異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862762085

作品紹介・あらすじ

ハーバード・ビジネス・レビュー、フォーブス、ハフィントン・ポストほか各メディアで話題!ビジネス現場で実践できる異文化理解ツール「カルチャーマップ」の極意をわかりやすく解説。

感想・レビュー・書評

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  •  グローバルに働くビジネスパーソンにオススメの本。各国の特徴を8つの指標で分析されています。

     ①コミュニケーション
      ローコンテクストvs
      ハイコンテクスト(暗黙の了解)
     ②評価
      直接的なネガティブフィードバックvs
      間接的なネガティブフィードバック
     ③説得
      原理優先vs応用優先
     ④リード
      平等主義vs階層主義
     ⑤決断
      合意志向vsトップダウン
     ⑥信頼
      タスクベースvs関係ベース
     ⑦見解の相違
      対立型vs対立回避型
     ⑧スケジューリング
      直線的な時間vs柔軟な時間

     特に参考になったのは、②のネガティブフィードバックの箇所。遠回しに批判的な意見を伝える国と率直に伝える国があり、このギャップによって下記のようなミスコミュニケーションが発生するそうです。
    ---------------------------------
    【場面】
     仕事中のイギリス人上司とオランダ人部下の会話。
     遠回しに批判を伝える国→イギリス
     率直に批判を伝える国 →オランダ

    【例1】
     イギリス人「あぁ、ところで‥」
     イギリス人の本心(次の話こそ本題だ)
         ↓
     オランダ人
     (次はおまけで、重要な話ではなさそうだな)

    【例2】
     イギリス人「とても興味深いですね」
     イギリス人の本心(好きではありません)
         ↓
     オランダ人
     (いい印象を与えたぞ!)
    ---------------------------------
     お笑いのコントのようだが、異文化間や同じ人種でも歳の離れた世代間で発生しそうだと思いました。上司と部下で大きな認識のギャップがあれば、仕事の効率が悪くなるのが容易に想像できます。「イギリス人は遠回し過ぎでは?」と思うかもしれませんが、更に遠回しに匂わせるのが我々日本人です。(本書に記載はないが、大阪の「行けたら行くわ」は、日本人の私ですら遠回し表現に初めは勘違いしたほど曖昧。)
     意外だったのが、アメリカ。歴史的に多様な移民で成り立っている国のため、明快なコミュニケーションが基本。しかし、ネガティブな意見は直接的に言わないそうです。余談ですが、私はアメリカ人の英語の先生から「Let’s do lunch sometime!と言われても、連絡が来ると思っちゃダメ。社交辞令だからsometimeは永遠に来ない。」と教わりました。確かに、ネガティブな表現を遠回しに言うところ、大阪の「行けたら行くわ」と非常に似ています。

     最後に、本書で挙げられていた例え話が分かりやすかったのでご紹介します。
    ---------------------------------
    二匹の若い金魚が、泳いできた年寄りの金魚とすれ違う。年寄りの金魚は彼らに挨拶して言う。
    「おはよう、坊やたち、水の調子はどうだ?」
    すると、若い金魚が言う。
    「おい、水ってなんだ?」

    水の中にいる時、つまりその文化の中に溶け込んでいる時は客観的に文化を見ることはしばしば難しい。
    ---------------------------------
     一つの文化しか知らない人は、地域差や個人差、その国の文化の明確な特徴に気づかないことが多いと述べられていました。ミスコミュニケーションという弊害があるかもしれないが、異文化同士が混ざり合った方が面白い発見がありそうです。

    補足:
    日本の独自ルールの中で、〝根回し〟も紹介されています。原文では、何と英語で表現されているのか気になりました。

  • 英語版で読了。

    ものすごく勉強になった。

    日本人から見た外国人や外国人から見た日本人の本はあるが、これは世界の国々がある基準に対してどういう位置にあるかという関係性を客観的に書いている。例えば、日本人から見るとアメリカ人は時間にルーズに見えるかもしれないが、フランス人からアメリカ人を見ると時間に厳しすぎるように見える。なぜなら時間にどれくらい厳しいかというのを示したとき 日本→アメリカ→フランスという立ち位置になるから。多国籍の人と働くには、自分の国からの味方だけではなく、ある国がある国よりどうかという視点も大事であると思った。

    生ま育った国で人を判断するな!という批判もあるかもしれない。著者も個々人で違うことは認めているが、一方で「あの人は悪い人だ」と決めつけ、個人を責めたりしてしまうことになるかもしれないとも。「Being open to individual difference is not enough」。文化が人格や行動に影響を与える限り、違いを理解しておくことは重要。

    本書では、8つの基準で文化の違いを述べている。
    Communicating: low-context vs. high-context
    Evaluating: direct negative feedback vs. indirect negative feedback
    Persuading: principles-firs vs. application-first
    Leading: egalitarian vs. hierarchical
    Deciding: consensual vs. top-down
    Trusting: task-based vs. relationship-based
    Disagreeing: confrontational vs. avoids confrontation
    Scheduling: linear-time vs. flexible time

    第1章
    Communicating: low-context vs. high-context
    low-contextとは、全てを明確に、詳細に述べてコミュニケーションをとること。high-contextとは、行間を読む必要があるということ。

    フランス人はhighでアメリカ人はlow。英語は70000語あるのに対し、フランス語は5000語しかないことからもフランスでは行間を読む必要がある。

    また歴史の長い国はhigh-contextになる傾向がある。アメリカは色々な民族がいて、明確にコミュニケーションする必要があるため、low。イギリス人も日本人に比べればlowだが、イギリス人に言わせると、アメリカ人は冗談すら通じない。アメリカ人はjust kidding!と言わないと怒り出すそうだ。

    第二章
    Evaluating: direct negative feedback vs. indirect negative feedback

    日本人から見ると、イギリス人は十分ものをはっきり言うように思っていたが、世界的に見るとオブラートに包む方のよう。オランダ人はネガティブなことをはっきり言う文化。イギリス人が言ったことをオランダ人が聞くと否定的に言ったつもりが肯定的に取られてしまう。

    イギリス人「with all due respect...」
    イギリス人の意図「I think you are wrong.」
    オランダ人の理解「He is listening to me.」

    アメリカ人もネガティブなことはオブラートに包んで言うと言うのは日本人からすると意外な感じがした。Low-contextだからと言って、direct negative feedbackをするとは限らない。

    Politenessの理解は文化によって違い、オランダ人ははっきり正直に悪いことを伝えるのがPoliteと思い、イギリス人やアメリカ人は悪いことを率直に言うのは失礼だと考える。文化によって「Polite」であることの定義が違うのは注意すべき点。

    第3章
    Persuading: principles-firs vs. application-first
    説得するときに原理から説明するか、具体的なものから話すか。ドイツ人はwhyを説明するのに対し、アメリカ人は「じゃあどうするの?」から聞きたがる。
    アジア人はこの指標には載らず、「holistic approach」と言う別のアプローチが必要。アジアでは意見を求められると、延々と質問に関係ない部分まで話してやっと結論に達する。水草の生えている水の中に、魚が泳いでいる絵を見せると、アジア人はまず「水草があって、石が下にあって・・・魚が三匹います」と説明するが、アメリカ人に何の絵ですか?と聞くと「魚が三匹いる絵」と説明する。

    日本人に仕事をお願いするときは、「あなたはこれをやってくだい」ではダメで、「あなたはこれ、あの人はこれ、あの人はあれをやります」と全体を説明しないと前に進まない。

    そうなのかな。

    第4章
    Leading: egalitarian vs. hierarchical
    ヨーロッパの中でも平等と階層型の文化の国がある。オランダやスウェーデンは平等。イタリアやスペインは階層型。これには3つの歴史的背景がある。

    ①ローマ帝国に支配されていた国は階層型。オランダはローマに支配されていなかったから平等型。
    ②バイキングに支配されていた国は平等型。スウェーデンが平等型なのはそれゆえ。
    ③カトリックの国はプロテスタントよりもより階層型。

    求められるリーダーも違い、階層型の文化では、指示しない上司は評価されない。強いリーダーが好まれる。なるほど、プーチンが人気の理由もよくわかる。

    level hoppingにも気をつけなければならない。オランダでは、平社員が上司をすっ飛ばして社長に話すことが許されるが、それを階層型の国で行うと反感を買うことがある。なぜ自分に言って来ないで、部下に言うんだ!と。

    第5章
    Deciding: consensual vs. top-down
    まずみんなで同意した上で決定を下すのがconsensual。トップが同意を得ずに決めてしまうのがtop-down。アメリカはtop-downで、ドイツはconsensual。ドイツ人から見るとアメリカ人は人の意見も聞かずに勝手に決めると思われる。非常に階層型だと思われるが、階層型とは違うことに注意。アメリカ人は「とりあえず決める、決めたあと悪ければ帰る」というスタイル。アメリカ人からするとドイツ人は決定が遅いと不満が溜まる。

    日本は究極のconsensual社会。本書では、稟議書や根回し文化が紹介されている。ただdecision makingには時間がかかるが、一度決まれば実行は早い。

    第6章
    Trusting: task-based vs. relationship-based
    アメリカ人はtask-basedですが、中国人はrelationship-based。どんなに中国人にいいプレゼンをしても、個人的な繋がりがないとビジネスは上手くいかない。夜にお食事に誘い、ビジネスと関係のないことを話すと言うようなことが必要。

    アメリカ人もice breakなどと言ってrelationship構築をトレーニングに組み込んでいたりするが、それはあくまでビジネスのためであって、外に出た途端、リレーションを作ろうなんて考えない。

    アメリカのようなtask-basedの社会の人に、何時間もの飲み会に誘うのはあまりよくない。とりあえず一時間のランチに誘い、それから本人が望めば長くするが、もし断られたら強くプッシュしないこと。彼らにとっては飲み会は時間の無駄と考えられている。

    逆に、日本の飲みニケーションを無駄と考えてもだめで、これによって、仕事が早く進むと言うこともあり、効率をむしろあげる場合もある。

    第7章
    Disagreeing: confrontational vs. avoids confrontation
    オープンな場で議論をするかどうか。
    フランス人は人前で不賛成を表明し、議論を活発に行う。そうすることで、良い案にブラッシュアップされていくと考えているから。プレゼンをすると批判の嵐になって、落ち込んでいると最後には「良いプレゼンだったね」と話しかけてくると言うことがあるらしい。

    逆にアメリカのようにいろんな民族がおり、confrontationを避けることっが至上命題という国では、confrontationは避けられる。

    アジアもそう。このようにavoids confrontationの国では、事前に意見をまとめてくる時間を与えたり、先に上司が意見を発表せずまず部下に意見を言わせるというような工夫がないと議論は活発化しない。

    第8章
    Scheduling: linear-time vs. flexible time
    ドイツや日本は時間にストリクト。
    発展途上国は日々社会が変わっていく中で、時間を守るよりもいかにフレキシブルに対応するかが重要なため、時間を守らない。
    中国も時間を守らない国。だから、当日になって「今日会える?」ということもよくある。ただ逆に自分が急に時間が空いた時に「今から会える?」ということも可能。

    多国籍の人がいる場合、チームの時間文化を最初に決めることが重要。このチームでは時間ぴったりにくるのが文化でルールです、破ったら罰金というようにリーダーがクリアに決めてしまう。

    まとめ
    他の国と仕事をしていてトラブルが発生した時には、まずそれぞれの国が8つの基準についてどういうポジションにあるのかを理解する。そして、乖離のある部分に対して、お互いに意見交換をすることが大事。

  • たくさんの気付きを与えてくれる本。
    異文化をOJTである程度学んだつもりでいたけれど、8つの指標でマッピングされるカルチャーマップはとても興味深いし、その背景にある歴史、教育、哲学の説明もありストンと懐に落ちる。

    常々我々日本人の一般的な「普通」はグローバルスタンダードではないのだろうな、と思ってはいたけれどこうもそれぞれのマップで究極に位置にする文化だったとは。

    欧州各国の違いも面白かったけれど、一番意外だったのはお隣中国のカルチャーかもしれない

    2020.10.15

  • 実際にあった話を多く紹介しながら、文化の違いによるビジネスシーンで発生しやすいすれ違いやそれに対するアドバイスが述べられており、非常に勉強になりました。
    本書でも同様のことが述べられていますが、日本人の中にも色んな人がいるように、◯◯人だからこうだと決めつけることは非常に危険です。ただ、いくらインターネットを通じて簡単に世界とつながれるようになったと言っても、同じ教科書を読んで学んだり、同じテレビを見たり、同じ習慣で生活をしたりしていると、国や地域ごとに考えが似てくるのもそれはそれで自然なことでしょう。私たちも日本の社会ではこれくらいの行動や発言をしておけば無難で、これ以上やると危険だなとういのを感覚的に身につけていると思います。
    同じように国や地域ごとの文化的分布特徴を把握しておくことで、外国人と仕事をすることがあっても動じず、過度に傷付いたり、傷付けたりせずにコミュニケーションが取れるのではないかと思います。これからは日本にいても外国人と働く機会は多くなると思うので、多くの人にとって一読する価値がある本だと思いました。
    また、本書は訳書で日本のことが中心に書かれている訳ではないので、外国人から見た客観的な日本人の特徴も知れて面白かったです。

    • kumakubonさん
      感想を書いてから、ああ確かに自分は調和に重きを置く傾向がある日本的な考え方だと思いました(笑)
      感想を書いてから、ああ確かに自分は調和に重きを置く傾向がある日本的な考え方だと思いました(笑)
      2019/09/30
  • 8つの軸で文化を整理。主にビジネスシーンを想定してその違いがコミュニケーション、相互理解にどんな影響を与えるか解説。

    これ、文化差はもちろん、個人差もかなりあるので、チーム内でアセスメントして共有してみた。次はチーム以外にも広げていこう。世代によっても違いそうで、昭和なマネジメントが嫌いな僕にとって、上司の昭和度を可視化して、上司にも変わってもらうことが狙いのひとつ。

    解決策としてのお互いの歩み寄りを素直に促進させてくれるし、歩み寄れなくても、チームの方針開示によって、解消図るようにと。


    だいぶ前に研修受けて買ったものの、ぱらぱら見た感じ、研修で疑問に思ったことがあんまり書いてないと思い、そのまま読まずに、はや2年?

    前々から新しいチームでもアセスメントしないとなあと思いながら、だいぶ日が経ったけど、最近、和音だけでなく不協和音も出始めてるので、えいやとやってみた。

    音に無頓着、区別つかない僕からすると、不協和音を不協和音と捉えなくて便利だと思うのだけど…文化でもなんでも、所詮は勝手に作り上げたもの。もっと楽になりたいもんです。


    ま、とにかくその準備で、そういえばとこの本を取り出し、一昨日の夜中にページめくると、疑問に思うことについてもいろいろ書いてあるかもと、読み始める。

    なんであの時気づかなかったんだろうなあ。

  • 1 コミュニケーション
    ローコンテクスト vsハイコンテクスト
    2 評価
    直接的vs間接的なネガティブフィードバック
    3 説得
    原理優先vs応用優先
    4 リード
    平等主義vs階層主義
    5 決断
    合意志向vsトップダウン式
    6 信頼
    タスクベースvs関係ベース
    7 見解の相違
    対立vs対立回避
    8 スケジューリング
    直線的vs柔軟

    日本について
    1.2 ハイコンテクスト&間接的
    アジアの中でも端

    3 アジアは包括的思考

    4.5 階層主義なのに合意志向
    いずれも端なので特異、傾向ではドイツに近い、中国は階層&トップダウン、オランダは平等&合意志向、アメリカは平等なのにトップダウン

    6 関係ベース寄り
    アジアの中では比較的欧米寄り

    7 対立回避&感情表現控えめ
    アジアの中でも端

    8 直線的
    ドイツと同レベルに端、中国と正反対

  • 著者が推奨する8つの指標で我が日本はいつもスケールの一番端に位置しているのが目に付いた。行間を読む文化や、人を傷つける直接的な物言いを避けたり、とっても階層的な社会なのに極端な合意志向、対立回避型で、時間管理は細かい。こんな特徴的な文化背景に育った僕らが、国際交流の現場で苦労するのは当然のことなんだね。常々攻撃的と感じていたオランダやドイツでは、それが悪気ではないとはいえ、とても暮らせそうにありません。日本に暮らす外国人や、海外で暮らす邦人の勇気と苦労には頭が下がります。とっても面白い本でした。

  • 英語を勉強するだけでは片手落ち。本書で文化の差異を学ぶべき。

  • グローバルで働く人で、言語以外で悩む人におすすめしたい本。アメリカ本社の会社でインド圏にルーツを持つカウンターと日々コミュニケーションをとる日本支社の一個人として、大いに参考になった。
    ・8つの指標に沿って文化の違いが説明されている
    ・個人差を認識しつつも他国の文化を知ることで、意図せぬ偏見を持って他者を非難することを防げるとする
    ・事例で理解しやすく、提案されるhow toはすぐに実践できる

  • 帯に書いてある通り“語学力より不可欠”な異文化を理解する力が養えます。

    階層性やネガティブフィードバックのスタイルなど様々な切り口で各文化の差異が相対的にマッピングされることで文化間のギャップが理解できました。
    差異を知るだけでなく異なる価値観の人々とどのように接するべきか、筆者と周囲が経験したグローバルなビジネスの場での例を使いながら説明しているため実践的です。

    読み進めると分かるのですが、日本は多くの軸で最端に位置しており、世界的にみてもかなり特殊なようで、それ故にエピソード例として多く登場するので日本人にオススメです。

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著者プロフィール

エリン・メイヤー(Erin Meyer)
INSEAD教授。ハーバード・ビジネス・レビュー誌やニューヨーク・タイムズ紙などにも紹介された『異文化理解力』著者。2004年INSEADにてMBA取得。1994年から95年にかけて平和部隊の一員としてスワジランドに滞在。現在はパリ在住。

「2020年 『NO RULES(ノー・ルールズ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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