鈴木天眼 反戦反骨の大アジア主義

著者 :
  • あけび書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784871541985

作品紹介・あらすじ

明治から大正にかけて軍国主義と対外膨張、天皇主権論を批判し続けたジャーナリスト鈴木天眼。侵略肯定への変質を許さず真のアジア主義を唱えた彼の先駆的な思想と行動の軌跡を追う。

感想・レビュー・書評

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  • 2021年の週刊金曜日に掲載された書評を偶然目にしてここに登録しておいた。全く知らない人物だった。
    宮崎滔天『三十三年の夢』を読み終えてから、本書を読み始めた。『三十三年の夢』の校注(碩学島田虔次の労作だと思う)に本名の鈴木力として言及されているが、朝鮮半島の東学党の乱に呼応して天佑侠の結成にかかわったとあるのみである。
    本書でもこの時点では玄洋社の頭山満や、黒龍会の内田良平と行動をともにしていたとしている。
    日露戦争では対外硬の論陣を張ったようだが、日比谷焼き討ち事件の発端となったポーツマス条約については、「御用新聞」と目されていた徳富蘇峰主宰の國民新聞とは一線を画する論法で、これを公然と支持した。
    心底驚かされたのは、鈴木天眼の大日本帝国憲法について、とりわけその中の天皇についての大胆な読み解き方である。
     『天眼によれば「天皇神聖」は第1章第3条までは天皇神聖、第1章4条以下は民格正認』
    つまりは国民(臣民ではない!)主権だという。大正デモクラシーの論客として名を残す吉野作造や、当時は主流の学説だった天皇機関説の美濃部達吉らでさえ、大日本国憲法下では天皇が主権者であることは自明であったという。
    インドネシアのマスメディアとナショナリズムの関係を研究したベネディクト・アンダーソンの名著『想像の共同体』が明らかにしているように、新聞のような文字媒体を、売上部数の拡大を経てマスメディアに育て上げるのは、戦争である。
    長崎の一新聞の記事とはいえ、日露戦争は実はぎりぎりの勝利で、もはやこれ以上の戦費の調達や、将兵の犠牲には堪え得ない日本の現実を見据えた、政治的リアリストとしての面目躍如たる堂々の論を展開している。
    正直なところこのようなジャーナリストがかつて存在していたことに驚いている。
    政治学者の御厨貴の書評がある。
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/155712

  • 東2法経図・6F開架:289.1A/Su96t//K

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著者プロフィール

 1950生まれ。九州大学経済学部卒。1974年、長崎新聞入社。原爆平和報道等に取り組み、論説委員長、特別論説委員を経て2016年退職。2002年から14年間執筆を続けた長崎新聞1面コラム「水や空」抜粋のコラム集『信の一筆』1~4を2007年から16年にかけて出版。1990年、「天皇に戦争責任はあると思う」と発言した本島等長崎市長が右翼の男に銃撃された事件現場のスクープ写真で日本新聞協会賞を受賞。2020年、「東洋日の出新聞 鈴木天眼~アジア主義もう一つの軌跡」(長崎新聞社出版協力)で第23回日本自費出版文化賞・研究評論部門賞を受賞。

「2021年 『鈴木天眼 反戦反骨の大アジア主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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