タネはどうなる?!~種子法廃止と種苗法運用で

著者 :
  • サイゾー
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784866251042

作品紹介・あらすじ

種子法廃止で、コメ、麦、大豆といった主要農産物の
「値段が上がる」?「味がまずくなる」?「食料不足を招く」?
「おなじみの品種が消える」?「遺伝子組み換え作物が席巻する」?
種苗法によって、農家は「自家採種ができなくなる」?
そして、安倍政権はなぜこのような政策を推進するのか?
大手メディアが報じない、数々の疑問と疑惑に元農林水産大臣の山田正彦が迫る!

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃的な本です。
    「種子法」が廃止された事は知っていましたが、ニュースでもとんと取り上げられないので非常に気になっておりました。森友加計問題で一色だったところで隙をついての種子法廃止。基本的に種子は民間の競争原理にゆだねるというのが国の方針となりました。
    そして世界的な大企業によって日本の食の根幹を握られてしまう事がほぼ確定となりました。その企業こそ悪名高きモンサントです。
    何処のホームセンターに行っても山積みになっている「ラウンドアップ」。悪名高き除草剤のメーカーです。ちょっと検索しただけでもどれだけ危険な薬剤か分かりますので、是非調べてみてください。
    そして、遺伝子組み換えによってラウンドアップで枯れない野菜を開発し、種子と化学肥料をセットで売りつける。そんなビジネスモデルが確立していて、それを日本でも広げようと躍起になっています。今回のTPPによってなだれ込んでくることは間違いありません。
    そして重要な米、麦。大豆という日本人にとって大事な穀物のノウハウも世界に大盤振る舞いの大公開。いくらでも魔改造して権利を申請してください。日本はあなた方巨大企業の実験農場になりますよ。という恐ろしい計画を日本政府は積極的に推進していく方針です。水、土、種子。人間が生きていく上で最も大事な所を外資にどんどん売り渡している事を、世の中の人々はどれだけご存じなのでしょうか?
    世界的には遺伝子組み換え食品を排除していく方針ですが、日本は真逆です。これから日本は優秀な実験農場と化していく事が明白なのです。中国やロシアというと日本からすると色々適当な国に感じるかもしれませんが、遺伝子組み換え食品の導入に関して真っ向拒否している国であります。
    日本はラウンドアップの主成分であるグリホサートの基準を従来の400倍にしました。これによって世界でだぶついているラウンドアップを日本で撒きまくる良い口実が出来たと思います。まさか日本国がこんな悪魔のパスポートに太鼓判を押すとは信じられません。
    遺伝子組み換えによって、さまざまな生物が産みだされていますが、食べなければいいという事だけではなく、その種子が原種と交雑してしまう事によって遺伝子組み換え汚染がどんどん広がって、将来的に全ての生物に影響を与えると思われます。動物もまた然りです。
    知識階級が安全だと承認した事で、どれだけの事故や病気が発生した事でしょうか。今回は安全だと言われても信じられるわけがありません。長期的にどういう健康被害があるのか、自らの体で実験させられる我々は愚かな羊でいるしかないのでしょうか。
    米という日本の根幹を担う穀物まで明け渡して、のど元をさらして尻尾を振る理由は一体何なんでしょうか?
    意識的に情報を取りにいかないと知る事が出来ない重要な事が世の中沢山あります。芸能情報に一喜一憂するのはもう終わりにしましょう。騙されて情報を隠され、最終的に痛手を被るのは我々庶民で、政治家たちは無農薬のコシヒカリを食べるんです。
    本当に大事な事を考える最後のチャンスではないかと思います。

  • 種子法が廃止され、新たに種苗法が制定された
    企業型農業に支配され、昔ながらの原種が無くなることを憂う

    TPPが制定されたことにより
    遺伝子組換え食品が出回り、化学肥料、農薬漬けの食品が日本中に溢れることを憂う

    大企業の利益優先ではなく
    食の安全は確保してほしいと思った

  • 自分のSNSつながりで、よく話題になっていた種子法廃止の話。SNSではこんなに話題なのに、どうしてニュースなどでは出てこないんだろう?と感じていた時にオススメされた本でした。

    普段は政治系の本は読まないし、実際に法律の話はやっぱり難しくて、全部が理解できるわけではないけど、これを放置しておくのはダメなのはよくわかる本。

    こういうシステムが必要な人もいるのかもしれない。でも、せめて健全な物を作れる&食べられる選択肢は残しておいて欲しい。他人任せにしてられない。

  • ファーマータナカの農家の本棚。

    「種子が消えれば食べ物も消える。そして君も」(ベント・スコウマン)

    FB友達のI氏やS氏等も、以前から懸念を示されていたと思う。
    興味がない方も是非考えていただきたい。
    種の世界を見ることで、世界で何が起きているかを知ることができる。

    種子(の多様性)を守ることは、命を守ること。

    種子法が廃止されて、やがて2年が経つ。

  • 五つ星運動のリーダ リカルド・フラカーロ

  • ・なんで読んだか?
    師匠に借りた種子法廃止に関する本。農家だから知っておかないといけない。

    ・つぎはどうする?
    あと数冊借りているのでそれを読む。種苗法があまりわかっていない気がする。

    ・めも
    日本人にとってコメは農作物の中でも特別な意味を持つ。神に捧げる神聖な供物として、毎年天皇自らが行われる、収穫に感謝する新嘗祭(にいなめさい)や伊勢神宮の神嘗祭(かんなめさい)のコメは古代から御料地で栽培されてきた。

    コメの花には1本の雄しべと雌しべがあるが、コメは開花と同時に自家受粉してしまう。農事試験場ではそれを避けるために、花が開花する直前にピンセットなどで雄しべを取り除いて、開花した後に交配したい品種の雄しべから受粉させて、新しい品種をつくる。そこから生まれた品種の中からさらに本当にいいものを数年から10年かけて、新しい種子として固定させる。

    戦後、1952年に日本国民を飢えさせることのないよう、「主要農作物種子法」を制定した。自家受粉を続けると劣化することを理由に、コメ、麦、大豆の種子は国が管理して、都道府県が優良な品種の種子を増殖しコメ農家に安定供給させることを義務づけた。

    種子法の廃止は2017年3月。当時の品種数は、都道府県の奨励品種の実数はうるち米で263、もち米で69、合計で332品種。延べ数にして712品種、民間育種の品種も入れればさらに数百なので、1,000を超える品種が栽培されていた。

    種子法廃止と同時期に成立した、農業競争力強化支援法は2017年8月から施行されている。種子の集約をしようとしている。

    ササニシキは宮城県で1963年に生まれ、多収性と食味のよさから普及していたが、1980年の冷害で大打撃を受けたことから、冷害に強い新品種の開発が進められた。1991年にひとめぼれができ、全国の作付面積でもコシヒカリに次ぐ第二位。

    これまで種子法によって、各都道府県は農業試験場でその土地気候に適した優良品種を競って開発、奨励品種としてその種子の増産指導に当たってきた。(種子法第8条)種子法がなくなれば、その根拠が無くなってしまう。

    種子法のもう一つの役割は、原原種を純粋なものとして次世代に残していくこと。種子は生きていて豆類のように次の年に播かないとどんどん発芽率が悪くなって劣化していくので、毎年生産する。250粒苗床に播いて、30日ほど経過した苗を1本ずつ手植えする。大きさ、色や形などを揃えるために手植えする。次は原種栽培をする。これも非常に手間や経費がかかる。民間に委託したがうまくいかずに、再度県で栽培するようになったこともある。(種子法第7条)

    農水省からは従来どおりの予算措置をすると言われているが、数年後にはわからない。そもそも数年前から農業研究所の職員の補充はなくなっている。

    自家採種しているコメ農家は1割ほど。自家採種して続けていると3年ほど経ったときに品質と収量が落ちるので、3年に1度は県の奨励品種の種子を購入している。

    農水省が2017年11月に送った次官通知には、「都道府県がこれまで実施してきた業務すべてを直ちに取りやめることを求めているわけではない」とあるが、これはいずれやめないといけないことを指している。また、「種子の生産に関する知見を民間事業者に対して提供する」とある。民間とは、三井化学アグロ「みつひかり」、日本モンサント「とねのめぐみ」、住友化学「つくばSD」、豊田通商「しきゆたか」などで、価格が10倍もする。コシヒカリは400〜600円/kg、みつひかりは3,500〜4,000円/kgである。

    1925年米国でタネの技術者が赤タマネギのタネの採取中に一つだけタネのないネギ坊主を見つけ出した。調べると雄性不稔種、動物でいえば無精子症であることがわかった。それを母親として他の赤タマネギの花粉を受粉させると、そこから生まれてくるタマネギは何代交配しても、すべてがタネのない赤タマネギ、雄性不稔種になることが明らかになった。ミトコンドリア内の遺伝子異常による。赤タマネギは甘く、サラダにすれば生でもおいしいが、収穫時の2ヶ月しか持たない。黄色のタマネギは乾燥させれば2,3年は持つ。この雄性不稔の赤タマネギを大量に栽培する。その横に1列黃タマネギを植えて、ミツバチに黃タマネギの花粉を受粉させれば、みずみずしい赤タマネギの特性と黄タマネギの長持ちする特性を持ったタマネギが栽培できる。こうして数千万株に1個しかない雄性不稔、いわば無精子症の突然変異体を見つけて、両方の特性を持つ一代雑種、F1 (First Filial Generation)を大量に生産できる技術を完成させた。
    それから、ニンジン、トウモロコシ、キュウリ、ナスなどもF1になった。アブラナ科の野菜、白菜、キャベツ、ホウレンソウなども。例外的にF1になっていない野菜は、マメ科とキク科の作物で、エンドウ豆、インゲン豆、ソラ豆、ゴボウなど。サヤインゲンや春菊は雄性不稔が見つかって、じきにF1が売られ始める。

    2007年ごろからミツバチに異常が起きていて、それはF1の種子による栽培が行われている地域だ。産卵数の少ない不妊症の女王蜂がいる。これは交尾のために数匹しか生まれない雄蜂たちが男性不妊、無精子症になっているのではないかと仮説する。
    ヒトの男性の精子の数は、1940年代の平均1cc中に1億5,000万だったが、現在ではその1/4になっている。成人男性で精子の数が1,500万以下だと男性不妊となるが、成人の2割がそうだという。ラウンドアップに使われるグリホサートやネオニコチノイドが精子の数を減少させるという報告もある。
    アスベストの被害も、ヒトに害を与えるとわかるのに40年もかかっていた。

    F1の良さは、生育が早い、生育が揃う、形が揃う。流通に向いている。宮城県の農家ではビニールハウスでベビーリーフを年に12回収穫していた。
    モンサントは遺伝子組み換えの種子の生産・販売だけでなく、F1のタネも生産・販売している。

    「ゲノム編集は遺伝子組み換えではない」が、米国の農務省と日本の環境省の見解。遺伝子を切断しているだけで新たな遺伝子を組み合わせているわけではない、というのがモンサントの主張。EUでは司法裁判所が公式コメントで、ゲノム編集は遺伝子組み換えだとしている。日本では、世界で最も多い309種類の品種の遺伝子組み換え種子での商業用の栽培が認められている。米国でも認められているのは197種類だ。

    UPOV条約とは1972年に大企業が品種の知的財産権を主張し始めたことによって締結された条約で1978年と1991年に改定されて現在に至っている。種子の登録制度を設けて、その種子をフォーマルな種子として政府が認め、無断で自家採種することも流通させることも禁止することができる条約である。

    種苗法21条で自家採種の権利は認められているが、契約で別段の定めをした場合はこの限りではない。農林水産省の省令をもってして、その権利規定が適用されなくなる。つまり、農林水産省が認める例外(2017年に82から289種類に増えた)は、自家採種を禁止される。

    申請に数十万かかり、登録には数百万から約一千万円かかる。年間登録料は6,000円から36,000円かかる。この育成者としての権利登録は個人にはできない。企業の利益につながるだけである。
    政府がこれを推進する理由は、日本の良好な種子が海外に不正に流され、その地で栽培され、逆輸入することを防ぎたい。実際、畳の原料となるイグサの「ひのみどり」は2001年に熊本県が開発した優良品種だが、中国に持ち込まれ現地で増殖し、畳に加工されて日本に輸入され、熊本のイグサ農家を直撃すると懸念されている。しかし、この「ひのみどり」も当時から登録品種であった。それでも取り締まれなかったのに、国内の自家採種だけを禁止しても意味がない。国内法のため海外への適用もない。農水省に確認すると、これを認めていた。

    ブータンの国立種子センター所長の話「日本は隣国である韓国や中国とのあいだで種子を盗まれたと争っているそうですが、ブータンはネパール、インドなど南アジア9カ国で種子条約を結んでいて、いずれの国で開発された種子も相互に自由に利用できるようになっている」

    自家採種禁止の種子法に反したら、懲役10年以下、1千万円以下の罰金に処せられる。
    種苗法違反は共謀罪の対象にもなっている。種の交換会に参加した人は全員が処罰を受けることになるが、準備行為も含まれるので、話に参加した人、そのために自分の採取した種子を準備した人などもすべて共謀罪で逮捕処罰されることになる。

    日本も批准している「食料・農業植物遺伝資源条約」は、国連食糧農業機関(FAO)で法的拘束力を持つものとして決議された条約である。同第19条には小農民と農村で働く人々の権利として、自家採種の保存、利用、交換、販売する権利を認めている。農水省の見解としては、これは途上国の農民のことで日本の農民ではないとのこと。また、2017年に採択された「国連小農民と農村で働く人々の権利に関する宣言」について、日本は棄権した。反対はアメリカ、イギリスの2カ国で、賛成は34カ国。
    国連では2019年から家族農業10年として、小規模農家、家族農業を主体とした農業のあり方について国際的な啓蒙活動に取り組むことになっている。アメリカ型の大規模、大型の農業の方法では、化学肥料と農薬を大量に消費して食料の増産につながらなかったことが、各種の統計で明らかにされたからだ。

    2017年に閣議決定された種子法廃止の名目は、「国家戦略として農業の分野でも民間の活力を最大限活用しなければならない現代、民間による優秀な種子の利用を種子法が妨げているので廃止する」だが、古来からのコメではなく民間のコメを普及させるのはなぜか。そもそも国費で特定の民間企業の宣伝をしていいのか。民間のコメ品種も県の奨励品種になっている例もある。三井化学アグロの「みつひかり」は岡山県でも奨励品種である。TPP協定のために、公共サービス(学校教育、水道、下水道、医療、介護、種子法など)を民営化してアメリカなどの多国籍企業にビジネスとして開放することを約束している。日本のそれは70兆円規模になる。アメリカはTPPに反対しているのは、カナダ、メキシコとのNAFTAに懲りているから。自由貿易協定は多国籍企業と富裕層には莫大の利益をもたらすが、一般国民には実質賃金は下げられ、貧富の格差は極端に拡大した。安倍政権の官邸人事で農水省事務次官も退任され、この検討が進んだ。小泉進次郎が中心となりJA全中も解体された。

    三井化学アグロのF1品種「みつひかり」はすでに全国で1,400ha栽培されている。栽培理由は、①多収だから→実際にはそれほどでもなくて肥料をふんだんに入れても足りていない。②全量買い取り→買い取り価格は企業の言いなりで例年下がるケースもある。③丈夫でつくりやすい→コンバインの刃が傷んでしまうケースあり。④穂のそろいがバラバラで青米が出る→種子法廃止とともにコメの検査制度もやめる方針なので問題なし。であり、味はそれほどでもなく、モンサントのビジネスモデル同様、調査員をあちこちに派遣する制度にしている。契約はなし。

    モンサントの「とねのひかり」も、2017年だけで16,000ha栽培されている。契約は1ページ。
    住友化学の「つくばSD」は、全量買い取りして、セブンイレブンに卸す。種子の販売は農薬や肥料とセットだが、推測するにコシヒカリの3倍ほどの価格の種子になっている。必要ない肥料も全量施肥しなければならず、水田によって異なる雑草が生えるのに指定された農薬をまかなければならない。契約は10ページ。災害時にエンドから訴訟を受けると生産者に責任が及ぶ。会社が独自に検査を行い、不合格の場合は生産者に負担がかかる。

    豊田通商は「しきゆたか」で、茨城で収穫されたコメはカナダに輸出される。赤字になるが、国費で補填する。

    茨城にある日本モンサントの実験圃場では遺伝子組み換えのコメの品種「カルロース」が栽培されている。コメの花粉は風によって1.5km先まで飛散して受粉することが確認されている。飼料用米について反収11俵ないと助成金を出さない方針になった。そうすると、F1品種や遺伝子組み換え品種を選ばざるを得なくなる可能性もある。アメリカでのモンサントも同様にヒトが食べるのではなく家畜が食べるものだとしてトウモロコシ、大豆から遺伝子組み換え作物を始めていた。日本も同じではないか。

    世界的に見れば、遺伝子組み換え作物の栽培は減っている。ロシアでは遺伝子組み換え作物の輸入も一切禁止で、各国で減少傾向にある。除草剤耐性の作物の場合、いくらラウンドアップをまいてもスーパー雑草が次々に現れてくる。免疫をもつ新たな害虫や微生物が生まれている。農薬と化学肥料の大量施肥によって土壌も弱り収量も下がっている。一時的には増えるものの、結果的に増産はしないことが統計でもわかる。

    遺伝子組み換え作物のBt毒素がアレルギーにつながっている恐れが高い。

    アメリカでも減っている。Btコーンを餌に用いた豚は80%が妊娠しないか擬似妊娠で、Btコーンを与えないと治る。マウスの実験もメスのガン発生率が50〜80%。遺伝子組み換え作物を避けている妊婦の尿や母乳からグリホサートが検出された。インフルエンザやB型肝炎などのワクチンの効能を安定させるためのゼラチンが、豚のへその緒から生成されており、その豚の飼料に遺伝子組み換えトウモロコシが使われていた。

    フランス、イタリア、オーストリアでは3年以内にグリホサート=ラウンドアップの使用が禁止されている。
    ラウンドアップのグリホサートの害についてWHO傘下の国際ガン研究機構では発ガン性のある農薬としてA2のレベルで認められている。A段階ではタバコのように人体での試験結果が出ているもので、B段階が動物実験で明らかになったもの。

    2017年12月にグリホサートの安全基準を最高400倍に緩和した。アメリカではグリホサートは大豆だけでなく小麦の収穫前にも乾燥の手間がいらないとして散布して収穫している。プレハーベスト。日本では日産化学が大豆にラウンドアップをプレハーベストすれば乾燥いらずとして宣伝しはじめた。これからは国産でも危ないかもしれない。

    牛、豚、魚などもバイオテクノロジーが導入されはじめている。

    各自治体で種子条例を制定し始めた。政府への意見書も出されている。

  • 米、大豆、麦など、野菜を除いた主要作物の安定した生産と普及を
    促進する為、国の管理下、都道府県が優良な品種を選んで増殖させ、
    安定して農家に供給すること並びに、原種、原原種の維持を義務付
    ける。

    所謂「種子法」によって、戦後日本の農業と食は守られて来た。その
    種子法が2018年4月1日にひっそりと廃止された。

    大手メディアの報道もほとんどなかった。だから、私が知ったのも
    廃止が決定してからだった。これはまずいんじゃないか?そんな予感
    を裏付けてくれたのが本書である。

    民主党の鳩山由紀夫政権下で農水相だった時には著者にいい印象を
    受けなかったのだが、本書は農業の素人にも理解しやすいように
    種子法廃止と種苗法改正によって、どのような影響があるのかを
    記している。

    先日読んだ『ファーマゲドン』で食肉の将来に不安になったのと
    同様に、本書では農作物の近い将来に多大なる不安を抱かせる
    内容になている。

    なんだろうな…と思う。農家が種子の自家採取を自家採取をするの
    は当たり前にことだと思っていたのに、農水省令で例外が認められ
    ているなんて知らなかった。そして、将来的には原則禁止を想定して
    いるなんて。

    これは「農家は企業からタネを買え」ってことだよね。モンサント
    などの遺伝子組み換え作物の種子を売っている多国籍企業があるよ
    ね?しかも種子だけじゃなくて、農薬・化学肥料もセットでの販売。
    おまけに農薬も化学肥料も「これだけの量を使いなさい」って契約
    になるんだよね?

    「民間の活力を活かす」と日本政府は言うけれど、すべては日本の
    農業市場を多国籍企業に開放する為なんじゃないのか?

    すでに日本で栽培されている野菜の種子は90%が海外産だと言う。
    ならば、消費者の知らぬ間に遺伝子組み換え作物の認可が増え、
    気がついたら食品パッケージから「遺伝子組み換えではない」と
    の表示がなくなっているのではないか。

    根底にあるのはTPPだ。水道の民営化もその為だろう。水も、農産物
    も、私たちの健康に直結する。特に遺伝子組み換え作物については
    マウスや豚での実験で異常が現れることが明らかになっている。

    だから、ロシアなどでは禁止されているし、遺伝子組み換え作物の
    市場を縮小している国も多い。それなのに、日本は世界と逆の方向
    へ向かおうとしている。水道民営化もしかり…だ。

    遺伝子組み換え作物だけではない。雄性不稔F1種の普及が人体に及ぼす
    影響も不気味だ。

    農業に携わる人たちだけではなく、一般消費者こそ本書を読んで考える
    べきだと思う。自由貿易の促進の為に、食の安全をないがしろにして
    もいいものだろうか…と。

  • わたしは種子から作物を育てたことはないのですが、コメの固定種が大事なものであり守らなければいけないものであると分かりました。かつて伝統的な固定種で育てられていた国産100%の野菜のタネは、現在そのほとんどが海外で生産されているからです。また、主要農産物種子法廃止、農業競争力強化支援法制定の背景にあるTPPについても考えさせられました。民間企業がゲノム編集した種子と農薬と肥料及び遺伝子組み換え作物の話を読んで恐ろしくなったので、それらを避けるとともに、種子を守る活動について引き続き情報収集したいです。

    p30
    (前略)種子法第8条に各都道府県の役割として優良な品種を決めると義務付けしていることから、各都道府県はそれぞれの農業試験場でその地域の土壌、気候に適した品種を競って育種に励んできた。この同法8条がなくなったら各都道府県は優良な品種を育種する根拠がなくなることになる。

    p69
    その頃までは日本の野菜の種子は伝統的な固定種による国産100%で、私たちも安心しておいしい野菜を食べることができていた。ところが1925年米国でタネの技術者が赤タマネギのタネの採取中に一つだけタネのないネギ坊主を見つけ出した。調べると雄性不稔種、動物でいえば無精子症であることがわかった。それを母親として他の赤タマネギの花粉を受粉させると、そこから生まれてくるタマネギは何代交配しても、すべてがタネのない赤タマネギ、雄性不稔種になることが明らかになった。
    現在ではなぜそうなるかについては、ミトコンドリア内の遺伝子異常によるものであることが科学的にも証明されるに至っている。
    赤タマネギは甘く、サラダにすれば生でもおいしいが、残念ながら収穫時の2ヶ月しか持たない。しかし黄色のタマネギは乾燥させれば2,3年は持つので、重宝がられて一般に広く作られている。
    この雄性不稔種の赤タマネギを大量に栽培する。その横に1列黄タマネギを植えて、ミツバチに黄タマネギの花粉を受粉させれば、みずみずしい赤タマネギの特性と黄タマネギの長持ちする特性を持ったタマネギが栽培できる。こうして数千万種に1個しかない雄性不稔、いわば無精子症の突然変異株を見つけ出して、両方の特性を持つ一代雑種、F1(First Filial Generation)を大量に生産できる技術を完成させたのだ。

    p72
    さらに異常を起こしているのは、ミツバチだけではない。ヒトの男性の精子の数は1940年代には、平均精液1ミリリットル(1CC)の中に1億5000万の精子がいたが、現在ではその4分の→に減少しているという。成人男性で精子の数が1500万以下では男性不妊となるが、すでにその数は成人の2割に達しているといわれている。科学的に証明されているわけではないが、F1の種子が雄性不稔から作られていることに私は不安を感じる。
    2011年6月東北大学においてミトコンドリアの内膜に異常タンパク質が蓄積すると雄性不稔になるとの研究報告も出されている。同様の研究で筑波大学生命環境系の中田和人教授は、ミトコンドリアの異常が雄性不稔を引き起こすことを突きとめている。私たちの食べる野菜の体積の1割はミトコンドリアだといわれている。

    p92
    UPOV条約を批准したことによって中南米でモンサント法案と呼ばれた自家採種禁止法案が2010年代に次々に出されたが、チリやコロンビアで農民の暴動が起きて、事実上中止に追い込まれた。その後もメキシコなど中南米諸国では、次々に同法案は廃止された。
    ところが最近になってTPP11が署名されて、同協定ではUPOV条約を批准することが必要とされているので、メキシコでは現在自家採種をめぐってTPP11の反対運動が盛んになってきたと聞いたばかりであった。
    UPOV条約とは1972年に大企業が品種の知的所有権を主張し始めたことによって締結された条約で1978年と1991年に改定されて現在に至っている。種子の登録制度を設けて、新しく同質的で安定していて他の類似の種子と区別できるような種子を登録させて、その種子をフォーマルな種子として政府が認め、その種子を無断で自家採種することも流通させることも禁止することができる条約である。

    p119
    政府は次のように説明している。
    「国家戦略として農業の分野でも民間の活力を最大限活力しなければならない現代、民間による優秀な種子の利用を種子法が妨げているので廃止する」と。
    国家戦略として、日本古来からの在来種である伝統的なコメの種子を守るなら理解できるが、三井化学のみつひかり、日本モンサントのとねのめぐみなどの民間のコメの種子の普及が妨げられているから廃止するという。国民の立場からすればこれが国の利益を守るための国家戦略とはとても思えない。

    p120
    すでに平成11年の種子法の改正でみつひかり、とねのめぐみなど民間の品種もいくつかの県では優良な奨励品種に決定されていて、種子法が民間の種子の利用を妨げていることは理由にならない。

    p150
    石川県の加賀市のコメ農家は確かに2年目までは収量は多かったが、窒素肥料をふんだんに使うために土壌が追いつけないのか、いくら肥料を大量に施肥しても収量は次第に落ちたと語っていた。みつひかりの栽培では化学肥料を3割か4割多施肥するようで、土壌にかなりの負担がかかるようだ。

    p159
    住友化学はモンサントと業務提携をしている会社であることはよく知られている。
    (中略)
    さらに住友化学は住化アグロソリューソンズ株式会社を設立して、農業生産法人などにつくばSDの種子を販売して生産させ、収穫したコメを全量引き取って、コンビニエンスストアの大手セブン-イレブンに販売する、川上から川下までの一貫した生産流通の制度を確立したのだ。
    (中略)
    青木さんが栽培を始めてまず困ったのは、農薬も科学肥料も指定されたものを全量使わなければならないことで、青木さんの水田はもとは河川敷の堆積地、肥沃なので指定された化学肥料は本来必要ないのに大量に使わなければならなくなったこと、また除草剤、殺虫剤の農薬も水田によって雑草の生える種類が別々で、かつ年によっても種類が変わるのに指定されたものを使わなければならないことは農家にとつまてはたいへん困ることになるとこぼしていた。

    p207
    (前略)コーンフレークの例からして検査したら商品すべてで遺伝子組み換えのDNAが検出されたが、残存量が少ないなどの理由から今回も表示は見送られた。
    また現在の制度では遺伝子組み換えの表示義務は原材料の原料に占める割合の上位3位まで、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合の5%以上であるものに限定されている。
    このことは私たちが食べている食材の中に遺伝子組み換えの材料がかなり含まれていてもその一部しか表示できないことになり、EUの厳格な表示と比べはるかに緩いものになっている。



    p208
    これまでは5%以下の混入について遺伝子組み換えでない表示が任意で認められていた。ところがこれからは0%、不検出でないと、たとえばこの豆腐は「遺伝子組み換えでない大豆から作られた」という表示はできなくなることになる。
    遺伝子組み換え食品の表示は検出できても表示しなくていいのに、非遺伝子組み換え食品は不検出でないと表示できないとは論理からしておかしい。

  • 種子法の廃止、種苗法の改正が報道もなく、話し合いもまともにされないまま人知れずされたことに、どのような背景で行われ、どのような影響が懸念されるのかが書かれている。確定情報ではなく、想像や予想で書かれている部分もあるのでどこまで信じられるかは微妙なところ。
    農業従事者でさえさほどなじみのない両法を理解し、何が変わるのかを知り、どうしていくのか考えるための入口にはとても良いと感じた。

    廃止、改正は民営企業の介入促進、競争力強化。民営化による種子の高騰、多国籍企業の参入による負担の増加、遺伝子組み換え作物の参入…その影響は大きいかもしれないし、本当に狙われた目的に作用するかもしれない。しかしその手の代表モンサントが入るとなると、一抹の不安は拭えない。
    種を征すれば、農業を征することができる。農業を征することができれば、その国の食を征することができる。
    色々な思惑とお金が交差するこの件、果たしてどうなってしまうのだろう。

  • 2018年4月の種子法廃止。都道府県で種子を管理してたって知らなかった。種子の状態で保存すると劣化するから、毎年植えて育てて採取してたんだって!
    平成の米騒動…?1993年の冷夏と言われても…そんな年もあったかなあ…くらいにしか思い出せないが、タイ米の輸入って言われれば、確かにあったわ、そういう年!
    (冷害に弱いササニシキに冷害に強いひとめぼれが取って代わった訳ね)
    いかに自分の食を守備範囲外にしていたか…反省反省。
    ところで「ほ場」は「圃場」。常用外漢字ってか。田畑じゃダメなのか?
    アグロ産業の大手を目の敵にし過ぎな感はあるが、元・農相としてはそうかもな。
    森友問題とかで紛糾してたのも、この審議から目をそらす為だったのか?って勘繰ってしまう。

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著者プロフィール

1942年、長崎県生。弁護士。2010年6月、農林水産大臣に就任、12年反TPP・脱原発を掲げ離党。現在は、弁護士の業務に加え、TPPや種子法廃止の問題点を明らかにすべく現地調査や講演を行う。

「2023年 『子どもを壊す食の闇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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