分節幻想 ――動物のボディプランの起源をめぐる科学思想史

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  • Amazon.co.jp ・本 (864ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875024781

作品紹介・あらすじ

ヒトが属する脊椎動物は、頭の分節性を特徴としており、多くの生物学者が200年以上にわたり解明に挑んできた。しかし、頭部分節という考え自体が、「幻想」として生み出されたものであった。90年代に誕生した「進化発生学」の観点から、分節をめぐる学者たちの探求をたどり、動物形態の起源と進化、自然への眼差しの変遷に迫る。脊椎動物とは、われわれとは何ものか? 「アタマの起源」を探る、刺激的な一書。

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  • 倉谷 滋『分節幻想――動物のボディプランの起源をめぐる科学思想史』

    【書誌】
    定価 本体9000円+税
    A5判/上製 864頁 2016.11 [2016.11.30刊行]
    ISBN 978-4-87502-478-1

     われわれの頭はどのように進化してきたのか? 進化発生学の気鋭の著者が、18世紀以来の進化と発生の歴史をまとめあげ、「アタマの起源」を探る大著。「分節」関連博物図像多数収録。
    http://www.kousakusha.co.jp/BOOK/ISBN978-4-87502-478-1.html


    【目次】
    はじめに――地上に降り立つイデア
    第1章 観念論の時代

     ゲーテからオーウェンへ
       「羊」をめぐる思考実験と椎骨説の誕生/メタメリズムとメタモルフォーゼ
       構造主義的形態学/原型と祖先

     オーウェン
       原動物/原型と相同性/原型の内容
       デフォルトとしての椎骨/原型的構成

     原型と相同性、グレードとクレード
       【コラム】頭部分節性事始め/【注】

    第2章 比較発生学と比較解剖学の時代
    ――比較発生学の興隆からグッドリッチまで

       脊椎動物の咽頭胚/原型と発生

     先験論的比較発生学
       メッケルとセール/ラトケ、ベーア、ライヘルト

     頭部分節の否定、そして「前成頭蓋発生学」の誕生
       ハクスレーの原型/原型から祖先へ[椎骨説の否定]
       ハクスレーの誤り/椎骨説の生還
       【コラム】パーカーと軟骨頭蓋解剖学

     分節の起源
       分節と体腔/バルフォー、マスターマン、セジウィック

     ヘッケル

     ゲーゲンバウアーと比較解剖学
       脊柱部分と非脊柱部分・脳神経と脊髄神経/脳神経の概観
       末梢神経系と頭部分節性/頭蓋[新生部分と変形部分]

     バルフォーと頭部分節
       頭腔/サメ以外

     ヴァン=ヴィージェ――体性と臓性
       【コラム】組織学研究法

     プラットの小胞と頭部分節の数
       前頭腔の謎

     フロリープ――頭部と体幹の境界
       後頭骨/頭部と体幹の境界

     ガウプと軟骨頭蓋の比較解剖学
       耳小骨/神経頭蓋

     後頭骨のホメオティックシフト――フュールブリンガーからグッドリッチへ
       分節番号と相同性/フュールブリンガー/トランスポジション

     鰓と頭腔
       鰓の進化/メタメリズムと鰓

     グッドリッチと頭部分節説の二〇世紀的結論

     誰が分節論者か?
       【注】

    第3章 もう一つの流れ、神経系の分節理論

     神経分節と頭部分節性
       末梢神経/神経管

     神経分節
       ローシーとヒル

     ジョンストン
       ジョンストンのモデル

     ニールと神経分節
       ニールと神経分節の頭部分節論的考察

     ベルグクイストと多角形モデル

     二〇世紀末のロンボメア論争
       菱脳分節と咽頭弓/菱脳研究の限界と前脳/神経分節の統合的理解

     もう一つの前脳モデル――スペイン学派と日米の共同研究
       神経管の前端/【注】

    第4章 グッドリッチ以降――混迷の時代

     円口類の位置と意義
       系統関係/円口類の原始形質/中胚葉
       【コラム】理想形態としてのヤツメウナギ

     ド=ビアと前成頭蓋博物館
       ヘテロクロニー論/口と梁軟骨

     ゼヴェルツォッフの系統進化的ヴィジョン
       ゼヴェルツォッフのヘテロクロニー論と頭部問題
       無頭類段階とグレード的進化/第二のグレード、原有頭動物
       内鰓類と外鰓類の分岐[グレード的進化] /顎口類の進化

     アリスと梁軟骨

     ポルトマンと頭蓋の一次構築プラン

     ジョリー――ゼヴェルツォッフを継ぐもの
       神経頭蓋

     ローマーと二重分節説?
       体性と臓性/進化

     スウェーデン学派――ジャーヴィックとビエリング
       スウェーデンの比較形態学/板鰓類発生学と頭部分節性
       皮骨頭蓋/内臓骨格と脳神経/哺乳類の中耳骨

     形態学の暗黒時代とソミトメアの夢
       ソミトメアをめぐる議論/ソミトメアの評価

     頭腔と頭部中胚葉の分節性
       頭部中胚葉分節?/頭腔とは何か?/前頭腔とは?
       最前端の頭腔と索前板についての覚え書き
       シビレエイにまつわる謎/トラザメ

     遺伝子発現
       中胚葉に発現する遺伝子/頭部に体節はあるか/【注】

    第5章 実験発生学の時代

       批判試論/問題

     個体発生プロセスとボディプラン理解
       ランゲ、オルトマン、シュタルク[実験発生学的センスによる頭部の理解]

     形態発生的拘束と分節性
       ソミトメリズム[相同性の創出]

     脊椎動物の頭部分節性を発生機構的に見直す
       菱脳分節/咽頭嚢

     頭部神経堤細胞をめぐる実験発生学と頭部分節性
       両生類/ル=ドワランの影響力/位置的特異化と分節性
       発生的誘導作用としてのエピジェネシスとエピジェネティックス
       脊索頭蓋と索前頭蓋/ノーデンと頭部形成
       鰓弓骨格のメタモルフォーゼとは/頭部神経堤と「エラ」
       実験発生学と分子遺伝学
       種ごとに異なる形態/神経堤の可塑性と自律的分化能
       内胚葉/腹側化シグナルとDlxコード

     皮骨頭蓋の謎
       相同性の問題/皮骨要素の実験発生学/蝶形骨の組成/【注】

    第6章 進化発生学の興隆

     進化発生学とは何か
       興隆の背景/進化発生学のツールにまつわる問題
       実験発生学と遺伝学/集団遺伝学的インプットと展望

       現代進化発生学批判試論――ホメオシスとHox
       なぜHoxコードか?/トランスポジション、トランスフォーメーション
       ベイトソン/ホメオティックセレクター遺伝子
       位置価決定システムとしてのHoxコード
       メタモルフォーゼ遺伝子/脊柱を特異化するHox遺伝子

     脊椎動物の起源という問題意識――ガスケルとパッテン
       歴史的背景/仰向けになる祖先/ガスケル/パッテン

     ガンスとノースカットと「新しい頭」
       頭部神経堤とプラコード/神経堤とプラコードの進化

     ナメクジウオとの比較
       ナメクジウオとアンモシーテス幼生/分節的動物としてのナメクジウオ
       頭部と側憩室/ソミトメリズムとブランキオメリズム、背腹軸上の分極
       筋節の比較/進化のシナリオ

       半索動物……ギボシムシ――あるいは第二のナメクジウオ
       背景/脊索動物をもたらしたギボシムシ/ギボシムシの進化発生研究
       ギボシムシ研究の意義と分節性/コ・オプション

     背腹反転
       分子的背景とボディプラン/ギボシムシの示すもの/背腹軸と神経系

     そして、脊索は

     進化を遡る――前口動物
       分類と系統/環形動物/細胞型のプロファイリングと相同性、ボディプラン
       反復説と胚葉説、再び/脊椎動物との類似性/相同か、コ・オプションか
       【コラム】裏と表

     幻想としてのウルバイラテリア
       【コラム】比較形態学体験

     類似した分節

     脊椎動物の作り方に関する謎――背腹反転再び
       【コラム】脊椎動物の起源はヒモムシか?

     祖先的胚形態
       中枢神経/中胚葉

     残された問題
       相同性と分節/側憩室、再び

     相同性をめぐる考察、再び
       細胞型/遺伝子/ファイロタイプと相互作用する相同的単位
       ツリー状システム的考察の陥穽/先験論的認識論を越えて

     結語――ボディプランの進化的ダイナミズムと由緒正しい分節
       相同性の性質/ファイロタイプ再考/【注】
    追補 試論
    ――形態的相同性を記述するための、網目状円環モデル化の試み

     序――反復説の不可能性について
       1|相同性/2|形態的相同性の特殊事情/3|反復
       4|形態の差別化

     円環としての相同性
       1|概念群[文脈の並列化の試み]
       2|発生空間とゲノム空間をとり込んだ相同性のモデル化
       3|円環/4|相互作用とボディプラン進化

     要約と結論
       【注】

     引用・参考文献
     【索引】事項索引/著作・論文・雑誌索引/主要人名索引

     浪漫の行方――あとがきに代えて

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著者プロフィール

1958年、大阪府出身。京都大学大学院博士課程修了、理学博士。米国ジョージア大学、ベイラ医科大学への留学の後、熊本大学医学助教授、岡山大学理学部教授を経て、現在、理化学研究所主任研究員。主な研究テーマは、「脊椎動物頭部の起源と進化」、「カメの甲をもたらした発生プログラムの進化」、「脊椎動物筋骨格系の進化」など。

「2022年 『反復幻想 進化と発生とゲノムの階層性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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