怠ける権利!

著者 :
  • 高文研
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874986530

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  • 著者:小谷 敏
    価格 2,400円+税
    出版年月日:2018/07/10
    9784874986530
    版型 4-6 352ページ

    なぜこの国では、過労死が絶えないのか――。
    「一日三時間以上働くと人間は不幸になる」
    19世紀末にフランスの社会主義者ラファルグが唱えた言葉です。「労働時間の短縮」が世界的な潮流となる中で、日本は「karoushi」が世界共通語となるくらい、命を削っての過剰労働が常態化しています。
    ラファルグ、ラッセル、ケインズ、ヴェブレン、そして日本が誇る漫画家・水木しげるが遺した「なまけ者になりなさい」という言葉を読み解き、「一日三時間労働」を可能にするベーシックインカムの導入を提言する。
    この国の〝国是〟とも言える「働かざる者喰うべからず」に正面からたたかいを挑んだ労作!
    http://www.koubunken.co.jp/smp/book/b371637.html

    【目次】
    はじめに

    第1章「怠ける権利」とは何か 
    1 ポール・ラファルグという生き方 
    「現代のオブローモフ」──一九七〇年代の若者たち/「怠ける権利」との出会い/美しく自由に生きる権利
    2「怠ける権利」とは何か 
    「労働の権利」への反駁/過剰生産がもたらすもの/機械の奴隷に堕した人間/「怠ける権利」とは何か
    3 働き過ぎだよ、日本人 
    「前工場法的労働実態」/勤勉さが招いた? 長期不況/供給は需要を生まない──竹中改革の愚/過剰生産を超えて/「爆買い」と貿易戦争──過剰生産のはけ口を求めて


    第2章 わが孫たちの経済的可能性?──ケインズの予言はなぜ外れたのか 
    1 バートランド・ラッセル『怠惰への讃歌』 
    奴隷の道徳としての労働の讃美/一日四時間の労働で足りる世界/労働と報酬の問題──ベーシックインカム論の源流
    2 ジョン・メーナード・ケインズ「わが孫たちの経済的可能性」 
    ジョン・メーナード・ケインズ/「わが孫たちの経済的可能性」/「足るを知る」──ケインズとラッセルのイギリス/外れてしまった? ケインズの予言
    3「相対的ニーズ」に支配される人間──ソースタイン・ヴェブレン 
    「アメリカン・ドリーム」の光と翳/「金ぴか時代」のアメリカ
    4 世界のアメリカ化と「相対的ニーズ」の支配 
    「世界経済の黄金時代」と世界のアメリカ化/文化という「ソフトパワー」/上昇する「絶対的ニーズ」/人間の価値を図る尺度としての収入──イチローかく語りき


    第3章 勤勉──死に至る病
    1 過労死大国ニッポン 
    Tさんの悲劇/はじまりは一九八〇年代?/過労に斃れる「企業戦士」
    2 日本人は勤勉か? 
    国民性っていうな!/「日本人は勤勉ではない」/「勤勉のエートス」とその成功体験
    3 過労死の悲劇はなぜ繰りかえされるのか
    「自発的隷従」という病/「死に至る勤勉」のルーツを求めて/「自発的隷従」は「自発的」か?


    第4章 「奴隷の国家」がやってきた 
    1「奴隷の国家」とは何か 
    奴隷とは何か/資本主義の誕生/「奴隷の国家」の方へ/もう一つの古典的自由主義

    2「愉快なニッポン」とその終焉──一九六〇年に起こったこと 
    「昭和」への郷愁/「愉快なニッポン」──一九五〇年代/「愉快なニッポン」の終焉──一九六〇年に起こったこと

    3「奴隷の国家」がやってきた 
    保護された自営業者たち──「経済成長総力戦体制」の諸相①
    「沈黙の春」の方へ──「経済総動員体制」の諸相②
    制度化された階級闘争──経済総動員体制の諸相③
    生と死の施設化──システムによる生活世界の植民地化①
    企業社会のサブシステムとしての核家族──システムによる生活世界の植民地化②
    ジャイアンの苛立ち──システムによる生活世界の植民地化③

    4 サラリーマンは気楽な稼業だったのか? 
    サラリーマンという表象/ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用
    会社に従属する個人
    「経営家族主義」──あるいは「システムと生活世界の相互植民化」について
    サラリーマンは気楽な稼業か?


    第5章「社畜」の誕生──「包摂型社会」のゆらぎのなかで 
    1「右肩上がりの時代」の終わり──プラザ合意からバブル崩壊まで 
    プラザ合意と円高不況──日本とアメリカの「相互植民地化」
    サッチャリズムとレーガノミクス──新自由主義の時代
    国鉄民営化が意味するもの──中曽根康弘と「戦後政治の総決算」①
    破棄された社会契約──戦後政治の総決算②
    バブルとその崩壊

    2「社畜」の誕生 
    「田中さんはラジオ体操をしなかった」
    いじめの「発見」
    「包摂型社会」の勤労者像としての「サラリーマン」
    「排除型社会」の出現/「社畜」の誕生──「包摂型社会」のゆらぎのなかで
    個人は弱し、法人は強し

    3 男と女と若者と──「社畜」の時代の文化革命 
    資本主義の文化的矛盾とアノミー
    「ダメおやじ」──「社畜」の家庭内表象としての
    「女の時代」の虚実
    「社畜の国」が生んだオタク文化

    第6章「棄民の国家」の方へ──「失われた10年」に起こったこと
    1「失われざる10年」の記憶 
    文化──「クールジャパン」の方へ
    政治──五五年体制の崩壊と「市民」の台頭

    2「棄民の国家」の方へ 
    「システム」の機能不全
    「棄民の国家」の方へ

    3 叩かれた「怠け者」 
    少年犯罪と「ユースフォビア」
    叩かれた「怠け者」──「若者論の失われた10年」
    統計の詐術と「世代の堕落史観」──若者への偏見を生み出したもの


    第7章「純ちゃん」と「晋ちゃん」──「棄民の国家」の完成 
    1「自己責任!」──小泉純一郎とその時代 
    「自民党をぶっ壊す」──ポピュリズム政治の幕開け
    ナルシシズムが浸透した日本社会
    エゴイスト角栄VSナルシスト純一郎
    イラク人質事件と「自己責任論」
    「公務員の身分を剥奪する!」──郵政民営化選挙

    2「生きさせろ!」──「棄民」たちの逆襲 
    見出された貧困──「ワーキングプア・ターン」
    声をあげ始めた若者たち
    「丸山眞男をひっぱたきたい!」──平成と昭和の世代間戦争
    秋葉原の惨劇──「まなざしの不在の地獄」
    働く人への同情/働かない人への偏見

    3「棄民の国家」の完成 
    二度の政権交代──日本政治の漂流
    「遊戯」・「饗応」・「称号」──「自発的隷従」を調達する安倍政権
    ナルシシズムの二つの形──「純ちゃん」と「晋ちゃん」①
    構造改革と「アベノミクス」──「純ちゃん」と「晋ちゃん」②
    「棄民の国家」の完成


    第8章 子どもと若者に「怠ける権利」を! 
    1「ゆとり教育」ってなんだ?──戦後教育を振り返る 
    「これだからゆとりは!」──二〇一〇年代の若者たち
    「系統主義」と「経験主義」──教育思想の二つの流れ
    「詰め込み教育」の時代──高度経済成長期
    「生きる力」と総合的学習の時間
    「ゆとり教育」の退場

    2「ゆとり」って言うな! 
    「PISAショック」の謎
    ランキング至上主義──新自由主義社会の教育改革
    「学力低下」は幻だった?
    「ゆとり」を敵視する国
    教師と子どもに「怠ける権利」を!

    3 若者にも「怠ける権利」を!──「自発的隷従」を超えて 
    天国か、地獄か──若者の人間関係
    「空気を読むこと」=社会に出るための準備教育
    ノーポピュラーカルチャー、ノーライフ
    「私たちは埋没したい!」──「コミュ力」という名の妖怪
    若者にも「怠ける権利」を!

    4 本当は恐ろしい能力主義 
    「スクールカースト」とは何か
    「すること」から「であること」へ──「超近代」の逆説
    「友だち地獄」と「スクールカースト」を超えて
    本当は恐ろしい能力主義──相模原の事件を考える
    「人は皆、精神病者であり、身体障碍者である」──能力主義と自己責任論を超えて


    第9章 ベーシックインカムと「怠ける権利」 
    1 人工知能はベーシックインカムの夢をみるか 
    名人がコンピュータに負けたころに棋士たちの世界で起こったこと
    「機械との競争」──労働市場からの退場を強いられる人々
    「スーパー子ども」──人工知能時代の「期待される人間像」
    なぜ技術の発展が災厄となるのか?

    2 グローバリゼーション──「一%」と「九九%」 
    グローバリゼーションとは何か
    「禍福は糾える縄の如し」──ソ連崩壊の教訓
    拡大する格差/「一%」に抗う「九九%」──反グローバル運動
    「エリートの反逆」への「大衆の反逆」──ポピュリズムを生み出したもの
    地域通貨──庶民の「生きる力」

    3 ベーシックインカム──「怠ける権利」をめぐる攻防 
    ベーシックインカムとは何か?
    「怠ける権利」をめぐる攻防/本当は恐い福祉国家
    「働かなくてもいいじゃない」──ホリエモン「参戦」のインパクト
    「怠ける権利」より「働く権利」を!──左派・リベラルの主張

    4 ベーシックインカム導入で人々は働かなくなるか? 
    「フリーライダー」大歓迎!──九割の労働が必要なくなる未来
    ルトガー・ブレグマン『隷属なき道』
    「負債としてのお金」──銀行支配が強いる経済成長
    「お金は人権だ!」
    BIを可能にする国民的合意とは?


    第10章「なまけ者になりなさい」 
    1 水木しげるの幸福論
    水木しげるは「怠け者」か?
    水木サンの幸福論

    2 若者を過労死へと駆り立てるものは?
    「学生消費者主義」──「上から目線」の若者たち
    「わがままな消費者」と「忠実な労働者」──若者たちの二面性
    「他人との比較」はやめられない
    「好きの力」を信じた挙句に──「やりがい搾取」から過労死へ

    3 坂道を下る──二一世紀的ライフスタイル 
    成長の時代の終わり──二〇三〇年の世界再訪
    エネルギー革命の末路──福島第一原発事故
    地方分権の方へ──坂道を下る①/自営業の復権──坂道を下る②
    兼業社会の方へ──坂道を下る③

    4「怠ける権利」を阻むものは?──長時間労働信仰とジェラシー
    なお生き残る長時間労働信仰
    練習をし過ぎると野球が下手になる──長時間労働神話に抗して
    「働かざる者食うべからず」
    ジェラシーが阻む「怠ける権利」

    5 ゲゲゲのヴェブレン──「なまけ者になりなさい」 
    「親性傾向」と「製作者本能」──困難の中で培われた利他的な人間性
    「怠惰な好奇心」とは何か
    「プラグマティズム」──「怠惰な好奇心」の敵対者としての
    「プラグマティズム」に支配された大学
    宇沢弘文──水木とヴェブレンをつなぐもの①
    前近代へのノスタルジア──水木とヴェブレンをつなぐもの②
    「怠惰な好奇心」の赴くままに生きよ──ヴェブレンと水木しげるの教え


     あとがき

  • ☆☆☆2019年11月☆☆☆


    「働きすぎ」とい病。働いても、働いても楽にならない暮らし。「ワーキングプア」という恐怖。
    適度な労働は人間にとって喜びであるが、過剰な労働が今人々を苦しめている。
    どうしたらこの状況にストップをかけられる!?
    僕はその一つは「機会ロス」を認めることだと思う。モノを扱う業態において「欠品=機会ロス」を防ぐために、命がけの努力を求められる。「機会ロス」がそんなに恐ろしいか?

  • 東2法経図・6F開架 366.21A/Ko92n//K

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