天皇はいかに受け継がれたか: 天皇の身体と皇位継承

制作 : 歴史学研究会  加藤 陽子 
  • 績文堂出版
3.20
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784881161340

作品紹介・あらすじ

2018年4月に東大で開催され大反響を呼んだ、歴史学研究会総合部会例会シンポジウムの成果がヴァージョン・アップされ、350頁という分量、かつお求めやすい価格での本として登場しました。
 2019年5月になされる明仁天皇の譲位(退位)は、終身在位を想定してきた新旧の皇室典範の制度によらない、新たな皇位継承の事例の幕開けとなります。明治、大正、昭和と続いた三代の近代の天皇とは異なる、天皇の代替わりがなされる時代に、私たちは生きていることになります。
 考えてみればこの度の天皇の譲位は、生身の身体を持つ天皇と、「皇位」という位置づけを持つ天皇というものが、近代になって以来初めて一体のものではなくなる瞬間が訪れたという事態にほかならないのです。大きな変化といえましょう。
 ならば、歴史上、天皇の存在はいかに位置づけられ、継承の法式はいかに変化してきたのでしょうか。また天皇自身は、政治や社会の変化にいかに対応しようとしたのでしょうか。この「問い」を、まずは、各時代各領域の第一人者による論文・コラムによって通史的に深くとらえ、さらに、アジアの君主制、ヨーロッパの王政の比較史的視座から、決定版的な論文・コラムによって総力を挙げて迫ったものが本書です。
 世襲王政の一つの形式として位置づけられる日本の天皇制は、例えば中国の漢代・唐代の皇帝制度とは大きく異なっています。また、世襲と選挙という二つの王政の原理を持つヨーロッパから見た場合、日本および日本人が天皇に対して抱いている歴史認識は、あまりにも世襲を前提とした認識に見えるようです。歴史を縦と横から見ることで、歴史における天皇の位置づけが初めて明らかにできるのではないでしょうか。

感想・レビュー・書評

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  • 皇位継承に焦点を当て、日本のみならず中国皇帝やヨーロッパ王政まで概観した論考集。
    昔は譲位もあったと漠然とした知識はあったが、古代は頻出していたこと、幼帝も多かったことなど改めて知ることができた。また、中東欧には選挙王政もあることなど面白い。
    2016年8月の明仁天皇の「おことば」は、「象徴」天皇のあり方を模索してきた「平成流」の総仕上げ、との指摘はなるほどと思わされた。

  •  天皇は歴史の中でいかに引き継がれてきたか。

     なるほど。天皇には1000年以上の歴史があるので、伝統を重んじるべきというのなら譲位等のやり方もその長い歴史を振り返ればならない。
     全てをじっくり読み切るのは困難だが、天皇という存在が決して常に一様に安泰に引き継がれてきたわけでないことは感じられた。

  • 東2法経図・6F開架:288.4A/Ka86t//K

  • 天皇の譲位ということが、200年前までは、かつてもあった普通のことのように言われているが、実は日本においても、普通のことではなく、世界でも珍しく、現に権力の分裂が起こっていた!今回の平成天皇の譲位に対して慎重な姿勢を取った宮内庁の考えが初めて分かったように思う。
    645年の皇極天皇の譲位に始まる日本の古代の上皇制度の歴史、そして奈良・平安時代、鎌倉時代からの南北朝の2つの系統、室町幕府が北朝の権威を立てようとしていたこと、天皇家の権威を利用しようとした信長・秀吉、光格天皇から現在まで日本史の全体を振り返るだけでなく、中国、欧州各国の王政の歴史など、非常に刺激的な読書になった。
    近世において崇光から後花園、後桃園から光格と2度皇位継承が危ぶまれる事態が発生したこと、後奈良天皇は死を秘していたため、2か月に至る死後の遺体放置、長期の空位が生じていたが、実は皇室の財政逼迫が原因だったことなど、今では考えられない。
    改元が天皇家にとって重要な収入源であったとは笑える話。

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著者プロフィール

歴史学研究会
歴史学研究会

「2017年 『歴史を社会に活かす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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