四隣人の食卓 (韓国女性文学シリーズ7)

  • 書肆侃侃房
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863853829

作品紹介・あらすじ

こぢんまりとこぎれいな新築の
共同住宅の薄い壁のあいだから、
内臓が露出するかのごとく暴かれる私生活。
――チョ・ナムジュ(小説家・『82年生まれ、キム・ジヨン』著者)


無理をして、我慢して、完璧を目指して、
結局悪い方に向かってしまう。
けれど密かに、静かに、マグマは猛ってる。
これは私たちの物語。
――深緑野分(小説家)



「ようこそ! 夢未来実験共同住宅へ」
都心にギリギリ通勤圏内。他のコミュニティから隔絶された山あいに国家が建設したのは、少子化対策の切り札となる集合住宅だった。「入居10年以内に子供を3人もうける」というミッションをクリアすべく入居したのは、4組の夫婦。やがて、お仕着せの“共同体”は少しずつ軋みはじめる――。
奇抜な設定で、「共同保育」「家事労働」「労働格差」など韓国社会のホットで深刻な現実を描き出していると話題を呼んだ作品。2018年韓国日報文学賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • 日本以上に深刻な少子化問題に直面する韓国のパラレルワールドでのおはなし。

    韓国国家は少子化問題対策として、「夢未来実験共同住宅」制度を立ち上げる。実験参加を希望する若い夫婦に低家賃住居を提供する代わりに、3人以上の子供を出産する努力目標が与えられる。そんな共同住宅に集まった四隣人は共同の庭に置かれた巨大な食卓テーブルでの会食を通じ、各家庭の出産育児への協力を誓い合う。

    経済格差や経歴、出産への熱意がそれぞれ異なる家族が協調できるのか。バッドエンドしか想像できないが、韓国としては何が何でも少子化問題を解決しなければ国の未来はない。この物語を喜劇と楽しむ余裕はもはやないのだ。

    政府の狙いに反して、共同住宅の巨大テーブルに新しく着席するのは、そこで生まれた子どもたちじゃなく、入れ替わりやってくる新入居家族たちだろう。そして、テーブルは朽ちていく。

  • 『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者による評が本の帯になっていることでわかるように、そんな本だ。しかもよくできた‥。韓国の人間関係をリアルに描いた作品のヒリヒリ感はすごい。遊びがない。日本の作家なら多少戯画化したり混ぜ返してフォローしたりするところを、高密度描写の直球で勝負してくる。読後感は、バッターボックスに立たされて豪速球を投げ込まれた気分。

  • ソ・ヨジンは、夫のチョン・ウノと一緒に新居の歓迎会に出ている。「夢未来実験共同住宅」に入居した当日。先住者の人たちから歓迎会をやるので出てきてと言われたのだ。まだ片付けものが沢山あるのに。話を聞いているとフリーのイラストレータのチョ・ヒョネ以外は、女性はみんな専業主婦のようだ。先住者のホン・ダニから「朝ダンナを送り出したら、女子だけでお茶しましょう、ねっ?」と言われたが、失業状態の夫の代わりに自分の方が働いているヨジンは返事をする代わりに微笑んだ…。ここは、空気がきれいで、自然が一杯の、子育てするには最適の環境と言われている国が整備した若い夫婦向けの共同住宅。少子高齢化に抗い、子供を産んで育てることを期待されている。しかし、どの家族の話も、家族、隣人、自然、共同体という温かいはずの言葉が寒々しく感じられる。

  • 子を産み育てることだけに役割を期待された女性たち。女性の無償労働を搾取し、彼女たちの叫びを“ヒステリック”と握りつぶす男性たち。

  • 四組それぞれの夫婦や家族にはそれぞれ事情がある。
    育児や仕事への姿勢も違っている。

    そんな四組の家族が同じアパートに住むとなったら
    どうなっていくのか。

    日中子供を一気に集めて仕事をしていない妻夫で見ればいいじゃないという人、
    在宅ワークがあるので、それはやめてほしいと思う人。

    日本とは違う、韓国独自の男女の格差や仕事への姿勢、経済状況、少子化対策など、なかなか現実問題としてシビアに書かれていたと思う。

  • 夢未来実験共同住宅というので、「特殊な環境下の隣人達に何が起きるか?」という新たな視点を期待したのに、普通のご近所物語だった。
    日本の小説で何度も読んだような内容。
    映画で観る韓国女性は強くて図々しい印象だったけど、この話の登場人物達(特にジオン)は日本人とそっくり。
    家賃前払いシステムは厳し過ぎる。

  • 韓国文学。初めて読みました。個人的に横文字(カタカナ)名前がなかなか覚えられなくて苦労しました。少子化対策という意味では日本も他人事ではない話ですが、子供を作ることを義務付ける感じで現実味はないかなと思いました。よい政策とは思えません。それと他の家庭とあまり近すぎる関係は気も使うしギクシャクしたりしんどいかなと。程よい関係、距離は必要だと思いました。

  • 共感することが多いけれど、それだけ。読後どうしたらいいのか困った。
     他人事ではないはずの物語を伝聞という形で締めくくるあたりは皮肉が効いていてよかった。

  • 韓国で人口増加のために建設された実験共同住宅12戸。
    安い家賃で入居できるが、それには条件があり、ある一定期間のうちに子どもを3人産み育てること。
    申込者には抽選が行われ、専業主婦(主夫)がいる家庭が有利に入居できる。一定期間で子ども2人以下だと退去の対象となる。

    4組の家族が高倍率をくぐりぬけて入居となる。
    郊外のはずれにあり、近所には幼稚園もないため、元幼稚園教諭のホン・ダニの呼びかけで各家庭から用事のない親が出て子どもたちを共同保育していくこととなる。

    4家族集まって色々な取り決めが話し合われていくが、今後も毎日顔を合わせながら一緒に暮らしていくということから、嫌なことがあっても今後のことを思うと言い出せず、少しずつ我慢しながら暮らしていくこととなる。

    壁が薄いため、隣の家庭の物音が聞こえたり、自分と違う生活スタイルに介入されたくない、と壁を作る者、それでは駄目だと介入していく者。

    いくら共同生活、近隣仲良く暮らしていくとは言え、そこは別々の家族が集まったものなので、干渉もほどほどにしないと大変なことになるな、というのを強く感じた1冊です。

    プライベートが縛られて窮屈で、それを我慢しながら生活して、どんどん泥沼にはまっていってしまう姿に息がつまりそうでした。

    国のお仕着せで子どもを産めよ育てよ、ではいけません。
    日本もそう。

    韓国の名前に慣れていないので、何度も最初のページの入居者の家族一覧に戻りながら…の読書でした。

  • フェミニズム、metoo運動と、作者は真摯に伝えたかったのだろうが、

    私としては不気味な隣人たちに、韓国ドラマのような期待が膨らんでしまい、ドキドキしながら読み進めるも


    最後とりたてて面白い結末ではなく。

    そういう楽しみ方の本ではないので仕方ないが、
    これをドロドロ韓国ドラマにしたら流行りそうだなぁと思った。
    それほど、私にはmetooもフェミニズムも日常から程遠い問題もなのだと改めて思った。
    ある記事にも日本でいまいちmetoo運動が盛り上がらないと書いていた。
    お隣の国といえど、この点かなりの違いがあるのだろうと気づきになった。

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著者プロフィール

慶煕大学国語国文学科卒業。2008年、長編小説『ウィザード・ベーカリー』でチャンビ青少年文学賞を受賞し、作家活動を始める。ほかに長編小説『一さじの時間』『えら』『破果』『バード・ストライク』、短編集に『それが私だけではないことを』(今日の作家賞、ファン・スンウォン新進文学賞受賞)、『赤い靴党』『ただ一つの文章』など。邦訳に「ハルピュイアと祭りの夜」(『ヒョンナムオッパヘ』白水社)がある。
リアリズム小説、SF、ファンタジーなど、ジャンルを超越した多彩な作品を発表し続けている。

「2019年 『四隣人の食卓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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