キツネ潰し 誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ

制作 : ナショナル ジオグラフィック 
  • 日経ナショナル ジオグラフィック
3.48
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863135512

作品紹介・あらすじ

かつて多くの人が熱狂した、今ではありえない娯楽の数々。100近い奇妙なスポーツ・遊び・競技を紹介。



ここに載っているほとんどのスポーツが廃れていることに、現代の動物や医者は胸をなでおろすに違いない。

かつてのスポーツや遊びには、現代では信じがたいほど倫理観に欠けていたり、危険過ぎたりするものがある。そういったものを中心に、今ではもはや忘れ去られてしまったスポーツを取り上げ、当時の文献を参照しつつ、どのようなものだったのかを紹介する。



本書では、主に次のようなスポーツ・遊び・競技を取り上げる。

動物や人間を虐待したり軽んじたりするような、「残酷」なもの。

命を落とすことも多い「危険」なもの。

複数の競技をかけ合わせたり、思い付きで始めたりした、「ばかばかしい」もの。

さらに、かつて遊ばれていた、「素朴」なもの。



著者は『世界をまどわせた地図』『愛書狂の本棚』(日経ナショナル ジオグラフィック刊)などの人気シリーズを持つ、古書の収集家。大量の古書や古美術を参照して、野蛮で愚かな時代に人気を博した、奇妙な娯楽をユーモアを交えて紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • 『キツネ潰し』という言葉のインパクトに惹かれ、そして、その言葉と全くイメージが結びつかない『スポーツ』であるという紹介。好奇心をこちょこちょくすぐられて購入。

    率直にまずは何と言っても、よくぞまあこれだけの妙で変でロクでもないアクティビティの数々を文献から見つけ出してまとめられたなあ、という点に尽きる。著者略歴によると、ヒッチング氏は元々古書や奇書の蒐集家であり、アンティークや古地図に囲まれて暮らしているとはあるがこんな事にも関心があったのだろうか?

    肝心のスポーツ(?)についてはどれもこれもひどいのだが、やはり動物が憂き目に遭うようなものが目立つ。というか、〈金魚飲み〉(p141〜p143)はスポーツと呼んで良いのかどうかも怪しい気がするが。動物系の内で比較的のどかなものに〈シカのレース〉(p254〜p256)があり、考案したティム夫妻もおそらく真剣だったと思うのだが、残念ながらシカの性格上うまくはいかなかった。どこかの観光地でやってそうな気もするけどなあ。

    その他の残酷・危険系についての感想はいずれも似たり寄ったり、危ないなあという感じ。
    そこを除くと、〈氷上テニス〉(p168〜p170)なんかはワンチャン復活の可能性を秘めているのでは。ちょっと『たけしのお笑いウルトラクイズ』臭がしなくもないが。

    ムダ知識の範疇を超える事はない、スポーツ・エンタメ雑学集という感じ。
    ’共通普遍の認識としての動物愛護の精神’っていつ頃から、誰が訴え出したのだろうか?という事が気になった。


    1刷
    2023.9.18

  • 「キツネ」と「潰し」この二つの語が合成される意外性。なんとパワーのあるタイトルだろうか。英語だと「キツネ投げ」の方が正確な訳だけど、「潰し」を採用した訳者に拍手を送りたい。
    ちなみに英語の原題ではその後「タコ・レスリング」と続く。こちらも日本語版の副題に入れて欲しかった。

    前書きの中で、紹介した現代では廃れてしまったスポーツ(死競技?)はおおむね「危険」「残酷」「バカバカしい」に大別される、と述べられている。勿論二つ以上の条件に当てはまるものもあるけれど、本当にその通りだった。(「金魚飲み」なんかはその全てに当てはまる)

    「危険」は文字通り生命や身体の危険が大きすぎるもの。「オートポロ」「バルーン・ジャンピング」「花火ボクシング」など。
    「残酷」は動物虐待系。タイトルにある「キツネ潰し」をはじめ、「クマいじめ」「野鳥たたき」「猫入り樽たたき」「リス落とし」「カワウソ狩り」など名前からして酷い。
    「バカバカしい」ものはそれそもそもスポーツか?とツッコミたくなるようなものも多い。「ろうそく釣り」「ポールシッティング」「水上三脚」「ピッチングマシン砲」など。

    人類史の中のアホな側面を見れてとても面白いのだけれど、過去の話に限ったことではないなと思った。現在でも人が死ぬ危険な競技はいくつもあるし、闘牛や闘犬のように動物虐待が競技として生き残っているものもある(娯楽の為のハンティング、スポーツハンティングもそうだ)。バカバカしいものは、「チェス・ボクシング」などマイナーなものに目を向ければ枚挙にいとまがないだろう(以前、ハイヒール100m走というのをネットで見たことがある)。
    マイナースポーツに限らずメジャーなものでも、時の変遷を経ることで今後評価が変わることもあるに違いない。
    100年後にこの『キツネ潰し』のような、忘れられたスポーツ事典が出版された時、そこにどんな項目が追加されているのだろうかと夢想する。

    本の構成としては、全ての項目がランダムに紹介されてたので、上記の3つのカテゴリに分けるとか種目のジャンルで分けるとか年代で分けるとかしてるとより良かったかな、と思う。あと、スポーツ名称は原文併記してほしかった。「キツネ投げ」→「キツネ潰し」のような意訳がきっと他にもあったはず。

    あと事例が欧米圏に偏っていたので、続編があればぜひ非欧米圏を中心に取り扱ってほしい。

  • スポーツ。憂いごとを忘れ、羽を伸ばす活動。
                 サミュエル・ジョンソン
    とはいえ、羽を伸ばすにも節度と限度があるだろう。
    ルールを定めて危険を回避するスポーツ、動物保護の法整備。
    もしかしたら、近年まで存在したスポーツや娯楽の黒歴史が、
    変遷する倫理観に影響を与えて、現代では廃れたのかもしれない。
    そんな思いに捉われる、残酷で危険で、ばかばかしく、素朴な、
    けれど、かつて多くの人が熱狂した、
    100近い奇妙なスポーツや娯楽を紹介している。
    “残酷”の多くは動物虐待の歴史。
    猫入り樽たたきに猫焼きなど、悲しいまでの猫の受難。
    名称は知っていたが、クマいじめの残虐行為の凄惨なこと。
    雄鶏、カモ、ロバ、ライオン、その他の動物たちも、同様に。
    中世の過酷な日々の中で残酷なことに麻痺していたというけど、
    紳士淑女のキツネ潰し等、王侯貴族も楽しんでいたような。
    “危険”は無鉄砲な人が惹きつけられる、リスクの大きい競技。
    オートポロ、町VS.町の過激な模擬戦争、氷上テニス、
    モブフットボール、相手の頭から血を流すと勝利の杖術など。
    オリンピック種目では、ハトを撃つ競技や凧揚げ、
    カーレース、乗馬走り幅跳びなどがあったことも。
    荒らし過ぎるバイキングのスポーツは、伝説なのか、現実なのか。
    その他、酔っ払いの試合?なドワイル・フロンキング、
    金魚飲み、手塚治虫の『W3』みたいなモノホイール、
    暴動に発展したうなぎ引き、引っ張り合いでは
    昔の日本にあった首引きも紹介されていました。
    100近くのスポーツや娯楽は、それらの内容の混沌のため、
    頭の中がクラクラしちゃう。歴史を考えるうえでも貴重です。

  • 爆笑とドン引きを繰り返しながら読む。それにしても中世ヨーロッパの残虐性は何なのか?ルールとは何かも考えさせられる。日本版が出来たらどんなものがあるのか?興味はつきない。

  • 危険すぎる、又は残虐すぎるといった理由で消えていったスポーツを列挙。今でいうエクストリームスポーツといった所でしょうか。命の危険があっても熱狂してしまう愚かさ、動物を虐待する恐ろしさがあったりと人間の間抜けさがわかる歴史書といえます。貴重かつ面白い本でした。おすすめ。

  • 面白かったのは、「はじめに」の部分。その後は、時代も場所もバラバラに事例が羅列されている。事例紹介の文章自体は軽妙で悪くないが、50ページほど読んだあたりで飽きた。スポーツというよりは動物虐待遊びでしかないものが事例の半数近くを占めるのではないかという印象だ。ところどころ面白いと思うところはあるのだが、最後まで読むには忍耐が必要だった。

  • 昔の人間は野蛮で粗野であったのだなぁ。
    現代も色々なひとがいるが、この本を読むと、だいぶ洗練されたんだなと思う。
    情報量も多く、資料として良いものだとは思う。
    が、掲載順がランダムであり歴史が把握しづらい。おそらく通して読む際に飽きないようにとの配慮なんだと思うが、年代も種類も系統立っていないし、記述も統一されていない。すなわちまあ、エンタメ的な読み物として作っているのだろうけど、だとすると似通ったものも多くボリュームがあり過ぎる。
    できれば年代順に並べて、人類の文化の洗練されていく過程を感じたり、こんな時代にまだこんな馬鹿なことをしていたのかという風な読み方をしたかった。
    ちなみに収録されるスポーツ(と本書では呼んでいるが、アクティビティと言った方がしっくりくるかな)は,エクストリームチャレンジ系と動物虐待系に大別されるが、動物虐待系はだいぶ酷い内容なので、デリケートな方は注意されたし。まあタイトルがこれなのでダメな人はそもそも読まないとは思うが。逆に変に伏せたりせずに記述することで、現代人が持ち合わせない残虐性を昔の人は普遍的に持っていたという事実がわかりやすい。

    ちなみに表紙を見るとキツネ潰しの原題は Fox tossingなので、正確にはキツネ揚げのような感じだと思う。インパクトのある意訳を採用したのは別に悪くないと思うが、おそらく本文中の他のスポーツ名もかなりの意訳だと思われるので、できれば原文の名称も併記してもらえるとよかった。

  • タイトルから想像して「中世のとんでもねぇ娯楽が紹介されてんのか」と期待してたんですが、まぁそうですね。結構早い段階で息切れを感じる内容でした。

  • キツネ潰し
    誰も覚えていない、
    奇妙で残酷で間抜けなスポーツ

    著者:エドワード・ブルック=ヒッチング
    訳者:片山美佳子
    発行:2022年8月8日
    日経ナショナルジオグラフィック

    副題にもあるように、今はないか、ほとんど行われていないようなスポーツとかゲームとかを100ほど紹介している。笑えるような間抜けなものが結構あるのだけれど、動物を使う者が多く、そのほとんどが動物虐待を伴う。間抜けなのは、そんなことを楽しんでいた人間そのものに他ならない。

    例えば、タイトルになっている「キツネ潰し」(Fox Tossing)は、囲いのある競技場に細長い布か綱を何本も置いておき、両端を人間が持つ。そこへ多くのキツネが放たれる。キツネがその上に乗ったタイミングで持っている人間が布を上に持ち上げ、キツネを空高く布で放り投げる。7メートル以上の高さにまでキツネが達することも珍しくなかった。キツネは足から着地しようと必死にもがくが、その仕草を見るのが人々の楽しみの一つだという。しかし、落ちたキツネは当然ダメージを受ける。キツネは邪悪な冬の精霊の象徴だと思われていたので、死ぬまで繰り返された。ドイツで行われていたようだ。もちろん、キツネにとどまらず、他の動物でも行われていた。

    人間版もあったようだ。「人間投げ」。投げられる人は広いシーツに横になり、大勢(通常16人)の男たちがシーツの端をつかみ、シーツの上に1袋分の工具や丸太、石など重いものを入れ、上下させて人とともになんども上に放り投げる。彼らが疲れるまでそれはつづく。遊びから始まり、罰の一種になったように書かれている。

    受刑者を大勢競技場に入れ、そこにライオンなどの猛獣を放って襲わせる見世物では、襲われる前に自殺をする者が続出。また、死刑囚や戦争捕虜同士を海賊にみたてて殺し合わせる競技も行われていた。

    一方、後ろ手に縛られた〝選手〟の口の中に、雀の羽根だけを突っ込み、選手は口の動きだけで雀の頭を口の中に入れるという「スズメもぐもぐ」などという間抜けでひどいお祭りの競技も。雀は抵抗して必死つつく、選手の口の周りは血まみれになる、という具合。

    100近くのスポーツやゲームを、辞書のように項目立てして短く説明しているので、読んでいても退屈する。ラジオで珍しいトピックを紹介する番組構成をしていたときには、この手の資料を揃えて、クイズを作ったりしていたが、普通に読書するにはしんどいし、退屈。

    面白くなかった。どうしてこんな本が話題の本になっているのだろうか。時間の無駄遣いをしてしまった。

  • 現在では廃れ忘れ去られてしまった奇妙なスポーツについての本。
    その多くは危険だったり残酷だったりして時代の倫理観にそぐわなくなってしまったものが多い。タイトルになった「キツネつぶし」や「猫入り樽たたき」「猫焼き」「ねずみ殺し」など内容を知るまでもなく名称だけで駄目でしょという感じだ。人間というものは昔から暴力や危険を娯楽として楽しんできたのかということが良く判る。

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