幸福書房の四十年 ピカピカの本屋でなくちゃ!

著者 :
  • 左右社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865281903

作品紹介・あらすじ

ただただ真面目に、四十年間本を売り続けて生きてきた。それは、本を売るのが好きだから。

感想・レビュー・書評

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  • 小田急線と東京メトロが乗り入れる代々木上原駅南口から徒歩数秒という好立地に、「幸福書房」があった。
    家族で切り盛りし、朝8時から夜の11時まで、お正月以外の364日開店していたという。
    2018年2月20日、その40年の歴史に幕を下ろすまでの日々を語るのは、店主の岩楯幸雄さん。
    画像も多く、親しみやすい語り口だ。

    夫婦ふたりの月収は20万ほど。これだけ長時間働いてもだ。
    それでも岩楯さんは「悲しいことなんか本当に少なかった」と言われる。本好きが高じて始めた仕事だ。何よりもお客さんの顔を見るのが楽しみという部分も大きかっただろう。
    代々木上原に住む林真理子さんが、ずいぶん応援してくれたらしい。
    新刊が出るたびに全国からファンが訪れる聖地になっていたという。
    閉店前日の2月19日から、名残りを惜しむ人たちが引きも切らない。
    お客さんから贈られた「ありがとう」のメッセージが店内にいっぱいだ。
    レジに立つのが大好きだったという岩楯さんに、誰もが「ありがとう」と声をかけていく。。。

    思えば私自身も、いつの頃からか雑誌を全く買わなくなった。
    パソコンからスマホへと市場が拡大していく間に、書店がかなり潰れたということだ。
    雑誌の売り上げで書籍を仕入れるのが本屋さん。
    その雑誌が売れなくなったのは、大きな打撃だ。
    現金がなくてはそもそも仕入れができない。

    スマホは、一体何をもたらしたのだろう。
    さっと表面を撫でただけでさも分かったかのような錯覚は与えてくれる。
    雑誌は何度も何度も読んでいた。時には切り抜いて保存したりもした。
    これから先「ありがとう」と思わず言うほどの体験に、私は出会えるのだろうか。
    本屋さんのない街は、寂しい。
    かく言う私も、代々木上原はずっと通過するだけの駅だった。偉そうなことは言えない。

    しかしこの話はここで終わらない。
    「一旦、さようなら」と言った岩楯さんは、その10か月後ブックカフェ「幸福茶房」を自宅の車庫だった部分に開いている。
    林真理子さんの本も、ちゃんと置いてあるらしい。
    検索して見つけたときは、大好きな親戚のおじさんに久々に会ったときのような気分だった。
    ひとが安心して寄り合える場所を、もう一度作りたかったのだろう。
    今度こそ、コーヒーを飲みに寄ってみたい。本の話など、あれこれしてみたい。

    2月20日の閉店のお知らせを見て、リスクはこちらで負うから出版したいと申し出た左右社さん、どうもありがとう。おかげでこの本に出会えた。
    幸福書房のような本屋さんはますます少なくなるだろうけれど、違う形で本に出会える場所が増えていくといいよね。

  • 長年、本を売る事にすべてを捧げてきたご主人。
    やわらかい語り口の中に垣間見える、本当に本を売る事が、本に触れる事が好きで好きでたまらないという思い。
    そんな本屋さんが閉めざるを得ない現実。
    同じ本屋として、悲しくて悔しい。
    時代の流れという言葉で片付けたくない。
    希望を感じられる“今後”に救われる。

  • 代々木上原とは縁がなかったので、、、

    左右社のPR
    なぜ「幸福書房」に行くと読みたい本が見つかるのか?

    その秘密を店主・岩楯幸雄さんが余すところなく語る。
    本屋を始めるまで。開店。本のこと。資金繰り。棚のこと。
    取次、出版社、そして、林をはじめとする著者やたくさんのお客さんたちとの出会い。
    営業時間は元日以外の364日朝の8時から夜の23時まで。
    けらえいこ、石田千、吉田篤弘などさまざまな人が愛した代々木上原駅前書店「幸福書房」の40年。
    http://sayusha.com/catalog/books/p9784865281903

  • 結局行くとこは叶わなかった名店「幸福書店」の店主岩楯さんの40年の回想録です。
    とても薄い本ですが、中身はとても暖かく分厚い背中を見ているような本です。
    偉そうでも、悲壮でもなく、ただただ本屋で居られて幸せだったという気持ちが伝わってきます。
    岩楯さんの人柄が感じられる柔らかな語り口で、本屋をする事の喜びと難しさが伝わってきます。弟夫婦と自分の奥さんと4人で支えてきた幸福書店は2018年に惜しまれつつ閉店しました。
    雑誌ではよく見ていましたが、代々木に縁が無かったなあ・・・。どんな棚をを作っていらっしゃったのか見てみたかった。
    やはり書店はいつ無くなるか分からない時代なので、有名書店であっても油断せず訪れておきたいものです。
    読んでいるうちに胸が詰まってしまいました。悲しい訳ではないのですが、胸打たれてしまいました。

  • 移動式本屋さんで出会った1冊。

    ピカピカと素敵で、あまりに切ない本だった...。

    本の棚より、テントより、本を仕入れて書棚に並べて、書棚を通じてお客さんと会話する。それが何より楽しそうで、本を好きであること以上に、経営する上で重要なことなんだなと感じた。

    あと、好みの本屋さんってあると思う。ここの仕入れ担当の人と気が合う!って思うとつい通っちゃったり。そういう場所が減少し続けるのはやはり寂しい。

    本屋さん、減らないでほしい。なので私は、一端の本好きとして、1冊でも多く本を読めたらと思う。

  • 本屋さん…

  • 本の本
    書店

  • 去年までは、近所の本屋でした。閉店騒動も横目でみる程度でしたけど、こうして改めて店主のこれまでのご苦労と喜び哀しみを読むと、街から良い書店が消えていくのは本当に寂しいものだと思います。

     それにしても、閉店セールの時にこの書籍が店頭に並んでいたら、きっともっともっと売れたのではなかろうか。あとがきの日付が2018年1月27日、出版日が3月5日って2月20日の閉店日に間に合ってないじゃん(特別に売ってたのかな?)
     左右社から出版のオファーをもらって ”この話は「あやしい」「新手の自費出版詐欺の手口だ」”などと言っているクダリは面白いが、”それより何より、私たちは本屋のプロとして、こんな本が売れるわけがないのを知っている”と謙遜されているけど、いやいや、なかなか面白く、本に対する愛情あふれる好著でした。

     今、各地で消えゆこうとしている町の本屋さん。 そうした書店が、どんなふうに本を仕入れて売っているのか、どれくらいの売り上げがあればやっていけるのか、飾らない言葉で淡々と綴った話が、とても読みやすく、あっと言う間に読み終えてしまった。
    「本というのは売ることよりも仕入れることの方が楽しいのです。」
     という言葉に、本当に本のことが好きなんだなという気持ちが読み取れる。

     何度か店内で本を物色したことはあったけど、愛想のない親父さんだなと思っていたが(そもそも本屋の親父に愛想のいい人は少ないが)、けっして書店側から、たとえお得意さんで趣味嗜好を知っていたとしても、声かけたり売り込んだりをしなかったということが書かれている。
     昨今、検索で目的の本を見つけたり、書評を辿ってというのも、最短距離でアプローチできるので、それはそれでありがたい話で、便利になった機能は否定しません。でも、書店をブラついて思わぬ本に出会う楽しみは、本当に捨てがたい。店主の態度も、そうした偶然の出会いを尊重し、読者の偏読の抑制にもなっていたのだろうと思うところ。
     著者岩楯店主曰く、

    「自由に気持ちを広げられるのが本屋という場所なんだから。」

     まさに、御意。
     高校生の時に、”日本中の本を読むことができる”と思い始めた書店業。

    「今になってみると、なんと半分はそんな事が実現し、半分は忙しくて、それどころではなかったのでした。」

     と綴る半世紀は、多くのご苦労は当然あったろうが、なんと幸せな日々だろうと羨ましく感じた。取次との契約のどさくさに決めたという「幸福書房」という名の通りの人生だったのではないだろうか。

  • 幸福書房の40年間の軌跡。お店には行ったことはありません。でもこの本を読んでいるとものすごく閉店が残念で、目がうるうるしてきました。
    もしお店をやるとしたらこんな風に愛されて終わりたい…、とやる前から思いました。
    これからは南長崎に戻り、ミュージアムとして復元されるトキワ荘の前でブックカフェを自らの手でつくりたいとのこと。
    開店したら今度こそ訪れたいです。

  • 幸福書房さんで買いたかった。実は迷ったけれど通信販売してもらえば良かったなぁ。

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