ジャノメ

著者 :
  • 静山社
4.03
  • (14)
  • (13)
  • (7)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 130
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863896253

作品紹介・あらすじ

山の上動物園のメスクジャク・ピーコは自由の身にもかかわらず、ケージから出ようとしない。それは、遠い夏の日を思い出すからだ…。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ジャノメは生まれた時から「山の上動物園」で飼育されているクジャクのメス。この動物園の古株だ。
    自分の見た目が華々しくないことなどにコンプレックスを持っている。
    この物語は、そんなジャノメの語りで進んでいく。

    ジャノメはまだ名前がなかった、ただのメスのクジャクだったときに、シンジという人間の少年と出会う。
    シンジは訴えたいことがあって、わざと迷子になっていた。そんな迷子のシンジをちゃんと迷子センターに送り届けねばと思ったジャノメの呼びかけを、なんとシンジは理解した。
    お互いに言葉が理解でき、コミュニケーションが取れることがわかったのだ。
    歓喜するジャノメとシンジ。
    シンジは名前がないという彼女に、「クジャクのメス」の略でジャノメ、と名付ける。
    のちに動物園ではピーコと名付けられるジャノメだが、このジャノメという名前は、シンジと、ジャノメと、動物園の動物の仲間たちだけが知る特別な名前となった。
    ジャノメは、園内を1人歩き回る「さすらいのジャノメ」となったのである。
    しかし、ある出来事があって、ジャノメは園内を歩き回ることを一切やめてしまい、「引きこもりのピーコ」となってしまった…

    その理由が次第に明るみになっていく過程や、ジャノメとシンジ少年のやり取り、ジャノメと同じバードパークに飼育されている鳥たちとのやり取り、飼育員さんたち同士のやり取りなども見ていて面白い。
    またひょんな理由から一度だけ園の外に出てしまったジャノメが、野生のテンに出会ったことで、園内で生きることと野生で生きることの違いについて考え悩むところも面白い。
    伏線回収も(まず伏線があると思っていなかったのでびっくりした)お見事。

    スルーっとすぐに読める。大変読みやすい本書だが、ジャノメの目を通して、他の鳥たちや人間の飼育員さんの目を通して描かれる物語には、考えさせられ、胸に染み入ることがたくさんある。
    とても面白く、優しい物語なので、小学中学年あたりからでも読めると思うし、ぜひに読んでほしい。

    また表紙や、本文中にたまに白黒で描かれる園内の鳥たちのイラストがすごくかわいい。
    読了してから表紙を見るのもまた一興。

  • 鳥に感情ってあるのかな?いやきっとあるのだろうけど、あの小さな脳でどのぐらい考えるのかな?思っていたのだけど、あるんだな!意地張って素直になれないのは、鳥も人間も同じだな、と。作者の読ませる力が強いので、現実にあることとして、受け入れられた。
    読んでから気になって、孔雀の生態(特に寿命)を調べたり、毎朝、会社の軒先から声を掛けてくれるまん丸い瞳の雀の家族と、もう少し気持ちを通い合わせられないかと、模索中。

  • 動物園の鳥舎の孔雀のメスピーコと迷子の少年シンジ、その出会いからジャノメという名付け、そして別れ。10年の時を経ての出会い直しをジャノメの視点で語る感動の物語。
    表紙の絵もとても素敵です。

  • メスのクジャク"ジャノメ"と、ジャノメの言葉がわかる少年の心の交流を描いた児童書。"シンジはいつか大人になる。そしたら私のことを忘れてしまうのかしら…?"恋のような想いを抱えて少年と年に一回の再会を楽しむジャノメ。その姿が切なくて、胸がギュッとなった。そして最後は思わずウルっとくるほど感動しました。
    児童書だけど、ぜひ大人に読んでほしい良作です。

  • 戸森しるこ氏の作品を読んでみたくてて、装丁がキレイだったので手に取った作品。
    動物園にすむクジャクを中心とした動物と、人間の心が通うハートストーリー。動物目線で物語がすすむところが絶妙!

    ジャノメ、は「クジャクのメス」から文字ってつけられた動物園にいるメスクジャクの名前。名づけ親は、柵の向こう側にいた人間の少年シンジ。心が通い、声が聞こえ、毎年夏休みシンジに会えるジャノメの心待ちにする様子が、フォントを変えて記載されている。ある日を境に言葉がわからなくなってしまったシンジが、中学生になり友達を連れて再びやってきたのに、「ジャノメ」の名前を友達に笑われ、名づけ親のシンジは名前をつけたのは違う人だと発言し、ジャノメのプライドを傷つける、、、

    物語の初めに、物珍しい新人の話題(動物園内で迷子になってしまい持ち場にもどってこない)がおおいなーと思ってたら、シンジの苗字が新人の彼と分かる最終章から、涙が止まらなくなってしまった。
    大人になって言葉がわからなくても、心は通じてる結びがとてもよかった。

  • 図書館でふと見つけた。
    背表紙のオオハシと
    表紙のクジャクの可愛さに惹かれ手に取ってみた。

    引き込まれて一気に読んだ。
    切なくてあったかくて泣いた。

    それぞれの個性が素敵。

    まったく期待していなかっただけに
    いい意味で裏切られた。
    手元に置いておきたい一冊。

  • クジャクのメスを略してジャノメ。タイトルの意味はここから。だから装画は鳥籠なんですね。ファンタジックな展開で私は少し苦手な世界観。

  • ちょっとラブストーリーか?

  • 久々に集中して一気に読んだ本。面白い視点で、伏線も随所にあって。余計な描写が一切ないのも素敵。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1984年、埼玉県生まれ。武蔵大学経済学部経営学科卒業。東京都在住。『ぼくたちのリアル』で第56回講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。同作は児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。2017年度青少年読書感想文全国コンクール小学校高学年の部の課題図書に選定された。『ゆかいな床井くん』で第57回野間児童文芸賞を受賞。その他の作品に『十一月のマーブル』『理科準備室のヴィーナス』『ぼくの、ミギ』『レインボールームのエマ』『すし屋のすてきな春原さん』 (以上、講談社)、『トリコロールをさがして』(ポプラ社)、『しかくいまち』(理論社)、『れんこちゃんのさがしもの』(福音館書店)、『ジャノメ』(静山社)などがある。

「2023年 『ぼくらは星を見つけた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

戸森しるこの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×