サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864106627

作品紹介・あらすじ

◎英フィナンシャル・タイムズ紙「2018年ベストブック」選出! ◎
私たちの文明と身体に、人類史上空前の「激変」が起きている!
BBC番組化で大反響! 各紙誌絶賛の英国最新ベストセラー人類史。

1万5千年前の「農耕革命」。250年前の「産業革命」。そしてスマホ・AI時代の「現代文明」。これらの衝撃に、私たちの身体は、実はいまだ「適応」できていない――。
欧米の歴史教科書に追加されつつある「人新世(じんしんせい)」問題を提起した、衝撃の全英最新ベストセラー!

感想・レビュー・書評

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  • 基本的には、腰痛持ちの著者による、腰痛の原因を探る旅の記録、たぶん。しかも、人類の誕生まで遡った探索となっている。何もそこまで遡らなくてもと思いますが。要するに、「現代人は椅子に長時間座りすぎ」、ということのようだ。
    サピエンス進化の800万年の歴史の中で、現代人は急激に我々の住む環境を変えてきたわけで、当然そんな変化に人間の体は進化によってはすぐには適応できない。現代人を取り巻く人工的な環境は人間を進化ではなくて退化させてもいるだろう。例えば、靴を履くようになって足のアーチ(土踏まず)はどんどん衰えて扁平足が増えているそうだ。人間の文明を生み出してきたのは”手”の利用があるのは明らかだが、スマホやスマートスピーカーの進化で音声入力が当たり前になっていけば、手も退化していくかもしれない。
    多く都会人が毎日モニターの前で8時間以上の座り続けるような仕事をしているが、そんな生活は長い人類史の中では無かったわけで、そのこと自体が腰痛やその他の現代病を生み出しているらしい。座ってばかりで運動が足りないということ自体がもたらす病気(成人病もろもろ)は当然みんな認識しているが、座り続けること自体が人間の体には悪因とも言えるようだ。だから、腰痛や花粉症などの現代病のために莫大な医療費を投入するのではなくて、仕事の途中でも定期的に動くとか、毎日もっと歩くとか、日光に当たるとか、そのようなことを続けるだけで現代病は消えていくだろう、もっと予防に励もう、という、まぁ当たり前の結論が展開されている。
    内容は興味深いと思うのだが、内容に対して本書は長すぎるし、翻訳が酷すぎて読みにくい点が残念だった。

  • 『人新世とはなにか」とは全くアプローチの違う
    急速化する身体的激変、その数百万年の物語。
    (科学的アプローチと言っても人には物語が必要だ)
    なので読みやすく、人新世について理解を深めるのに最適な1冊。

  • これ読むともっと歩かなきゃと思う。腰痛にも糖尿病にもなりたくないものだ。

  • 46億年と言われる地球の歴史の中で、現在は「人新世」であるというのが、流行の新しい考え方。まだ、オフィシャルには「完新世」ではあるが、何年か後には「人新世」となっているかもしれない。人間が大気や海洋、野生動物を永遠に変化させた時代で、核実験により放射性同位体が、人工肥料により土壌に含まれるリン酸塩と窒素が、プラスチックが、コンクリート粒子が、ニワトリの骨が大きく増加したと格調高く始まる。
    途中から、近視、腰痛、足のアーチの崩れ、変形性膝関節炎、花粉症、虫歯、骨が脆い、糖尿病といった現代病は、サバンナに適応した人類が、新たな環境、生活習慣に適応できないが故のミスマッチ病という話が延々と続く。流行の健康本のように思えて、原因がちょっと大げさだし、そういう原因ならある意味どうしようもないと思いながら読んだ。もっと外に出ようとか、座っていないでもっと歩こうみたいなアドバイスも書かれているが、原因が壮大な割りに、卑小な対策でやや閉口した。
    後半、ロラッツの仮説が紹介され、人間活動により空気中の二酸化炭素が増加すると植物の質が低下する(ミネラルが減って炭水化物が増える)という話から、再び壮大な話に戻っていく。難しいテーマを飽きさせずに読ませる啓発的な本で、とても面白かった。
    原題は『PRIMATE CHANGE』で、『CLIMATE CHANGE』(気候変動)に引っ掛けたものになっている。

  • 現代社会の人類の抱える症状、病気を進化の歴史から読み解いて、非常に面白く参考になった。とにかくどこにでも歩いて行こうと固く決心した。

  • ホモ・エレクトスがアフリカのサバンナを駆けていた時間の長さは、私たちの脳が理解できる限界を超えている。私たち一人の人生の長さに比べて、一九〇万年という年月は想像すらできない。

    骨にストレスがかかると、骨芽細胞が再生と強化をはじめる。

    『ワインダイエット』の著者、ロジャー・コーダー
    赤ワインが心臓病、数種のがん、さらに勃起不全の画期的な治療薬になる。ただ、残念なことに、アルコールが幹細胞のDNA損傷にかかわることが最近判明した。

    私たちの骨や筋肉は「動かさなければ失われる」という原理に基づいている。

    早歩きとランニングは脊柱と膝にいい
    ランニングが膝に悪いというのは間違っている。そうではない。じっと動かないでいるのが膝に悪いのだ。
    ウォーキングとランニングが骨密度を上げることは長く知られていたが、最近の研究で椎間板のためにもいいことがわかってきた。どんな動きや体操でも何らかのダイナミックストレッチを含むものはいい。スタティックストレッチの効果はまだ実証されていないが、ダイナミックストレッチは可動性と可動域を改善する。この二つは人新世の習慣によってたやすく失われる。

    休止状態を避ける

    なるべく身体を動かさないという癖から抜け出す習慣をつける。

    一番大事なことーーーーー歩く!

    観葉植物を取り入れる


    学校でも職場でも、一定間隔で、または一日を通して、身体を動かしている必要がある。長時間座っているのはただ運動をしていないということだと広く誤解されているが、実際はまったく別物である。たとえ運動をしていても、何時間も座っていたら、身体を動かしていないのと同じことになってしまうのだ。

    2012年にアメリカ疫学ジャーナルで発表された研究は、座りっぱなしと早期老化との関連性をあきらかにした。この研究で調べられたのはテロメア。染色体のいわば保護キャップとして働いていて、年齢ととももに徐々に短くなり、細胞の老化の指標となるものである。研究の結果、7813人の被験者のうち1日10時間以上座っている人は、テロメアの長さが有意に短く、生物学的には8年ほど歳をとっていることがあきらかとなった。そして、「多少身体を動かすだけでもテロメアが長くなるかもしれない」と結論づけられている。

    ウオーキングはつねに魔法の特効薬である。何百万年も昔に草原で暮らしていた人たちとのつながりを感じ、人間であることのあらゆる側面に効く。脊柱の前湾の負担を減らし、椎間板の健全性を促す。椎間板が分厚くて健全であればあるほど椎間関節は保護されるので、これは重要である。何よりも重要な点として、座っていては歩くことはできない。誰でもわかるとおり、長時間じっとしているのはどんな人にとってもよくないことなのだ。

    ランニングシューズはギプスと同じ


    自然とのつながりをを保つ

    裸足の時間を増やす

    ウォルフの法則に注意
    健康な人間や動物の骨は、その場所にかかる負荷に適応するのだという。筋肉や腱や靱帯も不可のあるなしに適応してしまうので、使えなくなるのを防ぐには動かして使うこと。

    動かさないと衰える
    腰痛を防ぐ一番の方法は、運動によって、動きや負荷に耐えられる身体を作ることである。
    動かすと腰痛がさらに悪化するというのは誤解で、研究によればその逆である。運動も同じ。あまり使っていない筋肉はとても傷つきやすいが、鍛えた筋肉は傷つきにくい。
    マイク・アダムス教授 「運動で死ぬことはなく、逆に身体を強くしてくれる。どの組織も力学的な負荷に適応する。骨についていうと、負荷がかかることで組織がより硬く強くなる。軟骨も同じだが、とてもゆっくりで何年もかかる。筋肉は適応するのが速い」。

    座らず立っているようにして、仕事の環境を見直す

  • 座りすぎはよくない。
    日光を浴びよう。
    座りすぎはよくない。
    適度に身体を使おう。
    座りすぎはよくない。
    姿勢をほぐそう。
    座りすぎはよくない。
    歩こう。
    座りすぎはよくない。

  • 文明等の進化によって、便利になった分、人類の肉体としての退化やリスクに晒される度合いが高まったことを感じさせる。この1冊を通じて、まずは運動しないさいと言われ続けた感あり。

  • 「人新世(じんしんせい)」という言葉を初めて知った。人類が地球に不可逆的な変化をもたらしたことで、現在は地質学レベルでその影響が残された、新たな地質学の時代だという。
    本書は、同じように現在の生活習慣が人間自体を新たな、決して望ましくない変化をもたらしていると説く。人の身体はサバンナで過ごした時代とさして変わらないのに、座ったまま何時間も過ごし、栄養過多で偏った食生活を送ることで、ミスマッチが拡大しているのだと。
    今更サバンナには戻れないし、180度違う人生を歩み直すこともできないが、せめて、もう少し動き、バランスの良い食事を心がけたいと思う。

  • 人は便利さを追い求め続けてきた。環境に適応するのではなく、環境を変えることで、より豊かな生活を送ることができるようになったが、それは果たして、身体にとっても豊かなものとなったのだろうか、というのがこの本の主題である。
    狩猟生活から農業革命、産業革命などを通じて、人々はどんどん動かなくなり、建物の中で生活するようになった。
    より健康的になり、便利になったが、近視や腰痛、生活習慣病など、別の病気に悩まされるようになった。
    また、『ホモ・デウス』でも述べられていたが、飢餓問題は、肥満問題へと変わった。
    世の中はこれからもますます便利になっていくだろう。
    手を動かし、フリック入力さえしなくなった将来は人間の身体にどのような問題が発生するのだろうか。
    今狩猟生活を再開するのは本末転倒だが、少しでも意識的に体を動かすことが大事なのだな、と改めて感じた。

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著者プロフィール

英ケント大学准教授。専門は環境人文学と19世紀英文学だが、扱うテーマは人類史、古典文学、健康、環境問題まで幅広い。ケント大学の名物教授として学生に絶大な人気をほこり、2015年には同大の「ベスト・ティーチャー賞」を受賞。ガーディアン紙、インディペンデント紙、ワシントン・ポスト紙などに寄稿多数。
人類が生み出した文明の速度に、人類の進化が追いついていない問題を大胆に提起した本書『サピエンス異変』は、2018年秋の刊行と同時にBBCワールドサービスで番組化され(全3回)、フィナンシャル・タイムズ紙の2018年ベストブックに選出されるなど、大きな反響を呼んでいる。

「2018年 『サピエンス異変』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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