき、成員間での絆が強くなる
     ④ 他人とのアイデアの結合、修正を促すことで発想の展開ができる
     ⑤ ルールが簡単で技術的に難しくない
    ・しかしながら、個人が事前考えた成果を集めた方がより優れていることが実証されている ⇒ ブレストの生産性はよくないといっている
     ① 集団作業を行うので、動機づけは低下する
     ② 調整困難 実行可能な案が優先されてしまい独創的な案は不当に評価されない
    ・ブレストの修正技法
     ① ブレーン・ライティング 6人のメンバーが3つづつ5分以内でアイデアシートに書き留め、隣に回す
     ② リバース・ブレスト 問題解決指向ではなく、問題解決を困難にする要因について考える
     ③ KJ法 カード作り⇒カードを眺める⇒カードの分類⇒カードを島にまとめて、島に名前を付ける⇒島をまとめて、再配置する⇒結果を発表⇒結果をもとに論議
     ④ 逐次合流テクニック 最初は2人で議論、結果をまとめる⇒新しいメンバーを入れて、改めて議論、納得したら結果をまとめる⇒さらに1名をあらたに加えて議論、納得したら結果をまとめる⇒これを繰り返していく

    ・リンゲルマン効果 個人のインプットの加算よりも、集団のアウトプットが小さくなること
     ① 動機付けの低下 
     ② 調整の難しさ が生産性低下の原因

    ・社会的手抜き発生の要因
    <外的要件>
     ① 評価可能性 個人の成績がわからなく、評価されない
     ② 努力の不要性 他者が優秀であったり、作業している人数が多いので、自分が努力してもムダ
     ③ 手抜きの同調 他の人が手抜きしているので、自分が努力しても、正直ものが馬鹿を見る
    <内的要件>
     ④ 他者存在による緊張感の低下 緊張感が低下するため、パフォーマンスが低下する
     ⑤ 注意の拡散 他者と一緒に作業をしていると自分に注意が向かなくなり、自己意識が低下、目標も意識しなくなるため、生産性が低下する

    ・中国人ペア:面子が潰されたと感じた場合は、やる気をなくしてしまう、相方の能力が低い場合は手抜きはしない、高い場合は手抜きしやすい傾向がある
    ・日本人ペア:パーフォーマンスが相手より低下していくような状況では、相手についていこうと努力する
    ・男性の方が、女性より手抜きしやすい
    ・同性同士のペアより、異性のペアのほうが、手抜きが発生しやすい
    ・自分以外がチェックしているなら大丈夫 ⇒ ダブルチェックが安全性を高めることにならないケースがある
    ・ルーチンスの水がめ問題 訓練すればするほど、いざというときに行動の柔軟性が失われ、訓練で想定した事態以外にうまく対応がとれなくなるというパラドクス
    ・会議や、講義のいねむり:その場にいることにより義務が果たされたという解釈

    ・プロスペクト理論 得しなくてもいいから損だけはしたくない
    ・腐ったリンゴに罰を与えるよりも、腐っていないリンゴを活性化するほうが効果がある

    ・共行動:他者と同じ作業をしているが他者との共同作業ではなく、かつ個人の成績が明確になる状態
    ・リスキーシフト:集団で話し合いをすると、一人で決断するときより、「報酬は高いが危険も高い行動」を選択しやすくなる現象
    ・共有情報バイアス:成員が個々に異なった固有の情報を所持しているにもかかわらず、個別の要件には深く議論されず、共通しているもっている限られた情報についてのみ議論され、全体の情報が十分に吟味されないため、極端な方向に向かうこと

    ・社会的補償:課題の重要性が高い場合、他者の能力が劣っているときにパフォーマンスが上昇すること。社会的補償が発生するのは
     ① 課題の重要性が高く、かつ、同僚の能力が低い
     ② 一緒に仕事をしている相方から当分逃れられない
     ③ 仕事を始めた初期に現れやすい 仏の顔も三度まで
     ④ 集団のサイズが小さい
    ・ケーラー効果:能力が低い人の動機づけの向上 山登りや、護送船団のように、集団の成果が能力の低い人のパフォーマンスによって左右されるとき、劣った人が頑張る現象。箱根駅伝で、ふらふらになりながらも、たすきをつなごうとする行為
    ・ケーラー効果は、能力差がありすぎても、ほとんどなくても効果は発揮されない。
    ・ケーラー効果は、女子の場合は、あまり重要でない場合でも発動するが、男子の場合は、重要な場合でないと発動しにくい。
    ・上方比較:自分のパフォーマンスが他者や集団の標準より低い場合、他者のパフォーマンスに近づくよう努力する行為
    ・社会的不可欠認知:自分の低能力のために、集団全体のパフォーマンスを下げているとき、それを避けるために、努力する行為
    ・人は上に追いつこうと努力するときよりも、自分のせいで他人に迷惑をかけられないと思った時のほうが動機付けは高まる。

    手抜き対策
     ① 罰を与える ⇒ でも、与える側、受ける側、双方のとって効果は薄い ⇒ 罰は不安や無気力感、復讐心、疑念などネガティブな情動を触発し、意図せぬ悪い結果をもたらしてしまう
     ② 社会的手抜きをしない人を選考する ビックファイブ検査(外向性、情緒安定性、勤勉性、協調性、開放性)のうち、勤勉性、協調性に優れた人物を選考する
       勤勉性 目的意識が高く、厳格、規律を守り、熱心で几帳面、意志が強く、注意深い
       協調性 周りの人と協力して活動ができ、評価の有無にかかわらず、皆と一緒に活動を行える
     ③ リーダーシップにより仕事の魅力向上を図る
       業務処理型 外発的動機 報酬の交換
       変革型 内発的動機 リーダを理想的人物として尊敬 部下を鼓舞しやる気を出す 知的な面を刺激をする 個人に関心をもち、配慮する カリスマリーダ、独裁者のイメージ
     ④ パフォーマンスのフィードバック 即時フィードバックの原理 即座にフィードバックを行い、学習効率と学習者の動機づけを行う
     ⑤ 集団の目標を明示する 
     ⑥ パフォーマンスの評価可能性を高める 監視 ⇒ プライバシーの侵害、信頼関係への悪影響
     ⑦ 腐ったリンゴの排除 早期発見早期処置 くわえて 割れ窓理論 ごみやラクガキに早期に対応 他者の目の存在を意識させる 目を書いたポスターを張るなど 集団の大きさを小さくする
     ⑧ 社会的手抜きという現象の知識を与える

    ・集団行動には、真面目な部分と、適当な部分がある 後者のほうが相対的におおきい
    ・集団の中の4つの役割
     ① ヒーロー 集団へ貢献し、多くの人から評価、尊敬をされている
     ② 小役人 努力をしているが評価されず、かえって蔑まれることがある
     ③ スケープゴード 努力もせず、人へ迷惑をかけている 多くの人から嫌われてている
     ④ マスコット 努力しないで人に迷惑をかけているにもかかわらず、多くの人から好かれている
    ・パレートの法則 2-6-2 、2-8 できる人は集団の2割
    ・できる人ばかりを集めても、パフォーマンスは向上しない ⇒ 集団には多様性が必要

    もくじ

    はじめに 人生は手抜きに溢れている
    第1章 社会は手抜きに満ちている
    第2章 「誰かがやるでしょ」の心理学
    第3章 腐ったリンゴをどうするか?
    第4章 こうすれば手抜きは防げる
    第5章 最善の手抜き対策はコレ!
    エピローグ 「手抜き」にも役割がある
    おわりに
    参考文献

    ISBN:9784883206407
    出版社:三五館
    判型:4-6
    ページ数:208ページ
    定価:1300円(本体)
    発行年月日:2015年10月04日第4刷

  • 結論から言うと、

    腐ったリンゴを未然に防ぐには、
    社員や作業員に、本人の努力が集団で役立っている事を理解させること。

    個人の貢献度を可視化できる資料を製作するなど、動機づけを維持する工夫が必要。

    腐ったリンゴの発生要因については、こちらでレビューしてます。
    http://rpg-habit.com/strategy/ringo/



  • 社会的手抜きを知る
    集団の目標を提示
    社会的手抜きをしない人材を選考
    腐ったリンゴを排除

    リーダーシップについて知ることも必要。
    一人一人の役割を持つことで責任感を生む。

  • まあ面白いけど、おおよそ学者とは思えないような、論理的に詰めが甘いのではないかと思わされる記述が散見された。専門書ではなく一般向けを意識して書いたとあるから、そんなものかもしれないが。
    step ladder techniqueはためになった。

  • 【文章】
    とても読み易い
    【ハマり】
     ★★★・・
    【共感度】
     ★★★★・
    【気付き】
     ★★★・・

    手抜きの要因
    ・低い評価可能性…「がんばっても評価されない」
    ・努力の不要性…「自分がやらなくもアイツがやってくれる」
    ・手抜きの同調…「アイツもさぼってるなら自分もさぼる」
    ・緊張感の低下…「いつも同じ作業ばかり」

    ブレストは社会的手抜きが発生しやすい。
    解決を探すのではなく、問題を悪化させる方法を探る「リバース・ブレイン・ストーミング」などが有効。

    システムである人の集団から手抜きを無くすのは難しい。手抜きをする人も多様性の一部であり、それを意図的に排除してしまうとシステムが崩壊する可能性もある。

  • タイトル勝ちの本。「腐ったリンゴ」が存在する説明が長い。結局は腐ったリンゴは排除しようという結論。

  • ビジネス
    心理

  • 手抜きをしても報酬が与えられ、また手抜きをしていることが他の人にさとられなかったり、他の人の能力が高かったり、他の人も手抜きをしていたりすると手抜きする可能性が高くなる。そして、手抜きは周囲に感染っていく。

    しかし、ある程度の手抜きを認めなければ、窮屈過ぎる状態となり、またどうしてもある程度の手抜きが割合で発生することも間違いない。

    何かの記事で、この本について知った時に、リンゴを組織の中で個人が役割を果たさなくなってしまう、少々のことで挫けてしまう、ということを防ぐには、という部分に期待したが、少し違っていた。

  • 題名とは裏腹に無用論、怠惰の勧めだった。

  • ブレストは実は個々人で行ったほうが効率が良い。

    誰がどれだけアイデアを出してるかがわかりづらい
    他のメンバーに評価をされるのではないだろうか
    他の人が話している時に意見は言いづらい

    対策・配置に気をつける
    記録をつける人を配置する
    ブレーンライティングを行なう。
    メンバーそれぞれに紙をもたせてアイデアを書き、隣の人に回す。回された人は新しいアイデアが、発展させたものを書く


    手抜きの正体
    個人の成績がわからない
    他の人が優秀なら努力しても無駄
    多くの人が手抜きしてる
    同じことをしてる人が他にもいる


    腐ったリンゴに罰を与えるよりも、残りをやる気にさせるほうが良い。


    罰はあまり意味がない。
    勤勉な人をとるほうがよい。
    リーダーが内発的動機付け、をしたほうが良い
    手抜きが出るのは個人の貢献度がわからない時。
    わかるようにしてあげる
    競争心を煽るのではなく、、個人の貢献がいかに組織に大事かを伝えてあげたほうが良い。


    あなたはこの部分に役に立っている、ここに貢献しているという仕組みがわかることが大事。


    集団が大きければ大きいほど手抜きの確率が上がってしまう

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著者プロフィール

大阪大学大学院人間科学研究科教授

「2011年 『グループ・ダイナミックス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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