無常の使い

著者 :
  • 藤原書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865781151

作品紹介・あらすじ

死者との思い出が現世の絆をつなぐ
「わたしの村では、人が死ぬと『無常の使い』というものに立ってもらった。必ず二人組で、衣服を改め、死者の縁者の家へ歩いて行ったものである」――
荒畑寒村、細川一、仲宗根政善、白川静、鶴見和子、橋川文三、上野英信、谷川雁、井上光晴、砂田明、土本典昭、田上義春、川本輝夫、宇井純、多田富雄、原田正純、野呂邦暢、杉本栄子、石田晃三、八田昭男、久本三多、本田啓吉ら、生前交流の深かった22人の御霊に献げる珠玉の言霊。

感想・レビュー・書評

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  • 著者が親しい知己の逝去にあたって寄せた追悼文集であるが、冒頭の序文が美しく、それだけ読めばいいかなと。

    50年くらい前まで私の村では、人が死ぬと「無常の使い」というものに立ってもらった。必ず2人組で、衣服を改め、死者の縁者の家へ歩いていったものである。「今日は水俣から無常のお使いにあがりました。お宅の親戚の誰それさんが今朝方お果てになりました。お葬式は何時頃でございます。」

    個々の人生はひとしなみではないが、その葬儀に参加することで、人々はやがて来るべき自分の死をも思いの中に入れて、つかの間なりと生死の共同体を共にしていたと思われる。

    「恨み返すなぞ、のさりち思えぞ」
    のさりとは天の賜物の意である。迫害ものさりと思えと。
    「これがなぁ、一番むずかしか。恨み返すなちゅうことが」

  • 人への愛おしさを
    語らせたら
    石牟礼道子さんを凌ぐ書き手は
    いらっしゃらないでしょう

    道子さんと
    同じ時代に生きて
    同じものを食べて
    同じ座り込みをして
    同じ思いを抱いて
    きちんと
    時代を見据えた
    ここに登場するすべての人が
    限りなく、愛おしく 
    思ってしまいます

    ここに登場される
    すべてのお方が
    また、
    石牟礼道子さんを
    限りなく愛おしく
    思っておられたことでしょう

    その
    石牟礼道子さんが
    今日、2018年3月10日午前3時14分、
    逝ってしまわれた
    享年90歳
    石牟礼道子さんにはもう逢えないけれども
    石牟礼道子さんの魂の言葉たちは
    ますます生き続けることでしょう

    合掌

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著者プロフィール

1927年、熊本県天草郡(現天草市)生まれ。
1969年、『苦海浄土―わが水俣病』(講談社)の刊行により注目される。
1973年、季刊誌「暗河」を渡辺京二、松浦豊敏らと創刊。マグサイサイ賞受賞。
1993年、『十六夜橋』(径書房)で紫式部賞受賞。
1996年、第一回水俣・東京展で、緒方正人が回航した打瀬船日月丸を舞台とした「出魂儀」が感動を呼んだ。
2001年、朝日賞受賞。2003年、『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』(石風社)で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2014年、『石牟礼道子全集』全十七巻・別巻一(藤原書店)が完結。2018年二月、死去。

「2023年 『新装版 ヤポネシアの海辺から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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