ハンセン病 日本と世界 (病い・差別・いきる)

制作 : ハンセン病フォーラム 
  • 工作舎
4.17
  • (3)
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 25
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875024705

作品紹介・あらすじ

「実態をよく解っていない作家による、ハンセン病を題材にした小説などの罪は大きい。」―――加賀乙彦

「ハンセン病をめぐる問題を考えることは、「生命とは何か」「人間とは何か」という問題に還っていく。」―――ドリアン助川

ハンセン病患者の隔離を強いてきた「らい予防法」廃止から、今年で20年。加賀乙彦、松岡正剛、ドリアン助川、杉良太郎、華恵など、多様なフィールドで活躍する面々が、現代に託された負の遺産に光を当て、いのちの諸相を浮き彫りにする。
病者が登場する絵巻や、かつての患者たちの知恵が息づく生活用具の写真など、カラー図版も満載。
人類史とともに歩んできた病いでありながら、語られることの少なかったハンセン病とその諸問題を、多角的に捉えなおす画期的な一書。

「ハンセン病」とは?
らい菌により皮膚や神経が侵される感染症。感染力は極めて弱く、発症した場合にも、投薬療法によって完治可能。しかし、四肢や顔面に著しい変形をきたすこともあるため、病者たちは長らく烈しい差別の対象とされ、療養所への隔離を強いられていた時代があった。かつては「らい病」とも。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 髭を剃りシャボンをつかひ背を流すなべて他界の記憶のごとし
      明石海人

     ハンセン病家族国家賠償請求訴訟に対し、首相が控訴しないことを表明した。家族が受けた苦しみを想像するに、あまりにも長い時間がかかってしまっただろうか。

     掲出歌は、歌集「白描」がベストセラーとなった療養者の作。病の進行とともに失明し、風呂場でカミソリを使ったり、介助なしに身体を洗った記憶など、まるで別世界のことのようだと吐息をついていた。

     症状の進行につれて身体にも変形があらわれるハンセン病は、患者に多くの苦悩をもたらした。病自体は化学療法で完治できる。だが、完治した「元」患者が、なおも後遺症に苦しめられる姿は、いくつもの小説にも描かれている。

     たとえば、風見治の「鼻の周辺」。佐藤健太氏が「『鼻の周辺』の周辺」と題して懇切に解説しているが、変形した外鼻を、形成外科手術を受けて再建させる元患者たちの姿が描かれている。

     主人公は、九州の療養所から東京に移り、1年もかけて鼻の再建手術を受ける。治療は順調に進むが、病気の母の見舞いのため、中断して実家へ向かうことになる。
    不完全ながらも、鼻がほぼ再建した主人公は、デパートでもレストランでも、誰からも「排斥」されず、久々に他者と同次元で生きているという実感を味わう。母からも温かなまなざしも期待されたが、ようやく再会できた母から、落胆の言葉をかけられ、「家族」という、何よりも重い存在を知らしめられる。ご一読いただきたい。
    (2019年8月4日掲載)

  • ハンセン病について4つの章と資料編で構成。1章はテレビ等に出ている有名人。2章は作家。3章は実際に療養所等を訪れたことのある人。4章は世界と関わっている人へのインタビューを取り上げている。

  • 498.6

全3件中 1 - 3件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×