好日日記―季節のように生きる

著者 :
  • パルコ
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865062793

感想・レビュー・書評

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  • お茶を通して、日本人ならではが感じる移ろいゆく季節を描いたのが本作…お茶ってやっぱりいいなって思いました。森下典子先生の挿画も季節感があって、和の心をくすぶるような癒しが得られます♪

    ・柳は緑、花は紅…なやんでも変わらないものなら、変わらないものを変えようとしなくていい。
    ・疲れたら、季節の中にいればそれでいい。どこかに行こうとしなくとも、日本は季節をめぐっているのだ。
    ・日本の季節は「今しかない」ことに満ちていて、あっという間に過ぎ去っていく。だから、私たちは、季節の中で、一瞬の「今」を生きる。

    前作とは異なり、季節の移ろいの中でありのままの自分を受けていく生き方もありなんだ…そんな風に受け取りました。穏やかな気持ちになれる作品だと思います。

  • 忙しい日々を過ごしていると、気づけば季節がかわっていた、なんてことがよくある。
    一人暮らしだとなおさら年中行事と無縁になるので、あるときふと我に返り、こんな生活でよいのか、と不安になることもある。

    この本は、茶道を習い始めて40年以上という著者が、お茶の稽古を通して感じた季節の移ろいを自筆のイラストとともに描いたエッセイである。
    丁寧な生活を送っている人の書いたエッセイは、いいな、と思うものの、「自分にはできないなあ」と自己嫌悪におちいってしまうことが多い。しかし本書がそのような「丁寧な生活」系エッセイと異なるのは、普段は忙しい日々を送っているフリーライターの著者が、自分を見失ってしまいそうなときに、お茶の稽古に通うことで季節を感じ、人生を見つめ直していることである。

    ときにはおっくうに思いながらもお稽古に向かうと、床の間に生けられた茶花や掛け軸、茶道具やお茶菓子が季節を感じさせてくれる。部屋に差し込む光や風が、自然の移り変わりを教えてくれる。作法に気を配りながらお茶をたてることで、日頃の人間関係や将来の不安はいつの間にか消えていく。

    私も以前会社のサークルでお茶を習っていたので、著者の感覚がよくわかる。仕事が忙しい時はなかなか参加できなかったが、重い足を引きずりお茶の稽古に参加すると、帰るころには体も心も軽やかになっていた。

    本書には印象的なエピソードも多い。
    大学のクラブでお茶を教える先生が三月に掛けたお軸は『柳緑花紅』。花はあくまで赤く咲けばいいし、柳はあくまで緑に茂ればいい。この意味を知った卒業生は勇気が出ただろう。
    また、咲いている花を見れば今の季節がわかるのは当たり前ではないということも驚きだった。イギリスでは日本の初夏から初頭までの花が混在して咲き、桜は1か月間咲いたままなのだそう。
    季節の変わり目ごとに梅雨があり、それぞれ「菜種梅雨」(春の初め)、「梅雨」(梅の実のなるころ)、「すすき梅雨(秋霖)」(秋の初め)、「さざんか梅雨」(冬の初め)と名前があるのも素敵だと思った。

    お茶を再び習いたいと思いつつ、多忙を言い訳に伸ばし伸ばしにしていたが、やっぱりまた始めたくなった。

  • 『日日是好日』を読み終えすぐに手に取った。
    「季節のように生きる」また素敵な言葉に出会えた。
    二十四節気を各項の見出しにし、季節をめぐるお茶のお稽古の日々を著者の挿し絵入りで描いた随筆。お茶お道具や和菓子の挿し絵が優しくほんわりしている。

    星野道夫展で心に響いた言葉を書かれていた。
    「無窮の彼方へ流れてゆく時を、めぐる季節で確かに感じることができる。自然とは、何と粋にはからいをするのだろうと思います。
    一年に一度、名残惜しく過ぎてゆくものに、この世で何度めぐり合えるのか。その回数をかぞえるほど、人の一生の短さをしることはないのかもしれません」
    星野道夫さんの『旅する木』の言葉だ。
    同じ言葉に感動した森下さんのことを更に好きになった。
    日日是好日にあった「長い目で、今を生きろ」
    人の一生の短さを思えば日々を大切に思う気持ちが切ない程に増した。

  • 朝起きて、軽い食事をとった。その後勉強をして、そのまま眠ったらしい。うとうとして、目が覚めた。ほんの30分も寝た?もっと短い?そんな感じ。その後、お腹すいてるはずもないのに、友人の差し出してくれたおむすびを食べた。「さっき食べたのになんでおなかすいてるのかしら?」訝しんで時計を見たら、午後の3時も過ぎたという。いったい何時間寝たんだ…。愕然とする。病を得た後のことである。前日に掃除だ、洗濯だ、冬の新しいふとんを運ぶだと、動き回ったので、疲れていたのだろう。それにしても朝から夕方近くまで眠り続けるとは。

    何故か森下さんのご本は、このような時に読みたくなる。まさにベッドで、眠りと起居する境目が曖昧な時に、呆然としつつ読んだのである。

    起伏の激しい本は、面白くてもこんな日はダメなのだ。静かな本が読みたかった。誰とも話したくなかった。移ろうものを、ただ見ていたかった。お茶は、病身であるゆえに、お勉強には行けない私だけれど、着物も、お花も、和菓子も、日本家屋の佇まいも、茶器の質感も、好きだ。資料を見たり、こうして本を読んだり、折には家人に薄茶を点ててもらうこともある。やってみたらと勧めたのは私なのだが…時にそういう機会を持つ。

    ふと、薄墨をひいたような時間に、風や雨や、光をきく。うつくしい色や、ささやくような優しい声をかわす。味わう。そういう交差が、ひとを休ませてくれる。そのことを、一年を追ったこの日記は、よく教えてくれる。難しいことが書いてある本ではない。でも、閉じ終わった時、ふっくりともう一度横になって、楽に息をした。それだけでも、幸福なことだと、私は思う。事事の詳細は、自分しかわからなくともいい。今、息を深くして、瞼の裏に浮かんだ花一輪。思い起こした一服の香りが確かなら、それでいいのだ。

  • “日日是好日”の続編
    茶道を通して季節の移ろいを綴ったエッセイ

    季節と人の心は常にひとつなのだと教えてくれる
    一輪かざる花の佇まいからも
    ただ一緒に居るだけで伝わる温かい空気や言葉を感じることができる

    あぁ…感じてなかったのは私のほうだったのか…
    花や風や水など無限にあるものたちは
    沈黙の中でも私たちに雄弁に語りかけてくれていたのかもしれない…

    ものにも顔があり そして想いもある_
    お茶の稽古を迎えるまでに用意される
    茶花 掛け軸 茶菓子 茶道具 そして灰をまぜる音でさえも
    おもてなしの気持ちや
    去りゆく季節に そしてこれから訪れる四季の気配を
    伝えてくれる大切なもの
    なんて素敵な世界なんだ…

    森下さんがお茶で自分らしさを取り戻す時間ならば
    私にとって心の調律ができるものは
    “手書きの文字を書く”ことかもしれない
    便箋 ペン インク 封筒 切手など無限にあるものの中から
    自分の想いをのせて書く手紙こそが
    自分をとり戻す“大切なもの”なのかもしれない

    ずっとずっと大切にしたい素敵な作品でした
    この作品に出会えたことに感謝❤︎

  • 「日日是好日」もとても良かったので、その続編のようなものかと思い、図書館で借りてみることに。続編というか、「日日是好日」の映画化が決まった時に、これまでの日記を見返して本書をまとめたということ。

    日本の四季はこんなにも美しかったんだ、と改めて気づかされた。毎日毎日バタバタと慌ただしく、今日もどうにか時間内にすべてが済んだと思いながら生活する日々・・・季節のように生きるなんてとんでもない、と思ってしまうけれど、そんなことない、と本書は教えてくれている気がする。ふとした瞬間に季節を感じることは誰にでもあるはず。それを大切に心に留めるかどうか。
    森下さんのように季節を丁寧に感じられる感性を持っていきたいと思った。
    それから、森下さんにとってのお茶のようなものがあればな~と羨ましくも思った。それを見つけるのも自分の感性次第。

    この本は、手元に置いておいて、季節の折々にその時期の頁を読みたいと思った。そして、
    季節ごとに名前がたくさん出てくるけれど、恥ずかしながら全然わからなかった草花を少しづつ知っていきたい。

    あ、それから、森下さん自身による挿絵も素敵だった!こんな絵をちょちょちょっと描けるようになりたい。

  • とにかく、著者はとてもセンシティブな方のようだ。

    前作の『日日是好日』がとても素敵で人生のバイブルになったので、迷わず続編を購入したが、副題の通り「季節のように生きる」とだけあって、二十四節気に則ったある年の一年の日記である。

    もう、前作のようなドラマティックな悲劇や困難をお茶のお稽古というルーティンで乗り越える話ではない。それもそうだ、二十五年間で起きた就職や仕事の悩み・失恋・大切な人の死等のうまくいかないこと、辛い局面が一年で起きてくれたら困る。苦笑

    あるいは前作のように、二十歳の時にお茶を始め、最初はミチコと訳も分からず続けていたけれど、お茶が楽しくなった瞬間があり、お茶に挫折することもあり、それでもお茶に救われて…という成長を描かれたものでもなく、もっと精神的な世界が描かれていたように思う。
    私ももっと感性を磨けば共感できる世界なのかもしれない、あるいは歳を重ねた先に待っていて欲しい世界である。

  • 夜寝る前に少しずつ読み進めていました。
    森下さんの文章は読んでいて落ち着くし、心地よくていい。
    文字を追ってるだけなのにまるで同じ空間にいるような静謐な雰囲気、四季の移ろいを感じます。
    特に、掛け軸『柳緑花紅』について綴られている春分の章がとても心に響いた。
    私の好きな言葉になりました。

    心を整え、安らぎをもたらしてくれるような、そんな一冊。本書を読んで、私も定期的に心を整える機会を持ちたいなと思いました。

    『いくつになっても、人は心穏やかになどならない。みんな、生まれ持った自分自身と闘っている。』

    『目指しても目指しても終わりのない道を歩くことは、なんて楽しいのだろう。いくつになっても正面から叱り、注意してくれる人がいるということは、なんて幸せなのだろう』

  • 柳緑花紅
    「世の中に出れば、壁にぶつかることがたくさんあるでしょ。そういう時って、どうしても他の人が偉く見えるのよね。卒業してしばらくたつと、みんな、自分らしさを否定して、自分でないものになろうとしてしまうの…。だけど、柳は花にはなれないし、花も柳にはなれない。花はあくまでも赤く咲けばいいし、柳はあくまで緑に茂ればいいのよね」
    何か心に響く言葉。

  • 日日是好日を読んで
    季節は4つではなく24もあるって初めて知った
    その24の季節を感じられる一冊

    4月生まれで、誕生日の時期が嫌いだった
    夏が、秋が、冬が誕生日だったら良かったなぁと思うこともあったけど、
    どの時季も良いと思える内容。
    雨も時期によって温かかったり、表情があるってこと
    忘れてた

    季節を一緒に感じられる仲間がいること、
    厳しいけど、素敵な先生に教わること
    素敵な人生だなぁ

    いいなと思った掛け軸は
    柳緑花紅
    水掬月在手

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著者プロフィール

森下典子(もりした のりこ)
1956年生まれのエッセイスト。『週刊朝日』のコラム執筆を経て、1987年その体験を記した『典奴(のりやっこ)どすえ』を出版。代表作『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』は、大森立嗣監督・脚本、黒木華主演により2018年10月13日映画化され、樹木希林の遺作ともなり、大きな話題となった。他に、『いとしいたべもの (文春文庫)』『猫といっしょにいるだけで』などの作品がある。

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