- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865812459
作品紹介・あらすじ
ナメクジ博士が明かす知られざる「脳」と「生態」のすごい話!
どこからともなく現れ、銀色のスジを残して這うナメクジ。農作物の害虫であり英語ではのろまの代名詞でイメージは悪い。2018年にはナメクジを生食して死亡した豪州男性のニュースが話題を呼んだ。だが、ナメクジの脳を研究して19年の著者によれば、人間には及びもつかないすごい「脳力」があるのだ。「学習」と犬並みの高度な論理思考ができ、苦悩もする。脳の出先機関である触角に記憶も保存できる。脳も触角も壊れると勝手に再生し、眼がなくても脳で光を感知できる。しかも脳の真ん中を食道が通っている!
本書はそんなナメクジのすごい「脳力」とふしぎな生態(呼吸とうんちは同じ孔、頭の横から産卵など)を軽妙なタッチで紹介する。ヒトにはまねできないナメクジの脳力は、ヒトのあり方だけが最良ではないことを教えてくれる。最終章では著者のナメクジ研究生活の悲喜こもごもが語られ、陽の当たらない研究こそが実は醍醐味にあふれていることがよくわかる。常識と非常識が入れ替わる楽しいナメクジ脳の世界へようこそ!
感想・レビュー・書評
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著者の松尾亮太さんの
紹介の一部に
ーナメクジの学習機能、および嗅覚、視覚の研究に従事している
と綴られてある。
もの凄く 身近にいる生物
だけれど
では実態はというと
ほとんど 知らない
ダンゴムシ、アリ、ゴミムシ、…
私たちの身の回りに居る生き物たち
その ほとんどのことを
私たちは 知らずに 暮らしている
それだけに
こうして(この本のように)
実はね…
と お話ししてもらうと
それが いやはや 面白い 興味深い
私たちの すぐ周りには
素適な不思議で満ちている
この世に
ぜひ 存続して欲しい
学問、研究対象だと
読みながら 思わせてもらいました詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カタツムリは愛され、ナメクジはなぜ嫌われるのか?
という話ではなくて、ナメクジの脳の機能の凄さをとことん研究して解説してくれる一冊。さて、ここから再生医療などに活用される分野がどう展開されるだろうか。期待したい。 -
大好きな作家さん(絲山秋子さん)がオススメされていたので、読んでみた。おもしろかった〜。
読書には、知らないことを知る喜びがあるけれど、もともとちょっと知ってること(もともと興味があったもの)を深く知るのと、なんも興味も縁もゆかりもなかったものについて、驚きとともに知る、のとは、ちょっとそのおもしろさがちがう気がする。どっちもおもしろいには変わりないけれども。
前に読んだ『キリン解剖記』と同じように、この本も後者の喜び。ニューロンを再生する能力は人にはなく、ナメクジは優れているけども、だからこそは人は人らしくいられる、とか、脳だけでなく感覚器官が記憶や生きる術の手助けをしている、なんてところも、きっと人間もそうなんだろうなあ、と想像してしまう。(だから、現代社会で失われつつある確かな「感覚」とか「感性」が、やはりPCやスマホばかり見ている子どもたち、いや大人たちにも欠けてきているのではないかとも思ってしまったり。ちょっと飛躍しすぎかな)
いつもは自分が気にもとめないことについて、深く研究した人の言葉に触れること。それは、一見、役に立たなくても、自分には関係ないように見えても、なんだろな、この世界には、知ってるようで知らないことやものがたくさんあることを知る、という、脳や心の広がりのような感覚がむくむくと立ち上がっている気がする。晴れやかな、気持ちになる。 -
ナメクジを見る眼を激変させる本
著者のユーモアある語り口やイラストも可愛くて親近感がわく
ヒトには真似できない能力を進化させてたんだなぁ、ナメクジたちは!
マイナ中のマイナーな研究をする著者、それをこんなに初心者に楽しく紹介してくれた著者に心からの感謝を。
昨年の第19回絲山賞、さすがだと思う -
『クモのイト』の中田兼介さんも女子大でクモの研究とは大変だろうなあと思ったが、こちらは女子大でナメクジの研究‥‥研究する学生を確保するのが大変そうだし、必修なら良いが選択の場合、講義を選ぶ学生がいるのかとちょっと心配になるが、巻末近くで、別に女子大だからといって苦労はしていないというようなことが書いてあり、とりあえず良かった。
こういう特殊な研究をする研究者の文章には対象に対する熱烈な愛が感じられることが多く、そこも期待したのだが、著者の研究はナメクジの脳なので、そういう感じはなく、(学習能力を研究するため)美味しいものに苦い液をかけたり、触覚を切ったり、脳を移植したり、結構ナメクジからすると辛いことをクールに行っている。ナメクジに生まれ変わっても松尾研究室のナメクジにはなりたくないと心から思った。
はじめのあたりで、暗いところが好きなのに、暗い部屋に入ると苦い液(キニジン硫酸水溶液)をかけられ、以降暗い部屋に入りたいけどまた苦い液をかけられるのではないかと苦悩するナメクジの様子はちょっと可哀想だったが、その後の色んな手術はもっとキツイのでナメクジファンの方は読まない方がいいかもしれない。
いや、ナメクジなんて切っても痛くないんじゃない?と思ったが、ナメクジにも体感があり、「ピンセットで強くつままれたときに身をよじって逃れようとする様子や、背中から麻酔を注射された直後、びっくりしたようにマントルをめくれ上がらせる様子を見れば、痛覚があることは明らか」(P74)だそうです。塩かけられた時も苦しんでいたのか‥‥ごめん。まあ、松尾先生はちゃんと麻酔はしてますからね。徒に苦しめているわけではない。
この本のメインはナメクジの脳の特殊性について書かれたところ。この研究が進めばアルツハイマーなど脳が原因の病の治療に貢献できるかもしれない、というところは、すごい。もしそれができたらナメクジに感謝だし、ナメクジ研究もステージが上がるだろう。ノーベル賞だって取れるかもしれない。頑張ってほしい。
国が国立大学の法人化を行い、大学評価で予算を決めるようになったため、すぐに開発に結びつかない研究はどんどん厳しい状況になっているが、こういう研究が大化けする可能性だってある。
研究の多様性も大切であることも伝わってくる本だった。 -
ナメクジ研究者による、ナメクジの脳機能研究についての一般向け書籍。
読んでいくうちに、それまでなんとも思っていなかったナメクジがどんどんかわいく思えてきて、その分、生きたまま脳を取り出されたり、触覚を潰されたり目を切られたりするナメクジが気の毒になってきてしまうのだが、それでも脳のまましばらく生き続けたり、触覚や目を再生させたり、しぶといナメクジの生命力におおお…!と思わず拍手したくなる。
内容も、一般向けで、わかりやすく、分厚すぎなくて、私のような理系に触れてこなかった人間も、面白く読めた。
巻末にこうした基礎研究は予算の確保が難しい、という窮状についても触れられていたが、「役にたつ」が前提にならない研究にも、お金が行き渡って、裾野が広く大きくなるようにしてほしいなあ、と強く思った。
何がどう転ぶかわからない、という世界であるし、こんなに面白い本が書かれる環境を、失わせないでほしいと思う。 -
ナメクジについてあまりにも知らないことに気づかされた。調べればもっと身近で研究になる生物がいるかもしれない。最後の部分が筆者の研究の動機とその研究生活である。これは大学生にも参考になるであろう。
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庭のパンジーを食べる、憎いナメクジ!!
潰しても、薬を置いても、パンジーを食べる
コーヒーかすも、なんのその、ビールトラップも効かない。そこで敵を知るためにこのほんを読みました。
凄い脳ミソを持っているなんて!