- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864101028
作品紹介・あらすじ
飼い主との再会も、助けられなかった命も。福島原発20キロ圏内で保護活動をするカメラマンが撮りためた、助けを待ち続ける動物たちの写真集。
感想・レビュー・書評
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福島第一原発20キロ圏内で助けを待ち続ける、動物たちの写真集。
犬猫のみでなく牛・豚・鶏・馬・はては駝鳥まで、カメラが姿をとらえている。
臆病な私はなかなかページをめくれず、読んだら読んだで今度は息苦しくなっている。
悲しみや怒りや悔恨、様々な感情が渦巻いて涙が後から後から流れる。
政府が悪いだの原発さえなければだの、批判するのはたやすい。
だが胸に手をあてて考えて欲しい。
被災地以外に住むあなたは、生き物は連れていかれないと知った時、反対の声をあげたか。
決まっているものなら仕方がないと、沈黙していなかったか。
避難所に生き物などいなくて良かった。自分だったら我慢できない。
臭いしうるさいしと、ほんの少しでも思わなかったか。
調理された牛や豚や鶏は食べるのに、置き去りにされた家畜たちのその後を
少しでも想像したか。放っておけばそのうち・・と思わなかったか。
つまるところ、人々の意識の低さがこの悲劇を招いたのだ。
二度とこんなことがあってはならないと、言うのもたやすい。
ではあなたは何が出来るのか。その時どう行動するのか。
立ち入り禁止エリアで撮り続けた写真の中には、思わず目をそむけてしまうものもある。
でも記憶に焼き付けなければいけない。
私たち人間がしたことを。これは、どこかの誰かがしたことではないのだ。
そして、誰かが何とかしてくれるだろうという問題でもない。
餌をあげても、食べずにただすり寄ってくる犬、どうして?と問うような馬の目、
悲しいほどやせ細った猫たち、訳も分からず餓死してゆくしかない牛たち・・
太田康介さんはこう書いている。
「私は、ごめんよ、ごめんよと謝りながら写真を撮りました。
私に出来ることは、写真を撮り、今起こっている現実を多くの人に知ってもらうこと。
それしか出来ないのです」
そして今も、月に二回被災地に出向いて、保護活動と餌やりを続けているという。
ラストには、この本で被写体となった子たちのその後が載っている。
飼い主さんに無事巡り合えた子もいれば、ボランティア団体さんの元で新しい飼い主さんを待っている子もいるという。ここで、ほんの少しほっとする。
犬猫を家に迎えたいと思っている方、ペットショップではなく保護団体から譲り受けてほしい。そして最期までともに暮らしてほしい。
救いの手を待ちながら亡くなっていった、多くの生き物たちの鎮魂のためにも。
我が家も16匹の保護猫と暮らしている。
有事の際にはどう動くか。すでに何十回もシミュレーションしているが、その通りに行くかどうかは分からない。でも精一杯やるしかない。 -
胸が締め付けられる…ペットや家畜と括られる、ヒトではない命が、ヒトの都合で消えていく…訳も分からず途切れる命と、その現実を諦めざる得ない飼い主の悔しさを思うと、ほんとうに「チクショー、ゴメンナサイ」としか言えない。あたかも事故が収束したかのように、大手メディアはもう何も伝えなくなってきている今だからこそ、もう一度考えなければならない…使いこなせず、管理もできず、消し去ることも出来ない…そんなエネルギーをまだ必要だと言うのか?
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読みたい読みたくないはフィクション。
読まなきゃいけないがノンフィクション。
だから読んで欲しい、一冊です。
私たちは生きて生きて、一緒に生きなくちゃいけないね。-
「読まなきゃいけないがノンフィクション。」
仰言る通りですね、、、もっと世界に目を向けなきゃ。と思いつつ、フィクションに逃避する日々を過ごし...「読まなきゃいけないがノンフィクション。」
仰言る通りですね、、、もっと世界に目を向けなきゃ。と思いつつ、フィクションに逃避する日々を過ごしています。。。
2013/09/18
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本書は福島第一原発20キロ圏内で打ち棄てられ、助けを求める動物たちを、ボランティアのカメラマンが撮りためた3か月に及ぶ記録です。この写真集とルポを読んで、彼らもまた被害者であると痛感しました。
本書は「3・11」以降に福島第一原発20キロ圏内内で撮影された、動物たちの記録です。動物保護のボランティアをされている方が現地に入って3ヶ月間に渡って撮りためた記録です。正直な話、かなり悲惨な写真が含まれているので、そういうものを見るのはイヤだという方にはお勧めできないのですが、震災の片隅でこういうことが起こっているのだよと、そういうことを知りたい方にはぜひ手にとっていただけたらと思っております。
本文にいわく、
「私は、ごめんよ、ごめんよ、と謝りながら写真を撮りました。私にできることは、写真を撮り、今起こっている現実を多くの人に知ってもらうこと。それしかできないのです」
とのことで、やせ細った体を引きずりながら歩く犬や猫。家畜の厩舎では瀕死の状態になりながらすでに事切れてしまった仲間たちを隣に生きている牛や馬や豚。ノンフィクション作家の佐野眞一氏によると、家畜が全滅した厩舎はにおいやウジや成長したハエが充満して、この世のものとは思えない地獄絵図が展開されていたそうです。
激しい飢えや渇きに見舞われていた牛たちの中にはボランティアに解放された後、真っ先に水のあるよう水路へと赴き、そのまま落ちて上がれなくなっている写真や、沼で事切れている多くの牛たちの写真があって、これはもう、見ていて悲惨の一言に尽きるものでありました。巻末のほうにはここで掲載されている出会った動物たちの「その後」が記されております。すべてがすべて安心できるものではないのですが、あの苛酷な環境からは逃れることができたことだけはボランティアの方々の努力や有志の方々の努力によってなされたようで、そこにだけは、ほっと胸をなでおろしてしまいました。 -
一点の曇りもなくこちらを見つめる真っ黒い瞳。
おもわず涙がこぼれそうになった。
ショッキングな写真も多いが、それゆえに事実がまっすぐに伝わってくる本。
家族同然のペットを見殺しにしなくてはならなくなったこと。
政府を絶対に許さない。
こんなことが二度と起こらないように、わたしたちは知らなければならない。
ペットを飼っているみなさん、自分の地域の災害時のペットをどうしたらいいかはきちんと把握していますか? -
ひたすら胸が痛い。
福島第一原発の20km圏内に残された動物達。
そこには目を背けたくなるような、まるで地獄絵図のような光景が広がっていた。
身を寄せ合うようにして一塊になって息絶えている豚や、衰弱してもう立つことさえ出来ない牛たちの姿は、ただただ哀れで辛い。
なんでこんな事になってしまったんだろうと、読みながら涙が出た。
原発の影響で突然人の姿が街から消え、何が何だかわからないままに餓死していく動物達。
それでも、生き残った者達は大好きな飼い主の帰りを信じて待っている。
いつまでも飼い主の家から離れない無垢な犬の瞳を見ると、なんかもう言葉が出なくなってしまう。 -
事故以来、避難区域になっている福島第一原発の20キロ圏内は人間こそいないものの、動物たちが生きている。ペットや家畜として人間とともに生きていた動物たちが残されている。飼っていた人、育てていた人は、一時のつもりで置いていったり、避難所へ連れて行けなかったりしたために残していったのかもしれないが、結果としてその後、家には満足に帰ることもできず、動物たちは過酷ななかで生き、そして命を落としていった動物たちも少なくない。収載されている写真は、身につまされるし、胸が痛くなる。目をそむけたくなるような惨状の写真もある。人が住んでいた痕跡があるからこそ、なおさら悲惨に映る。
鎖につながれたり、食べられるために生きることは決して幸せではないけれど、そうして生きていた動物たちにとって人間がいない、つまり世話をしてくれない状況では生きていけない。いくら動物とはいえ、自然に順応するにはそれなりの時間がいる。また、人がいなくなったこの地域でのびのび生きているかもしれないけれど薬殺に遭ったり、何より放射線被曝で苦しみながら生きていかなければならないのかもしれない。
いざとなったとき人間と動物とどちらを助けるか――そう問われれば人間のほうを助けると答えるだろうし、実際にもそう振る舞ってしまうだろうけど、人間か否かというだけどあまりにも痛みなく命を扱ってしまってはいないだろうか。人を信じて、身を委ねて生きていた動物たちに、あまりにも酷な生き方を強いていることにも思いを向けなければ。 -
のこされた動物の様子をみて、
この動物たちの飼い主の気持ちを考えたら涙でた。
まだ、ペットは保護も可能だけど、
牛や馬の目を背けたくなる死の姿。
震災の影響は、想像できなかったところまで及んでいて、あまりにも大きすぎる。 -
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「人間が最低限なすべきことかと。」
こう言った災害が起きると、弱い部分から切り捨てられてしまう。そこまで手が回らない所為だと思うが、、、辛い...「人間が最低限なすべきことかと。」
こう言った災害が起きると、弱い部分から切り捨てられてしまう。そこまで手が回らない所為だと思うが、、、辛い話です。2013/04/11
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写真
東日本大震災
胸を打つ素晴らしいレビューで、大変気になったのでコメントさせていただきました。
福島第一原発事故以...
胸を打つ素晴らしいレビューで、大変気になったのでコメントさせていただきました。
福島第一原発事故以来、政治では原発問題が紛糾しており、その一方で福島安全キャンペーンも行われています。
小生は菊地誠さんの著作(いちから聞きたい放射線のほんとう: いま知っておきたい22の話 https://booklog.jp/item/1/4480860797 )を最近やっと読み始めていて、安全性は確からしいのですが、その一方で動物たちの問題は拭い去れていませんね。
狂牛病問題の時も、鳥インフルの時も、動物たちがむざむざと処理されていきました。
人間たちと同等の存在のはずなのに、やはり付属物として見られる節があるのでしょうか、倫理的な問題が残されています。
こういう時、伊勢田哲治さんやピーターシンガーのような学者の知恵を借りたくもなりますが、現場では役に立たないのかな、動物たちはあまりに不憫な判断をされてしまいますよね。
↓以下のようなニュースを見た折、動物たちは何も知らず何もわからないまま生き絶えて行くと思い悲しくなりました。
https://tvmatome.net/archives/3550
ペットブームによって動物と共生する機会は多くなりました(うちもウサギと暮らしたことがあります)。
こう行った時のためにも、動物と共に生きるための話を進めて行って欲しいですね。
コメントありがとうございます!とても嬉しいです。
ふたつのリンク先も、読ませていただきました。
鳥イン...
コメントありがとうございます!とても嬉しいです。
ふたつのリンク先も、読ませていただきました。
鳥インフル、狂牛病、口蹄疫、どれも忘れられませんね。
昨日良いものを手に入れたから、今日売るというものではないのです。
それはそれは長い間、昼も夜も手塩にかけて育てた生き物たちです。
生産農家の皆さんの無念さを思うと、本当にやりきれません。
「処分」された生き物たちが、どうか少しでも早く苦しみから解放されますようにと、ずいぶん祈ったものでした。
人間以外の生き物がいなかったら、人間が人間でいる意味もありません。
この本のレビューでは、原発問題にからめる人もおりましたが、それもナンセンスです。
では、大地震でも原発事故さえなかったら、その人たちは生き物たちを助けたのでしょうか?否、ですよね。
ひとりでも多くの方にこの本を読んでいただいて、まずは実情を知ってもらうこと。
そして、自分に出来ることは何かを考えること、すべてはそこからです。
見て見ぬふりは、一番恥ずかしいことです。(これは、自分にも言い聞かせています)
うさぎは可愛いですよね、私も子供の頃うちにいました。
読書猫さん、コメントしにくい記事にご訪問いただき、感謝します。ありがとうございます。