消滅遺産 もう見られない世界の偉大な建造物
- 日経ナショナル ジオグラフィック (2018年2月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863134126
作品紹介・あらすじ
今では失われてしまったかつての姿を記録した写真で、世界の偉大な建築物をめぐる。バーミヤーンの大仏のように粉々になってしまったものから、都市計画の一環で解体されてしまったもの、紛争地帯に残されたために消滅の危機にさらされているものまで。世界中で人々が守り伝えてきたものを、改めて伝える。
感想・レビュー・書評
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永遠に失われた偉大な遺跡、一部は失われ一部は残った歴史的建造物、地震や火災、紛争や内戦、老朽化や経済開発によって危機に晒されている貴重な世界の文化遺産が紹介された、ナショナルジオグラフィック編纂による写真解説集。第二次大戦中から行方不明の「琥珀の間」(サンクトベルグ)、1500年立ち続けた石仏(バーミヤ-ン)、3800年前のパルミラ遺跡(シリア)、空爆で粉々にされた聖母教会(ドレスデン)、紫禁城を取囲んだ巨大城壁(北京市)など、昔日の栄華と保存修復への遠い道に思いを馳せる。
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現在、現地に行っても見られない建造物。
現地に行くのが困難で消滅の危機にある建造物。
消滅した、或いは消滅するかもしれない世界の偉大な建造物から、
29か所を選び、その姿を記録した写真でめぐる。
各3~6ページで、本文、写真、簡易な地図での構成。
場所・建造年・消失等の消滅の年・原因・再建の可能性も付記。
失われた建造物では、消滅する前の過去と現在写真も有る。
いかに偉大な建造物であっても、消滅はあっけないものです。
それは爆破等人の手、火災等の事故、地震等の自然災害によるもの。
この本では人の手による消滅が大半を占めています。
戦争、政治・宗教等の対立による内乱、新たな建造物や都市計画の
ため。或いはベルリンの壁のように民主化の象徴となるものまで。
初代帝国ホテルの解体の理由に、地盤沈下があったとは。
特に空爆の凄まじさ。敵から守るために上階に居住スペースがあった
サアナ旧市街は、空からの攻撃にあっけなく破壊されています。
それでもドレスデン聖母教会のように、復旧に力を注ぐ人の手が!
そして、記録。過去と現在の比較が出来ること。
写真と印刷の技術があって良かったと、しみじみ感じました。 -
「消滅絶景」がちょっとわかりずらい編集だったが、こちらは建物や遺跡なので、無くなった年、その理由、再建された年がはっきりしている。
一番多いのは戦争による破壊。そして地震、火災などが続く。都市開発で一部残して壊したというのもある。
ページをめくると目につくのが近年のイスラム紛争による破壊だ。絶景写真ではきれいな部分が載っていたのか。
①「バーミヤンの大仏」アフガニスタン 建造:6~7世紀 消失:2001.3.10前後 原因:タリバンによる爆破 再建:検討中 ユネスコ世界遺産(危機遺産)
②「サーマッラーの螺旋式ミナレット」イラク 建造:848前後 損壊:2005年(イラク駐屯の米軍は監視塔として使用しイラクのゲリラ攻撃で先端が破損) 原因:イラク戦争 再建:未詳 ユネスコ世界遺産(危機遺産)
③「トンブクトゥ」マリ共和国 建造年:14世紀 損壊:2012年 原因:テロリストによる破壊 2008年以来「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ機構」が旅行者を誘拐する。2012年にイスラム過激派集団「アンサル・ディーン」がシャベルやつるはしで市内の寺院を破壊 ユネスコ世界遺産(危機遺産)
④「アレッポ」シリア 建造年:アレッポ12世紀 損壊:2011年以降 原因:内戦(政府軍対アルカイダ系組織)再建:スークは再建中、大モスクは計画中 ユネスコ世界遺産(危機遺産)
⑤「サナア旧市街」イエメン 建造:10世紀以降 損壊:2015年以降 原因:サウジアラビア主導の空爆(2015年1月シーア派の武装組織がクーデターで政権を奪取。政府側を支持するスンニ派のサウジアラビアはアラブ諸国を主導して空爆) 再建:不明 ユネスコ世界遺産(危機遺産)
⑥「パルミラ遺跡」シリア 建造:BC1世紀から 損壊:2015年 原因:ISによる(偶像崇拝は許さないとして) 再建:検討中 ユネスコ世界遺産(危機遺産)
⑦「ニルムド遺跡(古代アッシリアの王都のひとつ)」イラク 建造:BC879頃 損壊:2014年 原因:ISによる(ISは破壊の様子を映像で公開) 再建:未定
⑧「アスカリー・モスク(シーア派の聖地)」イラク 建造:944年 損壊:2006,2007 原因:過激派(スンニ派だとされている)による爆破 再建:再建はほぼ終了
第二次世界大戦、ベトナム戦争等での消失
①「ケーニヒスベルク城」ロシア・カリーニングラード(旧ドイツ・ケーニヒスベルク) 建造:1255年 解体:1969年 原因:連合軍の空爆と、ソ連によるその後の取り壊し 再建:未定 ドイツの地だが第二次大戦後ソ連の飛び地に。
②「マンダレー王宮(ビルマ王最後の王宮)」ミャンマー 建造:1857年 損壊1945年 原因:第二次世界大戦、英軍の爆撃(1885英が占領し植民地にし兵士の宿営地に、1942年に日本軍占領、それを英軍が爆破) 再建:コンクリート造りの宮殿が一部再現。それ以外は軍の施設として使用されている。
③「フエ王宮」ベトナム 建造:18世紀 損壊:1968年 原因:ベトナム戦争中の米軍の空爆 再建:残された建物の修復が進んでいる ユネスコ世界遺産
④「ドレスデン聖母教会」ドイツ 建造:18世紀 損壊:1945年英米軍による空爆 再建:2005年
⑤「ガンデン寺(チベット仏教総本山)」ラサから45km 中国チベット自治区 建造:1409年 損壊:1959~1966年 原因:中国による弾圧 再建:再建継続中
その他
「アカタマ砂漠の地上絵」チリ 建造:7世紀以降 損壊2009年以降 原因:ロードレースによる破損 再建:未定
・・なんとダカールラリーがチリとアルゼンチンで開催され数百台のトラック、車、バイクが周辺を走り回って遺跡を踏み越えたりしたという・・
2018.2.26第1刷 図書館 -
写真が主で情報は少ないが、最近はこういう時間効率高い本が好きだ。
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すでに消滅したもの、一部残されたもの、失ったが復元したもの、あわせて28個。
世界史に残る、人類の宝や、それに等しく美しいものたち。
そうした28個のうち、人が、明確な意志をもって故意に破壊したものは13個。空爆や砲撃、あるいは純粋な破壊工作によって、それらはもう見ることは出来ない姿となってしまった。
多いのか、少ないのか。
これからも失うのか、あるいは食い止められるのか。歴史的建造物の保存や修復に関わる事柄に対し、意識的でありたいと思った。
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紛争がもたらす狂気は、せっかく残された文化遺産を破壊してしまう。無教養がもたらす悲劇が繰り返される。パルミラ、バーミアン‥。貧困を追放せねば。
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意外と最近まで残っていた場所もあるようで残念です。特に紛争なんかで壊れてしまったものは。
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かつては確かにあったが、今では見ることができない世界の偉大で美しい建造物を過去の写真などで紹介してあります。その遺跡が壊された経緯や、その後の姿などの写真もあり、テロなどで壊された遺産などを見ると怒りを禁じえません。こんな愚行が二度と行われないように祈らずにおられない一冊。
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