ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版

制作 : ナショナル ジオグラフィック  デービッド・ハルバースタム(序文) 
  • 日経ナショナルジオグラフィック社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863133211

作品紹介・あらすじ

1942年の写真部門創設から、最新2015年の受賞写真までを収録。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    写真は被写体を記録するものであると同時に、ストーリーを収めるものでもある。ピュリツァー賞を受賞した作品はみな、たった一枚の写真の裏に、壮大で複雑なドラマを含んでいる。

    ピュリツァー賞に選ばれる写真は、政治的・社会的にメッセージ性のあるものだと思われている。現にピュリツァー賞を受賞した作品はベトナム戦争、イラク戦争、内乱、紛争、途上国の貧困を扱ったものが多い。
    しかし実際は、ピュリツァー賞の選考基準は今も昔も曖昧なままだ。
    受賞作品の中には、歴史性のあるものも多いが、素朴な作品群も多い。警察官に話しかける子供、出産直後の母親と子ども、消えゆくカウボーイたちの生活。これらの写真をじっくり眺めてみても、ピュリツァー賞の価値判断の基準というものは見つからない。
    ただひとつ言えるのは、賞を受賞する写真は、どれも時の流れの中の普遍的な瞬間を記録したものであり、普通なら目にすることさえできない場所へ私たちを連れて行ってくれるものである。

    本書では、写真が取られた時代背景、シャッターが切られるまでの数時間〜数年に及ぶシナリオ、受賞写真が後世に残した影響など、さまざまな補足事項を交えながら解説されている。辛くて目を背けたくなるような写真や、涙腺が緩んでしまうような写真まで多種多様だが、どの作品も文句なしに素晴らしい。写真に疎く、技術的なことはさっぱりな自分にも刺さるものばかりで、「やはり報道写真は人を動かす力がある」、と思わず舌を巻いてしまった。

    わたしのお気に入りは、1977年にロビン・フッドによって撮影された「群衆のなかの顔」。
    ベトナム戦争によって足を無くした兵士が、車椅子の上で我が子を抱きかかえながらパレードの様子を見つめている。兵士の哀愁漂う顔と、何も知らない子供の無垢な表情。このコントラストに目を奪われた。

  • 精神病院へ潜入取材、調査報道の先駆者ネリー・ブライ | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
    https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/030600110/

    ピュリツァー賞 受賞写真 全記録 第2版 | ストアで買う | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
    https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/product/15/082500025/

  • 「この写真を撮った人は自殺した」
    小学校のとき、ハゲワシと少女の写真を見せてくれた先生が言った言葉は、永遠に心から離れません。

    なぜこの写真を撮る前に少女を救わなかったんだと世界中から非難された、ケビン・カーター。
    当時は私も非難した側と同じことを思っていました。撮っている場合じゃないだろうと。
    当の本人も写真を優先させたことを後悔していたと読んで分かりました。
    でも、この写真がなければ饑餓の現実は世界に伝わらなかった。重い意味を背負ったこの写真は千語に値したのだと思います。

    撮っても苦しかった
    撮らなくても苦しかった

    まだ子供だった多感な時期にこの写真を見れたのは、ケビン・カーターさんの苦渋の決断があってこそでした。
    亡くなって30年近く経ちますが、忘れません。

  • たった1枚の写真に心が揺さぶられる、圧倒的情報量

  • 戦争と事件の繰り返し

  • 衝撃と演出を評価するアメリカのジャーナリズム

  • 写真一枚でその時代の背景が分かる印象的な写真が多かった。中にはグロイものもあったりだけど、結局宗教、イデオロギー主義主張の違いからの紛争、民族問題で戦争は起こるんだなと。悲観的な写真が多いイメージだったかなぁ。

  • ピュリツァー賞(ピューリッツァー賞)は、新聞出版業で財を成したハンガリー生まれのアメリカ人、ジョーゼフ・ピューリツァーの遺志に基づいて、ジャーナリストの質の向上を目的に1917年に設立された。受賞対象は報道のほか、文学、音楽など、21部門に亘るが、1942年に創設された報道写真部門は、その中で最も権威ある部門のひとつである。
    本書は、1942年から最新までの70年間の受賞写真を、撮影時の状況、写真への反響、写真家自身の証言、撮影機材や条件を記した撮影データ、及び同時代の出来事とともに収録したものである。(私の手元にあるのは、2011年出版の第1版なので、2011年の受賞作まで収録)
    本書をめくってみると、1頁1頁の重み(もちろん、本の重さではなく、内容の重さである)に手が震えるが、私としては特に2つの大きな意味を感じる。
    1つ目は、私は、世界の戦地・紛争地の様子を我々に伝えてくれるフォト・ジャーナリストの活動に強い関心を持っており、これまでも、(ピュリツァー賞を受賞した3人の日本人の一人である)沢田教一を描いた『ライカでグッドバイ』(青木富美子著)をはじめ、カンボジア・アンコールワットに消えた一ノ瀬泰造や、今世紀に入っては、故・山本美香、安田純平、長倉洋海、佐藤和孝、橋本昇、川畑嘉文らの書いた本を読み、多くにおいて非常に共感を持っているのだが、彼らと同じ志を持つ世界中のフォト・ジャーナリストが撮った、数限りない写真の中の代表的なものが集められており、フォト・ジャーナリズムの集大成であるという点。
    2つ目は、対象となっている写真は、ベトナム戦争、東西冷戦、アフリカの紛争、イラク、アフガニスタン等の戦争・紛争、噴火、地震、津波等の自然災害のほか、オリンピックなど、幅広いが、そこには第二次世界大戦以降の世界が凝縮されており、言わば「世界の戦後史」を表しているという点である。
    頁をめくり終えて最も強く感じるのは、人間の愚かさである。多くのフォト・ジャーナリストは、戦地・紛争地で起こっている現実を知らない、或いは知ろうとさえしない、恵まれた国の人びと(我々日本人はその代表である)に対して、その様子を伝えることにより、その戦争・紛争を停止させ、延いてはそのような戦争・紛争が起こらない世界を作っていくために、自らの命を危険にさらしながら、本書にあるような写真を撮り、世界に発信しているのである(自然災害等は避けられないものであるが)。しかし、ピュリツァー賞報道写真部門ができてから70年を過ぎた今、世界の戦争・紛争は減っているだろうか。。。
    本書を見て我々が本来心に刻むべきことは、今後こうした写真が撮られることがないような世界を作ることなのだ。

  • ふむ

  • ピュリッツァー賞受賞写真ということで、どこかで見たことがある写真が多い。故沢田教一氏など日本人カメラマンの写真もある。受賞した写真を撮ったカメラは日本製が多い。ニコン、最近だとキヤノン。ニコン(元は日本光学)は、もともと軍需産業で三菱財閥の一員。戦艦大和の測距儀も日本光学製だったはず。

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