ナイン・ストーリーズ (ヴィレッジブックス F サ 4-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863323957

作品紹介・あらすじ

サリンジャーが遺した最高の9つの物語。35年ぶりの新訳。

感想・レビュー・書評

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  • 実に血腥い作品集だ。傑作選、というのとも違う。纏まりという点で言えば「バナナフィッシュ日和」「テディ」のようなスケッチや他愛もないミニマリズム、「笑い男」の病的な作り話ぶり、「エズメに捧ぐ」の退廃した世界などを概観すれば分かるように支離滅裂で、「九つの話」と表現するしかないことに気づかされる。この支離滅裂さがしかしサリンジャーの味なのだろう。基本的には大人と子ども、男と女の対比が「ストーリー」を浮き立たせており、何処に視点を置くかによって「恋愛小説」「シュール」「戦争文学」と違った味わいを抽出し得る。凄い

  • 「バナナフィッシュ日和」で始まり「テディ」で終わる構成がまず良かった。グラース家の人たちの話はやっぱり知ってる人たち!とときめくけど、この本では「コネチカットのアンクル・ウィギリー」が好きだな。ただふたりが話しているだけなのに読ませられてしまうふしぎ。
    グラース・サーガの長男シーモア・グラース-Seymour Glass-は”see more glass”でもあったのかという、サリンジャーならではの言葉遊びにちょっとテンション上がりました(バナナフィッシュ日和)

    訳者あとがきを読んでようやくぴんときたのだけど、サリンジャーの小説がふしぎかつすごいのは、「物語」になる直前の「個人」がそこにいるからなんだなあ。
    最後まで読んで「で、何?」と思うってことはわたしが無意識にその小説に「物語」を求めていたということで(だから何かを期待している)
    でも実際期待したとおりの展開が起こることは実生活で考えたらそう無くて、そこにあるのはただ会話であったりその合間にあるちょっとした動作、中座であったり、そういうことが積み重なって一日が成り立ってるわけで、サリンジャーにはそこがよく見えていたのだろうなと思った。
    結局「起こったこと」に対して何かを後付けで考えて物語にしていくのは読者の方の仕事なのかもしれない。

    サリンジャーの書く会話はほんとにすごい。こんな「ありそう」且つ「なんか変」な会話を書ける人はいない。
    すごく演劇的だし、見習いたいな〜と、勝手に思ったのだった。

  • 短編小説と長編小説とは全く別物であるように思う。ストーリー展開や、描写の積み重ねで徐々に引き込んでいく長編と異なる、なにかしらの魅力がない短編は、長編のなりそこないでしかない。

    この本はまさに短編小説。

    特異な緊張感によって一瞬で引き込まれ、短さを感じさせない重たさがある。こんなに訳がわからないのに再読したくなるのはなぜだろう。

  • サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』の柴田元幸訳。
    タイトル通り9篇の短編から成るが、とにかく頭の痛くなる作品でお世辞にもすばらしいとは思えない。3篇目くらいでうんざりしてこない人はいないのでは。
    村上春樹をひどくこじらせたような文体で、スイーツな頭の人物たちが全然噛み合ってない話をしてたり(これが無性にイラつくのだw)、狂った人物が出てきて訳のわからないことしたりして、筋も幕切れも意味不明で唐突なものばかり。
    特に『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が好きな人が読むとギャップに苦しみそう。
    さっぱり訳がわからなった作品。

  • 以前より(2、30年前から)、いつかは読んでみたいと思っていた本。時間的に少し余裕がある夏休みに読んでみた。

    各短編のテーマが何なのかはまったくわからない。
    いずれも(個性的を超えたような)変わった人物が出てきて、会話を中心に物語が進む。というより、ほぼ会話だけ。
    次代の雰囲気や文化を理解しないとそれぞれの「核」に近づくことは難しいと思った。

    わからないけれど、魅力的な小説ではあった。ほぼ会話だけの話を退屈せずに読み通せたのだから、そこは作者の力量を認めるべきなのだろう。

    読みながら、村上春樹を連想した。似ている。たぶん春樹はサリンジャーの影響を受けている。

    丁寧に読み返せば何か発見はあるのかも知れないが、他に読みたい本がいくらでもあるので、おそらく読み返すことはないだろう。

  • 謎解きサリンジャーを読んで改めて読み直してみたが、面白く読めたことは読めたが、あいかわらずいらいらさせられる文体だしストーリーだし、和解はしたが支持にはまわれないなやはり。

  • 娘と母親、2人の女友達、少女と友達の兄、コマンチ・クラブの団員、母親と息子、軍人と少女、電話で会話する2人の男、美術学校の講師、天才少年と教授の会話か1人称による短編集。どの小説も登場人物の人生のものすごく短時間を切り取って語られている。その一瞬をたのしみながら終わりを惜しみながら読んでいく、読み終わったあとに登場人物たちのその後を想像する余韻がある。

  • 「バナナフィッシュ日和」と「笑い男」は情景が目に浮かんできやすいのか、親しみやすかった。とくにバナナフィッシュ日和の情景描写のことばえらびがすてき。「エズメに――愛と悲惨をこめて」と「テディ」が個人的にすきです。エズメもテディもちょっと大人びた言葉づかいが生意気でいとおしい。テディの語る、愛することについての台詞にかなり、ぐっときた。"二人とも僕の親なんだし、僕たちはみんなたがいのハーモニーの一部なんだし"

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