- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864881470
感想・レビュー・書評
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大正13年(1924年)に発行された「文壇出世物語」の復刊。
文壇出世とありますが、書かれてるのは主に文壇デビューまでの経緯の話が多かった印象(ですので文壇に出るまでのエピソード集、みたいな感じです。文壇内で偉くなっていく方の「出世」とはちょっと違う)。対象になっている作家は100名。しかも当時はまだ存命の作家ばかりなので、おおよそ100年前時点でのその作家の評価(まぁゴシップ記事的ノリのものもあるのでそこらへん加味して読まないといけませんが)が読み取れて、スナップショット的な面白さがあります。(例えば、小川未明は今だとすっかり児童文学のイメージしかないでしょうが、あの当時はプロレタリア文学のハシリみたいなことをやってた事があるので、記事を読むと世間の評価もそのイメージがまだくっついてる頃だったのだねー…みたいな)一作家2~3ページとコラムみたいな量しかないのでサクサク読めるし。
現在では名前すら知られていない作家が入っていたり、この作家とあの作家が同級生だったのか~といった事や、他の(今でも有名な)文豪と一緒に集合写真なんかで写っていて名前だけはかねがね知ってたけどもこの人こんな経歴の人だったのか!……といった発見があったりと、どこを読んでも情報源で楽しいです。
それと、書いてる中の人が(井伏鱒二と武野藤介の2名という話も?)早稲田寄りの人らしく、出てくる作家に早稲田関係者が多いのも特徴ですね。そしてみんな坪内逍遙と島村抱月に世話になってる!!と(笑)
こうなっちゃうのは対象が早稲田文学掲載者に偏ってるせいもあると思うのですが、でもそのくせ片山伸は貶してたので、中の人の好悪が感じられて笑ってしまった。
この本が書かれた時代がちょうど自然主義がダメになってプロレタリア文学が盛り上がってきていた時期なので、そういった文壇の流行を踏まえた記事の書きっぷりも面白いですよ。
今回新たに追加された人名紹介、紙誌・団体名紹介、そして人名から載ってるページが引ける索引も充実しててただの復刊に終わってないところが良いですね。とても便利。詳細をみるコメント0件をすべて表示