- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784875024385
作品紹介・あらすじ
宮澤賢治の作品には鉱物が数多く登場し、魅力の一つとなっています。賢治が愛した鉱物たちを色ごとに紹介し、美しい写真と詳細な解説がつきました。珠玉の言葉からひもとく鉱物の世界へ。
感想・レビュー・書評
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子どもの頃『宝石箱』というカップのアイスクリームがあった。黒い紙製のカップ。それがまず子ども心に高級感があって、とてもどきどきした。バニラアイスの中に、キラキラした氷の粒(例えイチゴ味なら赤色、メロン味なら黄緑色)が散らばっていて、それが本当に宝石のようで胸いっぱいになった。たぶん、他のアイスクリームに比べてお値段が高かったのだと思う。滅多に私の前に現れることはなかった。それでも、あの『宝石箱』の蓋を開けた瞬間のときめきはしっかりと覚えてる。味は全く覚えてないのだけれど。
その頃、本物の宝石なんて見たことなかったはずだ。だから、その氷の粒が私にとってはじめてのルビーやエメラルドだったのじゃないだろうか。ましてや鉱物から宝石が生まれること。石ころと宝石が結びつくなんてこと想像も出来なかっただろう。母なる地球で生まれた鉱物。その鉱物から宝石が誕生する。宝石も地球に育てられたんだなぁ。
この本を手に取ると、いつもあの『宝石箱』を思い出すのだ。
宮沢賢治の作品には鉱物の名がたくさん出てくる。私が一番に思い浮かべる賢治作品の鉱物の色と言えば「青」だ。
この書物の第1章「青い鉱物」でも、「青」は賢治を語るときに特別な意味を持っていると記されている。その章ではトルコ石、天河石をはじめ、十種類の青い石が紹介されている。
空の青。夜明け後の青。夜の青。惑星の青。雨の青。葉の青。川水の青。土地の青。そして、深い悲しみの青……
それぞれの鉱物の青い色は、作品に触れたことで心に生まれる感情を豊かにイメージさせてくれる。
それならば、鉱物がどういうものかを知ることは、賢治を知ることにもなるはずだ。賢治がなぜその場面にその鉱物をイメージしたのか。その鉱物の色にどんな心の感情を写しとっていたのか。
とはいえ、何も難しく考える必要はないと思う。極端に言えば、賢治を知らなくても、あるいは苦手でも全然大丈夫だ。
強いて言えば、心がざわざわしていたり疲れているときに、この本を開いてもいいかもしれない。
そこは美しい言葉と美しい鉱物の世界がひっそりと広がっている。
ただ綺麗だなぁと感じた石や言葉が、自分の心の『宝石箱』にそっとしまわれる。
最後に。
賢治の作品で鉱物がたくさん出てくる大好きな場面を紹介したい。きっと、あの頃のわたしがその場面を知っていたら、ワクワクしながらお絵描きしたんじゃないだろうかと思うのだ。
“あられと思ったのはみんなダイアモンドやトパァスやサファイアだったのです。おお、その雨がどんなにきらびやかなまぶしいものだったでしょう。
雨の向むこうにはお日さまが、うすい緑色のくまを取って、まっ白に光っていましたが、そのこちらで宝石の雨はあらゆる小さな虹をあげました。金剛石がはげしくぶっつかり合っては青い燐光を起こしました。
その宝石の雨は、草に落ちてカチンカチンと鳴りました。それは鳴るはずだったのです。りんどうの花は刻まれた天河石と、打ち劈かれた天河石で組み上がり、その葉はなめらかな硅孔雀石でできていました。黄色な草穂はかがやく猫睛石、いちめんのうめばちそうの花びらはかすかな虹を含む乳色の蛋白石、とうやくの葉は碧玉、そのつぼみは紫水晶の美しいさきを持っていました。そしてそれらの中でいちばん立派なのは小さな野ばらの木でした。野ばらの枝は茶色の琥珀や紫がかった霰石でみがきあげられ、その実はまっかなルビーでした。
もしその丘をつくる黒土をたずねるならば、それは緑青か瑠璃であったにちがいありません。„
『十力の金剛石』 -
孔雀石の空、玉髄の雲…宮澤賢治の作品を彩る鉱物を色ごとに紹介。科学者による美しい写真と最新の鉱物解説とで、賢治の世界をより深く知ることができる。鉱物53種カラー写真109点収録。
「工作舎」HPより
ブックカフェに置いてあったので手に取ってみた.鉱物と宮沢賢治さんがよんだ詩が一緒に紹介されている.
写真がとても奇麗なのと、賢治さんはこの奇麗なものを愛でたのだなと思った. -
賢治が好きで、鉱物が好きな人にはたまらない一冊。マニアックな作りなので初心者には難しいかもしれないけれど、写真が美しいので、好きになれるかも。
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「石っこ賢さん」と呼ばれたほど石が好きだったという宮沢賢治の作品に、自然や心象風景を表すのに多用された「鉱物」を、その作品の一文とともに紹介した写真集。鉱物なんてジュエリーくらいでしか興味がなかったけれど、石っこのなんと多彩で美しいこと。眺めているだけでちょっとわくわくした。そして大好きな石っこを使って自然や人の心の美しさや怖さを表現し、独特の世界観を創り上げた宮沢賢治の才能にあらためて驚く。唯一無二。デザインが懲りすぎてて読みづらかったのが難点。
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子供の頃に持っていた鉱石標本を思い出した。
磨いていない石は宝石と違ってひと目を引く美しさはないけれど、不思議さは宝石に数倍する。こういう石がどうして地面の下に埋まっているのだろう、どうやってできるのだろう、といつまでも眺めていた。
不思議さに惹かれる心に文系も理系もないな。 -
佐賀大学附属図書館OPACはこちら↓
https://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB0637481X -
キラキラ
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手元に置いておきたい本
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ふむ
コメントありがとうございます♪
宝石箱、そうですか!
佐藤史緒さんも大好きでしたか。
あの黒いパッケージ...
コメントありがとうございます♪
宝石箱、そうですか!
佐藤史緒さんも大好きでしたか。
あの黒いパッケージが、私の中ではまず他のアイスとは一線を引いていましたよ。
そして、バニラアイスに散りばめられたキラキラが、もうお姫様になった気分でした。
そんなことは、しっかり覚えてるんですけどね、味の方はさっぱり記憶にありません。
そう、ピンクレディーでしたね。
宝石箱×ピンクレディーの最強のコラボ、女の子がほっとくわけがなかったでしょう。
あ、私の歳もばれちゃいますね。
佐藤史緒さんのレビューいつも楽しみにしてます♪
そして、本棚のセンスが素敵ですよね。
カラーも時々変えておられるのですか?
とてもいい色ですね。
そこに並ぶ本の表紙も絵画のようで、まるで美術館の巡っているようだなって、いつも思ってます(*´∀`*)
表紙で本を選ぶこともありますか?
本のセレクトですが、はい、きっぱりと表...
本のセレクトですが、はい、きっぱりと表紙で選んでおります。リアル本棚はコミックや実用書やハウツー本もありゴチャゴチャなので、せめてブクログ本棚くらいはビジュアル重視でいきたいなあと思いまして。色も気分次第で変えて楽しんでます。
地球っこさんの本棚もピンクでキュートですよね♪ 同じブクログ本棚なのに使う人によって全く違う個性が出るから面白いですね。
やっぱり本のセレクト、そうでしたか!
とても素敵な本棚ですもの。憧れます♪
やっぱり本のセレクト、そうでしたか!
とても素敵な本棚ですもの。憧れます♪