- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863852235
作品紹介・あらすじ
【言葉が奏でる究極の結晶】
とうめいな水の底に光る幻影は、
深い祈りが集めた光なのだと思う。
(東 直子)
[自選短歌五首]
どんなにか疲れただろうたましいを支えつづけてその観覧車
月を洗えば月のにおいにさいなまれ夏のすべての雨うつくしい
煮えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火
ふいに雨 そう、運命はつまずいて、翡翠のようにかみさまはひとり
ぼくを呼んでごらんよ花の、灯のもとに尊くてもかならず逢いに行くさ
感想・レビュー・書評
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このひとの短歌をお見かけし、好きなうたが二首あったので、いつかこの歌集を読みたい
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青い炎を連想させる透明感とひりつきのある連作が良かった。
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初々しい言葉と少し演歌っぽい言葉とがカオスのように同居する。前者には強く惹かれつつ、後者の演歌っぽさが時々鼻につく瞬間を否定出来ず。
書籍で読んで気に入ったらKindleでも購入しようかと思ったのだけど、そこまでモチベーションが維持出来ず…。
もっと言葉がこなれて来るのをそっと待ちたいと思う。くれぐれも演歌っぽさが熟達することのないように、と祈りながら。 -
井上法子 短歌 かわせみよ波は夜明けを照らすからほんとうのことだけを言おうか 抱きしめる/ゆめみるように玻璃窓が海のそびらをしんと映せり 波には鳥のひらめきすらも届かないだろうか海はあたえてばかり みずうみと海とがあった輝きのゆたかな抱擁をしっていた 渚から戻っておいで微笑みも雪の匂いもわすれずおいで ずっとそこにいるはずだった風花がうたかたになるみずうみに春 耳でなくこころで憶えているんだね、潮騒、風の色づく町を #返歌 台風の雨風怯えこころでも耳でも潮騒時空質量
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表紙の色に通ずるような水色の空気感漂う寂しげな歌、対照的に日差しがまぶしくて活力にあふれてるような歌が個人的には目に止まった。難解で一読どうにも読み解けないものもあったけれど、それはそのまま受け止めて、何度も矯めつ眇めつ眺めて読み解けたら、それはまたそれで楽しいのではないかと。以下引用。/いえそれは、信号、それは蜃気楼、季節をこばむ永久のまばたき/それぞれの影を濡らしてわたしたち雨だった、こんな雨だった/どんなにか疲れただろうたましいを支えつづけてその観覧車/煮えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火/日々は泡 記憶はなつかしい炉にくべる薪 愛はたくさんの火/ふいに雨 そう、運命はつまずいて、翡翠のようにかみさまはひとり/まっしろな気持ちばかりが駆け出して ああ あこがれ と手をつなぐこと/いっせいにゆれる吊り革 うつむけば海鳴り、親指、ママン---拍手を/心地よくアロエ果肉のなじみつつ半透明の夏がまた来る/触れたのはてのひらだけではつなつのステーキ屋さんでステーキを食む