災間の唄

  • サイゾー
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784866251301

作品紹介・あらすじ

発売前からTBSラジオ「アクション」で話題!(https://www.tbsradio.jp/513833)

東日本大震災からコロナ禍まで。災間ニッポンを稀代のコラムニスト10年分のツイートで読み解く。

私はふだんあんまり自分をほめるタイプの人間ではないのだが、今回ばかりは言わせてもらう。本書は大傑作である。(小田嶋隆「あとがき」より)

災間、それは、2011年の東日本大震災(福島原発事故)311と、2020年コロナ禍との間を時期を指す。それはまるで第一次世界大戦と第二次世界大戦の間(戦間期)と同じように世の中がどんどんと悪くなる時代であった。いったいそこで何が起こっていたのか。人々は日々、SNSのタイムラインでまるで世界の状況を掴んだ気になっているが、実は誰も把握していないのではないか。本書は日々、誰から求められることもないのに、魂の叫びともいえる熱い言葉をツイッターにはき続けた日本最強のコラムニストの10年を、日本最強のフリーライターが選びに選び抜いた1冊。誰も通読したことのないツイッターを一気読みすることで、今現在の正体が見えてくる!

感想・レビュー・書評

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  • 天才・小田嶋ここにあり! 『災間の唄』と『日本語を、取り戻す。』 - HONZ
    https://honz.jp/articles/-/45844

    【著者メッセージカード付】災間の唄/小田嶋隆・武田砂鉄 - CYZO BOOK STORE(サイゾーブックストア)
    https://cyzo-two.shop-pro.jp/?pid=154277960

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      小田嶋隆さんを偲んで - ペンは剣よりも強く
      https://amurin.hatenablog.com/entry/20220625/16...
      小田嶋隆さんを偲んで - ペンは剣よりも強く
      https://amurin.hatenablog.com/entry/20220625/1656106004
      2022/06/25
  • この10年間にさまざまなことがあった。ツイートで振り返ると実に生き生きと思い出すことができるのに、改めて驚く。短い呟きの中にユーモアのエッセンスを入れて的確に、事象を捉えているのはいつもツイートを見かけていて、見事だ思っていた。こうしてまとまったものを見てみると、改めて面白いし、核心をついていたと納得する。

  • 敬愛してやまないコラムニスト、小田嶋隆さんの新刊です。
    小田嶋さんがライフワークにしているツイッターに投稿した短文をまとめ、新進気鋭のライター、武田砂鉄さんの解説を付けたのが本書。
    投稿した期間は、2011年~2020年。
    つまり、東日本大震災から現在のコロナ禍までという「災いの間」。
    これが本書のタイトルになっています。
    いや、読み応えがありました。
    ソフトカバー、366ページに、おびただしい量の小田嶋さんの投稿が載っています。
    その中から、「これぞ小田嶋節」というのを、独断と偏見でご紹介します。
    【2011年】
    ・テレビや新聞などの既存メディアを相対化するところまでは理解できる。問題点を指摘する態度も。でも、巨大メディアをあっさり見下して「マスゴミ」とか言っちゃう人たちにはちょっと懸念を感じますよ。何様なのかと。
    【2012年】
    ・マスゴミが情報を操っているとか思っている人たちは、雨を降らせてるのが気象庁だと考えているのだろうな。
    ・「どういう意味ですか?」という質問には、「あなたが受け止めている通りの意味ですよ」と答えておけば良い。そうすれば言質を取られずに済む。
    ・他人にものを教える設定でしかコミュニケーションを取れない人がいますね。
    ・マネジメントという言葉は、自分以外の人間をコントロール可能な資源と見なす思想を含んでいる。アタマの中で考えるのは勝手だけど、私の前で使うのは失礼なのでやめてほしい。
    【2013年】
    ・「すべてを前向きに受けとめて、ポジティブな言葉だけを使うように心がけていれば、世界がハッピーに回転していくはずだ」という思想ないしは信仰は、自己啓発ビジネスの顧客誘引トークなわけだが、洗脳が進んだ段階では信者の不満を封殺する自己抑圧の論理として機能してもいる。
    【2014年】
    ・資産のない人間は政治家になれない。資産のある人間は政治家にならない。政治を通じて資産を作る人間だけが政治家になる。
    ・「グローバル人材」という言葉を使う人間が想定している人材は、「グローバルな企業なり資本なりにとって好適な人材」ということです。で、当然のことながら、人間を人材に教育する加工過程は、樹木を材木にする製材工程と同じもので、要するに無駄な枝葉を落とすわけです。
    ・仕事より大切な何かをするためにでないと仕事を休んではいけないという考え方がそもそもどうかしている。「休みたくなったから休む」とか、「なんとなく休む」とか、「理由は言えないけど休む」みたいな休み方が容認されているのでなければ、休むことにならない。
    ・「個性」はOKだけど「わがまま」はダメですみたいなお話って、要するに「都合の良い個性だけを選択的に伸ばす」ということで、教育を受ける側から評価すれば、まるっきりの個性圧殺ですよ。
    【2015年】
    ・どんなに強く踏んでも、ダメージを受けるのは靴の方だというのがうんこの強み。
    ・「ブロック機能があるのだから失礼なリプも許される」のだとしたら、「ヘルメットかぶってるヤツは殴っても良い」ということになるし、極論すれば「保険に入ってるヤツは殺しても良い」ことにだってなりかねない。
    ・「兵站」と「後方支援」と言い換える手口が、「武器輸出」を「防衛施設移転」に言い換えて合法化した時のやり口そのまんまであることから察するに、そのうち「戦争」も「平和希求活動」ぐらいな言い方でアナウンスされることになるのだろうからして、長い気はしたくないものだぜ。
    ・「みなさまのNHK」は、今後「一部のみなさまのNHK」と、正しく実態を反映した言い方にあらためてもらいたい。
    ・「一部のみなさまのNHK」って、なんか謙虚でいいな。
    ・区別がつかないほど似た人間同士が相互フォローしているツイッターの世界のコミュニケーションを見ていると、リアルな世界の健全さに思い至る。容易に本音が言い出せないからこそ、われわれは異質な人間と交流しているわけで、たぶん、その付き合いを通じてかろうじて正常さを保っているのだと思う。
    【2016年】
    ・はじめて見るものに心惹かれたり、通りすがりのできごとに感動したり、はじめて会う人の話を真剣に聴いたり、そういうところがないと創作はむずかしい。だからクリエーターはだまされやすい。
    ・おっしゃるとおりですが余計なお世話です を単語登録した。
    ・国を守るというのはつまり国民の命を守ることなのだが、一方、国を守るためには国民の命を捨てなければならない。とすると、国民の命を守るために国民の命を捨てるという矛盾律に陥るわけだが、実際には命を守られる国民と命を捨てる国民はあらかじめ別々に決まっているので心配は要らない。
    【2017年】
    ・日本学術会議から学術を追放すると日本会議になることからも、学術の必要性は明らか。
    【2018年】
    ・もう少し詳しく言うと、「過剰な正義」という問題の立て方を通じて、大切な何かを訴えている人々の行動や考え方を相対化しにかかる態度と、「ちょうど良いブス」みたいなフレーズを通じて一部の人間への一方的な迫害を免罪してしまう態度は、いずれも強者の論理に裏打ちされているということです。
    ・ちょうどいい差別、ちょうどいい虐待、ちょうどいい自虐、ちょうどいい拷問、ちょうどいい冷笑、ちょうどいい屈従、ちょうどいい支配隷従関係、ちょうどいい人権弾圧、ちょうどいい蹂躙、ちょうどいい暴力、ちょうどいい殺人、ちょうどいい殲滅、ちょうどいい粉骨砕身、ちょうどいい制裁。
    【2019年】
    ・「人生再設計」「一億総活躍」「人づくり革命」「働き方改革」「みんなにチャンス!構想」「3年間抱っこし放題」と、あらためて並べてみると、これ、作者同じ人だよね。
    ・義理人情を踏みにじる決意さえかためれば、人生はわりとシンプルになる。どこまで踏みにじるのかが大切なポイントではあるのだが、個人的には全面的に踏みにじるのがわかりやすいプリンシプルだと思っている。
    【2020年】
    ・「類は友を呼ぶ」を、官邸用語に翻訳すると「適材適所」になる。これ豆知識な。
    ・オンラインサロン界隈の人間の「お互いの成長につながらない対話って意味ないじゃないですか」式の思い込みって、何なんだろうね。オレの側からすればあんたの成長なんて知ったことじゃないし、それ以前に、人間が対話なんかで成長してたまるものかと思ってる俺の立場を尊重してほしい。
    ・「〝ウィズコロナ〟における新しい旅のスタイル」って、アタマの悪い学生が書いてきた卒業論文の仮タイトルのようでもあるし、地方都市の広告代理店の若造が市の観光課に持ってくるキャンペーン広告のラフ案みたいでもあるな。

  • あとがきで自身も書かれているように、本書は確かに、とてつもなく素晴らしい。もちろんTwitterもフォローして、その都度、ツイートの鋭さに感銘を受けているけど、こうして選りすぐりをまとめて味わうと、その切れ味はさらに凄みを増す。選者でもある武田氏による、章間のコラムもまた最高で、各章の絶妙なまとめであるだけに留まらず、巧みに自説も盛り込むことによって、抜群の存在感を発揮している。姉妹編への期待も含め、最大級の賛辞を寄せるものです。

  • 思っている事、表現される事、そうなんだよ、そうだよな忘れてはいけない。価値ある仕事に感謝します。

  • 2011年から20年までの小田嶋さんのツイートを砂鉄さんが選んで解説。
    震災からコロナまで、わたしたちは不安とわかりやすさに負け、待つことを放棄して、主体を曖昧にして、自分たちの手でこの世を着々と地獄にしてきたんだなって思った。

  • 小田嶋さんのTwitterをフォローしたのは2015年ごろか。知人が勧めてくれた。今まで誰かのTwitterのフォローを勧めてくれたのは彼女しかいない。とても感謝している。
    いつも横書きで読んでいるので、最初わりと読みにくかった。横書きの本は嫌いだが、これこそは横書きにしてほしかったような。
    1ページに詰まっている情報も多い。140字に凝縮されているtweet、それをまた厳選してあるわけだから。こちらも思い出しながら、考えながらなので、そう簡単に進まない。
    「災間」まさに災間の10年だったのだなぁ。

  • 小田嶋さんが亡くなったのが本当に悲しい。

  • 本の構成上何に言及しているのか前後関係がわからないものも多いので、具体のツイートをあえて抽象化して受け取ることになるのだが、著者自身が芥川の『侏儒の言葉』になぞらえるだけの味わいはある。

  • 東2法経図・6F開架:304A/O17s//K

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著者プロフィール

1956年東京赤羽生まれ。早稲田大学卒業。食品メーカー勤務などを経て、テクニカルライターの草分けとなる。国内では稀有となったコラムニストの一人。
著作は、『我が心はICにあらず』(BNN、1988年、のち光文社文庫)をはじめ、『パソコンゲーマーは眠らない』(朝日新聞社、1992年、のち文庫)、『地雷を踏む勇気』(技術評論社、2011年)、『小田嶋隆のコラム道』(ミシマ社、2012年)、『ポエムに万歳!』(新潮社、2014年)、『ア・ピース・オブ・警句』(日経BP社、2020年)、『日本語を、取り戻す。』(亜紀書房、2020年)、『災間の唄』(サイゾー、2020年)、『小田嶋隆のコラムの向こう側』(ミシマ社、2022年)など多数がある。
また共著に『人生2割がちょうどいい』(岡康道、講談社、2009年)などの他、『9条どうでしょう』(内田樹・平川克美・町山智浩共著、毎日新聞社、2006年)などがある。
2022年、はじめての小説『東京四次元紀行』(イースト・プレス)を刊行、6月24日病気のため死去。

「2022年 『諦念後 男の老後の大問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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