恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす

制作 : 村瀬俊朗 
  • 英治出版
4.06
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862762887

作品紹介・あらすじ

『チームが機能するとはどういうことか』(9刷、3.4万部【電子込み】)著者最新刊!



Googleの研究で注目を集める心理的安全性。

このコンセプトの生みの親であるハーバード大教授が、

ピクサー、フォルクスワーゲン、福島原発など様々な事例を分析し、

対人関係の不安がいかに組織を蝕むか、

そして、それを乗り越えた組織のあり方を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めてから読了までに、とっても時間がかかってしまったけど、決して面白くなかったわけではなく、とても参考になる本だった。

    ある方が本書を紹介していて、漠然と、「恐れのない組織って、きっと従業員が働きやすい環境を整えてるんだろうな。」と思い、そういう組織作りを知りたいと、購入。「従業員が働きやすい」環境や仕組み作り以前の、もっと精神的な土台になる話だった(と思う)。

    リーダーが従業員ひとりひとりとその考えを大事にすることが良い組織への第一歩であるということが当然であるとして、その「大事にする」ということが、つまり本書で論じられる「心理的安全性が確立されている」=「恐れのない組織である」ということなのだと、私は解釈した。

    この重要なキーワード「心理的安全性」とは、率直に発言したり懸念やアイデアを話したりすることによる対人関係リスクを安心してとれる環境、と定義されている。重要な点は、この心理的安全性を確立するのに、個人の資質は関係ないということ。つまり「無口な人」だから、「自分の意見を言わない人」だからという資質が要因で、発言したり話し合ったりできないわけではない、ということ。

    まず、前提として、みんな常に意識的にも無意識的にも対人関係リスクに対応していて、アイデアや疑問を率直に話し合うのを制限している。つまり心理的安全性を欠いた組織が多いということ。

    心理的安全性を欠いた組織がどんなに大きな失敗をしたか、時には関係者の死につながってしまう実例があげられ、逆に、心理的安全性が確立された組織では、いかに学習、エンゲージメント、パフォーマンスに素晴らしい効果があるかが、これも実例をあげつつ述べられている。

    そして、この心理的安全性の確立は、リーダーの責務であるとして、リーダーはどのように心理的安全性を確立したフィアレスな組織をつくることができるのかという点で、「土台をつくる」、「参加を求める」、「生産的に対応する」の3つの行動が必要と論じられる。

    詳細は本書を読んでいただくとして、やはりリーダーのあり方が肝心要なんだと思った。特に、発言をしてくれた人にまず感謝を述べる(意見や反論はそのあとに述べればよい)、謙虚になる(わかならいから教えて欲しいと恥ずかしがらずに言えること)、発言を引き出す問いかけをする(「どれだけミスしたか?」なんて言っても誰も答えたくない)、失敗を恥ずかしいものではないとする(これ、本当に大事。だいたいにおいて日本人は、失敗をダメなものと捉えがち)というところは、とても参考になった。

    ただ、ここで大事なのは、「心理的安全性」への一歩を踏み出せるのはリーダーだけでなく、誰でも行動できるということだった。

    これから組織において大なり小なりグループのリーダー的存在になることがあるかもしれない。その時には、これを思い出そうと思った。

    とても参考になる書籍だった。

  • 本書で取り上げられている「心理的安全性」という言葉は、グーグルのプロジェクト・アリストテレスによって非常に有名になった言葉である。
    本書内でも紹介されているが、プロジェクト・アリストテレスは、グーグル社内の、「生産性の高いチームの条件は何か」を調査・研究するためのプロジェクトであり、グーグルは、その研究成果を2016年に「チームを成功へと導く5つの鍵」として発表している。それによると、「心理的安全性」は、5つの要素の内の、他の4つの要素を支える「土台」であり、チームの成功にとって最も重要な要素である、としている。なお、ちなみに、「心理的安全性」以外の4つの要素は「明確な目標」「頼れる仲間」「個人的に意味ある仕事」「その仕事に影響力があるという信念」ということであった。
    会社で働いた経験のある者であれば、誰でも思ったことを100%言っているわけではないはずだ。それは、上司への配慮からであったり、あるいは、こんなことを言って皆から低く見られないか、嫌われないかという人間関係の心配からだったりする。心理的安全性とは、「みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」あるいは「対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる職場環境であること」である。こういう文化がなかった場合、場合によっては非常にまずいことが起こったり、あるいは、こういう文化があった場合に非常に良いことが起こったりすることを、本書中では色々な事例をあげて説明している。
    また、高いパフォーマンスをあげるためには、心理的安全性だけでは十分でないことも筆者は強調している。それは、とても重要な必要条件であるが、十分条件ではなく、職場・グループ内のパフォーマンス目標に高い基準を設定することも合わせて重要なことを述べている。
    更に、グループの中に心理的安全性を築くことは、リーダーの特に重要な責任であることも本書中で筆者は強調している。

    以上が本書のあらまし。
    筆者はハーバードビジネススクールの教授、学者であり、本書は、筆者自身のものを含めた心理的安全性に関しての世の中の様々な研究成果に基づいて書かれたものである。一種の学術書でもあるが、色々な事例を取り入れたり、あるいは筆者の文章や本の構成のうまさもあり、読み物としても面白いものになっている。
    上記したが、リーダーの(あるいは、組織マネジャーの、と言い換えても良いが)重要な役割は、高い目標を設定し、かつ、心理的安全性を担保することであることが本書では強調されている。VUCAの時代であると言われている。不確実性の大きな時代背景の中では、皆が知恵の交換をスムーズに行いながらチームとして成果を出していくことが重要で、そのために心理的安全性の重要性が更に増しているのだと思うが、高い成果基準とメンバーへの配慮は従来からマネジャーにとって重要なことであった。問題は、それが出来るマネジャーと出来ないマネジャーがいること。私は人事部門に所属しているが、人事部門の大きな課題の1つは、如何にしてそのようなマネジメントが出来るマネジャーを増やすかということである。
    そういった面でのヒントも多く含まれている本だった。

  • 心理的安全性とはこういうことだったのか。がわかる作品です。心理的安全性とは、対人関係の不安を減らすことだと認識しました。


    日本の人事部主催 HRアワード2021書籍部門優秀賞受賞!

    『チームが機能するとはどういうことか』の著者であり、2011年以来、経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され続けている、エイミー・C・エドモンドソン教授最新刊!

    篠田真貴子氏(エール株式会社取締役)推薦!
    「心理的安全性ってそういうことだったのか!
    心理的安全性の解釈が人によって違うことが気になっていた。しかし、本家本元による本書を読んで、すっきりと整理ができた。心理的安全性とは個人の資質ではなく集団の規範、ぬるい環境というよりもむしろ成果志向の環境なのだ。失敗と成功の事例を通して、このコンセプトへの理解が深まり、実践への示唆が得られるだろう。「恐れ」から解き放たれれば、私たちはもっと大胆に行動できる。」

    Googleの研究で注目を集める心理的安全性。
    このコンセプトの生みの親であるハーバード大教授が、 ピクサー、フォルクスワーゲン、福島原発など様々な事例を分析し、 対人関係の不安がいかに組織を蝕むか、 そして、それを乗り越えた組織のあり方を描く。

    目次
    はじめに
    第1部 心理的安全性のパワー
    第1章 土台
    第2章 研究の軌跡
    第2部 職場の心理的安全性
    第3章 回避できる失敗
    第4章 危険な沈黙
    第5章 フィアレスな職場
    第6章 無事に
    第3部 フィアレスな組織をつくる
    第7章 実現させる
    第8章 次に何が起きるのか
    解説 村瀬俊朗

  • 空気を読む日本企業の社員として(笑、日々せせこましく暮らしている身なので、何かしら救いがあるのかしら…?と思い、読んでみました。
    本著、ハーバード・ビジネススクールの教授による、タイトル通りではありますが、心理的安全性が組織にもたらす作用について書かれた1冊です。
    本著でも挙げられていますが「あまりに無茶で、やりきるには嘘をつくほかない目標の達成を要求するシステム」なんてのがある中であれば、「心理的安全性」だったり「Well-being」だったりの考え方も生まれるわな、と納得できる気はします。

    本著を読んで主に感じたのは、下記2つです。
    ①誰でもコミュ力が求められる世の中…
    ②成果は何の掛け算?

    ①誰でもコミュ力が求められる世の中…
    (鉄道マニアの悪いクセですが)新幹線に例えると「こだま、ひかり」の理系ワード(音響、光学)の時代は技術やエンジニアリングを突き詰めれば答えが出たけど、今はもはやその先の「のぞみ」の文系ワード(哲学?合意形成?)の時代なんだろうなと。
    目標が分野横断だったり、そもそもVUCA世界でようわからん中での手探り。コミュニケーションを改善して、多様なアイデアを収集しないと答えが探れない世の中。
    これって人によっては結構しんどいはずですが、その中での1つのコミュニケーションのひな型として、本著のようなチームビルディングがあるのかなと思いました。

    ②成果は何の掛け算?
    若い頃に上司に言われたコトで、「成果=能力×時間」ってのがあったんですが、「心理的安全性」もこのサブ変数くらいであっても良い気がします。
    「成果=能力×時間×(心理的安全性やらモチベーションやらをいくらか加味)」という感じ?
    ちなみに心理的安全性とモチベーションの関係、著者は両者に相関関係はないという立場だと私は捉えましたが、心理的安全性が低い局面において、「この品質じゃたぶん上司は通らない」という負のモチベーションが働く局面は(特に日本企業では?)あると思うんですよね。(そしてそれゆえに時間がかかって、生産性が低い)

    しかし本著、悪い本ではなくむしろ良著なんですが、結局「どこかに答えが転がってるけど、ただ情報の偏在で気付けていない時に有効なやり方」なのかしら?とも思ってしまいました。
    チームビルディングは頑張るけど、それだけで成果が得られるってコトにはならない気がするんですよね…。じゃあ何さ?って言われると弱いんですが(^^;
    読んでおいても良い1冊だと思うのですが、何か目先の悩みに即効性のある回答が得られる訳ではない、というのも心得ておいた方が良いのかなと思いました。

    ちなみに、フォルクスワーゲンの不正事例のくだり、「監査役会」とあって「ん?監査役会って日本オリジナルの機関では?」となったのですが、ドイツにも監査役会と訳せるっちゃ訳せる機関は存在していて、ただ役割としては取締役会に近いもののよう。ややこしいですね。

  • 翻訳が平易な文章なのでスラスラと読めてしまうけど、2周、3周と読まないと本質には辿り着けないように思った。
    心理的安全性は信頼とは違って、個人間ではなく組織、チーム、場の中に築き上げられるもの。
    上司の機嫌や自分の査定、人間関係への影響を気にすることなく、率直にものが言えるかどうか。どうやって心理的安全な場をつくれるか、という問いに対して、こうすれば良いというひとつの正解がある訳ではなく、「風上に向かってジグザグ進む」しかない。まずは、好奇心と思いやりと真摯な熱意(コミットメント)を自分の行動に現していきたいなと思った。

  • 今の自分に読み切れるとは思ってなかったのでまず嬉しい。章ごとに豊富な企業事例、具体的な変化のためのプロセス構築法やツールなども多い。

    第8章冒頭のp230, "発言より沈黙を好む心理的・社会的な力の基本的非対称性、つまり自己表現より自己防衛しようとする性質は、今後も変わらないだろう"…うぅ…でしょうね。
    だが、"発言と沈黙では、見返りもまた非対称である"…ほんそれな!! やはり諦めたくない、沈黙の文化を揺さぶる活動。

    心理的安全性は繰り返し探求し続けるものであるし変化もする。
    質問集、どれもあるあるすぎて笑う。

    第8章はなんと言ってもラストが秀逸。胸熱。風上に向かってジグザグに進め。ヨットの如く。

  • 「ティーミング」(「チームが機能するとはどういうことか」)の著者で、近年、注目される「心理的安全性」の発見者による新著。
    内容はなんとなく想像できるものの、「ティーミング」がとても難しいことをとてもわかりやすく整理したものだったので、一応、読んでおこうというくらいのスタンスで読み始めた。

    最初のほうは、それはそうだよな〜という感じなのだが、具体的な事例の紹介などを通じて、だんだん、そうそうその通り、と引き込まれた。

    とくに、福島の原子力発電所のケースがわりとしっかりと取り上げられていて、そういう観点からも、身に迫るものがある。

    まったく新しい知見が示されているわけではないのだけど、自分がずっと感じていたことが言葉にされ、そして他の本を読んで共感していることがリンクされ、ツールとして、整理されている。

    内容的には、たとえば、センゲの学習する組織やティール組織などで議論されていることと共通するわけだけど、とてもクリアで、わかりやすく、実践的な書き方で、なんというか「オレンジ」な人々にも訴えかける書き方になっている。

    「オレンジ」にわかるように説明するというのは、ある意味、ハーバード大学的な特徴なのかな?(キーガンの本もそんな感じ)

    で、この議論の先には、自然と、自己組織化やナラティヴアプローチに繋がっていく感じがあって、いいな。

    これからのリーダーシップのあり方として、これはベースなのかもしれないと思った。

  • リーダーとそれ以外のメンバーとの感覚のズレを認め、それを改善しようとする気持ちが大切なんですね。作り方は詳しく書いてありました。

  • 心理的安全性は信頼の別名ではなく、また目標達成基準を下げることでもない。遠慮なく失敗すること、実りある衝突を行うこと、無知の人となり謙虚に耳を傾けること。そして意見を引き出す仕組みを作る。またそうした心理的に安全になっても、過度になったり話して時間がかかりすぎることはない。
    358冊目読了。

  • 組織においていかに心理的安全性が重要であるかを複数のケースを交えて学べる本。

    私個人としては感覚的にこれの大切さが分かっていて、
    学生時代のアルバイト経験や社会人時代の各部署などで、小さな単位のチームのおいて"雰囲気づくり"として意識的に取り組んできた。
    この本で定義する"心理的安全性"はまさに私が実現したかった"雰囲気づくり"だった。

    特に学びが大きかったのは、
    これを大きな単位での組織で実現したケースを知れた事と、心理的安全性を実現するために必要なプロセスやポイントが体系的にまとめられていた点。
    最終的になぜ"雰囲気づくり"を大切にしたさったのかまでリンクさせることができたのは大きな収穫。

    オススメしてくれた岸くん、ありがとう。

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著者プロフィール

ハーバード・ビジネススクール教授。リーダーシップ、チーム、組織学習の研究と教育に従事し、2011年以来、経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され続けている。彼女の論文は、Harvard Business Review、California Management Review、Administrative Science Quarterly、Academy of Management Journalなどに掲載されている。『チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』(英治出版)の著者でもある。

「2021年 『恐れのない組織』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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